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第116話 [2人のオタク]

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『しかし、流石が使徒様ですのぅ。どんなに頑張っても彼処から1歩も外に出られんかったのに儂のコレクションのある島に戻ってこれようとは。』

島に着いたマリクワさんは島を見た途端、分かったのか感慨の想いに耽っていた。

「シュウト、マリクワ先生が何か感動してるけど、どうしたんだ?」

「何か自分のコレクションを隠した島に行きたいって言ってたからとりあえず、此処に来たんだけど、どうやら此処がそうだったみたいだ。」

「え!?マリクワ先生のコレクション!?マジで!?」

「あぁ、それを転生するお礼に俺に渡せたら未練は無いんだって。」

「な、なるほど・・・確かに・・・」

俺がそう言うとルークは何かをブツブツ言いながらウロウロし始めた。

俺はマリクワさんがまだ想いに耽っていたので暫く子供達にブラッシングをしながら待っていた。するとルークが戻ってきた。

「なぁ、悪いんだけどマリクワ先生のコレクションなんだけど、俺も見て良いか、聞いてくれねぇか?」

「あぁ、別に良いけど、こっちの言葉はマリクワさんに聞こえるから自分で聞いてみたらどうだ?」

「分かった。」

ルークはそう言うとマリクワさんの所に行って声を掛けていた。

「先生、マリクワ先生!先生!」

『ん?どうした?』

「俺もマリクワ先生のコレクションを見に行って良いですか?」

『良いぞ。』

マリクワさんがそう言うとルークは俺の方を見てきた。

「良いって。」

「よっしゃー!!!」

俺がそう言うとルークは飛び跳ねて喜んでいた。するとマリクワさんが近寄ってきた。

『使徒様、お待たせした様で、申し訳ございません。』

「いや、大丈夫ですよ。」

『そう言って頂けると助かりますのじゃ。では。』

「ところで本当に此処で合ってますか?」

『はい。彼処にあるグリフォンに似た岩山に見覚えがありますじゃ。それにそこの岩に儂のサインがございますじゃ。』

そう言われて岩をよく見ると何かが書いてあった。

『もう何年も経っているので、分かりにくい状態にはなっていますがの。』

「そうなんですね。それなら良かったです。」

『では、儂の後に着いてきてくだされ。』

マリクワさんにそう言われて着いていくとまた岩に何かが書かれており、マリクワさんはそれを見つけると方向を変えて進んでいき、その後も何回か繰り返していた。

「なるほどなぁ。誰にもコレクションの場所がバレない様にしてるのかぁ。」

俺がそう言うとルークが話し掛けてきた。

「シュウト、それは違うぞ。」

「何がだ?」

「マリクワ先生は場所が分からないんだよ。」

「はぁ?いやいや軽快に進んで行ってるぞ?」

「その為の目印なんだよ。」

「はぁ?」

「マリクワ先生はな、頗る高い戦闘技術と他の追随を許さない程の光魔法の使い手なんだが、途轍も無い方向音痴なんだよ。それこそ称号に迷う人って書いて迷人って付くぐらいな。」

「はぁ?」

「何せ嘔吐に邸を持ってるんだが、1人だと辿り着かないし、邸の中にも案内標識があるくらいだからな。マリクワ先生曰く、世の中の道は全て迷宮らしいからな。」

「え?じゃあどうやってダンジョンとか踏破してたんだ?」

「奥さんだよ。」

「奥さん?」

「あぁ、奥さんは逆にレイみたいに戦闘が出来なかったが、マッピング技術と宝箱を見つける嗅覚は他の追随を許さない程の能力を持った方だったからな。」

「なるほど、夫婦で補完的関係なんだな。」

「シュウトの言ってる意味は分かんねぇけど、多分そうだ。2人が揃うと他にメンバーは要らなかったからな。っていうか邪魔にしかならなかったな。」

「へぇ~そこまでか。」

「伊達に2人ともSランク冒険者じゃねぇって。」

「なるほどな。で、奥さんは?」

「5年前に他界した。」

「ダンジョンでか?」

「いや、老衰だったそうだ。普通の人よりも内臓だけが老化スピードが早い体質だったらしくて、色々試したけど、駄目で最後の望みを掛けて、冒険者になったらしい。」

「なるほどな。ダンジョンに希望があったって事か。」

「あぁ、伝説や御伽噺の類いだがな。」

「で、そんな人が何でこんな所に居るんだ?」

「分からねぇ。邸の人の話では気づいたら居なくなってたらしい。」

「希望が捨てられなかったって事か?」

俺達がそんな話をしているとマリクワさんが話し掛けてきた。

『最初はそうでしたけど、此処に来たのはただ単に迷って気づいたらダンジョンの中だったんです。』

「はい?いやいやいや、そんな訳ないですよね。海底ですよ。」

『ほう。海底だったんですか。道理で海中の魔物ばかりだったんじゃな。』

「え?潜っていった訳じゃないんですか?」

『儂がこの島で迷っていたら祠というのか分からんのじゃが、そういうのに近づいたら魔法陣で飛ばされたのが彼処じゃったんじゃよ。で、出ようとしてたんじゃが、死んでしまったのじゃ。』

