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第3章:父に対する不信感と未来への希望
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健人は忙しくも充実した日々を過ごし、厄災から六年目の春が訪れた。そんなある日、健人はアンドロイドの郵便局員から自分宛ての小包を受け取った。小包には見覚えのあるロゴマーク。それは防衛機関アイリスのものだった。
「アイリスから送られるような物なんてあったかな?」
健人は母へ宛てたものかもしれないと思い、仕事終わりに母へ尋ねてみることにした。しかし、母も身に覚えがないと首を傾げていた。健人は不審に思ったが、母の促しでとりあえず小包を開封する事にした。中にはアイリスアカデミーの入学案内書とパンフレット、健人の写真と名前が印字されたスマートカードが入っていた。
「なに、これ……。母さん、なんだか分かる?」
「母さんに言われてもねぇ。そう言えば、健人のパンドラ適合試験の結果ってどうだったの?」
「えっ? 判定不能だったけど。一応、判定結果の紙を持ってくるね」
健人は自室へ行き、机の引き出しから結果が書かれた書類を引っ張り出した。改めて結果を見るが、『能力判定不能』の文字だ。父は健人にパンドラの能力がないのを知っているのにもかかわらず、何故こんなものを今になって送りつけてきたのかが理解出来なかった。健人は頭の上に疑問符を並べ、リビングへ戻り、母に判定結果の紙を手渡す。
「母さん、やっぱり、『判定不能』だったよ。一応、持って来たけどさ」
「ありがとう。あと、これ。小包の中に入ってたわよ。真伍さんの直筆なんて珍しいわね」
健人は母から一通の白い封筒を受け取った。何年も音沙汰なしの父からの手紙に、健人は疑心暗鬼になりながら、自分の名が達筆な字で書かれた封筒を開封する。
『お前のためにシンクロイドを用意した。しかし、期限がある。早急にアイリスへ来るように』
健人は眉を顰めた。急にアイリスへ来いと言われても正直困るし、何言ってんだこいつ。健人が怪訝な顔で手紙を読んでいると、母は呆れた声で話しかけてきた。
「はぁ、どうせアイリスへ来いとか書いてあるんでしょ? その手紙、ちょっと見せてくれない?」
「う、うん……」
ほとほと呆れた顔をしている母に、健人は読みかけの手紙を渡した。母は手紙を読み進めるうちにこめかみを押さえ、深くため息をついた。そして、母は手紙を机に置くなり、とある一文を指差して、健人に読むように促した。
そこには、『健人がアカデミーに入るのなら、民間シェルターへの資金援助をする』という酷い条件だ。
「どうりで怪しいと思ったら。真伍さんは健人のことをなんだと思っているのかしら?」
「資金援助……、実際は経営厳しいよね?」
「そりゃそうだけど、健人が心配するようなことじゃないわ」
「いや、そういう訳にはいかないよ。経営が今より厳しくなれば、今いる人達に迷惑がかかるんだし」
二人は黙り込み、リビングにある柱時計の音だけが響き渡る。その音がまるでカウントダウンをしているように聞こえて、健人は椅子に座り直し、腕組みをして、真剣に手紙と向き合った。
健人は民間シェルター存続も大切だと思っているが、一番気がかりにしているのは『厄災』の存在だ。またいつどこで起きるか分からないし、今の厄災が猛威を振るい、安全な場所が更に失われるかもしれない。その度に、路頭に迷う人々が増え、行き場を無くす。あんな胸が締め付けられる思いは二度とごめんだ。
健人はアカデミーへ入学して、世のため人のためになるのなら、父からの申し出を受けても良いのかもしれないと思った。
「母さん、父さんの申し出を受けるよ」
「――えっ! 本気で言ってるの?」
「母さん。と、とりあえず落ち着いて」
勢いよく立ち上がり、大きく見開いた目で自分の顔を覗き込んできた母を、健人は落ち着かせ、椅子に再び座らせた。
「世のため人のためになるのなら、申し出を受けても良いかなって。あんな辛い出来事はこれ以上起きて欲しくないし。人助けという観点では同じなんだし」
「そんな簡単に言うけどさ、健人はそれでいいの? 本当に後悔しない? あの父さんのことよ? 何があるか分からないわよ?」
「母さんがいつも言ってるじゃん。『やらぬ後悔より、やる後悔』ってさ。もし、そのシンクロイドと適合出来なかったら、父さんも流石に諦めてくれると思うし。大丈夫だって、心配しないで」
