上 下
285 / 319

第284話 [指南と試案。Part4]

しおりを挟む
ドラウの位置調整が完璧に終わり全員が吸収出来る状態になる頃には日も暮れていたので修行は翌日に持ち越され、朝食を終えた俺達はまた荒野/渓谷フィールドへと集まっていた。

「ルーク、吸収だけして1晩経ったがどうだ?」

「体調は動かないとヤベぇくらいエネルギーに満ち溢れて、今にも暴発しそうだな。」

「だから皆んな、気合いが入ってる感じなのか。」

「多分皆んな、そうだな。」

ルークがそう言うと全員が頷いていた。

「今直ぐ魔宝玉の修行は出来そうか?」

「いや、今やったら魔力暴走に陥るかもしんねぇ。」

「そんなにか。」

「感覚で言うとな。」
 
「なら一寸発散する為にもドラウ以外は模擬戦してドラウはどうする?」

「一旦、鍛冶場に戻ろうかとも思ったが何となく此処にいる方が良い気がするから此処で剣でも打つ事にするわ。」

「1人だと危険そうか?」

「加減を間違えて鍛冶場を壊しそうなだけだ。」

「なるほどな。じゃあ適当にやっててくれ。」

「おう。」

俺がドラウにそう言うとドラウは1人少し離れた場所で道具を取り出し始めた。

「そんで内訳はどうする?」

「じゃあ、ルークはレイ、ツバキペアと。アキトはバト、サーシャペアと。サスケはナビコ、ニップルペアとでやってみるか。」

「おう。シュウトの事だからこの組分けも意味があんだろ?」

「まぁな。後で教える。じゃあ3組とも離れて。武器の使用も可、但し今回はエネルギーの発散が目的だから致命傷になりうる攻撃はしない様に!分かったな!」

俺がそう言うと全員が頷き、ある程度離れるとお互いに構えた。

俺はドラウが鍛冶を始めるのを見計らって叩くのと同時に「始め!」と叫んだ。叩く音に触発されたのか、一斉に動き始めた。

ルークはレイが舞始めたのを止めようと思った様で一直線にレイ向かい斬撃を放とうとするといつの間にか影に潜っていたツバキが背後から現れ、ルークに斬り掛かるがルークもそれに気付き、ツバキの攻撃を見ずに剣で弾き返し、気を放ってツバキを吹き飛ばすとそのままの勢いでレイに斬り掛かるが、レイも舞を中断させる事なく、ルークの剣に自分の剣を添わせると流れる様な動きで、ルークの体勢を崩して、その場を離れた。

アキトは槍を構えると2人に向かって槍に気を乗せて放つと同時に2人に突進して行くとバトは気が当たった瞬間に掻き消え、サーシャは獣人特有のしなやかな動きで気を避けながらアキトに暗器を飛ばした。アキトは暗器を気にもせず肉体で弾きながらサーシャの下へ突進していたが、サーシャが意識外しのスキルを使った様で見失って周りをキョロキョロしていた。

サスケは体勢を低く構えると一瞬でナビコとニップルに近付き、爪で攻撃したが、サスケが近付くのが分かっていたニップルは龍仙化すると超速飛行で飛び立ち、あっという間に見えなくなり、ナビコは大きい中華鍋の様な物で受け流し、デカいまな板にサスケの爪を捉えていた。

3人ともやっぱり初手は舐めてかかったな。さて、この後どうするかな。

俺がそう思っていると先ずはルーク達に動きがあった。

ルークは仕切り直す様で身体に炎を纏い、剣にも移すと旋回して炎の竜巻の様になりながらレイに近付いて行き、ツバキが出て来ようとする影に向かって炎の槍を放っていた。

レイはレイでポンポン、ルークの周りを攻撃を避けながら飛び跳ね氷柱でルークを囲んで行った。

ツバキはツバキでルークの炎の槍を影に潜って避けているだけに見せ掛けて、レイが出した氷柱の影から影へと影を繋げて行き、ルークの炎で溶かされそうになっている氷柱に直接当たる炎を影に吸収する事で守っていた。

次第に数が増えてくる氷柱に危機感を覚えたルークは纏っている炎の火力を上げて広範囲に一気に放った。しかし、時既に遅く、氷柱と影により、巨大な魔法陣が出来上がり、氷でルークを包み込んでしまった。