「なるほど、この島に直通の場所が有るって事ですか。」

『そうなるのぅ。』

「2人で話してるみてぇだけど、マリクワ先生は何て言ってたんだ?」

「あぁ、この島には海底神殿に行く為の魔法陣が在るらしくて、迷ってたら飛ばされたらしい。」

「はあ?マジか。」

「そうらしいぞ。」

「何というか、マリクワ先生らしいと言えばらしいな。」

「どういう事だ?」

「ん・・・説明し辛いが、ひと言で言うなら人間危険探知機って言ったら分かりやすいか。」

「ん?」

「ダンジョンだったり、盗賊のアジトだったり、未発見の危険地帯を迷って見つけるんだよ。」

「凄い能力だなぁ。」

「そうだろ。1番凄いのは殲星会のアジトの1つを見つけて、殲滅しちまった事だな。」

「マジ!?」

『あぁ、あの時は最初は殲星会のアジトとは知らなかったですが、向こうから攻撃を仕掛けてきたので、応戦していたら非人道的な行為を目の当たりにして、ドーラがいや、妻が飛び出してしまってのぅ。傷つけられて一寸我を忘れてしまってのぅ、気づいたら敵が居らんなったのじゃ。』

おぉ、無茶苦茶だけど、気持ちは分かる・・・か。

「そうそう、未だに不思議な事が一つだけあんだけど、1度だけ馬鹿な貴族がマリクワ先生に恨みや妬みでマリクワ先生の奥さんを拉致した事があんだけど、何故かその時だけ、一切迷わずに奥さんの下へ辿り着いて邸ごと破壊して奥さんを助け出した事があるんだが、何故辿り着いたか聞いても愛の力だの一点張りで、結局分からなかったんだよ。」

ルークがそう言うので、マリクワさんを見るとマリクワさんは頭を掻きながら答えた。

『儂も何で行けたのか、分からんのだよ。あの時は妻が呼んだ気がした方向に行っただけなんだがのぅ。』

「ルーク、マリクワさんも本当のところは分からないんだってよ。」

「そうなのか。まぁいいか。」

そんな話をしていると洞窟の様な場所に辿り着いた。

『此処じゃ。さぁ使徒様、入ってくだされ。』

俺はそう促されたので、洞窟の中に入ると奥に扉があったので、更に中に入っていった。

「凄いな、武器ばっかりだが、ルークの倍は有りそうだな。」

「そりゃあ、俺の先生なんだ当たり前だろ。」

「けど、何で武器ばっかりなんだ?」

「マリクワ先生には防具は必要無いからな。」

「ん?どういう事だ?」

『それは儂が実体化というスキルを持ってるからなのじゃ。』

「実体化?」

「そう実体化だ。それで魔力や魔法を防具にしてたんだよ。」

「じゃあ、武器も出来るんじゃないのか?」

『そこまでの魔力が儂には無かったし、それに武器は千差万別、色々あるから面白いのじゃ。』

そう言いながら見て廻るとルークは子供の様にはしゃいで言葉も通じないのに自分の武器を出してマリクワさんと競い合っていた。

俺はそんな2人を放っておいて、他を見て回ると美しい人の石像が目に入った。

綺麗な像だけど、何だろうこの違和感・・・まるで、霊と対峙してる時の様な・・・。

「マリクワさん!マリクワさん!」

俺が呼ぶとマリクワさんはルークとの話を切り上げて急いでこっちに来てくれた。

『何でしょうか、妻の石像がどうされましたかのぅ。』

「マリクワさん、この中に魂を入れましたか?」

『魂ですか・・・確かに儂が精魂込めて作った唯一の物ですじゃ。』

「いや、そうじゃなくて本物の魂、霊魂を入れましたか?」

『そんな事はしてはいないですじゃ。そもそも霊魂を入れる方法すら知らないののじゃ。』

マリクワさんにそう言われて納得しそうになった瞬間《ピコン♪》と鳴ったので、ステータスを確認した。

『拙いは!石像と融合してたから気付かなかったけど、1人入っているわ。しかも、後1時間もすれば魔物化してしまうわ。急いで壊して転生させてあげて!』

「え!?マジか・・・マリクワさん!この石像、壊していいですか!?」

『え!?』

「おい!シュウト何言ってんだよ!これはマリクワ先生が大切にしてる物なんだぞ!」

「それは分かってるが、神託が降りた。石像に融合してしまった霊が後1時間もしない内に魔物化してしまうんだ!」

「なっ!?」

俺はルークにそう言いながらマリクワさんを見るとマリクワさんも驚いていたが、何かを納得した様に言葉を発した。

『どうぞ。壊して下さい。』

「すいません!」

バキッ!ズズズズ・・・ドン!

マリクワさんがそう言うので俺は謝りながら石像を破壊した。

『やっぱりお前だったのか。』

『ゴメンなさい貴方・・・貴方が私の石像まで作って話し掛けてたから石像に入ってみたのそしたら貴方は私ごとマジックバックに入れたからマジックバックの中で定着してしまったの。』

『ドーラ、相変わらず、そういうとこは抜けてて可愛いな。』

『抜けてては余計よ!』

『悪い悪い。』

2人はそう言いながらイチャイチャし始めたが、流石にいつ魔物化するか分からなかったので、声を掛けた。

「もう暫くそのままにしてあげたいんですけど、奥様の方は危ないので転生させて頂いても宜しいですか?」

『おっそうじゃった。ドーラ、寂しいが此処でお別れじゃ。また、来世でな。』

『そうね。悲しいけど先に逝くわね。』

ドーラさんはそう言うと俺の方を見て頷いたので俺はドーラさんを転生させた。

《エコーロケーションヲカクトクシマシタ》
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