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第250話 [使命。]

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「綿だよ綿。」

「ワタ?」

「えぇと、あぁこっちではオーガコットンか。」

「え!?マジでかぁ~。」

「ん?どうした?」

「アレ討伐すんの面倒なんや。」

「面倒?っていうか・・・あっ、本当だ魔物か。」

「当たり前やろ。前世ではちゃうの?」

「あぁ、多年草・・・ただの草だな。」

「そうなんか、ちゅう事は栽培されてる系?」

「そうだな。こっちでは・・・魔物か。」

「せや、オーガって付いとるだけあって他の植物系の魔物よりもかなり強ぅて耐久値も再生力、それに攻撃力も半端ないんよ。」

「ランク的にはどうなんだ?」

「一応Aランクやな。せやけどそれはその場から動かへんから脅威とされてないだけで討伐となるとSランクになんねん。」

「ん?動かない種類だとランクが下がるのか?」

「殆どないけどアレは特殊な部類に入るねん。」

「特殊?」

「せや、ダンジョンでも珍しい自分自身からは仕掛けてこんから。」

「ダンジョンの魔物なのにか?」

「せや、ただ近くで戦ったりして間違って攻撃が掠ったら凄い勢いで攻撃してくんねん。」

「へぇ~専守防衛的な?」

「そうや、しかも射程が短いからAランク止まりや。ただ耐久値と攻撃力が高く、攻撃速度が異様に速いから討伐するならSランクやねん。」

「なるほどなぁ。他の人もそれだと採取するのも・・・おっ、そうでもなさそうだな。」

「何や?シュウト兄、何か分かったんか?」

「あぁ、養分さえ与えてたら大人しくなるみたいだぞ。」

「養分?」

「そうだな。魔力を込めた土や水、大量の魔石だな。」

「どの程度なん?」

「とりあえずは近くに居る魔物2~3体分の魔石か、それと同等の魔力を込めた土か水だな。」

「・・・相当やな・・・。」

「そうか?どうせ倒すんだし、問題ないだろ?」

「めっちゃ高級品になりそうやな。」

「まぁ、AかSランクなら高いのか?」

「当たり前や与えた事で手に入る量にもよりよるとは思うけどな。」

「まぁ、そうだろうな。・・・なら、着いたら1回検証してみるか?」

「せやな。オトンに話す時も分かりやすいでええやろうしな。」

「けど不思議だよな。」

「何がや?」

「討伐された事があるのに素材が何に使えるか分からなかったって事だよ。」

「あぁ、そんな事か。そりゃ他のもんの認識としては、武器の素材になるんいうのは知っとるって程度やさかい。」

「武器・・・あぁ弓か。」

「何やそんな事までってシュウト兄やし、まぁええわ。ところでこのままオーガコットンのとこまで止まらんと行った方がええんか?」

「う~ん。検証は時間が掛かるかもしれないから先に霊の場所に行きたいかな。」

「ほな、それで行こか。」

カスミちゃんはそう言うと俺と話してる間も魔物をどんどん討伐しているアキトの下へ走っていき、討伐に参加し、その後は45階層まで一気に踏破した。

「なんやボスってデーモンスパイダーかいな。めんどくさいのがボスやなぁ。」

「面倒?」

「せや、アレが居るゆう事は小型がわんさか出るさかい。」

「そいつらも名前は一緒なのか?」

「せや、小型なだけでな。」

「ふ~ん、ってきりリトルとか付くのかと思ったんだけどな。」

「付けた人が人やで。」

「まさか岩ちゃん?」

「せや、めっちゃ美味いからそう名付けたって話や。アレも気で倒せば残るん?」

「あぁ、食べるのか?」

「せや、茹でて食うんやけど流石のオトンも喋らんと黙々と食うくらいやしな。」

「茹でて・・・か、岩ちゃんが悪魔的に美味いと思う物って事は味の想像は付くな。」

「そうなん?」

「あぁ。って言っても試してみないと分からないけどな。」

「なら、気で倒してくるわ。アキト、行くで。」

「おう。」

2人がそう言って巨大なボスに近付くとデーモンスパイダーの後ろから次々と自分達と同じくらいの大きさのデーモンスパイダーが出てきた。

カスミちゃんがアキトに何かを指示すると2人は小型の方だけを狙って次々と倒していった。

小型が出現しなくなるまで大型の方は放置するのか・・・ってどれだけ出てくるんだ?もう既に30体は出てきてるぞ?

俺がそう思っていると大型のデーモンスパイダーの魔力が跳ね上がった次の瞬間、出現場所が増え、一気に数が増した。

カスミちゃんはその光景を見てニヤリと笑うと増えた出現場所へアキトを連れて走って行き、出現場所に到着すると吸い込まれる様に中に入っていった。

カスミちゃん達が入って暫くすると突然地面が揺れ動き、今度は外に出ていた小型のデーモンスパイダーが出現場所へ吸い込まれていった。

あの先はどうなってるんだ?

