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第294話 [精霊の数。]

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俺は外に出るとトヨタさんが居る首相官邸へと転送した。

「おっ?なんやシュウトはんやん久しぶりやなぁ、どないしたん?また悪党でも見つけたんかいな?」

「お久しぶりですトヨタさん。今回は違いますよ。そろそろトヨタさんをガシュウさんの居る教国に連れて行った方が良いかなって思いまして。」

「さよか。ほなら丁度良かった。大体の用事も終わらせたし、ウェディングドレスもなんぼか出来てるさかい教国に居るカスミにも着て貰わんとあかんよって。」

「カスミちゃんはこっちに居ないんですか?」

「居らへんで、アキトはんに嫁ぐ以上今よりも強ならんとあかん言うてガシュウはんのとこに居るさかい。」

「あっ・・・何か申し訳ないです。」

「ええ、ええ。そら確かにわいも父親や、寂しい気持ちがない言うたら嘘になる。せやけど、あん子は昔っから正義感が強ぅて自分の実力も省みんと突っ走る子なんや、世の中どうなるか分からん御時世にあん子が、今の実力でええか言うたら心配になるレベルやさかい。」

「しかし・・・。」

「カスミが決めた事やし、あん子がアキトはんと出逢って直ぐに嫁ぐ言うてたんやアキトはんの仕事を考えたらあの頃でさえ、今よりも危険な戦場に向かうんは覚悟しとった。まぁまさか、使徒様と共に戦うとは思うても無かったし、ましてや眷属に成れるなんて喜ばしい限りや、シュウトはんが困る事ちゃうよって。」

「それなら良いですけど。」

「それにや、カスミは精霊が見えへんのにも関わらず精霊との親和性がものごっつ高いらしぃて、それもあってガシュウはんのとこに行かせてもうとんねん。」

「確かにカスミちゃんは前世でも異常なくらい動物に愛されてましたけど、こっちでもそうなんですね。」

「精霊をその辺の生きもんと一緒にするんは何かアカン様な気もするけど、まぁ幼少期から好かれとんのは間違いないわ。」

「じゃあとりあえず行きますか?」

「せやな。結婚式までそんな時間ないよってお願い出来るか?」

「大丈夫ですよ。」

俺とトヨタさんはそう言うとウェディングドレスを受け取ってガシュウさんの所へと転送した。

「これはシュウト様、お久しぶりでございます。本日はどの様な御用件でしょうか?もしや世界樹様にお会いになられる為にいらしたのでしょうか?」

ガシュウさんが開口一番に満面の笑みでそう言うとトヨタさんが横から話し掛けた。

「ガシュウはん、ちゃうねん。わいらの用事を手伝う為に来てくれてん。」

「私共の用事と言うとカスミちゃんの事ですか?」

「せや、シュウトはんに教えてもうたウェディングドレスいうんが出来たさかい最終調整しに来たんや。」

「シュウト様、そこまでして頂けなくとも私が飛べばいい事ですのに。誠に有難く存じ上げます。」

「気にしないで下さい。カスミちゃんは自分にとっても妹みたいな子なんで。」

俺がそう言うとトヨタさんは涙ぐみながら「カスミは幸せもんや。」と言いながら上を向き、ガシュウさんはそんなトヨタさんを見守る様に微笑んで見ていた。

「それでカスミちゃんの気配が無いみたいなんですけど、一体何処に居るんですか?」

「リリスと共に世界樹様の麓に行っております。」

「世界樹の麓?・・・もしかしてユグドラシルに呼ばれたんですか?」

「はい。カスミさんはどうやら誰よりも精霊に好かれる性質を持っているらしく、シュウト様の眷属に成られるなら私の下へと来なさいと精霊より伝えられましたので、リリスと共に世界樹の麓で最も精霊の集まるスポットに行っています。」

「ユグドラシルが現れる場所なんですか?」

「いえ、そうではなく、単に精霊が多く集まる場所でして、そもそもユグドラシル様が人の姿で顕現されたのは1000年以上前にエルフの里の長を定める際に降臨され、その時に里の長となったのが私なのですよ。」

「えっ!?あっ、そういえばハイエルフは長命でしたね。」

「そうですね。その代わりに子を生すのがかなり難しいとされているのです。」

「そうなんですね。」

「まぁ、私共の様にエルダードワーフや龍人族の方々もその傾向がありますので長命種はそうなのかもしれませんね。」

「まぁ確かに長命種の人達が人族の様にどんどん子供が出来てしまったら世の中長命種だらけになってしまいますね。」

「はい、その通りにございますね。それでどうされますか?」

「どうとは?」

「シュウト様も行かれますか?それともカスミさんを呼んできますか?」

「実際その場所で何をしているのかが分からないのですが、ガシュウさんは分かりますか?」

「推測でよろしければ。」

「構いません。現状では何が正解なのかも、ヒントすらない状態ですので。」

「では、・・・他国よりも世界樹様に近い場所という事もあって、この地は精霊が多く居るのは分かりますでしょうか?」

「確かに自分の世界程じゃないにしろ、他に行った事のある場所よりも多いですね。」

「はい。その為、カスミさんが此処に初めて来た時に精霊が一斉に集まったのですが、カスミさんは精霊が近くに居るのは気配で分かっていた様ですが、精霊が見えない為に何か気持ちが暖かくなる何かが居ると言っていましたので、先ずは精霊が見える様になる事をさせるおつもりで、あの場所へという事だと思われます。」

