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第313話 [それぞれの思い。]

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「いやぁまさかのまさかやったわ。アストライアー様まで祝ってくれるいうんわ。」

「シュウト様がお願いしてくれたそぅですよ。本当に有り難い事です。」

「2人共良かったのぅ。余の息子であるルークの時も、いやいや流石に不敬じゃったな。」

「確かに私共からお願いする訳にはいきませんね。此度はアキトとカスミさんがシュウト様の前世からのお友達で有ったのが大きい要因だったと考えるのが妥当でしょう。」

「せやな。まぁ後はわいのとこの娘もガシュウはんの息子のアキトはんと一緒でシュウトはんの眷属にいうんもあるやろしなぁ。」

「そうじゃのぅ、シュウト殿の使命は命の危険と隣り合わせモノも有るじゃろうて。その様な大事に関わる者には祝福もして頂けるという事かのぅ。」

「そうなのかも知れませんが、私共の様な矮小な者にはアストライアー様の考えを推し量るのも不敬に当たりますよ。」

「そうじゃのぅ。」

ガシュウさん達はそう言いながら披露宴を行う大宴会場へと向かって行った。




「しっかしまさか顕現までされるとは思ってもみなかったぜ。」

「そうだね。シュウトは知ってたのかい?」

「顕現する為にあの羽衣を渡されたからな。」

「あぁ、その為の物でござったのか。」

「って、あの羽衣はアストライアー様から直接受け取ったって事か?」

「そうだな。製造神ファイス様がお創りになられた物だな。」

「ファイス様!?アストライアー様から神授された物だから凄ぇ物だとは思ったが、ファイス様がお創りになられた神器だったかぁ。」

「あっ、でも俺専用だし、ライヤ様が俺の世界に顕現する為に使うだけしか、用途はないらしいぞ。まぁ、邪神や悪神の全力攻撃でもない限り壊れないらしいけどな。」

「それだけでも凄ぇじゃねぇか。って事はシン坊達の玩具にならねぇ様に気を付けねぇといけねぇな。アイツらもキラキラした目でめっちゃ見てたからなぁ。」

「あっ、それなら問題無いぞ。」

「そうなのか?」

「俺以外は触ってもというか、何をしようと外せない様になってるって聞いたし、神の瞳で確認してもそうなってたしな。」

「そりゃ安心だが、教えて頂いたのにも関わらず、鑑定したのか?不敬だろ?」

「そう・・・かもしれないが、ライヤ様は時々、大事な事を言い忘れる時が有るからなぁ。イテッ!・・・。」

俺がそう言うと突如、俺の真上にタライが出現し、危ないと思って避けたにも関わらず頭に直撃した。

「シュウト、不敬な事を言うからだぞ。」

「そんな事言っても事実だ・・・イテッ!何で避けてるのに当たるんだよ。しかもこんなに軽いのに何で痛いんだ?」

俺はそう言いながらタライを拾い上げて鑑定してみた。



タライ(アストライアー特製)

・重量5g

・直径30cm

・破壊不可

・超誘導

・絶対命中

・ペインゲイヴ

・シュウトを直接ハリセンで叩きたかったが顕現する訳にもいかなかったので苦肉の策で女神自身が作成した物。


「うわぁ~なんて無駄な性能してるんだよ。ってか、苦肉の策って・・・何してるんですか・・・。」

「ん?鑑定したのか?」

「おう・・・。」

「それで?」

「いやぁ何て言うか・・・。」

「どうせ神罰なんだろ?」

「まぁ、そうなんだが・・・・・」

ルークの言葉に俺はタライの鑑定結果を説明した。

「お、おぉ・・・なんちゅー性能なんだよ。ってか、メイドなんかが使うもんみたいに見えるが破壊不可とかは防具っぽいし、超誘導や絶対命中なんかは投擲武器?それにペインゲイヴって何だ?」

