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第10章:寄り添うとは一体なんだろうか(シンクロイド視点)
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「……それにしても、遅いな」
蘇芳は十分、二十分くらいで健人が戻ってくると思っていたが、部屋のドアが開く気配はない。蘇芳は心配になって、スマートウォッチを操作し、健人の現在地を確認した。
「ここは、資材倉庫? 何故こんな場所にいるんだ? ……通話機能が確かあったよな。しかし、あの状況だと何か隠している可能性もあるな。健人には申し訳ないが、細工をさせてもらおう」
蘇芳は健人のスマートウォッチにハッキングし、脳内で盗聴出来るようにする。そして、蘇芳は健人がいる資材倉庫へ早足で向かう。
蘇芳が向かっている最中、籠もったような呻き声と何かが擦れるような、軋むような音が確認出来た。そうと思えば、バケツの水を引っくり返したような水しぶきの音がする。
『調子に乗りやがって。どうせ成績が良いのもお前のパパが作ったシンクロイドのお陰だろ。しかも、能無しで役立たずのお前が夏希さんと親しげにしちゃってさ。独占してるのを見せびらかせて、生意気なんだよ』
突然、脳内に流れる聞き覚えのない男性の声。いや、女性のせせら笑う声も後ろの方で聞こえる。そして、会話の途中で聞こえる呻き声。蘇芳は犯人たちが言い逃れできないように、スマートウォッチに指示を出す。
「おい、盗聴開始部分から録音しろ」
『盗聴による録音は原則禁止となってお――』
「バディの生命に関わる緊急事態なんだ。そんなのも分からないのか、このポンコツ時計が!」
『内容から緊急を要すると判断。警備担当者へ通報。現在地のセキュリティシステムを強制的に解除。……共命反応あり。シンクロイドによるセキュリティロック開始及びシールド展開反応あり。ロック解除できません』
「は? むちゃくちゃだな」
念のため、蘇芳は夏希たちにも連絡し、後で合流することになった。脳内で最短ルートを予測し、健人の無事を切に願って、ひたすら走った。
「はぁ……。ここが資材倉庫か。警備担当はまだ来ねぇのか。このドアは俺様でも蹴り飛ばせるか?」
『分析結果、不可能。シールド付与状態で従来より強固になっています』
「くそっ、どうしろってんだ。侵入経路も無いのか?」
『ありません。全てロックがかかっています』
蘇芳は目の前というのに何も出来ないことに対して、自己嫌悪に陥る。このまま為す術はないのかと考えていると、夏希たちがやってきた。蘇芳は夏希たちに近づき、聞こえないようにひそひそと詳細を説明した。
「この中に健人さんがいるの?」
「あぁ。でも、ロックはかかってるし、シールド展開までされて、中に入れないんだ」
「はぁ、本当に困った人たちだなぁ。ここまで派手な嫌がらせをされちゃうと、僕の活動に影響が出るっていうのに。それはいいとして、健人さんの方が大事だから、ここは僕に任せて。琥太郎はあの人に連絡しておいて」
「夏希。いいのか、呼んでも?」
「もちろんだよ。そのための最重要人物なんだもん」
琥太郎が連絡を取っている間に、夏希はホログラムモニターを広げ、何かのコードを手慣れた手つきで入力し始めた。そして、入力し終わると満足げな表情で、皆にドアから離れるように言った。蘇芳たちは夏希に言われるがまま、ドアの前から離れた。
「今から何をするんだ?」
「まぁ、見てからのお楽しみ。へへっ」
ニンマリと笑う夏希は、入力したコードを疑似スマートカードへ転送し、そのカードをドアの非接触型リーダーに貼り付けた。そして、急いで戻ってくると、両耳を手で押さえ、しゃがんだ。蘇芳も反射的にしゃがんだ。
電子音が目覚ましのようにけたたましく鳴ったと思えば、数秒後にはピーッという長音が鳴り、爆発音とともにドアが廊下側に向かって、勢い良く吹っ飛んだ。廊下には煙が充満し、火災報知器が鳴り響く。
「健人を探したいが、煙が――」
「健人さんなら、ここにいるよ」
蘇芳は煙の充満で視界が悪く、救出しように出来ず、困り果てていると、健人がいつの間にか隣にいた。どうやら夏希が感覚超越・視覚を駆使して、健人を連れ出してくれたみたいだ。蘇芳はとりあえず健人の拘束を全て解き、外傷の有無を観察した。目立った外傷は無く、ひと安心した。蘇芳は念のため健人を医務室へ連れて行こうと健人を抱きかかえる。
その時だ。コツコツと靴の音を規則正しく廊下に響かせる人間のシルエットが見えた。蘇芳たちの前にグレーのスーツを着た男性が呆れた表情をし、頭を掻いていた。
「ったく。直すのにいくらかかると思うんだ。はぁ……、最高司令官に怒られるのはお父さんなんだぞ。夏希、勘弁してくれ」
「絶妙なタイミングでのお出ましだね」
「本当に他人事だな。とりあえずそこの学生たちを連行すればいいのかな?」
「そうそう。健人さんに執拗な嫌がらせをしてた主犯格グループ」
「健人君は大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫だよ。手加減したし」
