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第4章:父との再会、そして、特殊研究室に棲む暴君
8.
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「――っ! こ、こ、殺すって! や、やめてよ!」
健人は目を大きく見開き、全身から血の気が引き、冷や汗で額や手がじっとりとする。後退りする度に、蘇芳が高笑いして、楽しそうに一歩ずつ歩み寄って来る。
「安心しろ。貴様が苦しまないようにやってやるからさ。ちょうど退屈だったんだよ、肩慣らしにはちょうど良いだろう」
その場にへたり込む健人は、拳を鳴らし、ゆらりゆらりと近づいてくる蘇芳に恐怖心を抱いた。健人は蘇芳が拳を振り上げた瞬間、咄嗟に顔を腕で覆った。こんなことをしても無理なのは分かっていたが、人間の防衛本能だろう。
しかし、蘇芳の拳が健人に当たることは無かった。健人が身構えた瞬間に、蘇芳に装着されていた足枷から高圧電流が流れ、その場が一瞬スパークする。
「ぐあぁぁーっ!」
部屋に響き渡る断末魔のような雄叫びと樹脂や鉄の焼ける臭いが広がる。蘇芳はその場にうつ伏せで倒れるが、力を振り絞りながら、顔を上げた。そして、覗き窓から見える研究員たちをギロリと睨んでいた。
「クソがっ!」
「だ、大丈夫? い、今、仰向けにするから」
健人は蘇芳のそばに駆け寄り、重い体を一生懸命起こそうとする。間もなくして、研究員たちが二人の元へやってきた。健人は助けに来たと安堵したが、研究員の一人が無表情で蘇芳の体を足で蹴り上げて仰向けにした。それを見て、健人は蘇芳に覆い被さるように庇い、大粒の涙を流しながら、声を荒げた。
「そ、それでも人間ですか! 貴方達はアンドロイドがどれだけ社会に貢献しているのか、知ってるんですか! 治療と称し、アンドロイドに酷い仕打ちをするなんて言語道断です! ――ちょ、ちょっと離してください! 苦しんでいる蘇芳を放っておけません! 早く本当の治療をしてください!」
しかし、健人は研究員たちに蘇芳から引き剥がされ、前室へ連行される。その間も健人はもがき続け、蘇芳の方を何度も見て、息をしているのかなど目視で確認しようとした。とりあえず喋っていたから、蘇芳は大丈夫だろう。
そして、健人の抵抗も虚しく、研究員たちに前室へ連行されると、ガチャンとドアが締められ、注意を受けた。
「危険な行為はしないでください。お願いします」
「危険な行為? だったら、先に説明する義務があるんじゃないんですか? どうなんですか!」
健人はジャンプスーツを脱ぎ捨て、着替えると、前室からそそくさと退室し、覗き窓から部屋を覗き込み、蘇芳の容態を心配した。そんな心配をよそに、急に腕を強く掴まれた。振り向くと、目尻を険しく吊り上げて静かに怒る父の姿だった。
「お前のために造ったんだぞ。もうちょっとはマシな対応は出来ないのか? 看護師をやっていたのだから、心理学くらい学んでいるだろう? それをもっと――」
「今はそんなの関係ないでしょ? なんであんな酷いことをするの? 父さんが造ったんでしょ? 我が子によくもあんなことが出来るね。やっぱり、この話を受けるんじゃなかった」
「我が子? 産んでもいないのに、我が子と呼べるか? あれはシンクロイドだ。お前にも分かるだろう?」
「シンクロイドってのは言われなくても分かるよ! それでもあんな酷いことをするのはあり得ない! 僕は実家に帰って、母さんに報告をして――」
健人は顔を真っ赤にし、冷淡な父と言い争った。健人が帰ろうとした次の瞬間、健人の行く手を阻むように、父は健人の頬を思いきり平手打ちをし、その場を後にする。健人は赤く腫れ上がった頬に手を当て、その場に俯き、立ち尽くした。また涙が出そうになるが、必死に堪えた。そして、ガバッと顔を上げると、操作パネルにあるマイクに向かって、喋り始めた。
「これ、マイク入ってます? ねぇ! 蘇芳、聞こえる?」
突然、天井スピーカーから健人の声が聞こえ、蘇芳は驚いたのだろう。蘇芳は緩慢な動きで覗き窓の方へ目を向けた。痛々しく横たわる蘇芳を見て、健人は堪えていた涙が一気にボロボロと流れ落ちた。
「グスッ……。あのさ、また明日来るから! 蘇芳を絶対にその部屋から出してあげるから。絶対に待っててよ。約束だからね!」
健人は研究員たちに一礼すると、その場を後にし、用意されていた部屋へ向かい、明日からの行動計画を練り、荷解きや食事などを済ませる。
「明日は明日の風が吹く。明けない夜はない」
