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アイの社会人経験始まる
しおりを挟むとある晴れた日、アイは門番と激しい口論をしていた。
『なんで入ったらダメなのよ!』
門番
『嬢ちゃん両親と一緒にまた来な、こんな平和な時期に魔物なんてでねぇよ。帰った帰った。』
2500年人間はだんだんと寿命を伸ばし、
若い姿のまま生きていけるように進化しつつあった。
それはまるでファンタジーのエルフの様に。進化した人をエルフと呼び、進化がまだな人を人間と呼ばれていた。
AI達が意思を持ち国を作ったり色々あったが現在戦争もなく概ね平和である。
そんな時に生まれたアイ15歳はエルフと呼ばれるお父さんと人間であるお母さんとの間に生まれたハーフエルフである。
アイは困ってしまった。手持ちのお金が残りわずか、働く所も近くにない。
そんな時、少しチャラそうな男が言った。
『まぁ門番さんよぅ、この嬢ちゃん訳ありみたいだし、入れてやれよ。オレが保証人になるさ。』
アイ
『ほんとですか!?』
門番
『ちっ、相変わらず女に甘ぇな、ほら、行きな!』
アイ
『ありがとうございます!』
チャラそうな男
『嬢ちゃん良かったな。そいじゃ。』
アイ
『あっ、名前教えてください!って早っ、もう行っちゃった、、』
無事に領地に入れたアイは歩きながら泊まる所と仕事を探しながらぶらついていると、ふと掲示板の紙に目が止まる。
そこには騎士団員募集!上位3名には賞金あり。
と書かれていた。
騎士と言っても種類はいろいろある、事務の仕事に剣で戦う力仕事、受付。
大まかに分けてそんな感じだ。
お父さんに教えてもらったのは自衛の剣術だし、とてもじゃないけどそんなレベルはザラにあるだろうな。
事務仕事か受付に絞ろう。
うーむ、計算とか外国の言葉をお母さんに習ってあるからそれを活かせるのは事務かな?
受付は顔採用もあるらしいね。
でも一度に受けられるのは一つだけ。
よし!自信あるのは事務だね!決定!
申し込みに行こう!
騎士といえば剣という人が多いのか魔物退治の部署の申し込みが多く、
事務は男性女性半々ぐらいで少し並び。
顔に自信があるのだろう受付の部署は派手な女性が列をなしていた。
アイは受付選ばなくて良かった~っと心から思った。あの女性たちに敵いそうにない。
私はまだ子供で美人とも言いがたいだろう。
よし、心を切り替えて事務の申し込みに並ぼう。
アイ
『すみません、事務職に申し込みをしたいのですが、、』
事務受付女性
『はい、文字は書けますか?名前をご記入ください。』
アイ
『はい、書き終わりました』
事務受付女性
『はい、確かに。でも驚いたわ、その年で文字の読み書きできるのね、お金持ちなの?』
アイは一瞬何のことか分からなかったが、この年で文字が読み書きできるのは貴族やお金持ちの商人などである。
アイ
『いえ、多分普通です?』
事務受付女性
『そこで疑問?自分の事なのだからしっかり理解しなさいね。』
アイ
『分かりました。気をつけます。』
事務受付女性
『まぁ良いわ、私はクリスティナもしかしたらあなた受かるかもだからよろしくね。』
アイ
『まだ試験受けて無いのにそんな事言って良いのですか?』
クリスティナ
『事務職は人気もないし、文字が書けないと仕事できないでしょう、商人はお金の間違いが命取りだから計算に力を入れるし、将来は商人、貴族のボンボンはかっこいいって理由で魔物退治課に申し込みに行っちゃうのよね~だから文字の読み書き出来る貴方は貴重なのよ。』
アイは今まで小さな村でいたから文字の需要が仕事になる事は実感がなかったが、新ためて聞いてみると人手不足そうだしもし受かれば大変そうだと気合いを入れた。
そして試験が始まった。
簡単な計算問題と、物語の要約、よく遭遇しやすい魔物の名前が問題として出た。
アイはもっと複雑な問題が出るかと思って緊張していたが全問解き終わるとほっとした。
そして他の受験者を見てみると余裕そうな雰囲気と全く手が止まっている者とはっきり別れていた。
そして時間が来て回収された。
部屋から出ると試験官の人が言った。
『30分後に合格者は名前を貼り出すので今日中に見ておいて下さい。後で合格者は受付に集合時間を聞くように。』
アイはお昼を食べに屋台に行く事にした。
屋台には香ばしい匂いのした食べ物が沢山あり悩んだが、手持ちも少ないのでパンで肉を挟んだものを買った。
肉が柔らかく食べやすいので美味しく食べた。
そして30分経ち
掲示板を見ると合格者の名前の欄にアイの名前があった。
『良かった、、ふぅ。』
こうしてアイの生活はとりあえず始まったのであった。
アイの初めての仕事の1日が始まった。
と言っても新人に任されるような事はほとんど雑用である。
しかしアイは真面目に取り組んでいった。
何故ならお母さんに人に見られていなくても、努力はちゃんと妖精様が見ているよ、と何度も言われていたからである。
物心がつく頃から言われていたので、もしかしたら見えないだけで妖精っているのかもと刷り込みの様にいつも頭の隅にあった。
同僚の女の子アーニャ
『アイちゃーん何か考えごと?資料運ばないと遅れるよ!』
アイ
『ごめん!ぼーっとしてた!今行く!』
アイは同僚兼友達であるアーニャを追いかけて言った。
小さな小さな妖精がその後ろ姿を見つめていたことに気づかずに。
そうして一か月が経ちアイも雑用の仕事を何とかこなせるようになってきた頃、アイはアーニャとその他の同僚達と同じ部屋に、上司であるダンに呼びだされた。
ダン
『よーし!全員集まっているな!
