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第18話:隠蔽工作
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「とりあえず……エルが来る前までに隠蔽しなきゃ」
悠人は漆黒の羽根を全て回収し、破壊した扉と玉座を修復し、魔王に回復魔法を適度にかけた。そうこうしているうちに、扉の向こうから大勢の兵士達が近付いてる足音が聞こえてきた。
「やばっ、どうしよ、どうしよ。魔王、結局起きないし……。あー、もう! とりあえず自分に手錠かけて、適当に倒れておこう。よいしょ」
次の瞬間、扉が破壊する音が聞こえ、塵が舞っている中からエルフィンが勢いよく登場した。それを確認し、悠人はゆっくりと這い上がろうとした。エルフィンは一目散に悠人の元へ駆け寄った。
「悠人、大丈夫か!」
「――うん、とりあえず……ゴッホゴホッ……大丈夫」
「で、魔王はどこだ?」
悠人は玉座の近くに倒れている魔王を指差した。エルフィンは眉間に皺を寄せ、今まで見た事の無い怒った表情で、サタンの剣を鞘から引き抜こうとしていた。それを見て、悠人は慌てて剣を引き抜こうとする手を押さえ、行く手を阻んだ。
「ちょ、ちょっと待って! 今回は見逃してあげて! 興味本位で僕を連れ去ったみたいで……何かするつもりは無かったみたい」
「だがっ! ここであいつを始末しないと、またこういう事が起こるぞ!」
悠人がエルフィンと言い合っていると、魔王がよろけながら、立ち上がった。
「エルフィンとやら、よくぞ、俺様の城まで辿り着いたな、褒めてや……!」
「「うるさい!」」
エルフィンと悠人は鬼の形相をして、魔王を睨み付けた。そして、エルフィンはサタンの剣を、悠人は審判の剣を魔王の足元に天空から突き刺した。
「ひぃ!」
「……もういいよ! 別に助けに来なくても良かったのに! こんな雑魚魔王位、エル居なくても倒せるし」
「はぁ? なんだと! 人がどれだけ心配して、ここまで来たか分かってるのか?」
「そうですね! さぞ大変だったでしょうね! 来る事しか考えず、一人で突っ走って……兵士の皆さん、グッタリしてますけど? きちんと食事と休息は与えたのですか? そんなんだから、眉間の皺も消えないんだ」
悠人はそっぽ向いて、腕組みをした。エルフィンは静かに拳を握り締めた。
「あっ……悠人様、それ言っちゃいけない言葉ですよ……」
一人の兵士がボソッと言うと、エルフィンは隊列をなす兵士達の中をかき分け、無言で玉座の間から出ていった。悠人は深いため息をつき、サタンの剣をエルフィンの鞘に瞬間移動させ、審判の剣を天空へ戻した。そして、ニッコリとした表情で兵士達を見た。
「このまま手ぶらで帰るのもあれでしょう。戦利品でも頂いて帰りましょうか。今日は私が食事を担当しましょう」
「やった! やっとまともな飯が食える……」
「悠人様はまさに俺達の天使だ! ありがとうございます!」
兵士達は喜び合い、悠人の指示で早々に魔王城の備蓄庫などへ向かった。そして、物色し、金品財宝などを手に入れると、声高らかに歌いながら意気揚々と魔王城を後にした。
「ふぅ、これで皆いなくなった……おい、魔王」
「はひっ!」
「お前は誇り高き魔王なのだから、待つ事位は出来るよな? あ、魔王じゃない、駄犬か」
「ゆっ、悠人様が待て、と仰るなら……ワッ、ワンッ!」
悠人は魔王の頭を優しく撫でたかと思うと、急に髪の毛を引っ張り、魔王を睨み付けた。
「次、俺の国や民達に危害を加えたら……分かってるんだろうな? その時は俺の国の広場で国民達全員の前で回復魔法かけながら、永遠にイカせ続けて、お前の中身全てを空っぽにするからな」
「はっ……ワッ、ワゥンッ!」
悠人は身震いする魔王の頬にキスをして、兵士達の後を追った。
「興味本位であの男に手を出すのでは無かったな……あぁ、でも、また悠人様に罵倒されたひぃ」