俺がそう思って神の瞳で確認しようとした次の瞬間、間欠泉から熱水が吹き出る様に小型のデーモンスパイダーが吹き出て、辺り一面にぼとぼとと落ち、ピクリとも動かなくなっていた。

「いやぁ、アキトと2人なら出来ると思っとたけど、上手くいったなぁ。」

「確証は無かったのかい?」

「ぶっつけ本番や。アキト以外の他のもんとなんてやった事ある訳ないやろ。」

「相変わらず無茶するね。」

「前々からやれるとは思っとったんや。それにアキトなら何かあってもウチを助けてくれるやろ?」

「それは任せてよ。その為に鍛えたしね。」

俺がカスミちゃん達の気配を感じて 、その方向を見ると2人は小型のデーモンスパイダーが吹き出てきた場所から喋りながら出てきた。

2人は俺が見ているのを感じたのか、俺の方に手を振るとボスである大型のデーモンスパイダーに向けて突進し、一撃で倒した。

「いやぁほんまにそのまま残るんやねぇ。」

「とりあえず仕舞っておくな。」

「あぁ、ええで。食うのは帰ってからのお楽しみや。」

「そうだな。」

俺達がそう話していると奥の方で呆けていた霊が俺達の方へ進んできた。

『お前達は何者だ?』

「自分はアストライアー様の使徒でシュウトと言います。」

俺がそう言うと霊は平伏した。すると隣にいたカスミちゃんが驚く素振りをしていた。

「普通にして下さい。」

『ですが・・・。』

「そういうのは苦手なんで。」

『承知しました。』

「ん?カスミちゃん、どうしたんだ?」

「ウチ、このおっちやん知っとる!ウチが10歳の誕生日の時にオトンが呼んでくれた旅芸人のヘンソンさんや!」

『・・・ん?もしや、トヨタ様のご令嬢でしょうか?』

「ご令嬢・・・ぷっ。」

俺がそう言いながら笑うとカスミちゃんは口を膨らませて話し掛けてきた。

「おっちゃんが何言うたかは分からんけど、ウチはこれでも大商会の娘やで。」

「悪い悪い。戦闘狂の姿を見てるとついな。」

「ついて失礼過ぎへ!んうぅぅ・・・何すんねんアキト!」

「シュウトは使命の真っ最中だから邪魔したらダメだよ。」

「・・・せやった、シュウト兄ごめん。」

俺の返答に言い返そうとしていたカスミちゃんの口を塞いで止めたアキトに反論しようとしたが、アキトに言われた言葉に俺が何をしにきたのか思い出したのか、カスミちゃんが謝ってきたので手で大丈夫と伝えてからヘンソンさんの方を向いた。

「旅芸人である貴方が何故こんな場所に?」

『それは良質な糸が此処にあるとの事でしたので。』

「糸?」

「糸っちゅう事はおっちゃんの人形を使うた劇は、やっぱ糸で操っとったんやなぁ。」

「あぁ、その為の糸ですか、しかしそれなら地上でも手に入ったのでは?」

『いえ、私自身で手に入れた繊維で糸にする事でその性質や他の繊維を混ぜるかを考え、研究する事でより良い芸をお見せする事が出来ますので。』

「なるほど芸人魂って事ですか・・・その所為で暗殺されたと?」

「暗殺?魔物に殺されたんとちゃうんか?」

「いや、後ろから刺殺されたのが原因みたいだぞ。」

『な、何故それを!?』

「あぁ、スキルで分かるんです。」

『ほう、使徒様ともなるとその様なスキルをお持ちなのですね。』

「まぁ、他の使徒の人が同じかどうかは分かりませんけど自分の使命・・・・・。」

俺はヘンソンさんに使命とスキルを説明した。

『なるほど・・・。』

「何か未練がおありでしたら仰って下さい。自分に出来る事なら出来るだけ事はしますよ。」

『・・・実は殺される際に操っていた相棒達が奪われてしまったのです。』

「奪われた?」

『はい。恐らくそれが私が殺された原因かと。』

「それは殺した相手が闇ギルドというのも関係してるんですか?」

「闇ギルド!?」

「カスミちゃんは知ってるのか?」

「殺しから窃盗、人攫いとか、金さえ貰えれば何でもやりよる連中や。この前1個潰したばっかやけど、オトンと敵対しとる領の連中んとこには本部があるちゅう噂や。」

『その際にお嬢様の誕生日パーティーでお見せした相棒はおりませんでしたか!?』

ヘンソンさんはカスミちゃんが闇ギルドを潰した話を聞いてカスミちゃんに問いただす様に迫ったが聞き取れないカスミちゃんが困った表情で俺の方を見てきたので、俺が通訳してあげた。

「なるほどなぁ、ウチが潰したんは、オトンに代替わりする前からあった闇ギルドの支部なんやけど、ウチも好きやったで姿は覚えとるけど、あの人形さん達は見てへんなぁ。見たら気付くと思うねん。」

『そうですかぁ・・・という事は彼処に有ると考えるのが普通でしょうなぁ。』

「彼処とは?」

『ワイダー様・・・いや、ワイダーの邸かと。』

「ワイダー?」

「ワイダーやと!?シュウト兄!ヘンソンのおっちゃんがワイダー言うたんか?」

「おぉ、そうだぞ。其奴の邸にもしかしたら有るって事らしいけど、カスミちゃんは知ってるのか?」

「知ってるもなにもオトンと敵対しとる派閥のトップや。予想では闇ギルドのトップちゃうかって思とる。」

「なるほどな。欲しい物は殺してでも奪うって事か。」

「せや、けどな、証拠があらへんねやウチも散々調べたんやけど後一歩のところで証拠らしい証拠が全て消されてまうねん。」

「消されるって、もしかして人もって事か?」

「せや。証拠を残さん様にな。」

「なるほどな。それでヘンソンさんはその人形・・・その相棒達を取り戻して欲しいと?」

『それもありますが見つけて頂けたらヤマト出身のオカモトという私の弟子に渡して欲しいのです。』

「オカモトさんですね。」

「オカモト?それなら今ウチに居んで。」

『そうなのですか?』

「そうなのですかって。」

「あぁ、何で居んのか分からんかったけど、そうかヘンソンさんを探しとったんやな。」

『そうですかぁ・・・彼奴は私を1番慕ってくれてたんで、そうですかぁ・・・。』

ヘンソンさんはそう言うと押し黙ってしまった。
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