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たった一人の闘い3
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「どっ、どういう事だ?」
「浅田、巣鴨、山田、木元、柳沢。中心はこの五人です」
「そうなのか、浅田」
浅田は先生たちに頼りにされている。でも、今の先生の目は、疑いしかない。
「先生、そして、僕も加害者です」
「石随も、加害者?」
その時、浅田が手を挙げた。
「先生、私、見たんです。石随くんが、香藤さんをいじめてるのを。そうだよね、麻未」
「は、はい。見ました。石随くんが、香藤さんを殴ったり蹴ったりしていました」
「陽向、大丈夫。神様は陽向の事、ちゃんと見てたから」
お姉ちゃん。ありがとう。
自分に姉がいるかも分からないのに、直感的に姉だと思った。
僕は浅田らに歯向かおうとした。
「違います」
他のクラスメイトが言った。
「香藤さんをいじめていたのは浅田さんです」
「先生、俺も見た。てか、クラスの皆、見てたよな?」
「くっー」
浅田らは何も言い返せない。
「浅田、巣鴨、山田、木元、柳沢、あとで職員室」
たった一人が言ったって、勝てるわけない。でも、皆が居てくれたから、勝つことができた。
屈強ないじめに。
少し経って、先生が僕に尋ねた。
「石随も加害者って、どういう事だ?」
ガラッ。教室のドアが開く。
「香藤っ」
「先生、違います。陽向くんは加害者じゃない。私を守ってくれたんです。でも、陽向くんもかつては傍観者だった。だから、見て見ぬふりをしていたから。自分の事を加害者って言ったんです!」
沈黙が続いた。
「怪我は、もう大丈夫なの?」
目覚めてから時間が十分に経過した訳ではないので、不安だった。
「私は大丈夫だから」
いじめは、このクラスから無くなった。きっと無くなった。そう信じたい。
いじめというのは、いつ、誰が、どこから始まるか、全く検討はつかない。
だから、いじめがない事を、祈ることしか、今の僕にはできない。
その日の放課後、副担任の先生は重たい口を開いた。
「先生が高校三年生の時、隣のクラスでいじめがあってね。いじめられた理由は単なるその子の友達の勘違いからかしいんだけどね。俺は周りのやつらに混じって、その子を助けようとしなかったんだ。あと少しで卒業、それに受験勉強もあるし、他人のことにまで手がまわらなかった」
後悔しているみたいだ。とても穏やかな口調で淡々と話す。
「ある日、俺は気づいたんだ。その子は担任からもいじめられてるってね。副担任は気づいていなかったけど、担任はあからさまにいじめていた。隣のクラスの俺にでも分かったよ。だから、俺はいじめを許さない、そんな教師にならないといけないと思った。そんなある日、学校に救急車とパトカーが止まっていたんだ。塾帰りの俺は、たまたま見かけた。死にそうなその子を。きっと、飛び降り自殺を図ったんだろうね。まだ生きていたよ。運ばれる時は。話したこともないけど、なぜか、生きていて欲しい、と思ったんだ」
先生は、深いため息をついた。
「でもさ、生きていて欲しい、なんか俺の勝手な考えで、その子は死にたいって考えていたんだよな。生きていて欲しい、って考える前に、そもそも俺がいじめを止めていたら、そんな事にはならなかったのにな。結局、その子は亡くなってしまったんだ」
また深いため息をついた。
「よし、じゃあ帰るとするか。きりーつ」
さようなら。
「浅田、巣鴨、山田、木元、柳沢。中心はこの五人です」
「そうなのか、浅田」
浅田は先生たちに頼りにされている。でも、今の先生の目は、疑いしかない。
「先生、そして、僕も加害者です」
「石随も、加害者?」
その時、浅田が手を挙げた。
「先生、私、見たんです。石随くんが、香藤さんをいじめてるのを。そうだよね、麻未」
「は、はい。見ました。石随くんが、香藤さんを殴ったり蹴ったりしていました」
「陽向、大丈夫。神様は陽向の事、ちゃんと見てたから」
お姉ちゃん。ありがとう。
自分に姉がいるかも分からないのに、直感的に姉だと思った。
僕は浅田らに歯向かおうとした。
「違います」
他のクラスメイトが言った。
「香藤さんをいじめていたのは浅田さんです」
「先生、俺も見た。てか、クラスの皆、見てたよな?」
「くっー」
浅田らは何も言い返せない。
「浅田、巣鴨、山田、木元、柳沢、あとで職員室」
たった一人が言ったって、勝てるわけない。でも、皆が居てくれたから、勝つことができた。
屈強ないじめに。
少し経って、先生が僕に尋ねた。
「石随も加害者って、どういう事だ?」
ガラッ。教室のドアが開く。
「香藤っ」
「先生、違います。陽向くんは加害者じゃない。私を守ってくれたんです。でも、陽向くんもかつては傍観者だった。だから、見て見ぬふりをしていたから。自分の事を加害者って言ったんです!」
沈黙が続いた。
「怪我は、もう大丈夫なの?」
目覚めてから時間が十分に経過した訳ではないので、不安だった。
「私は大丈夫だから」
いじめは、このクラスから無くなった。きっと無くなった。そう信じたい。
いじめというのは、いつ、誰が、どこから始まるか、全く検討はつかない。
だから、いじめがない事を、祈ることしか、今の僕にはできない。
その日の放課後、副担任の先生は重たい口を開いた。
「先生が高校三年生の時、隣のクラスでいじめがあってね。いじめられた理由は単なるその子の友達の勘違いからかしいんだけどね。俺は周りのやつらに混じって、その子を助けようとしなかったんだ。あと少しで卒業、それに受験勉強もあるし、他人のことにまで手がまわらなかった」
後悔しているみたいだ。とても穏やかな口調で淡々と話す。
「ある日、俺は気づいたんだ。その子は担任からもいじめられてるってね。副担任は気づいていなかったけど、担任はあからさまにいじめていた。隣のクラスの俺にでも分かったよ。だから、俺はいじめを許さない、そんな教師にならないといけないと思った。そんなある日、学校に救急車とパトカーが止まっていたんだ。塾帰りの俺は、たまたま見かけた。死にそうなその子を。きっと、飛び降り自殺を図ったんだろうね。まだ生きていたよ。運ばれる時は。話したこともないけど、なぜか、生きていて欲しい、と思ったんだ」
先生は、深いため息をついた。
「でもさ、生きていて欲しい、なんか俺の勝手な考えで、その子は死にたいって考えていたんだよな。生きていて欲しい、って考える前に、そもそも俺がいじめを止めていたら、そんな事にはならなかったのにな。結局、その子は亡くなってしまったんだ」
また深いため息をついた。
「よし、じゃあ帰るとするか。きりーつ」
さようなら。
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