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第9章:思いやりの心と相手を理解するということ(シンクロイド視点)
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「ご馳走様でした。あーっ、美味しかった! 蘇芳って料理上手なんだね」
「そりゃどうも」
「食器とかは僕が洗うね。蘇芳はゆっくりしていて良いよ」
「ゆっくりしろと言われても、俺様にはゆっくりする理由なんて無いぞ。そもそも『ゆっくりしろ』とは具体的に何をすればいいんだ?」
「なかなか難しい質問してくるね。うーん、テレビや動画を観たり、読書したり、ゲームしたりとか?」
「なんで質問を疑問形で返すんだよ。俺様が退屈しないような、有益なものは無いのか?」
蘇芳は健人と一緒に食器をキッチンへ運ぶ。健人が洗い物を始めようとしたタイミングで聞き直したのがまずかったのか、健人は俺様の顔を見るなり、眉を顰めてひどく面倒臭そうな顔をしていた。「自分で探せ」と言わんばかりの健人の渋い表情に、蘇芳はこれ以上聞くのは控えた方がいいと判断し、黙って、一緒に食器の片づけをした。
健人は片付けを済ませると、風呂に入ってくると言い、浴室へ消えていった。蘇芳はポツンと取り残され、このまま立って待っていればいいのか、それとも健人が言っていた『ゆっくり』の一つや二つをやればいいのか……。蘇芳は室内を見回しながら、しばらくの間、物理的にフリーズする。
「ここはそもそもアイツの部屋だし、俺様が勝手に何かしていいのか? 前までは勝手なことをすれば、高圧電流食らったり、麻酔ぶち込まれたりだったからな。やっと自由になれたと思ったが、これはこれで困ったな」
蘇芳は途方に暮れ、さっき座っていたダイニングテーブルの椅子へ座り、頬杖をつく。少し考えた末、今日の出来事でも思い返そうと考えた。何気に色んな事があった一日だ。その中でも気になるのは、健人が他の生徒たちから嫌がらせを受けていることや、夏希と琥太郎が俺様に対して怒ったことだ。
俺様はあの部屋以外での健人の様子を知らない。とても献身的で笑顔が絶えない健人しか知らない。俺様はきっと調子に乗っていたのだろう。その場の雰囲気でなんとなくアイツの唇を奪い、タイムアタックの時もパンドラの力は自分のものだと勘違いして、……正直浮かれていた。
今考えてみれば、いばらの道を裸足で歩くアイツの背中にいきなりドカッとのしかかったお荷物みたいなものじゃないか。我ながら、自己中心的でクソジジイがやっていることと何ら変わらないじゃないかと思い、馬鹿馬鹿しくなって、思わず声を出して笑いそうになる。
「とりあえず夏希と琥太郎は俺様より先輩バディだし、分からないことがあれば聞けばいいか。アイツらからはクソ研究員みたいなクソみてぇな感覚が無かったし。あとは、健人がどんな風に過ごしているのかを観察しよう。そして、夏希たちからまた怒られないように、健人やパンドラについてより深く理解するか」
蘇芳はざっとしたタスクリストを頭の中で作成し、未取得の情報を洗い出し、シンクロイドの権限レベルでも取得可能な情報を片っ端からインストールした。そんなことをしていると、風呂上がりの健人がトランクス姿でミネラルウォーターを飲みながら、リビングへ戻って来た。
「あっ、ごめん。いつもの癖でパンツ一丁だわ」
健人はへらへらと締りのない表情で軽く謝ると、自室へ行こうと背中を向けた。蘇芳は自分でも分からず、咄嗟に健人の腕を掴んだ。健人が振り向くと、濡れた黒髪から滴る雫が遠心力で俺様の顔にかかる。健人は少し驚き困惑した表情で、俺様を見上げた。なんだかよく分からないが、健人が妙に色っぽくて、胸の鼓動が高鳴る。健人が何か言っているようだが、そんなことはどうでもいい。
「そりゃどうも」
「食器とかは僕が洗うね。蘇芳はゆっくりしていて良いよ」
「ゆっくりしろと言われても、俺様にはゆっくりする理由なんて無いぞ。そもそも『ゆっくりしろ』とは具体的に何をすればいいんだ?」
「なかなか難しい質問してくるね。うーん、テレビや動画を観たり、読書したり、ゲームしたりとか?」
「なんで質問を疑問形で返すんだよ。俺様が退屈しないような、有益なものは無いのか?」
蘇芳は健人と一緒に食器をキッチンへ運ぶ。健人が洗い物を始めようとしたタイミングで聞き直したのがまずかったのか、健人は俺様の顔を見るなり、眉を顰めてひどく面倒臭そうな顔をしていた。「自分で探せ」と言わんばかりの健人の渋い表情に、蘇芳はこれ以上聞くのは控えた方がいいと判断し、黙って、一緒に食器の片づけをした。
健人は片付けを済ませると、風呂に入ってくると言い、浴室へ消えていった。蘇芳はポツンと取り残され、このまま立って待っていればいいのか、それとも健人が言っていた『ゆっくり』の一つや二つをやればいいのか……。蘇芳は室内を見回しながら、しばらくの間、物理的にフリーズする。
「ここはそもそもアイツの部屋だし、俺様が勝手に何かしていいのか? 前までは勝手なことをすれば、高圧電流食らったり、麻酔ぶち込まれたりだったからな。やっと自由になれたと思ったが、これはこれで困ったな」
蘇芳は途方に暮れ、さっき座っていたダイニングテーブルの椅子へ座り、頬杖をつく。少し考えた末、今日の出来事でも思い返そうと考えた。何気に色んな事があった一日だ。その中でも気になるのは、健人が他の生徒たちから嫌がらせを受けていることや、夏希と琥太郎が俺様に対して怒ったことだ。
俺様はあの部屋以外での健人の様子を知らない。とても献身的で笑顔が絶えない健人しか知らない。俺様はきっと調子に乗っていたのだろう。その場の雰囲気でなんとなくアイツの唇を奪い、タイムアタックの時もパンドラの力は自分のものだと勘違いして、……正直浮かれていた。
今考えてみれば、いばらの道を裸足で歩くアイツの背中にいきなりドカッとのしかかったお荷物みたいなものじゃないか。我ながら、自己中心的でクソジジイがやっていることと何ら変わらないじゃないかと思い、馬鹿馬鹿しくなって、思わず声を出して笑いそうになる。
「とりあえず夏希と琥太郎は俺様より先輩バディだし、分からないことがあれば聞けばいいか。アイツらからはクソ研究員みたいなクソみてぇな感覚が無かったし。あとは、健人がどんな風に過ごしているのかを観察しよう。そして、夏希たちからまた怒られないように、健人やパンドラについてより深く理解するか」
蘇芳はざっとしたタスクリストを頭の中で作成し、未取得の情報を洗い出し、シンクロイドの権限レベルでも取得可能な情報を片っ端からインストールした。そんなことをしていると、風呂上がりの健人がトランクス姿でミネラルウォーターを飲みながら、リビングへ戻って来た。
「あっ、ごめん。いつもの癖でパンツ一丁だわ」
健人はへらへらと締りのない表情で軽く謝ると、自室へ行こうと背中を向けた。蘇芳は自分でも分からず、咄嗟に健人の腕を掴んだ。健人が振り向くと、濡れた黒髪から滴る雫が遠心力で俺様の顔にかかる。健人は少し驚き困惑した表情で、俺様を見上げた。なんだかよく分からないが、健人が妙に色っぽくて、胸の鼓動が高鳴る。健人が何か言っているようだが、そんなことはどうでもいい。
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