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第179話 [北へ。]

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暫くすると準備を終えたセドさんが戻ってきた。

「準備が整いました。此方へどうぞ。」

俺はそう言われたのでセドさんの後を着いていくと何故かリーグさんも一緒に着いてきた。

「リーグさん、お仕事は良いんですか?」

「休憩じゃ。」

「良いんですか?」

「はい。問題ありません、ただ時間によっては食事以外の時間は全て公務になりますね。」

「え゛っ!・・・。」

セドさんがそう言うとリーグさんは固まってしまったが、そんなリーグさんをセドさんは気にする事なく、先に進んで行ったので、俺はとりあえず着いて行った。

暫く歩いて部屋の前まで来ると意識を取り戻したリーグさんが猛スピードで走ってきた。

「ゼェゼェゼェ・・・。」

「大丈夫ですか?」

「シュウト様、よくある事なので。では此方になります。」

セドさんはそう言うと扉を開けて俺を促してきたので、俺はリーグさんを心配しつつも中に入った。するとそこには大小様々な虹水晶が山の様に置いてあった。

「す、凄い量ですね。」

「アレから貴族やギルドに依頼をして集めておりましたので。」

「短期間でこんなにも集まるんですか・・・。」

「はい。特に攻略組創設の報せを出す際に使徒様が必要だと併せて発表した後は10倍以上の勢いで集まりました。」

「えっ・・・。」

それを聞いて俺が固まっているとリーグさんが話し掛けてきた。

「それだけシュウト殿は敬われておるんじゃよ。」

「はぁ・・・使徒ってだけでそうなるんですか・・・。」

「何か勘違いをしておるのぅ。のぅセドよ。」

「そうですね。ただ単に使徒様という事ではここまで集まる事は無かったと思われますよ。」

「そうじゃ、シュウト殿からすれば出来る事をしたまでと思っておるだろうが、王都を救い、隣人知人を転生させ、腐敗した貴族を取り潰しに追い込み、抑圧されていた民を救ってきたではないか。それは他の誰でもないシュウト殿の功績じゃて、敬うのも無理はなかろう。」

「いや、王都や転生は分かりますけど、貴族の件は自分じゃないですよ。」

「民や他の良心的な貴族はそうは思っておらんよ。まぁ、貴族では無くなった者からもそう思われとるだろうがの。」

「えー・・・。」

「そういうものじゃ。そうでなければここまで集まらんぞ。」

「はぁ~、分かりました。それでこれだけの量だとどの位回収していったら良いんですか?」

「小さい物に関しては殆ど費用は掛かっていませんが、拳大以上の物は観賞用としての価値がありましたので、サイズによって値段が変わりますが、大体以前お見せした部屋が3部屋分になりますね。」