魔王は自身の体を抱き締め、一人で悶えていた。
悠人は漆黒の羽根を全て回収し、破壊した扉と玉座を修復し、魔王に回復魔法を適度にかけた。そうこうしているうちに、扉の向こうから大勢の兵士達が近付いてる足音が聞こえてきた。
「やばっ、どうしよ、どうしよ。魔王、結局起きないし……。あー、もう! とりあえず自分に手錠かけて、適当に倒れておこう。よいしょ」
次の瞬間、扉が破壊する音が聞こえ、塵が舞っている中からエルフィンが勢いよく登場した。それを確認し、悠人はゆっくりと這い上がろうとした。エルフィンは一目散に悠人の元へ駆け寄った。
「悠人、大丈夫か!」
「――うん、とりあえず……ゴッホゴホッ……大丈夫」
「で、魔王はどこだ?」
悠人は玉座の近くに倒れている魔王を指差した。エルフィンは眉間に皺を寄せ、今まで見た事の無い怒った表情で、サタンの剣を鞘から引き抜こうとしていた。それを見て、悠人は慌てて剣を引き抜こうとする手を押さえ、行く手を阻んだ。
「ちょ、ちょっと待って! 今回は見逃してあげて! 興味本位で僕を連れ去ったみたいで……何かするつもりは無かったみたい」
「だがっ! ここであいつを始末しないと、またこういう事が起こるぞ!」
悠人がエルフィンと言い合っていると、魔王がよろけながら、立ち上がった。
「エルフィンとやら、よくぞ、俺様の城まで辿り着いたな、褒めてや……!」
「「うるさい!」」
エルフィンと悠人は鬼の形相をして、魔王を睨み付けた。そして、エルフィンはサタンの剣を、悠人は審判の剣を魔王の足元に天空から突き刺した。
「ひぃ!」
「……もういいよ! 別に助けに来なくても良かったのに! こんな雑魚魔王位、エル居なくても倒せるし」
「はぁ? なんだと! 人がどれだけ心配して、ここまで来たか分かってるのか?」
「そうですね! さぞ大変だったでしょうね! 来る事しか考えず、一人で突っ走って……兵士の皆さん、グッタリしてますけど? きちんと食事と休息は与えたのですか? そんなんだから、眉間の皺も消えないんだ」
悠人はそっぽ向いて、腕組みをした。エルフィンは静かに拳を握り締めた。
「あっ……悠人様、それ言っちゃいけない言葉ですよ……」
一人の兵士がボソッと言うと、エルフィンは隊列をなす兵士達の中をかき分け、無言で玉座の間から出ていった。悠人は深いため息をつき、サタンの剣をエルフィンの鞘に瞬間移動させ、審判の剣を天空へ戻した。そして、ニッコリとした表情で兵士達を見た。
「このまま手ぶらで帰るのもあれでしょう。戦利品でも頂いて帰りましょうか。今日は私が食事を担当しましょう」
「やった! やっとまともな飯が食える……」
「悠人様はまさに俺達の天使だ! ありがとうございます!」
兵士達は喜び合い、悠人の指示で早々に魔王城の備蓄庫などへ向かった。そして、物色し、金品財宝などを手に入れると、声高らかに歌いながら意気揚々と魔王城を後にした。
「ふぅ、これで皆いなくなった……おい、魔王」
「はひっ!」
「お前は誇り高き魔王なのだから、待つ事位は出来るよな? あ、魔王じゃない、駄犬か」
「ゆっ、悠人様が待て、と仰るなら……ワッ、ワンッ!」
悠人は魔王の頭を優しく撫でたかと思うと、急に髪の毛を引っ張り、魔王を睨み付けた。
「次、俺の国や民達に危害を加えたら……分かってるんだろうな? その時は俺の国の広場で国民達全員の前で回復魔法かけながら、永遠にイカせ続けて、お前の中身全てを空っぽにするからな」
「はっ……ワッ、ワゥンッ!」
悠人は身震いする魔王の頬にキスをして、兵士達の後を追った。
「興味本位であの男に手を出すのでは無かったな……あぁ、でも、また悠人様に罵倒されたひぃ」
魔王は自身の体を抱き締め、一人で悶えていた。
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