「この惨状で手加減とかよく言えるな。とりあえず警備ロボに連行してもらうよ。後のことはお父さんに任せなさい」
夏希の父は警備ロボにあれこれ命令して、犯人たちと一緒にその場を後にした。そして、夏希たちも別の用事があるからと、その場からそそくさと去っていった。
その場に残された蘇芳は憔悴した健人を横抱きし、自室へ戻る。蘇芳の質問に健人はコクリと小さく頷くのみで終始塞ぎ込んでいた。
蘇芳は十分、二十分くらいで健人が戻ってくると思っていたが、部屋のドアが開く気配はない。蘇芳は心配になって、スマートウォッチを操作し、健人の現在地を確認した。
「ここは、資材倉庫? 何故こんな場所にいるんだ? ……通話機能が確かあったよな。しかし、あの状況だと何か隠している可能性もあるな。健人には申し訳ないが、細工をさせてもらおう」
蘇芳は健人のスマートウォッチにハッキングし、脳内で盗聴出来るようにする。そして、蘇芳は健人がいる資材倉庫へ早足で向かう。
蘇芳が向かっている最中、籠もったような呻き声と何かが擦れるような、軋むような音が確認出来た。そうと思えば、バケツの水を引っくり返したような水しぶきの音がする。
『調子に乗りやがって。どうせ成績が良いのもお前のパパが作ったシンクロイドのお陰だろ。しかも、能無しで役立たずのお前が夏希さんと親しげにしちゃってさ。独占してるのを見せびらかせて、生意気なんだよ』
突然、脳内に流れる聞き覚えのない男性の声。いや、女性のせせら笑う声も後ろの方で聞こえる。そして、会話の途中で聞こえる呻き声。蘇芳は犯人たちが言い逃れできないように、スマートウォッチに指示を出す。
「おい、盗聴開始部分から録音しろ」
『盗聴による録音は原則禁止となってお――』
「バディの生命に関わる緊急事態なんだ。そんなのも分からないのか、このポンコツ時計が!」
『内容から緊急を要すると判断。警備担当者へ通報。現在地のセキュリティシステムを強制的に解除。……共命反応あり。シンクロイドによるセキュリティロック開始及びシールド展開反応あり。ロック解除できません』
「は? むちゃくちゃだな」
念のため、蘇芳は夏希たちにも連絡し、後で合流することになった。脳内で最短ルートを予測し、健人の無事を切に願って、ひたすら走った。
「はぁ……。ここが資材倉庫か。警備担当はまだ来ねぇのか。このドアは俺様でも蹴り飛ばせるか?」
『分析結果、不可能。シールド付与状態で従来より強固になっています』
「くそっ、どうしろってんだ。侵入経路も無いのか?」
『ありません。全てロックがかかっています』
蘇芳は目の前というのに何も出来ないことに対して、自己嫌悪に陥る。このまま為す術はないのかと考えていると、夏希たちがやってきた。蘇芳は夏希たちに近づき、聞こえないようにひそひそと詳細を説明した。
「この中に健人さんがいるの?」
「あぁ。でも、ロックはかかってるし、シールド展開までされて、中に入れないんだ」
「はぁ、本当に困った人たちだなぁ。ここまで派手な嫌がらせをされちゃうと、僕の活動に影響が出るっていうのに。それはいいとして、健人さんの方が大事だから、ここは僕に任せて。琥太郎はあの人に連絡しておいて」
「夏希。いいのか、呼んでも?」
「もちろんだよ。そのための最重要人物なんだもん」
琥太郎が連絡を取っている間に、夏希はホログラムモニターを広げ、何かのコードを手慣れた手つきで入力し始めた。そして、入力し終わると満足げな表情で、皆にドアから離れるように言った。蘇芳たちは夏希に言われるがまま、ドアの前から離れた。
「今から何をするんだ?」
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電子音が目覚ましのようにけたたましく鳴ったと思えば、数秒後にはピーッという長音が鳴り、爆発音とともにドアが廊下側に向かって、勢い良く吹っ飛んだ。廊下には煙が充満し、火災報知器が鳴り響く。
「健人を探したいが、煙が――」
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その時だ。コツコツと靴の音を規則正しく廊下に響かせる人間のシルエットが見えた。蘇芳たちの前にグレーのスーツを着た男性が呆れた表情をし、頭を掻いていた。
「ったく。直すのにいくらかかると思うんだ。はぁ……、最高司令官に怒られるのはお父さんなんだぞ。夏希、勘弁してくれ」
「絶妙なタイミングでのお出ましだね」
「本当に他人事だな。とりあえずそこの学生たちを連行すればいいのかな?」
「そうそう。健人さんに執拗な嫌がらせをしてた主犯格グループ」
「健人君は大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫だよ。手加減したし」
「この惨状で手加減とかよく言えるな。とりあえず警備ロボに連行してもらうよ。後のことはお父さんに任せなさい」
夏希の父は警備ロボにあれこれ命令して、犯人たちと一緒にその場を後にした。そして、夏希たちも別の用事があるからと、その場からそそくさと去っていった。
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