「なるほど、その位なら自分は問題ないですけど、教国に送る分は大丈夫なんですか?」

「問題ありません。まだまだありますし、半年もすればまた1部屋は埋まります。」

「そうなんですね。じゃあそれでお願いします。」

俺はそう言うと虹水晶をどんどん吸収していった。

虹水晶があと半分程になった時、リーグさんが話し掛けてきた。

「ところでシュウト殿はこれから北へ向かわれるんじゃったの?」

「そうですね。一旦、公爵領に行ってから周辺の使命をする予定です。」

「そうか・・・。」

「何かあるんですか?」

「いや、その様な報告は受けておらんが、シュウト殿が急いで虹水晶を集めておる様じゃて、もしかして神託が降りたのかと思っての。」

「今回は個人的な事なので、それは無いですよ。」

「そうか、それは良かった。」

リーグさんはそう言うとホッとした表情になった。

そうこう話しているうちに虹水晶を全て吸収したので、セドさんにお願いして廃棄品の回収しに向おうとするとリーグさんに呼び止められた。

「シュウト殿、回収し終わったら執務室に寄ってくれんかの?」

「どうしてですか?」

「紹介状を用意しておくゆえ、取りに寄って欲しいのじゃ。」

「そうなんですか、ありがとうございます。では回収し終わったら寄らせて貰います。」

「うむ、ではの。」

リーグさんはそう言うと執務室の方へ戻って行ったので、俺はセドさんに案内されて回収に向かった。

俺は3部屋全ての廃棄品を回収するとリーグさんが居る執務室へ向かった。

「陛下、ただいま戻りました。」

「うむ、入れ。」

リーグさんがそう言うとセドさんが扉を開けてくれたので、中に入るとリーグさんの横に1人立っていた。

「あっ、ドルボアさん、お久しぶりです。」

「シュウト様、お久しぶりです。私の名前を覚えてて頂き、ありがとうございます。」

「いえいえ、当然の事なので。それよりもドルボアさんが此処に居るという事はドルボアさんも行けるんですか?」

「そうじゃ。元々、他の者も里帰りしとるからのぅ、此方としては決まっておったが、問題ないかの?」

「自分は良いですけど、移動はどうしますか?」

「それならば問題ない。もう既に馬車とドルボアを警護する兵士は先に向かわせておるからもう少しで着くはずじゃ。」

「えっ?でも長旅なのにドルボアさんが居なかったらバレませんか?」

「それも問題ないのじゃ。ネクロに変身魔法でドルボアに成りすまして向かわせたからの。」

「そうなんですね。なら、今はどの辺にいるか分かりますか?」

俺がそう言うのが分かっていたのか、リーグさんは机の上にある地図を指差して話し始めた。

「報告によれば、領都から2時間程離れたこの辺りで休息しておるはずじゃ。」

「なるほど。」

俺はそう言うと千里眼でその周辺を探した。するとリーグさんが言った場所に小隊規模の集団が休憩していた。

「あぁ、もしかして玄武の紋章が付いてる馬車がそうですか?」

「・・・シュウト殿はもしかして見えておるのか?」

「あぁすいません。この前、千里眼っていうユニークスキルを貰ったんでそれで見たんです。」

俺がそう言うと全員が呆れた様な表情になっていた。

「まぁ、何時もながらシュウト殿には驚かされるのぅ。それがそうじゃ。ネクロには突然、シュウト殿とドルボアが現れると言ってあるゆえ、何時でも行って問題ないぞ。」

「そうなんですね。なら、ドルボアさんの準備が出来次第、出発したいと思います。」

「私ならば何時でも。」

「あっ、でも御家族は宜しいのですか?」

「それならば問題ありません。家族はもう既に領都に着いている予定ですので。」

「そうなんですね。なら、失礼します。今回もありがとうございました。」

「いやいや、余の方も利のある事じゃて、気にせんでくれ。のぅセド。」

「そうでございます。恥ずかしながら財政的に虹水晶にして貰えて有難かったのは此方の方です。」

「そうなんですね。もしあれでしたら今後も廃棄品の回収は虹水晶と交換でも良いですか?」

俺がそう言うとドルボアさんが反応した。

「真でございますか!?」

「は、はい。」

「それは助かります。」

「・・・もしかして、財政を圧迫してました?」

俺が恐る恐るそう聞くとドルボアさんは慌てて答えてくれた。

「そ、その様な事はございません。ただそうして頂けるのであれば、他の公共事業に資金を回せると思いまして。申し訳ございません。」

「いえいえ、それでしたら良かったです。」

俺達がそう話しているとリーグさんが声を掛けてきた。

「ドルボアよ、お主にはここのところ苦労を掛けておるのは分かっておるが、シュウト殿に言う事ではないぞ。」

「申し訳ございません。」

「まぁ良い。お主が昼夜問わず動いてくれたお陰で財政的な問題は今のところ落ち着いたでの、1週間程身体を休めてまいれ。その代わり戻ってきた時には、また頑張ってもらうがの。」

「陛下のお心遣い、感謝致します。」

「じゃあ行きますか。」

「承知致しました。」

「シュウト殿、またの。」

「はい。ではまた。」

俺はそう言うと再び千里眼を使って馬車の中を見るとドルボアさんとそっくりな人が馬車の中で座っていたので、その馬車の中に転送ゲートを出現させてドルボアさんと共に移動した。

「お久しぶりでございますじゃシュウト様。」

「お久しぶりですネクロさん。」

「シュウト様に名を覚えて貰えておるとは僥倖ですじゃ。」

「ネクロ、それで気付かれてはおらんか?」

「これはドルボア様、挨拶が遅れ、失礼しました。元々ドルボア様の近しい者達は奥様方の方に行ってらっしゃいましたので、問題ないかと。」

「そうか。ご苦労だった変身を解いても良いぞ。」

「然らば。」

ネクロさんはそう言うと変身を解いて元の姿に戻り、すぐ近くに居たネクロさんぽい物も姿が霧のように消えていった。

「ネクロさんに見えていたのも魔法ですか?」

「そうじゃ。魔法で儂が居るように見せていたのじゃ。そうせんと急に儂が居るようになってしまうでのぅ。」

「なるほど。」

「然し、シュウト様はよく分かったのぅ。これでも儂なりに自信があったのじゃが。」

「それは馬車の中に生き物の気配が1つしかなかったので。」

「気配か・・・流石によく分からんのぅ。御教授頂けると有難いが如何にシュウト様といえど知らぬ者に教えるのは難しかろう?」

「いや、ネクロさんみたいに幻影を見せる様な魔法は使えないですけど、気配だけなら出来ますよ。」

「おぉぉ。」

ネクロさんが興奮しながら近付いてきたので、これ以上近寄られない様にネクロさんの後方に気を送り気配を感じられる様にした。

「誰じゃ!」

ネクロさんはそう言うと俺が出した気配の方を向き、杖を構えていた。

「ネクロさん、自分ですよ。これが気配です。」

「ほう。誰かが忍び寄ったのかと思ったわい。それでどうやったのかのぅ?」

「気です。気を送る事で気配を再現したんです。」

「気か・・・儂には無理じゃのぅ。」

「多分、魔力でも可能だと思いますよ。」

「ほう。それはどの様にするのじゃ。」

「ネクロさんがやった幻影に人並みの魔力を余分に込めれば恐らく出来ると思いますよ。」

「なるほどのぅ。」

ネクロさんはそう言うと自分の幻影を創り出した。

「シュウト様、どうじゃ?」

「薄いですけど気配を感じますね。」

「ふむ・・・難しいのぅ・・・じゃが、なるほどのぅ・・・魔力は使うがそうか、これだけの魔力を込めるという事は・・・・・。」

ネクロさんはそう言いながら自分の世界に入っていった。

「えぇと・・・。」

「シュウト様、ネクロはそうなると暫く戻ってきませんよ。それよりも着きました。」
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