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第165話 [ボタンちゃんの成長。]

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「アレ?師匠どうしたでござるか?」

そう聞かれた俺はさっき見つけたダンジョンの説明をした。

「なるほど、確かにツバキの想像通りかもしれないでござるな。」

「それでツバキの提案でボタンちゃんにもゴブリン討伐の経験をさせてあげようってなったから迎えに来たんだ。」

「なるほど・・・確かにゴブリンは狡猾でござるからなぁ・・・承知したでござる。」

サスケから了承を得た俺は全員を連れてゴブリンの居るダンジョンに戻った。

「じゃあ此処からは各々別れて行動な。一階層毎に殲滅する予定で行くから殲滅し終わったら次の階層に進むからな。」

「殲滅出来たらってどうやって分かるでござるか?」

「俺が合図を出す。因みにサスケ達は家族でボタンちゃんを見ながら次の階層に向けてそのまま進んでくれたらいい。」

「ボクたちは?」

「お前達は右側、俺は左側を殲滅しながら進んで行く。」

「わかった。」

シンジがそう言うと2人の姉も頷いた。

「とりあえず、30階層までは広いステージになってるからそのまま行くけど、此処は10階層毎にボスが居るからボス部屋は速攻で終わらせるぞ。」

俺がそう言うとカナエが声を掛けてきた。

「ボタンちゃんが戦わなくていいの?」

「サスケが問題ないと言うなら戦わせるが、それは今のところ、10階層のボスだけだな。」

「そうなの?」

「あぁ、単体で居るのはその階層だけだからな。」

「そうなんだ。」

「で、サスケどうする?」

「拙者は親としてこの子を危険に晒すのは反対でござる。」

「なら、止めておくか?」

「いや、師匠が10階層のボスならばと言うのであれば、それは危険ではないでござる。」

俺はサスケのその反応に多少呆れながらも嬉しく思い、子供達の方を見た。

「シンジ、メグミ、お前達は傍で見てただろ。どう思う?」

「う~ん。大丈夫だと思うよ。」

「ボクはちょっとしんぱいかなぁ。」

「そうか。カナエ、祝福を与える事は出来るか?」

「ボタンちゃんに?」

「あぁ。」

「人化した状態だと無理だけど出来るよ。」

「じゃあ頼む。」

「分かった。」

カナエはそう言うと人化を解いて鳳凰に成るとボタンちゃんに祝福をした。するとボタンちゃんが光出し、その光が額に集約され三つ巴の神紋の様な模様が浮き出てきた。

「三つ巴紋か?ボタンちゃん、体調はどうだ?」

「凄いよ♪」

ボタンちゃんはそう言うと空高くジャンプし、空中を蹴って移動し始めた。

「わぁすごい!」

シンジもそう言うと空歩を使ってボタンちゃんを追い掛けて行った。

「メグミ、アレは前から出来てたのか?」

「カナ姉の祝福で出来る様になったんだと思うよ。」

「・・・シンジの祝福でスピード、メグミの祝福でパワー、カナエの祝福でテクニックか。」

俺がそう呟くとサスケが話し掛けてきた。

「師匠、ボタンのあの模様は何なのでござるか?」

「前世とは関係ないと思うが、多分3つの祝福が合わさる事で印として出たんだと思うぞ。」

「なるほど。それで前世では何というのでござるか?」

「三つ巴紋っていう神紋の一種だな。」

「シンモンとは何でござるか?」

「簡単に言うと貴族の紋章があるだろ。神紋は神様を祀る者達の紋章の事だと思ってくれたら良いと思うぞ。」

「なるほど、三聖獣様の紋章の形という事でござるか。」

「まぁそれで妥当だと思うぞ。」

「おぉ。」

「それよりもサスケも空歩は出来るのか?それとも獣人なら出来るのか?」

「拙者もツバキも出来ますが、獣人全てが出来るものではござらん。しかもボタンの様な幼子が出来るなど聞いた事がござらん。」

「そうか。なら、カナエの祝福の力だな。」

「祝福の力でござるか?」

「多分な。って事で10階層に着くまでに出来るだけ爪での戦闘技を教えてやれ。それなら危険な目に遭う事無く、ボスと対峙出来ると思うぞ。」

俺がそう言うとサスケはボタンちゃんの方を向いた。

「ボタン!」

サスケがそう言うとボタンちゃんは急いで戻ってきた。

「お父さん、何?」

「爪の技を引き継ぎたいか?」

「うん。」

「では、厳しく教えるがそれでも良いか?」

「うん。」

「分かった。」

サスケはそう言うとそれ以上何も言わずに俺が示したダンジョンの次の階層への道を突き進んだ。するとシンジがボタンちゃんに寄り添った。

「ボタンちゃん、たいへんだとおもうけど、がんばってね。」

「うん。」

ボタンちゃんはそう言うとサスケの後を追った。

「ツバキ、サスケが居るから問題ないと思うが、姿を隠して付き添ってやれ。」

「御意!」

ツバキはそう言うと姿を消して2人の後を追った。

「じゃあお前達は右側を頼むな。」

「うん。」

「は~い。」

「はい。」

子供達はそう言うとシンジは杖を、メグミは青龍偃月刀を、カナエは鉄扇を用意して、走っていった。

俺は子供達を見送るとカードを取り出して念動力で浮かせるとカードが形を保てるギリギリで回転させ、ボタンちゃんのスピードに合わせて、ゴブリンを殲滅して行った。

その後、ゴブリンの数が増え、より狡猾に襲ってくる様にはなったが、それに足止めされる様子も無く、ボタンちゃんは徐々にペースを上げて階層を進んでいき、1時間もしない内にボス部屋の前まで来た。

