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第199話 [最後の一人。]

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「そういえば、サスケ達は5週目って言ってたよな。」

「そうでござるよ。」

「なら、霊には会ったのか?」

「居なかったでござるよ。」

サスケはそう言うとツバキの方を見て、ツバキも頷いて返していた。

「って事はトモエさんの時と同じかもな。」

「同じとはどういう事でござるか?」

「ん?言ってなかったか?トモエさんの時は壁に見える様に魔法みたいなのが有ったんだ。」

「・・・死の壁でござるか・・・。」

「死の壁?何だそれ?」

「C以上のダンジョンでは稀に見つかる壁でござる。」

「そうなのか・・・で、何で死の壁なんだ?」

「中に入った者の殆どは出て来れないか、出て来れても瀕死の重傷だったでござる。」

「それで死の壁か。」

「その通りでござる。しかも戻ってきた者の話では共通して、そのダンジョンのランクよりも上のランクの魔物が出現するとの事でござる。」

「あぁ、確かにSランクの魔石がドロップしたな。」

「他には何か出たでござるか?」

「いや、何も無かったぞ。」

「そうでござるか・・・。」

「どうしたんだ?」

俺がそう言うとサスケが考え込んでいたので聞くとサスケは難しい顔で答えた。

「それ程の場所でござるから何かしらのアイテムが出ると噂されてるでござるよ。」

「なるほどな。確かに有っても不思議じゃないか。」

「いや、師匠が出なかったら宝箱やアイテムは出ない、ただただ危険なトラップでござるよ。」

「今回たまたま出なかっただけかもしれないじゃないか。」

「いや、それは無いでござる。」

俺の返答にサスケがきっぱりと否定してきたので、俺は納得出来なかったので聞いてみた。

「何でそんな事が言えるんだ?」

「なら逆に聞いても良いでござるか?」

「何だよ?」

「今、いや、あのトラップの魔物を討伐する前のステータスだと運はどの位でござったか?」

「運?・・・えぇと確か・・・30万くらいだったと思うがそれがどうしたんだ?」

俺がそう言うとサスケは驚いた表情を見せながら答えた。

「さ、30万でござるか・・・師匠、そんな運の数値は聞いた事が無いでござるよ。」

「そう言ってもなぁ。」

俺がそう言うとサスケは真剣な表情で俺の方を向いて話し始めた。

「師匠、師匠に常識が無い事は周囲の者全てが分かってるでござるが、余りにも常識が無さすぎるでござる!」

「えっ・・・確かに一寸常識に欠ける部分はあるとは思ってるけど・・・。」

「一寸!?そんな訳ないでござろう!」

「そ、そうか?」

俺はそう言いながらツバキの方を見るとツバキまで深く頷いていた。

「先ず持って普通の者の運の数値がどの程度かお解りでござるか!」

「えぇと100位だっけ?」

「ふぅ~それは平民でも高い方でござる。通常、平民は低く、貴族は高いのが常識でござる。」

「生まれにも運が必要という事か。」

「そうでござる。しかも運はその変動が魔物を倒してレベルが上がったからといって変わらないでござる。」

「そうらしいな。」

「従って王族であっても1万を超えるのは稀と言われてるでござる。」

「・・・あっ、そういう事か。」

「であるからして30万を超える様な運を持つ師匠が出ないという事は出ない証拠でござる。」

「まぁ、そうなのかも・・・だけど、何でそんなに怒られたんだ?」

俺がそう言うとツバキが声を掛けてきた。

「それは父上が生まれが良いのにも関わらず、運が悪い事で馬鹿にされた背景もありますが日々の常識の無さから来るものが有ったのかと。」

えぇ・・・そんなに酷かったかなぁ・・・?

俺がそう思っているとツバキが言った言葉にサスケが恥ずかしくなったのか、顔を背けていた。

俺達がそんな話をしながら進んでいると目的の場所に到着した。

「やっぱり壁だな。」

「此処でござるか?何の変哲もない壁・・・ウォッ!」

サスケは壁をトントンしながら俺が言った場所に近付いていき、急に壁が無くなった為に転びそうになっていた。

「なっ、分からないだろ?」

「ビックリしたでござる。本当に何の感触も無いでござるなぁ。」

「そうなんだよ。ツバキは何か気付いたか?」

俺がそう言うとツバキも首を横に振っていた。

「だよな。俺も気を飛ばして判るかと思ってやってみても壁と変わらないんだ。」

「なら師匠はどう・・・マップというやつでござるか。」

「コレはスキルじゃ・・・あぁ、そういう事か。」

「どうしたでござるか?」

「マップはスキルじゃないんだ。」

「どういう事でござるか?」

「コレはスキルじゃなくてライヤ様の寵愛の能力の1つって事だ。」

「加護ではなく寵愛でござるか?」

「あぁ。」

「・・・凄いでござるな。」

「ん?何がだ?マップか?」

「マップも凄いでござるが寵愛でござる。」

「どういう事だ?」

「拙者が知らないだけかもしれないでござるが知りうる限り、使徒様であろうと複数の加護を持てど、寵愛まで受けている方は居なかったはずでござる。」

「そうなのか?」

「ツバキは知っておるか?」

サスケの質問にツバキは首を横に振って応えた。

「そうか、まぁいいや。何となく自分でも異常な事っていうのは最初から思ってたし。」

「そうでござるな。」

「まぁ、マップがライヤ様の力だから場所の特定が出来るんだろうな。」

「そうでござるな。生き残った者の中でマッピングに秀でた者がランクに見合った者達を連れて同じ場所に行っても見つからなかったという事もあって、死の壁は固定された場所ではなく、移動するトラップもしくは偶発的に発生するトラップの可能性が出てきたでござるな。」