健人は職場でよく言っていた言葉を口にし、真新しいベッドに横になり、深い眠りについた。
健人は目を大きく見開き、全身から血の気が引き、冷や汗で額や手がじっとりとする。後退りする度に、蘇芳が高笑いして、楽しそうに一歩ずつ歩み寄って来る。
「安心しろ。貴様が苦しまないようにやってやるからさ。ちょうど退屈だったんだよ、肩慣らしにはちょうど良いだろう」
その場にへたり込む健人は、拳を鳴らし、ゆらりゆらりと近づいてくる蘇芳に恐怖心を抱いた。健人は蘇芳が拳を振り上げた瞬間、咄嗟に顔を腕で覆った。こんなことをしても無理なのは分かっていたが、人間の防衛本能だろう。
しかし、蘇芳の拳が健人に当たることは無かった。健人が身構えた瞬間に、蘇芳に装着されていた足枷から高圧電流が流れ、その場が一瞬スパークする。
「ぐあぁぁーっ!」
部屋に響き渡る断末魔のような雄叫びと樹脂や鉄の焼ける臭いが広がる。蘇芳はその場にうつ伏せで倒れるが、力を振り絞りながら、顔を上げた。そして、覗き窓から見える研究員たちをギロリと睨んでいた。
「クソがっ!」
「だ、大丈夫? い、今、仰向けにするから」
健人は蘇芳のそばに駆け寄り、重い体を一生懸命起こそうとする。間もなくして、研究員たちが二人の元へやってきた。健人は助けに来たと安堵したが、研究員の一人が無表情で蘇芳の体を足で蹴り上げて仰向けにした。それを見て、健人は蘇芳に覆い被さるように庇い、大粒の涙を流しながら、声を荒げた。
「そ、それでも人間ですか! 貴方達はアンドロイドがどれだけ社会に貢献しているのか、知ってるんですか! 治療と称し、アンドロイドに酷い仕打ちをするなんて言語道断です! ――ちょ、ちょっと離してください! 苦しんでいる蘇芳を放っておけません! 早く本当の治療をしてください!」
しかし、健人は研究員たちに蘇芳から引き剥がされ、前室へ連行される。その間も健人はもがき続け、蘇芳の方を何度も見て、息をしているのかなど目視で確認しようとした。とりあえず喋っていたから、蘇芳は大丈夫だろう。
そして、健人の抵抗も虚しく、研究員たちに前室へ連行されると、ガチャンとドアが締められ、注意を受けた。
「危険な行為はしないでください。お願いします」
「危険な行為? だったら、先に説明する義務があるんじゃないんですか? どうなんですか!」
健人はジャンプスーツを脱ぎ捨て、着替えると、前室からそそくさと退室し、覗き窓から部屋を覗き込み、蘇芳の容態を心配した。そんな心配をよそに、急に腕を強く掴まれた。振り向くと、目尻を険しく吊り上げて静かに怒る父の姿だった。
「お前のために造ったんだぞ。もうちょっとはマシな対応は出来ないのか? 看護師をやっていたのだから、心理学くらい学んでいるだろう? それをもっと――」
「今はそんなの関係ないでしょ? なんであんな酷いことをするの? 父さんが造ったんでしょ? 我が子によくもあんなことが出来るね。やっぱり、この話を受けるんじゃなかった」
「我が子? 産んでもいないのに、我が子と呼べるか? あれはシンクロイドだ。お前にも分かるだろう?」
「シンクロイドってのは言われなくても分かるよ! それでもあんな酷いことをするのはあり得ない! 僕は実家に帰って、母さんに報告をして――」
健人は顔を真っ赤にし、冷淡な父と言い争った。健人が帰ろうとした次の瞬間、健人の行く手を阻むように、父は健人の頬を思いきり平手打ちをし、その場を後にする。健人は赤く腫れ上がった頬に手を当て、その場に俯き、立ち尽くした。また涙が出そうになるが、必死に堪えた。そして、ガバッと顔を上げると、操作パネルにあるマイクに向かって、喋り始めた。
「これ、マイク入ってます? ねぇ! 蘇芳、聞こえる?」
突然、天井スピーカーから健人の声が聞こえ、蘇芳は驚いたのだろう。蘇芳は緩慢な動きで覗き窓の方へ目を向けた。痛々しく横たわる蘇芳を見て、健人は堪えていた涙が一気にボロボロと流れ落ちた。
「グスッ……。あのさ、また明日来るから! 蘇芳を絶対にその部屋から出してあげるから。絶対に待っててよ。約束だからね!」
健人は研究員たちに一礼すると、その場を後にし、用意されていた部屋へ向かい、明日からの行動計画を練り、荷解きや食事などを済ませる。
「明日は明日の風が吹く。明けない夜はない」
健人は職場でよく言っていた言葉を口にし、真新しいベッドに横になり、深い眠りについた。
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