上 下
157 / 317

第156話 [2人の子供]

しおりを挟む
「トールキンさん、2つ程聞いて良いですか?」

「何じゃな?」

「トールキンさん達って背が高いですよね?」

「あぁ、その事か。ドワーフの里と言われておるが正確にはドワーフの里では無いのじゃ。」

「えっそれは龍人族の事ですか?」

「いや、そうでは無いのじゃ。儂らはエルダードワーフじゃから正確に言えばエルダードワーフの里となるのじゃ。」

「エルダードワーフ?もしかしてドワーフから進化した種族なんですか?」

「いや、その辺は分からぬ。この里では最初からエルダードワーフしか居らんからのぅ。」

「なるほど、成り立ちは分からないと。」

「そうじゃのぅ。分かりやすい違いは背の高さと自身で戦うか戦わないかの違いじゃないかのぅ。それに歴代の工法や素材の場所の記述はあっても歴史などは無いからのぅ。」

「じゃあ龍人族の人から聞けば分かるんじゃ?」

俺がトールキンさんにそう聞くと気持ちが落ち着いたのか、ドランさんが答えてくれた。

「それは無理だ。」

「どうしてですか?」

「先も言った通り、儂らは戦闘以外出来ん。」

「あぁ。なるほど。」

「そうじゃのぅもし、知りたければドワーフの国に行ったら分かるんじゃないかのぅ。」

「分かりました。」

「それでもう1つは何かのぅ?」

トールキンさんにそう言われた俺はガルンさんに渡された紹介状を手渡した。

「何じゃな?・・・なるほど、確かに儂の息子じゃ。」

「ん?俺がどうしたんだ?」

「ガルンからの紹介状じゃ。」

「ガルン?何で兄貴が出てくるんだ?」

「シュウト殿はお前を誘いに来たのじゃ。」

「俺を?」

「シュウト殿はドワーフの鍛冶師を探してるそうでな。ガルンに相談したらお前を紹介された様じゃ。」

「兄貴が俺を?」

「そうじゃ。彼奴はお前が里で孤立してる上に里の資材を使い過ぎて追い出されないか心配してくれておったみたいじゃ。」

「そうか・・・だが、幾ら兄貴がそう言っても素材が無けりゃ俺は行かねぇぞ。」

「素材か・・・ドラウプニル、いやドラウで良いか?」

「あぁ、問題ねぇ。」

「じゃあドラウはどんな素材が必要なんだ?」

「色々だ。例えば、ミスリルは必須だな。他にも最近は黒陽樹も必要だな。後は宝石類に魔物の素材だな。」

「ミスリルと黒陽樹は大丈夫だな。宝石類は確か火山が在ればとか言ってたから大丈夫だと思う。後は魔物の素材か・・・皆んなに頼めばいけるか?」

「火山が在ればって何だ?」

「あぁ、俺のダンジョンが在るんだけど、確か俺の精霊がそう言ってだと思う。」

「俺のダンジョン?」

「あぁ、見せた方が早いか。」

俺はそう言いながらアイテムボックス改を開いてドラウに触れた。

「な、何だこの門は!?」

「俺のダンジョンに繋がってるというか、ラビリス様に改良して貰ってアイテムボックス改っていうスキルに俺のダンジョンが在るんだ。」

俺がそう言うとドラウは口を開けて動きが止まっていた。するとトールキンさんが声を掛けてきた。

「ドラウプニル、何を言っておるのじゃ?」

「親父には見えねぇのか?」

「何がじゃ?」

俺はそう言って不思議そうにしているトールキンさんの肩に触れた。

「な、何じゃ!?門が現れたぞ!?」

「自分が触れないと見えないし、触れないんですよ。」

「な、なるほど・・・息子、ドラウプニルはこの中で生活するのか・・・。」

「心配でしたら中に入って見ますか?どちらにしてもトールキンさんの許可も無しに連れて行く気は無いんで。」

俺がそう言うと他の2人も近寄ってきた。

「皆さんも行きますか?」

俺がそう言うとリングスさん以外全員が頷いたので、全員俺に触れて貰って森/川フィールドに入っていった。

「おぉ、此処がダンジョンなのか。なんと聖域の様じゃな。」

「そうですね。聖域に近いらしいです。」

「ほう。」

「後、襲って来る様な魔物はいませんよ。」

「それはダンジョンなのか?」

「まぁ戦闘を行うダンジョンは別のフィールドに在るんで。」

その後も矢継ぎ早にドランさんとトールキンさんに質問され、答えられる事は答えて行くとドラウはいつの間にか、俺が魔力を与え過ぎて黒陽樹になってしまった木を見たり触ったりしていたので、トールキンさん達に説明し終わった俺は近付いて声を掛けた。

「どうだ?気にいったか?」

「あぁ。聖域で此処まで良い質の物を探すのは難しいな。」

「そうか、あっそうだ。次いでにミスリルも見るか?」

「有るのか?」

「そこに置いてあるぞ。」

俺がミスリルが置いてある場所を指すとドランだけじゃなく、トールキンさんも一緒に走って行き、親子揃ってミスリルを持って色んな角度から眺めていた。

親子だなぁと思いながら歩いていき、ドラウに話し掛けた。

「どうだ?気に入ったか?」

「コレをどこで手に入れたんだ!?」

「駄目だったか?」

「違ぇよ!こんな高純度!いや、精製しなくても分かる!純度100%混じりっけなしのミスリルなんて何処で手に入れたんだ!?」

「別のフィールドだ。」

「じゃ、じゃあそこに案内してくれねぇか?」

「あぁ、別に良いけど。」

俺はそう言うと残った面々を見ると全員が頷いたので、洞窟フィールドに案内した。

「うぉおおおー!!!な、なんじゃあこりゃー!!!入口から既にミスリル鉱石じゃねぇーか!!!」

あれ?なんで?

俺がそう思っているとエダが地中から現れた。

「どうですじゃ?」

「どうですじゃ?って何したんだ?」

「頂いた魔力で奥の方から土壌改良しておったのじゃが、浸透力の関係で手前の方はミスリル鉱石に変わってしまったのじゃ。いかんかったかのぅ?」

「いや、とりあえずは良いんじゃないか?」

「まぁそうじゃよなぁ。普通の魔鉄鋼石は洞窟以外にしか取れなくなったでのぅ。採掘してもらわんとその内、外もミスリル鉱石になってしまうのじゃ。」

「お、おい!ど、どういう事だよ!」

「誰じゃお主は?」

「もしかしたら此処で鍛治を行ってくれるかもしれないドラウだ。」

「そうか、そなたがフローガの要望じゃった鍛冶師かのぅ。・・・じゃが、こやつには既に火の精霊が着いておるぞ。」

「駄目なのか?」

「いや、そうでもないのじゃが、1人でやるよりも仕事量が減ってしまうでのぅ。」

「あぁ、そういう事か。なら問題ないかな。もう少ししたら火山フィールドも作れると思うし。」

「なるほど、それなら問題ないのぅ。」

「なら、採掘もしてくれるじゃろうし、儂としては歓迎じゃ。」

「何話を進めてんだよ。」

「あれ?反応が良かったから良いのかと。」

「いや、それよりも何でミスリル鉱石ばかりなんだ?」

「あぁその事か、此処が俺のダンジョンっていうのは言ったよな。」

「あぁ。」

「俺の魔力をフィールドに撒くと精霊達がそのフィールドで出来る事をしてくれてるんだ。」

「じゃあなんだ。シュウトが魔力を放てばミスリル鉱石が出来るってぇのか?」

「いや、そうじゃないのじゃ。余波でミスリル鉱石に成ってるだけじゃ。」

「余波?」

「そうじゃ。奥で種を作っておるからその余波じゃの。じゃから奥に行けば違う鉱石が在るのじゃ。」

「じゃあ此処でなら全ての鉱石が手に入るのか?」

「今は無理じゃがその内そうなるじゃろう。」

エダの返答で心が揺らいでるのを感じた俺は再度ドラウに聞いてみた。

「どうだ?此処へ来るか?」

「・・・。」

「渋る理由は何なんだ?」

俺がそう言うとドラウはチラチラと同じ方向ばかりを見ていたので、その方向に目をやるとニップルさんが立っている方向だった。

「ん?もしかして「わーーー!!!」んか?」

俺がニップルさんの事を言おうとするとドラウは必死に声を上げて防ごうとした。するとニップルさん以外から盛大なため息が漏れ、トールキンさんが声を掛けてきた。

「ドラウプニル、お前まだ儂らにバレて無いとでも思ってるのか?今日初めて会ったシュウト殿にもバレておるのに・・・はぁ。」

「「え!?」」

トールキンさんがそう言うとドラウとニップルさんが同時に反応した。すると今度はドランさんが声を掛けた。

「ニップル、この里の警備やその他、物作り以外をしているのは龍人族だ。その長である儂がお前達の逢い引きに気付かないとでも思っていたのか?のぅドゥーラ。」

「「あっ。」」

「この様子だと本人達は隠せていると思っている様ですよ。」

「お、俺達の事、反対じゃないのか?」

「反対などせんよ。それに何時言ってくるか待っておったしの。のぅドランよ。」

「そうだな。親の儂が言う事では無いがニップルは忌み子として家族以外の同族には嫌われており、その所為か本人の好みも同族には向いて居らんのも知っておる。」

「そうじゃな。儂の息子も同じ様なものじゃ、成る可くして成ったといった感じかのぅ。」

お互いの親の反応を見て、2人は近付き、お互いの親に向き合った。

「なら、俺達が夫婦になる事を認めてくれるのか?」

ドラウのその言葉にドランさんとトールキンさんはお互いに頷き、トールキンさんが答えた。

「条件がある。」

「何だよ。俺が出来る事なら何でもするぞ。」

「言うたな、違えるなよ。」

「分かって・・・いや、分かりました。お義父さん。」

「何か気持ち悪いな。」

「何だよドゥーラ!」

「お前はそれで良いんだよ。」

「チッ!真面目にしたのによぅ。で、親父達の条件って何だよ!」

ドラウがそう言うとトールキンさんは真剣な顔でドラウに向き合うと話し始めた。

「儂らからの条件は1つ、シュウト殿の為に尽力せよ。」

「分かった。」

「え?」

俺が驚いて声を上げたが何故か全員にスルーされ、そのまま話が進んで行き、ドラウ達は一旦様々な道具を取りに行ってこのまま此処に残る事なった。

「本当に良かったんですか?」

「このまま此処で居たとしても儂らが里長や族長を交代した時に里から追い出される事は目に見えておるからな。のぅドラン。」

「そうだな。間違いなくそうなるだろうな。今は儂らが長として抑えておるが、それが無くなれば・・・自ずとだな。」

そんな話をしているとドラウが戻ってきて黒陽樹を何本か欲しいという事と洞窟フィールドに家を建てて良いかを聞かれたので、エダを呼んで後を頼んでからアイテムボックス改を出ていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する

Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

処理中です...