ほう。氷で動きを封じ、闇で全移動を阻害しているのかぁ。

俺がそう思っていると今度はアキト達に動きがあった。

アキトは見つけても直ぐに消える2人に対処する為か、自分自身に聖魔法を放ち続け、全身から聖光を放ち、バトが闇魔法で隠れる事も近づく事も出来ない様にしてあぶり出し、聖光の波動でサーシャの居場所を把握出来る様にして2人に遠方から気の斬撃を放ち続けた。

バトはそんなアキトの攻撃を結界で防ぎつつアキトを中心に周りながら石やサーシャが投げ続けている暗器を拾いつつ、投擲していった。

サーシャはアキトの斬撃を軽快に避けつつ暗器を投げ続け、時折立ち止まってはステップをする様な仕草をしていた。

ん?何かしてるなぁ

俺がそう思った瞬間、サーシャはアキトの頭上へと跳び上がり、身体を畳んで回転すると突然地面から無数の糸が飛び出し、アキトの身体に絡み付いて拘束してしまった。

アキトはその糸を振り解こうともがくが余計に糸が絡まっていき、ヤバいと気付いたのか、自分に槍を向けた頃にはバトの結界で動きを止められていた。

やるなぁ、流石に夫婦なだけあって息がピッタリだなぁ。

俺がそう思っているとサスケの方も動き出した。

サスケは超速飛行で動くニップルを警戒したのか、風分身を使い、標的を絞らせない様にしてから爪を巨大化させてナビコへと瞬神行で近付いて切り裂いた。
 
ナビコを切り裂いてしまったサスケは驚いて固まってしまうとその瞬間に辺り一面蒸気に包まれ、蒸気に魔力と気が含まれている所為で周りを把握出来なくなったサスケは風魔法を使って蒸気を吹き飛ばしたが、次の瞬間、ニップルの超速刺突攻撃で風分身を次々と貫かれ、ニップルの通り過ぎる時に出るソニックウェイブにサスケは吹き飛ばされてしまい、巨大化した爪を地面に突き刺し、ブレーキを掛けると辺り一面に夥しい数のナビコが立っていた。

ほう。分身ってわけじゃなく、食材で造った自分そっくりの人形かぁ・・・一体一体に気も魔力も均等に注がれてるからアレは俺でも本体を探すのが面倒だなぁ。

俺がそう思っているとルークの方に動きがあった。

おっ、ルークの魔力がどんどん上昇していってるなぁ、高火力で一気に氷を破壊するつもりか?・・・ん?これは・・・拙いか?

俺はルークの超高温を見て、そう思った瞬間、レイ達の傍まで移動した。

「レイ!ツバキ!一寸拙い!離れろ!トルバ!コク!スキア達!全員で結界を張れ!」

俺の言葉にレイ達が離れると残りの2組の邪魔にならない様に俺が壁になる立ち位置へと移動した次の瞬間、氷の中心が赤く光りだした。

ゴゴゴゴゴォ・・・カッ!!ドガーーーーン!!!!!

俺は爆発前に結界を張れるメンバーを呼び寄せ、2組に被害が及ばない様に結界を張らせたが、ルークの大爆発の威力が凄まじかったので、全員に対して魔力を供給し続けた。

少しして爆発の余波も治まったのを確認した俺は結界を張った皆んなに礼を言ってから爆発の中心部だったルークの下へと走っていった。

ルークの下へ着くと気配から無事なのは分かっていたが、ルークは自分自身を守る為に気と魔力をかなり消費した様で無傷だったが大の字で寝そべっていた。

「何やってんだよ。」

「いやぁ、出れなくてよぅ。悔しくてやっちまったぜ。ってか、俺もあそこまでの威力になるとは思ってなかったぜ。」

「だろうな。水蒸気爆発だからなぁ。」

「何か聞いた事があるような・・・。」

「まぁ、およそ1700倍って言ってもなぁ・・・兎に角、密閉された空間でマグマみたいな所に大量の水を入れるとさっきみたいに大爆発するんだよ。」

「そんなにか。」

「あぁ、山を吹き飛ばす程にな。」

「ヤベぇな。」

「規模はあれだが、それと同じ事をしたんだぞ。」

「おぉ・・・。」

「それより立てるか?」

「う~ん、暫く無理かも。」

「回復薬は要るか?」

「いや、そこまでじゃねぇ。」

「そうか、まぁ、他がまだ終わってないから少し休んでおけ。レイ達は大丈夫か?」

「シュウトのお陰でね。」

「なら、ルークを診てやってくれ。」

「任せて。」

レイがそう言ったのでアキトの方を見るとアキトは魔力を出すのを止め、気を吸収、吸収、吸収と溜め込み、自身の中に仙気をより濃密にして、魔力と混ぜると再び光り出し、背中に翼を生やして、無理矢理、糸と結界を破壊し、暴れ出した。

おぉ、流石アキト・・・ん?無理矢理高出力同士を混ぜた所為で暴走してないかアレ?

