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第8話:優しい涙と、温かい心

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 先程から机に両肘を付け、両手を祈る様に組み、額に押し当て沈黙を続けるエルフィンにどう声をかけようか、悠人は悩んでいた。


 「……貴方は優し過ぎるし、自分自身に厳し過ぎる。時には甘える事も大事ですよ」


 悠人はエルフィンの頭を優しく撫で、大きな背中をそっと抱き締めた。


 「うっ……うっ……俺はお前に辛い思いをさせてしまった。そして、自分の事も何もかも……分からなくなった」


 エルフィンは肩を震わせながら、泣いていた。そんなエルフィンを見て、悠人はエルフィンの隣に座り、頭を優しく撫でた。すると突然、エルフィンは悠人に抱きついた。


 「……お前はなんでそんなに優しくするんだ。俺はお前を守れなかったんだぞ。そして、悍ましい悪魔の血が流れる俺を……何故許す?」
 「薬漬けにされて、自分が自分でいなくなって……あぁ、自分はこのまま死んでいくんだって思った。でもね、いつか貴方が助けに来てくれるって……穢れてボロボロになって堕天した僕をそういうの関係なく、一人の人間として助けに来てくれるって。優しい兵士さん達もそう言っていた。……エルフィン様なら僕を助けて、国を変えてくれるって」


 悠人はエルフィンの姿勢を正し、両手でエルフィンの顔をそっと包み込んだ。


 「あとね、過去がどうであれ、天使とか悪魔とかそういうの関係なく、今を共に生き、未来を良きものにするのが僕達の使命なんじゃないのかな?」


 悠人は照れくさそうにし、エルフィンに微笑みかけた。


 「……そうだな」


 エルフィンはぎこちなく微笑み返し、お互いに見つめ合う。
 そして、エルフィンは悠人の顎に手を当て、軽くキスをした。月夜の灯りで照らされた悠人がとても綺麗だとエルフィンは思い、エルフィンの事をとても優しい人だと悠人は思った。


 「えへへ……なんか恥ずかしいな。こんなにも優しいキスされるの」


 悠人はエルフィンの優しいキスの感触と向こうの世界の事から今までの事を思い出し、突然、涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちる。エルフィンはその涙を優しく指で拭い、もう一度キスをした。


 「俺はお前を初めて見た時から好きだった。……悠人、俺のものになってくれるか?」
 「……はい、喜んで」


 その晩は小屋にある小さなベッドに二人並んで、向かい合わせで寝る事にした。エルフィンは悠人がベッドから落ちないようにしっかりと抱き締めた。悠人はエルフィンの胸に顔を埋め、鼓動と温かさを感じた。


 「エルフィン様の優しくて安心する香りがする」
 「……そうか」
 ――悠人、お前は本当に愛らしくて、可愛いな。


 エルフィンは体をずらし、悠人をもっと抱き寄せた。悠人はエルフィンの鼓動が少し早くなったのを感じて、体が少し熱くなった。
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