「行くだけで見えるものなんですか?」

「それが何時間になるか、何年、何十年になるかは才能次第なので分かりませんが、あれ程精霊に好かれているカスミさんであれば見るだけでしたら今日1日あれば、見る事が出来るようにはなるかと思われます。」

「そんな事まで分かるんですか?」

「過去に精霊の導きによって、かの地へと行った者や精霊の導きと偽ってかの地へ行った者を見てきましたので。」

「導かれてっていうのはまだ分かるんですけど、偽ってっていうのは・・・?」

「導かれていない者が行こうとすれば精霊に惑わされて森から追い出されるか、死を与えるか、ですね。例えば、精霊を純粋に見たいとか、友になりたい等は前者、精霊を拐う目的の様な悪しき感情で動いている者は後者となりますので、私共の出番など殆どありません。」

「そういう事でしたら納得です。それだと何方にしても邪魔には、ならないんですか?」

「此方にも精霊は居ますし、精霊の多い場所でしたら問題ないかと。」

「それでも多い方が良いんですよね?」

「そうですね。」

「なら、邪魔にならないなら直接転送するのもあまり良い事だとは思えないんで案内して貰えますか?」

「承知致しました。では。」

ガシュウさんはそう言うと風に変化して俺とトヨタさんを包むと俺達を連れて世界樹へと近付いて行き、小さな泉がある場所へと降りて行った。

「あれ?シュウト兄やん、どうしたん?」

「お手伝い・・・かな。」

「かなって何それ?」

カスミちゃんがそう言うと飛んで来た影響か、ガシュウさんに支えられたトヨタさんが声を掛けてきた。

「ウェディングドレスが出来たさかい、わいが頼んだんや。」

「なんやオトンも居ったんか。」

「居ったんかって何やねん。」

「それよりそんな事でシュウト兄にお願いしたんか?」

「シュウトはんがええ言うたさかい。連れてきてもうたんや。」

「またシュウト兄の優しさに甘えたんか?」

カスミちゃんがそう言いながらトヨタさんを睨むとカスミちゃんの周りに居た精霊達もトヨタさんをカスミちゃんと一緒になって睨んでいた。するとカスミちゃんの隣りに居たリリスさんがカスミちゃんに声を掛けた。

「カスミちゃん、精霊は純粋な子が多いと話しましたよね。」

「あっ、はい。ごめんなさい。」

「アキトの様に中位精霊の攻撃でもビクともしない者であれば構いませんが、カスミちゃんのお父様であるトヨタさんはそうではないでしょ?」

「そうですね。お父様だと大怪我してしまいますね。」

「少数の精霊しか居ない場所ならば、それ程酷い事にはなりませんが多く居る場所では精霊同士が協力する為に威力が格段に上がります。ですので精霊が多く居る場所では己を律して下さい。」

「はい。お母さま・・・母さん。」

カスミちゃんが丁寧に接しようとするとリリスさんが無言で見つめ、それに気付いたカスミちゃんが言い直すとリリスさんは笑顔で頷いた。すると突然、泉の方から空間が歪む程の魔力の渦が発生し、そこから美しい女性が現れた。

「お久しぶりです、シュウトさん。」

「あっ、久しぶりユグドラシル。会いに行こうとは思ってたんだけど、遅くなって悪かったな。」

「いえいえ、シュウトさんはお忙しい身、こうして偶に近くに来てくれるだけでも嬉しいですよ。」

「そう言って貰えると俺も嬉しいよ。そうだ、ユグドラシルが寄越してくれた精霊達には何時も世話になって助かってる。ありがとうな。」

「此方こそ、安全な場所で幼い我が子らを鍛えさせて頂いたお陰でこの子達もここまで成長する事が出来ました。」

「この子達がそうなのか?」

「はい。普通よりも凄まじい成長速度で下位精霊になる事が出来ました。」

「下位精霊?」

「はい。シュウトさんの下へ行っている子達は下位にも満たない子達が多いので、ここまで成長すればお互いが協力して外敵に対処出来ますので感謝しかございませんよ。」

「もっと成長させなくて良いのか?」

「新たに生まれる子が一定数を下回らなければお願いしますが、それまでは今のままで。」

「一定数?」

「精霊の数にはアストライアー様がお決めになった上限がございますので。」

「上限?態々?」

「はい。上限を超えると精霊が暴走した時に大陸単位で大災害が発生する事が何度かありましたので、その際にアストライアー様が御怒りになり、上限をお決めになられたのですよ。」

「なるほどな。確かに生きとし生ける者、全てを愛する人だからなぁ。あっ、神か。」

「はい。我々を罰する際にも涙しながら行なったと他の神々から聞いてますので、アストライアー様を悲しませない様に上限を超えない様にしてますね。」

「けど、それだとユグドラシルに不都合な事は無いのか?」

「ございませんよ。生み出す方が生命力を消費するので、それが抑えられるだけです。それに生命力が余る様なら実を付ければ済みますしね。」

「へぇ~それなら良いけど、後どのくらいで上限に達っしそうなんだ?」

「もう少しで上限ですね。」

「そうなのか・・・美味しいのか?」

俺がそう言うといつの間にか、跪き頭を下げていた全員からざわめきが起こった。







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