俺がそう思っているとアキトは力を溜め始めたサスケの方を見て動き出そうとしたので、このままだと邪魔しそうな雰囲気に邪魔させない様にアキトだけに殺気を放った。するとアキトは俺の方を意識して、槍を振りかざして突っ込んできた。

「おいおい、そんな状態で俺に危害を与えられるとでも思ってるのか?」

俺はそう言うと一瞬でアキトの懐に潜り込み、瞬間的に打撃を三発当てて沈めてしまった。

「はぁ~これは後で説教だな。」

俺はそう言うと今度はサスケの方を見た。

ん?3人とも動いてないけど・・・まぁ仕方がないか、ルークもアキトも大分派手に暴れてたからなぁ・・・ただいくら発散させる為の試合だとしても意識を持ってかれたら駄目だろ。

俺はそう思うと3人に向けて殺気を飛ばした。すると3人はビクッとすると俺を見て焦った様にお互いに向かい合った。

2人に意識を向けたサスケだったが、ナビコの人形にどうしたら良いか悩んだ末にニップルの方に切り替えて超速飛行に追いつく為に空歩と瞬神行を合わせて追い掛け始めた。

あ~あ、ナビコは何時でも倒せるとでも思ってるのか?また油断か。

俺がそう思った瞬間、ナビコは用意してあった大量の竈に火を着けた。次の瞬間、竈の火が上空へと昇っていき、サスケを追尾し始めた。

サスケは追いつかれたら拙いと思ったのか、ナビコに意識を向けるがその瞬間を待ってましたとばかりにニップルの攻撃を受けてしまい、地面に叩き落とされてしまった。

サスケもこのままだと拙いと再び思った様で魔力を込めて巨大な竜巻を創るとナビコに向かって放ち、風の勢いも利用してニップルの方へと自身を飛ばしてみせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

女神スキル転生〜知らない間に無双します〜

悠任 蓮
ファンタジー
少女を助けて死んでしまった康太は、少女を助けて貰ったお礼に異世界転生のチャンスを手に入れる。 その時に貰ったスキルは女神が使っていた、《スキルウィンドウ》というスキルだった。 そして、スキルを駆使して異世界をさくさく攻略していく・・・ HOTランキング1位!4/24 ありがとうございます! 基本は0時に毎日投稿しますが、不定期になったりしますがよろしくお願いします!

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜
ファンタジー
 単身赴任中の派遣SE、遊佐尚斗は、ある日目が覚めると森の中に。  直感と感覚で現実世界での人生が終わり異世界に転生したことを知ると、元々異世界ものと呼ばれるジャンルが好きだった尚斗は、それで知り得たことを元に異世界もの定番のチートがあること、若返りしていることが分かり、今度こそ悔いの無いようこの異世界で第二の人生を歩むことを決意。  転生した世界には、尚斗の他にも既に転生、転移、召喚されている人がおり、この世界では総じて『漂流者』と呼ばれていた。  流れ着いたばかりの尚斗は運良くこの世界の人達に受け入れられて、異世界もので憧れていた冒険者としてやっていくことを決める。  そこで3人の獣人の姫達─シータ、マール、アーネと出会い、冒険者パーティーを組む事になったが、何故か事を起こす度周りに異性が増えていき…。  本人の意志とは無関係で勝手にハーレムメンバーとして増えていく異性達(現在31.5人)とあれやこれやありながら冒険者として異世界を過ごしていく日常(稀にエッチとシリアス含む)を綴るお話です。 ※横書きベースで書いているので、縦読みにするとおかしな部分もあるかと思いますがご容赦を。 ※纏めて書いたものを話数分割しているので、違和感を覚える部分もあるかと思いますがご容赦を(一話4000〜6000文字程度)。 ※基本的にのんびりまったり進行です(会話率6割程度)。 ※小説家になろう様に同タイトルで投稿しています。

処理中です...