「ペインゲイヴはダメージを与えるんじゃなさそうだぞ。」

「そうなのか?」

「あぁ、ダメージは関係ないから防御力も意味は無いみたいなんだよ。」

「ダメージが無い?じゃあ何で痛がってたんだ?」

「だから痛みのみを与えるんだ。ほらっ。」

俺はそう言いながらルークにタライを投げた。するとタライはルークの上空へと飛んでいき、真上に到達するとピタリと静止し、直後に下降し、ルークに直撃した。

「イッ!てぇー!」

ルークはそう言いながら頭を抱えて蹲っていた。

「確かにダメージはねぇみたいだが、凄ぇ痛ぇなぁ。」

「だろ?」

「まぁそれでも武器としては使えねぇか。」

「そうだろ?」

「後は盾代わりに使えるかってとこか?」

「まぁ普通にタライとして使えばいいんじゃないか?」

「それもそうか。」

俺達がそう言うとドラウが近付いてきた。

「なぁ、2つ有るなら1つは俺にくれねぇか?」

「どうするんだ?」

「アストライアー様が創った神器だろ?色々研究してみたいんだよ。」

「あぁ、そういう事なら2つとも持ってって良いぞ。」

「いや、1つは宝物として置いておいた方がいいんじゃねぇか?」

「宝物?コレを?」

「忘れてるかもしんねぇけど、シュウトへの神罰だとしてもアストライアー様のお創りになられた神器だぞ。お前らの扱い方がおかしいとは思わねぇのか?」

「あぁ・・・けどなぁコレを見て神器だと思う人が居るとは思わないんだが・・・。」

「シュウト・・・ルークもそう思うのか?」

ドラウはそう言いながら首を振ってルークに話し掛けるとルークは頭を掻きながら答えた。

「確かに神聖なオーラが凄ぇけど・・・。」

「あっ、そうだ。サーシャか、ナビコに相談してからって事にしないか?」

「・・・日常生活で使わせるって事か?」

「それもそうだが、あの2人なら戦闘にも使えそうだからな。」

「あぁ・・・確かに。だが・・・。」

「それなら無駄に保管してるよりも良いだろ?」

「・・・そうだな。」

「よし、決定。」

俺達はそう言うと大宴会場へと入っていった。



「カスミ、綺麗だったわねぇ。」

「そうだっちゃねぇ。けんどそう言うんならニップルも一緒に結婚式したら良いだわさ。」

「私達はもう夫婦として一緒に生活してるし、そういう派手な風習も無いしね。」

ニップルがそう言うとツバキが不思議そうな顔をして話し掛けた。

「龍人族やエルダードワーフは夫婦になる時はどうするの?」

「龍人族もエルダードワーフも忙しかったり、研究で篭ってたりだから家族に報告して呑み明かして終わりかしら。」

「そうなのね。何か想像出来るね。」

「でしょ。だから綺麗だとは思うけど、やりたいとは思わないわね。」

「そうなんだ。」

「それはそうとツバキはレイとの事を考えてるだわ?」

「な、な、何を!?」

「皆んな知ってるだっちゃよ。」

「そ、そうだけど、私達はまだ・・・。」

「結局はそう思ってるだわ?」

「私は何時でも良いんだけど、レイは忙しいし・・・。」

「そんな事言っとったら何時までも結婚出来ないだわよ。」

「そうだけど、まだ彼には何も言われてないし・・・。」

「プロポーズを待ってるだわ?」

「・・・うん。」

ツバキはそう言うと顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「ツバキも大変だわさ。あっ、わっち料理の仕上げがあるだわ!」

ナビコはそう言うとダッシュで大宴会場へと走っていった。

「慌ただしいわね。」

「そうね。あっ、私達も手伝った方がいいのかしら?」

「給仕とか人が必要な事はバトとサーシャがやるから必要無いって。」

「そうなんだ。なら良いのかなぁ。」

「気にしないで楽しんでって言われたから私達はお言葉に甘えましょ。」

「それなら楽しまなくっちゃね。それはそうとレイは何処に行ったのかしら?」

「ずっと一緒に居たんじゃないの?」

「そうなんだけど、少し用事がって言ってルーク達の方へ行ったけど、その後何処かへ行ったのよ・・・あっ、まさか仕事しに行った?」

「そんな事ないんじゃない?ドラウだって今日は工房には・・・って彼処で何してるのかしら?」

「あっ、何か投げた。えっ?何アレ?」

「ドラウが変なのを造ったのかしら?」

「でも遠目から見ても神聖な感じがしない?」

「確かに。あっ、1つはドラウが大切に抱えてるわね。」

「本当だ。」

「自分で造った物ならあそこまで大事そうにはしないから・・・まさかね。」

「まさかって?」

「オーパーツみたいに希少な物かもって事。」

「どう見てもタライにしか見えないけど・・・そうなの?」

「確証は無いけど、あそこまで大切に扱うなら可能性はあるかな。」

「そうなんだ。」

ニップルとツバキはそう話ながら大宴会場へと歩いていった。



「お姉ちゃん綺麗だったねぇ。」

「本当ね。すっごく幸せそうだった。」

「うん。」

「皆んなはカスミお姉さんの事、前から知ってるたの?」

「前世の記憶だから朧気だけどね。」

「そうだね。おばちゃんって言ったら怒られた記憶がある。」

「そうそう、そんな事もあった。」

「そうだっけ?」

「シンジは可愛がられてたから知らないだけだよ。私達にはそうだったよねカナ姉?」

「そうね。シンジは2人にというか、カスミ姉ちゃんに溺愛されてたから。」

「そうなんだ。でも今も優しいよね。」

「面白いしね。」

「へぇ~前世から変わってないんだ。」

「2人とも変わらないわね。」

「変わらないね。」

「最初はどんな人だろうと思ってたけど、良い人なのは分かった。」

「けど、稽古中は別人になるよ。」

「そうなの?」

「父ちゃん程じゃないけど、アキト叔父さんは攻撃を受けても怯むな!受け流すんじゃなくて耐えろ!耐え続ければ効かなくなる!って無茶苦茶な事言うし、カスミ姉ちゃんは小盾に当たった瞬間に相手の体勢を崩せなかったら何度でも出来るまで、僕達が体力がなくなって動けなくなるまでやらせるし。あの時はあの優しい姉ちゃんは何処に行ったんだろうって何時も思ってたよ。」

「そうだねぇ。けど稽古が終わったらいっぱいお菓子もくれるし、いっぱい遊んでもくれるんだよなぁ。」

「そうそう。けど、それは今も変わらないね。」

「皆んなの話を聞いてると本当に変わらないんだね。」

「これからは此処で一緒に住むんでしょ。」

「そうやって言ってたね。」

「楽しみだなぁ。」

「そうだね。」

シンジ達もそんな話を続けながら大宴会場へと歩いていった。



全員が中に入るとレイの姿だけ見当たら無かった。

「あれ?レイは?」

「レイならさっき、タライが落ちてくる前に俺達からの結婚祝いを取りに行ってるぞ。」

「そうか。けどもう直ぐ始まるぞ。」

「そうなんだよなぁ。自分が持って行くって言ったのによぅ、忘れるなんて有り得ねぇけど、よく良く考えれば昔っから偶にあんだよなぁ。」

ルークがそう言った瞬間、扉が開いてレイが息を切らしながら入ってきた。

「ギリギリだぞ。」

「ごめん、ごめん。」
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