これからお前達は騎士団を運営する上で重要な仕事を少しずつ教えていく!
経営部門のリチャードの言う事をきちんと理解し行動する様に!』
リチャード
『皆さんよろしく、リチャードです。分からない事があればその都度聞く様にしてください。』
アーニャがこっそりアイに言う
アーニャ
『何かチョー真面目のメガネイケメン来たね!
でも世間話とかしなさそう、面白み無さそうな人だね~』
アイ
『初対面でいきなり人柄を見た目で判断するのはいけないと思うよ、
それに私達仕事しに来てるんだから仕事さえしっかりすれば良いの!割り切らないとね。』
アーニャ
『アイも真面目だね~
肩の力を抜いて仕事したら良いのに、、
出会いも人生において大事な事だよ。』
アイ
『ほらリチャードさんの話聞かないと、後で怒られちゃうよ!』
アーニャ
『はいはーい』
リチャード
『私の紹介は以上で終わりです。これから内部の部署で分かれて仕事をしてもらいます。』
そして私たちは見事、同じ部署で働けることになった。
寮部屋が同じだからか学力も似ていたのだろうか?運が良いな。
そんなことを考えながら部屋の前に立った。
アーニャ
『あ~緊張する!でもワクワクするねアイちゃん!どんな人がいるのだろう!』
アイ
『確かに緊張するね、馴染めるかな?仕事もちゃんと出来るよう頑張らないと。』
アーニャ
『んもう、アイちゃんかたーい。もっと楽しもうよ!ほら!行こ!』
アイはアーニャに手を引かれてノックし入った。
ガヤガヤ、ガサガサガサ、バッシャーン。
皆忙しそうに仕事をしている。山積みの資料を誰か崩してしまったようだ。
『あー拾う時間も惜しいのに!』
イライラした声が近くで聞こえた。
案内していたリチャードが言った。
『またですかフェリクス、あれほど資料を整理してきちんと管理しなさいと言ったでしょう。』
フェリクス
『も、申し訳ありません。その時間も無くて、、』
リチャード
『まぁこの仕事量なら仕方ないですね、貴方に苦労をかけます。期待してますよ。』
フェリクス
『め、滅相もない!仕事が出来ない私の実力不足です。期待に沿えるよう努力します!』
リチャード
『そうそう今年の新人を連れて来ました。
アイさんとアーニャさんです。
しっかり教えてあげて下さい、最初からきちんと教えれば有能な部下となるでしょう。では。』
フェリクス
『肝に命じます、お気をつけて。』
アイとアーニャはハキハキとフェリクスに挨拶した。
アイ
『リチャードさんに紹介いただきました、アイと言います。よろしくお願いします。』
アーニャ
『同じく紹介いただきましたアーニャです!
よろしくお願いします!』
フェリクスはリチャードを見送った後、振り返ってアイとアーニャを見て言った。
フェリクス
『あー、フェリクスです。よろしく。
僕あんまり教えるの得意でないけど、
出来るだけわかりやすく教えるね。分からない所は遠慮なく聞いてよ。』
アイはふと疑問に思ったことを聞いた。
アイ
『フェリクスさんはリチャードさんと仲が良く無いのですか?とても緊張した話し方でしたが。』
フェリクスは驚いた表情で首を横にブンブン振って言った。
フェリクス
『いや!逆だよ!尊敬してるんだよ!
あ~リチャードさんにも嫌われてるとか思われたらどうしよう、もしそうならショック死しそう。どうしても仕事が上手くいかないんだよな。
良い所見せたいのに。』
アイは聞いてみないと考えてる事って分からないものだなと思った。
そして謝った。
アイ
『お気を悪くされたならごめんなさい。あまりにも緊張した様子だったので。』
フェリクスは少し落ち着いた様子で言った。
フェリクス
『いや正直に思う事を聞いてくれてありがとう。客観的な自分の様子が知れてよかったよ。』
アイはこの職場の上司も良い人柄そうで安心した、と同時に迷惑かけないように頑張ろうと心に改めて決めた。
そしてアイとアーニャはフェリクスから詳しい仕事内容の説明を聞いていくのだった。
フェリクスの方もアイとアーニャの様子を見て、
今年は素直でおとなしそうな子で良かった~とこっそり思っていた。
何故なら去年はわがままな新人が多く、言う事をちゃんと聞かず大変だったのだ。
そして結局リチャードさんも堪忍袋の尾が切れてクビ、せっかく時間を作って教えた事も無駄になった。
賢い部下は大歓迎ださっそくどんどん仕事を覚えてもらわないと。
仕事は山ほどあるのだから。
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