健人は母に微笑みかけ、半ば無理矢理安心させた。健人は父からの申し出を正式に受ける決心をした。
「アイリスから送られるような物なんてあったかな?」
健人は母へ宛てたものかもしれないと思い、仕事終わりに母へ尋ねてみることにした。しかし、母も身に覚えがないと首を傾げていた。健人は不審に思ったが、母の促しでとりあえず小包を開封する事にした。中にはアイリスアカデミーの入学案内書とパンフレット、健人の写真と名前が印字されたスマートカードが入っていた。
「なに、これ……。母さん、なんだか分かる?」
「母さんに言われてもねぇ。そう言えば、健人のパンドラ適合試験の結果ってどうだったの?」
「えっ? 判定不能だったけど。一応、判定結果の紙を持ってくるね」
健人は自室へ行き、机の引き出しから結果が書かれた書類を引っ張り出した。改めて結果を見るが、『能力判定不能』の文字だ。父は健人にパンドラの能力がないのを知っているのにもかかわらず、何故こんなものを今になって送りつけてきたのかが理解出来なかった。健人は頭の上に疑問符を並べ、リビングへ戻り、母に判定結果の紙を手渡す。
「母さん、やっぱり、『判定不能』だったよ。一応、持って来たけどさ」
「ありがとう。あと、これ。小包の中に入ってたわよ。真伍さんの直筆なんて珍しいわね」
健人は母から一通の白い封筒を受け取った。何年も音沙汰なしの父からの手紙に、健人は疑心暗鬼になりながら、自分の名が達筆な字で書かれた封筒を開封する。
『お前のためにシンクロイドを用意した。しかし、期限がある。早急にアイリスへ来るように』
健人は眉を顰めた。急にアイリスへ来いと言われても正直困るし、何言ってんだこいつ。健人が怪訝な顔で手紙を読んでいると、母は呆れた声で話しかけてきた。
「はぁ、どうせアイリスへ来いとか書いてあるんでしょ? その手紙、ちょっと見せてくれない?」
「う、うん……」
ほとほと呆れた顔をしている母に、健人は読みかけの手紙を渡した。母は手紙を読み進めるうちにこめかみを押さえ、深くため息をついた。そして、母は手紙を机に置くなり、とある一文を指差して、健人に読むように促した。
そこには、『健人がアカデミーに入るのなら、民間シェルターへの資金援助をする』という酷い条件だ。
「どうりで怪しいと思ったら。真伍さんは健人のことをなんだと思っているのかしら?」
「資金援助……、実際は経営厳しいよね?」
「そりゃそうだけど、健人が心配するようなことじゃないわ」
「いや、そういう訳にはいかないよ。経営が今より厳しくなれば、今いる人達に迷惑がかかるんだし」
二人は黙り込み、リビングにある柱時計の音だけが響き渡る。その音がまるでカウントダウンをしているように聞こえて、健人は椅子に座り直し、腕組みをして、真剣に手紙と向き合った。
健人は民間シェルター存続も大切だと思っているが、一番気がかりにしているのは『厄災』の存在だ。またいつどこで起きるか分からないし、今の厄災が猛威を振るい、安全な場所が更に失われるかもしれない。その度に、路頭に迷う人々が増え、行き場を無くす。あんな胸が締め付けられる思いは二度とごめんだ。
健人はアカデミーへ入学して、世のため人のためになるのなら、父からの申し出を受けても良いのかもしれないと思った。
「母さん、父さんの申し出を受けるよ」
「――えっ! 本気で言ってるの?」
「母さん。と、とりあえず落ち着いて」
勢いよく立ち上がり、大きく見開いた目で自分の顔を覗き込んできた母を、健人は落ち着かせ、椅子に再び座らせた。
「世のため人のためになるのなら、申し出を受けても良いかなって。あんな辛い出来事はこれ以上起きて欲しくないし。人助けという観点では同じなんだし」
「そんな簡単に言うけどさ、健人はそれでいいの? 本当に後悔しない? あの父さんのことよ? 何があるか分からないわよ?」
「母さんがいつも言ってるじゃん。『やらぬ後悔より、やる後悔』ってさ。もし、そのシンクロイドと適合出来なかったら、父さんも流石に諦めてくれると思うし。大丈夫だって、心配しないで」
健人は母に微笑みかけ、半ば無理矢理安心させた。健人は父からの申し出を正式に受ける決心をした。
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