31 / 47
第10章:寄り添うとは一体なんだろうか(シンクロイド視点)
31.
しおりを挟む
蘇芳は優しく声を掛けると、健人の頭をポンポンと撫でた。これで健人も落ち着いて寝るだろうと思い、次こそは自室へ戻ろうと思った。しかし、健人は俺様の服を掴み、離さなかった。
「なんだ? まだなんかあるのか?」
「……もうちょっと、そばにいて欲しい。迷惑だったら、別に――」
「なんだよ。そんなことか。じゃあ、もう少し向こうに寄れ」
蘇芳は健人をベッドの中央から端へ寄るように伝える。健人は言われるがまま、ベッドの端に体を寄せた。蘇芳は布団をめくると、ベッドに横たわり、健人を引き寄せ抱き締めた。健人は動揺した声を出し、俺様の顔を見てきた。
「ベ、ベッドの中にまで入ってこなくても……」
「この方が良いだろ? 同じ空間で眠ることで相手のぬくもりを感じて、リラックス効果が得られるんだとよ。健人は勝手にリラックスしろ」
「リラックスって……そんなの、出来ないよ」
「なんだ? 俺様に抱き締められながら寝るのはそんなに嫌なのか? だったら、部屋に戻るが」
「だっ! そういう訳じゃなくて」
「そういう訳じゃなくて、他に理由があるのか?」
「…………その、ドキドキするからさ」
蘇芳は健人の言葉に驚き、目を大きく見開いた。蘇芳は少しだけ顔を上げ、背中を向ける健人の顔を覗く。健人は耳まで赤くし、体をもじもじさせていた。
「ドキドキすればいいだろ」
蘇芳は健人に腕枕をすると、健人の体を更に引き寄せ、包み込むように抱き締める。そして、健人の頭を優しく撫で続けた。
「あ、ありがと」
「俺様がやりたくてやってるだけだ。さっさと休め」
健人は小さく頷き、目を閉じた。間もなくして、健人はすやすやと寝始めた。蘇芳は健人の寝顔を見て、ホッとする。そして、自分もこのまま寝てしまおうと思い、ゆっくりと目を閉じる。
健人の呼吸、心音、体温が心地良い。健人の頭に顔を近づけると、いつも使っているシャンプーのほのかな香りがする。俺様の方がリラックスしているのではないかと思った。
あの事件以降、健人への嫌がらせは無くなり、健人との距離を今まで取っていた生徒たちも徐々に声を掛けるようになった。聞くところによると、主犯格グループが「奥田健人に関わったら、新たな標的にする」とアカデミー生を脅していたらしい。蘇芳は『人間というものは私利私欲にまみれた愚かな生物』だと呆れを通り越して、哀れに思った。
健人が今まで躊躇していたトレーニングセンターでの訓練も増えて、時には喧嘩したり、時には真剣に話し合ったりと、健人と蘇芳は遅れを取り戻すように日々鍛錬を積んでいった。
「なんだ? まだなんかあるのか?」
「……もうちょっと、そばにいて欲しい。迷惑だったら、別に――」
「なんだよ。そんなことか。じゃあ、もう少し向こうに寄れ」
蘇芳は健人をベッドの中央から端へ寄るように伝える。健人は言われるがまま、ベッドの端に体を寄せた。蘇芳は布団をめくると、ベッドに横たわり、健人を引き寄せ抱き締めた。健人は動揺した声を出し、俺様の顔を見てきた。
「ベ、ベッドの中にまで入ってこなくても……」
「この方が良いだろ? 同じ空間で眠ることで相手のぬくもりを感じて、リラックス効果が得られるんだとよ。健人は勝手にリラックスしろ」
「リラックスって……そんなの、出来ないよ」
「なんだ? 俺様に抱き締められながら寝るのはそんなに嫌なのか? だったら、部屋に戻るが」
「だっ! そういう訳じゃなくて」
「そういう訳じゃなくて、他に理由があるのか?」
「…………その、ドキドキするからさ」
蘇芳は健人の言葉に驚き、目を大きく見開いた。蘇芳は少しだけ顔を上げ、背中を向ける健人の顔を覗く。健人は耳まで赤くし、体をもじもじさせていた。
「ドキドキすればいいだろ」
蘇芳は健人に腕枕をすると、健人の体を更に引き寄せ、包み込むように抱き締める。そして、健人の頭を優しく撫で続けた。
「あ、ありがと」
「俺様がやりたくてやってるだけだ。さっさと休め」
健人は小さく頷き、目を閉じた。間もなくして、健人はすやすやと寝始めた。蘇芳は健人の寝顔を見て、ホッとする。そして、自分もこのまま寝てしまおうと思い、ゆっくりと目を閉じる。
健人の呼吸、心音、体温が心地良い。健人の頭に顔を近づけると、いつも使っているシャンプーのほのかな香りがする。俺様の方がリラックスしているのではないかと思った。
