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8 堕落
しおりを挟む「司祭様、お花あげる」
教会の庭でぼんやりとしていると、花を持ってきた子供がいた。この子はミランダ。
ミハイルはその野草の花を受けとると、作り笑いをしてミランダの頭を撫でた。
「司祭様、元気ないね。病気なの?」
「…いや、違うよ。少し考え事をしていただけなんだ。ミラは優しいね」
ミハイルがそう言うと、ミランダは満面の笑みで返した。
(子供に心配をかけるなんて、なんて情けない…)
あの日の事が頭から離れない。
それも当然の事だ。
(私は司祭としての資格を失ったのだから)
涙が出そうになるのを堪える。
ミハイルはもうどうして良いか分からなかった。
(だが私がいなくなれば、このような田舎に司祭などなかなか来ないだろう。子供達の面倒を見る者がいなくなる…)
「司祭様ー!!一緒に遊びましょ!!」
ミランダが子供達と共に遊びに誘ってきたのだ。
ミハイルは少し考えると重い腰を上げた。
「やった!」
子供たちは大はしゃぎだ。
その笑顔を見て、ミハイルもふっと笑った。
…だが、その笑みは陰りがあった。
そして夜になると再びあの熱い感覚が身体を襲うのだった。
いけないと思いつつも反応する自分の身体。
ここ数日は祈りの時間に祈りを捧げる事すらしていなかった。
…欲望のままに、自分で自分を慰めた。
(このように堕落した私を、神はもう見てはくれないでしょう…)
そしてあの日から数日後ーーー。
夜再びあの日の事を思いだし、身体が疼き始めた。
聖典を手に取り、ページをめくる。
しかし一向に内容が頭に入ってこない。
頭の中は淫らで堕落した、あの日の事で一杯だ。
ミハイルは聖典を机に戻すと、深く溜め息をついて両手で顔を覆った。
(そう言えば男の名前すら知らない)
ーーーその時だった。
ドアがコンコンと鳴りドアが開く音がした。
嫌な予感がした。
ドアの方を見ると、やはりあの男が部屋に入ってきたのだ。
「帰ってください…」
「どうしてです?そろそろ欲しい頃かと思いまして」
男の不遜な微笑みが癪に触る。
それにあのルビーよりも輝かしい悪魔のような瞳…。
どこかで見たことがある気がした。
「貴方のような麗しい男性ならば、男でも女でも好きなだけ抱けるでしょう。私には構わないで下さい」
ミハイルは強い口調で怒ったようにして言った。
ーーーしかし男は再びフフ…と笑いだしたのだ。
「何がおかしいのです?」
「いえ、司祭様はおひとつお忘れのようです」
コツコツと革靴が音を立てて近づいてくる。
ミハイルの心は恐怖で染まった。
「私が貴方を愛しているということをね」
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