「・・・まぁ、そうか。冒険者や兵士の安全性を考えれば過去に捜索されて解明されてても不思議じゃないな。」

「そうか、なら攻略組だけじゃなくて色んな人に広めた方が良いな。」

「う~ん、確かにアイテム等は無い事は伝えるべきだとは思うでござるが、それ以外は伝えなくとも良いでござるよ。」

「そうなのか?」

「それでも入るのは自己責任でござる。」

「まぁ、そうか・・・ところで此処から魔物が出てくるみたいな事は無いのか?」

「聞いた事は無いでござる。」

「そうか、それなら問題なさそうだな。」

俺はそう言いながら中に入っていくと全員着いてきた。

「お前達も行くのか?」

「1度行ってみたかったでござるよ。」

「子供らは何となくって感じだけど、ツバキもか?」

俺がそう言うとツバキは恥ずかしそうに頷いた。

「まぁ、いいや。なら、お前達が相手に出来そうなら倒してくれ。」

「「「「は~い。」」」」

「承知したでござる。」

「御意。」

俺は全員の意思を確認すると通路を進み扉を開けて中に入った。

「トリプルヘッドサウルスでござるか。」

「強いのか?」

「魔法や咆哮等の遠距離攻撃、範囲攻撃をしてこないのでござるが兎に角、HPと攻撃力、防御力が異常に高く、それだけでSSランクに近いSランクでござる。」

「ほう。それは面倒な魔物だな。行けるか?」

「師匠以外のメンバーでという事でござるか?」

「そうだな。」

「それならば問題ござらん。」

「そうか、なら任せる。」

俺がそう言うとサスケ達は顔がT・レックスの三つ首の首長竜で全長300mは有りそうな魔物に突っ込んで行った。

サスケは皆んなに指示を出すと先ずは子供達が魔物の攻撃がギリギリ届かいであろう場所から魔法攻撃を3つの頭や胴体に放った。

その攻撃を受けた魔物からのヘイトが完全に子供達に向いたのを確信したサスケは子供達にその場から移動させて魔物の攻撃範囲外からの魔法攻撃を継続する様に指示し、魔物が子供達の方に向かった瞬間にサスケは魔物の足元へ向かい、ツバキは尻尾がある方へ影移動をした。

2人が到達した瞬間、子供達は少し威力を上げた魔法を再び放ち、魔法が到達した瞬間、サスケは飛び上がり前足の膝裏を大きく切り裂き、ツバキは尻尾の付け根に苦無を打ち込み、2人はその場を離脱した。

魔物は子供達の魔法を受け止める為に尻尾を地面に叩きつけようとするもツバキが打ち込んだ苦無の所為で力が入らず、その状態で魔法を受けてしまい、倒れない様に踏ん張ろうとしても膝裏を切られた為に前のめりになり、そのまま倒れてしまった。

子供達はその状況を見て一気に止めを刺すべく、動き出そうとしたが、サスケに制止された。次の瞬間、魔物は自分の足を食いちぎり、1本の頭で身体を支えて立ち上がり、残りの2本で足と尻尾を壊したサスケ達を執拗に攻撃しようとしていた。

それを見た子供達は距離を保ちつつ、今度は真ん中の頭がある首の付け根とそこに近い胴体に向けて連続で魔法を放ち続けた。

サスケを追っていた真ん中の頭は子供達の魔法攻撃によってその動きが鈍り、サスケはそれを見逃さず頭の攻撃を紙一重で避けて頭の下に潜り込み、脳に目掛けて浸透系の攻撃を繰り出し頭の1つを潰した。

その後は魔物の必死な抵抗はあったもののサスケ達と子供達の魔法と気の見事な連携の前には足掻く事も難しく魔物は魔石のみを残して討伐する事が出来た。

「皆んな最高だった。」

俺がそう言うと皆んなは喜びを露わにして互いを褒め称えていた。

暫くして全員が落ち着くと奥から1人の男性の霊が近付いてきた。

『御見事です。』

その男性霊がそう言った瞬間。

「ミツヒデ!!!」

サスケはそう言うと男性霊に飛びかかった・・・が、相手は霊なのでそのまま通り過ぎてしまった。

『大将は相変わらずだな。』

「何故貴様が此処にいるでござるか!!!」

『何故っていつの間にかとしか言えんな。』

「おいおい。サスケ、落ち着け。」

俺がそう言うと顔を真っ赤にして怒っていたサスケがミツヒデさんが死んでいるのに気付き、胸に手を当てて落ち着こうとしていた。

俺はミツヒデさんの発言が気になったので声を掛けた。

「ミツヒデさん、少し見せてもらいますね。」

『何を見るのか分からんが好きにすれば良い。』

俺はミツヒデさんの了解を得ると来歴を確認した。

「なるほど・・・サスケ、ミツヒデさんは多分、お前を裏切ってないかもしれないぞ。」
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