「ボタンちゃん、この扉を開けたら10階層のボスだけど、どうだい?」

「うん。大丈夫。」

ボタンちゃんの言葉を受けてサスケを見るとサスケも自信が有りそうな顔で頷き返してきたので、俺はそのまま扉を開いた。するとそこには軽装備を身に纏って、巨大な戦斧を持ったゴブリンが居た。

「ゴブリンソルジャーですか、限りなくBランクに近いCランクの魔物ですね。」

「そうなのか?ツバキ、問題無さそうか?」

「一体ならば問題無いかと。」

「そうか、なら頑張ってな。」

「うん。」

ボタンちゃんはそう言うと爪を出して突っ込んで行った。

ゴブリンソルジャーは近づいてきたボタンちゃん戦斧を振り下ろすが、振り下ろした先には既にボタンちゃんは居らず、通り過ぎたボタンちゃんに装備の着いていない場所を抉られていた。

その後、ボタンちゃんはゴブリンソルジャーの攻撃を避けて斬りまくっていたが、ゴブリンソルジャーの肉が分厚く、致命傷にはなっていなかった。

暫くボタンちゃんの攻撃を受けていたゴブリンソルジャーだが、ボタンちゃんの攻撃力が自分を死に至らしめる事が無いと思ったのか、ボタンちゃんが避けきれない様に戦斧で旋回する様に下半身に狙いを定めて攻撃を繰り出した。

その攻撃でボタンちゃんが飛び上がった瞬間、ゴブリンソルジャーはニヤリとし、そのまま回転して空中にいるボタンちゃん目掛けて戦斧を振り上げた。

自身に迫る戦斧を横目にゴブリンソルジャーが油断したのを確認したボタンちゃんは空中で回転した次の瞬間、空中を蹴って回転したままゴブリンソルジャーの頭に突撃し、ゴブリンソルジャーの頭に爪を突き刺し、絶命させた。

「やったぁー!勝ったぁー!」

ゴブリンソルジャーを倒したボタンちゃんはその場でジャンプして喜んでいたが、ゴブリンソルジャーの血でドロドロになっていたので、ツバキが急いで近づいてクリーンを掛けてあげていた。

「姉ちゃん勝ったよ♪」

「そうだね。良かったね。」

「うん♪頑張ったもん♪」

ボタンちゃんはそう言うと俺達がいる方に走ってきた。

サスケは嬉しそうに屈んで手を広げたが、ボタンちゃんはそんなサスケをスルーしてシンジの抱きついた。

「やったよシン君♪」

「よかったね。」

そう言いながら2人で喜んでいるのを横目に手を広げたサスケがその形のまま寂しそうにしていたので、俺はそんなサスケをいたたまれなくなって声を掛けた。

「サスケ、そんなものだ。」

「・・・そうでござるか・・・。」

「あぁ。俺も有った。」

「師匠もでござるか。」

「こういう時は何も言わずに見守ってやろうな。」

「そうでござるな。」

その後は30階層までボス以外は10階層までと同様進んで行き、31階層に到着した。

「洞窟でござるか。」

「そうだな。此処からは迷路みたいになってるから曲がり角で道を示すから討伐するメンバーとちゃんとしたルートを示す人、先に進むメンバーに別れて殲滅していくぞ。」

俺がそう言うと全員が頷いたので、俺は話し続けた。

「後、35階層もボス部屋になってるみたいだから、ボスをクリアしたら今日の殲滅は終了だ。」

「そのまま踏破しないのでござるか?」

「しない。此処に来た目的は使命だからな。」

「なら、なおの事、進むべきではござらんか?」

「いや、使命も大切だが、子供達の成長も大切だからな。後、確認したい事もあるしな。」

「そういう事なら分かったでござる。」

俺達はそう言うと迷路の様な洞窟を進んで行き、予定通り35階層までクリアした時点でアイテムボックス改に戻って就寝した。

翌朝、子供達と朝食を終えると俺は子供達に話し掛けた。

「お前達は今日は此処にいて欲しいんだが良いか?」

「なんで?もうすこしでおわるよ?」

「いや、ボタンちゃんにはこの先は危険だからな。」

「そうなの?」

「あぁ。」

「私は行っていい?」

「カナエにはお願いがあるんだ。」

「何?」

「ボタンちゃんの昨日の戦い方を見て足りない部分が有ったのはカナエなら気付いたろ?」

「・・・うん。」

「そこを補える技を教えてあげて欲しいんだ。」

「えっ、でも・・・。」

カナエはそう言うとサスケの方を見た。

「確かにサスケが教えているが、本物の爪で戦ってるサスケには教えられない部分だったろ。」

「そうだけど・・・。」

「拙者の事は気にしないで良いでござるよ。」

「分かった。」

「メグミは?」

「メグミとシンジはその都度、相手になってやってくれ。」

「「分(わ)かった。」」

子供達の返事を聞いて今度はツバキの方を見た。

「ツバキも残ってボタンちゃんの世話を頼むな。」

「承知しました。」

「拙者はどうするでござるか?」

「サスケは着いてきてくれ。」

「承知したでござる。」

俺達はそう言うとアイテムボックス改を出て行った。

「子供達を残したという事はこの先に何かあるのでござるか?」

「多分、階段を降りれば分かる。」

俺はそう言うと先に進んだ。
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