あの事件以降、健人への嫌がらせは無くなり、健人との距離を今まで取っていた生徒たちも徐々に声を掛けるようになった。聞くところによると、主犯格グループが「奥田健人に関わったら、新たな標的にする」とアカデミー生を脅していたらしい。蘇芳は『人間というものは私利私欲にまみれた愚かな生物』だと呆れを通り越して、哀れに思った。
健人が今まで躊躇していたトレーニングセンターでの訓練も増えて、時には喧嘩したり、時には真剣に話し合ったりと、健人と蘇芳は遅れを取り戻すように日々鍛錬を積んでいった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
リナリアの夢
冴月希衣@商業BL販売中
BL
嶋村乃亜(しまむらのあ)。考古資料館勤務。三十二歳。
研究ひと筋の堅物が本気の恋に落ちた相手は、六歳年下の金髪灰眼のカメラマンでした。
★花吐き病の設定をお借りして、独自の解釈を加えています。シリアス進行ですが、お気軽に読める短編です。
作中、軽くですが嘔吐表現がありますので、予め、お含みおきください。
◆本文、画像の無断転載禁止◆ No reproduction or republication without written permission.
きっと世界は美しい
木原あざみ
BL
人気者美形×根暗。自分に自信のないトラウマ持ちが初めての恋に四苦八苦する話です。
**
本当に幼いころ、世界は優しく正しいのだと信じていた。けれど、それはただの幻想だ。世界は不平等で、こんなにも息苦しい。
それなのに、世界の中心で笑っているような男に恋をしてしまった……というような話です。
大学生同士。リア充美形と根暗くんがアパートのお隣さんになったことで始まる恋の話。
「好きになれない」のスピンオフですが、話自体は繋がっていないので、この話単独でも問題なく読めると思います。
少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。
続 深夜の常連客がまさかの推しだった
Atokobuta
BL
西遊記現代転生創作BL
無事に本当の恋人同士になった悟空と玄奘はいちゃいちゃな同棲生活を楽しんでいたが
マネージャー磁路の発案でダンス特訓をすることに。
先生役として招かれた双子ダンサー金狩&銀狩のうち、金狩はどうやら悟空に気があるようで…⁉
生まれた初めて嫉妬心を自覚する玄奘が、悟空との仲を深めるために提案してきたのはまさかのリバだった…
本編「深夜の常連客がまさかの推しだった」のCP成立後の話です。
シリーズとして続いてはいますが、前作を読んでいなくても大丈夫です。
表紙はいつもの通り大鷲さん@ows@misskey.design にお願いしています。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
ポケットのなかの空
三尾
BL
【ある朝、突然、目が見えなくなっていたらどうするだろう?】
大手電機メーカーに勤めるエンジニアの響野(ひびの)は、ある日、原因不明の失明状態で目を覚ました。
取るものも取りあえず向かった病院で、彼は中学時代に同級生だった水元(みずもと)と再会する。
十一年前、響野や友人たちに何も告げることなく転校していった水元は、複雑な家庭の事情を抱えていた。
目の不自由な響野を見かねてサポートを申し出てくれた水元とすごすうちに、友情だけではない感情を抱く響野だが、勇気を出して想いを伝えても「その感情は一時的なもの」と否定されてしまい……?
重い過去を持つ一途な攻め × 不幸に抗(あらが)う男前な受けのお話。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
・性描写のある回には「※」マークが付きます。
・水元視点の番外編もあり。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
※番外編はこちら
『光の部屋、花の下で。』https://www.alphapolis.co.jp/novel/728386436/614893182

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる