上 下
156 / 319

第155話 [2人の長とその家族。]

しおりを挟む
「私はこの里の現里長を務めております。トールキンと申します。」

「私は龍人族族長をしております。ドランと申します。」

2人が挨拶をするとリングスさんが声を掛けた。

「この方は王家縁の方で、シュウト様であるが、この方を紹介するにあたり各々方には契約をしてもらう必要がある。そこでシュウト様の意向で家族の者と信の置ける者も連れてきてその者らにも同様の契約をして貰いたい。」

「・・・それは儂らに対しての枷という事ですかな?」

リングスさんの話にドランさんが睨みながら反応してきた。

「シュウト様にその様な意図は無い。」

「リングス殿は信用出来るが、シュウト様は初めて来られた方、素直に、はい、そうですかとは言えぬぞ。」

トールキンさんの物言いにリングスさんが詰め寄った。

「シュウト様に失礼ではないか!」

リングスさんはその返答に過剰に反応していたが、俺はリングスの肩に手を当てて止めた。

「御二方ともお立ち下さい。そこまでの考えは有りませんでした、申し訳ないです。ならば先ずは御二方だけでも契約して下さいませんか?」

そう言うと2人は話し合って頷き合い此方に話し掛けてきた。

「分かりました。ですが、内容に納得がいかない場合は契約を破棄させて頂けるのですか?」

「それは構いません。ただその際は二度と此方に立ち寄らないです。」

「そうですか。それならば承知致しました。」

トールキンさんがそう言うとリングスさんが声を掛けた。

「それだけでは無い。契約して話した内容を契約解除したからと他者に漏らせば一族全てが王国法に乗っ取り処罰される事になるが問題ないか?」

「我々が話さなければ良いのであれば問題ない。そうだなトールキン。」

「そうじゃな。では、宜しくお願い致す。」

2人の了承も得たので連れて来てくれたドゥーラさんを一旦退室してもらうと俺は一応コソッとフォースを呼び出して結界を張って貰い、契約を施してもらった。

「では、シュウト様の本当の御身分をお話する・・・・・」

施し終わりリングスさんが俺の紹介をすると何時も通り、2人は平伏した。

「「この度は失礼致しました!」」

「いえいえお気になさらずに自分としては普通に接して貰える方が有難いのでそうして頂けませんか?」

「し、しかし・・・。」

「お願いします。リングスさんは何を言っても無駄ですけど、お2人はそうではありませんよね。」

「なっ、シュウト様!それは騎士として出来ませんと・・・。」

「ねっ、この通りなんですよ。」

「ガッハッハッ!確かにリングス殿では難しいでしょうな。」

「なっ!ドラン殿!私は騎士として・・・。」

「そういうところじゃな。まぁそういう御仁だからこそ信用出来るのじゃが。ホッホッホッ。承知・・・いや、分かったわい。」

「そうだな。シュウト殿がそういうのであれば、それにその方が儂らは楽だしな。」

「はい、お願いします。それで自分が御家族やその他の方を一緒に契約して欲しいと言ったのは・・・。」

俺が理由を話そうとするとドランさんが手で制してきた。

「理由は何となく分かるので、結界を解いて貰えぬか?」

「あっ、やっぱり分かってましたか。」

「それはな。何せ隣りにいるトールキンも精霊に協力してもらって鍛冶をしているからな。」

「あぁ、なるほど。確かドワーフの方々は物作りの際に精霊を召喚するんでしたね。」

「そうですじゃ。儂らは精霊に協力して貰って作る事が出来るゆえ、他の種族が作れぬ物も作れる上、早く完成させる事が出来るのじゃ。」

「なるほど。それでドワーフ達が作る物は素晴らしいんですね。エルフの方も精霊と共にあると聞きましたが、此方でも精霊と共に過ごしているのですね。」

俺がそう言うとトールキンさんが震え出した。

「あんな精霊を武器にする様な奴等と一緒にしないで頂きたい!」

「お、おぉ。すいません。」

俺がそう言うとトールキンさんが怒っていたので俺が謝罪するとトールキンさんは我に返ったのか頭を掻きながら頭を下げていた。すると隣りにいるドランさんが声を掛けてきた。

「申し訳ない。トールキン達はエルフとは考え方が違うから一緒にすると怒るんだ。」

「そうなんですね。」

「すみませんですじゃ。つい。それよりも家族と信を置ける者でしたな。ドゥーラ、入って来なさい。」

「はい。」

「儂とドランの家族を呼んで来て貰えるか?」

「妹は良いとしてトールキンさんには失礼だけど彼奴は呼んで来るかどうか・・・。」

「なら、来なければ儂の権限でお前には鉱石を扱えぬ様にすると言うていい。」

「分かりました。では、行ってきます。」

ドゥーラさんはそう言うと部屋を出て行ったので、俺は火山地帯に入る許可を得る為に話をして、ガルンさんからの紹介状の話をしようとするとドゥーラさんが人を連れて戻ってきた。

「親父、俺は忙しいんだ。話ってなんだ。」

「なんだでは無い!くだらん研究をまたしてただけじゃろ!」

「魔武具の研究はくだらなくなんてねぇ!」

「くだらないと言って何が悪い!幾ら強力だとはいえ、湯水の様に資材を使う様な物をくだらぬと言って何が悪い!その所為で里の者からの陳情が絶えぬのじゃぞ!」

「そんなもんほっときゃ良いじゃねぇか!」

「放っておけぬは!儂が里長の番になって50年じゃ!後50年で交代すれば、お前は里を追い出されるかもしれんのじゃぞ!」

「あぁうっせぇ!必要になった時に無かったら困るのは俺じゃねぇんだぞ!」

「そう言ってもう300年になるじゃろ!」

気の長い話だなぁと俺が思っているとドランさんが声を掛けた。

「親子喧嘩は後でやれ。今はシュウト殿に子供らの紹介をせぬか?」

「おぉ、そうじゃな。シュウト殿、すまぬ。」

「いえいえ気にしないで下さい。」

「有難いでは親子喧嘩しておった者は落ち着くまで置いておいて儂から紹介するが、息子のドゥーラは必要無いな。」

「あっ、やっぱり親子だったんですね。さっきの話の流れ的にそうかなって思ったんですけど、ドランさんは全身が鱗に覆われて顔も龍って感じだったんでどうかなって思ってたんですよ。」

「あぁ、それは儂の龍化のし過ぎが原因なのだ。」

「龍化?」

「そうなのだ。儂ら龍人族は龍化といって龍となって戦う事が出来るのだが、15年前の戦いの時にかなり長い時間、龍化してしまった所為で此処までしか戻れなくなってしまったのだ。」

「それはすいません。」

「いやいや、別に気にしとらんし、里を守れたゆえ、儂ら龍化出来る者にとっては誇りだと思っておる。」

「それだとドゥーラさんは龍化が出来ないんですか?」

「後、500年もすれば出来るがまだ若いからのぅ。」

「年齢的な問題なんですか?」

「そうだ。龍化は身体への負担が大きいでの、まだまだ成長途中の若者が龍化する事は禁止されておるのだ。」

「なるほど。だからドゥーラさんは角と羽だけなんですね。」

「いや、それはまだ若いだけだ。もう少し歳を重ねれば腕や足は鱗が生えてくるのだ。その為、まだ火山地帯の護衛や討伐はさせていない。」

「何で駄目なんですか?」

「火への耐性が低いからだ。」

「なるほど。」

「では、次は娘を紹介しても良いかの?」

「あぁ、すいませんどうぞ。」

ドランさんがそう言うとドゥーラさんの後ろに居た女性がおどおどしながら出て来た。

「この子が娘のニップルだ。挨拶をしなさい。」

「・・・ニップルです。」

ニップルさんがおどおどしながらそう言うとドランさんは頭を振りながら声を掛けてきた。

「シュウト殿、申し訳ない。どうも娘は肌の色の違いもあって昔からこの様な性格でな。許してやって欲しい。」

「それなら気にしないで下さい。」

「そう言って頂けると助かる。なんと言うか儂ら龍人族の間ではニップルの様に極端に白く赤い目の子供は忌み子と言われておって、その所為で迫害も儂が族長になるまでは受けておったのだ。」

「アルビノ種ですか。」

俺がそう呟くとドランさんが反応した。

「シ、シュウト殿は知っておるのか!?」

「いや、自分が知ってるのと一緒かどうかは分かりませんが、自分の知識と変わらないのであれば、忌み子では無いですよ。」

俺がそう言うとドランさんは涙を流し、座り込んでしまった。その様子を見たトールキンさんはドランさんの肩に手を当てて此方を見て話し掛けてきた。

「ドランは昔から娘の事を庇い続けておったのじゃ。暫し待ってやって欲しいが良いかのぅ。」

「良いですよ。」

「それならばドランが落ち着くまで話を進めておくかの。こやつが儂の息子のドラウプニルじゃ。挨拶せぇ。」

「ドラウプニルだ。」

簡素にそう言うとトールキンさんが頭を殴っていた。

「ちゃんと挨拶ぐらいせんか!」

「別に良いだろ。で、話って何なんだよ?」

「おぉそうじゃのぅ・・・ドランは・・・まぁ良いか、ニップルは・・・大丈夫そうじゃの。」

ドラウプニルさんにそう言われたトールキンさんはドランさんとニップルさんの様子を見て問題ないと判断したのか話し始め様としたので、またこっそりと結界を張った。

「お前達にはある契約をしてもらう。話はそれからじゃ。」

「鍛治が出来ねぇとかそういう事じゃねぇだろうなぁ。」

「それは無い。」

「じゃあ俺は問題ねぇ。」

「ドゥーラはどうじゃ?」

「大丈夫です。」

「ニップルはどうじゃ?」

トールキンさんがそう言うとニップルさんだけが頷いて答え、全員の了承を得たトールキンさんはリングスさんの方を見た。

見られたリングスさんはトールキンさんに頷き返し契約を済ませると俺の事を話した。その後は何時も通りの流れで普通に話して貰うまで時間は多少掛かったが何とか話して貰える様にはなった。

「で、それだけか?」

「それだけとはなんじゃ!」

「いや、確かにシュウトの事は驚いたけどよぅ。俺達からしたら酒場にさえ来なけりゃ問題ねぇだろ?それに龍人族も他の街に行かねぇしよう。」

「まぁ、お前の言う事も分かるが言い方って物があるじゃろ。」

「そうなんですか?」

「ぶっちゃけると物作り以外興味無いのじゃ。」

「あぁ、なるほど。」

俺はその言葉に納得しつつも聞きたい事があったのでトールキンさんに話し掛けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

女神スキル転生〜知らない間に無双します〜

悠任 蓮
ファンタジー
少女を助けて死んでしまった康太は、少女を助けて貰ったお礼に異世界転生のチャンスを手に入れる。 その時に貰ったスキルは女神が使っていた、《スキルウィンドウ》というスキルだった。 そして、スキルを駆使して異世界をさくさく攻略していく・・・ HOTランキング1位!4/24 ありがとうございます! 基本は0時に毎日投稿しますが、不定期になったりしますがよろしくお願いします!

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜
ファンタジー
 単身赴任中の派遣SE、遊佐尚斗は、ある日目が覚めると森の中に。  直感と感覚で現実世界での人生が終わり異世界に転生したことを知ると、元々異世界ものと呼ばれるジャンルが好きだった尚斗は、それで知り得たことを元に異世界もの定番のチートがあること、若返りしていることが分かり、今度こそ悔いの無いようこの異世界で第二の人生を歩むことを決意。  転生した世界には、尚斗の他にも既に転生、転移、召喚されている人がおり、この世界では総じて『漂流者』と呼ばれていた。  流れ着いたばかりの尚斗は運良くこの世界の人達に受け入れられて、異世界もので憧れていた冒険者としてやっていくことを決める。  そこで3人の獣人の姫達─シータ、マール、アーネと出会い、冒険者パーティーを組む事になったが、何故か事を起こす度周りに異性が増えていき…。  本人の意志とは無関係で勝手にハーレムメンバーとして増えていく異性達(現在31.5人)とあれやこれやありながら冒険者として異世界を過ごしていく日常(稀にエッチとシリアス含む)を綴るお話です。 ※横書きベースで書いているので、縦読みにするとおかしな部分もあるかと思いますがご容赦を。 ※纏めて書いたものを話数分割しているので、違和感を覚える部分もあるかと思いますがご容赦を(一話4000〜6000文字程度)。 ※基本的にのんびりまったり進行です(会話率6割程度)。 ※小説家になろう様に同タイトルで投稿しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...