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第112話 [青龍]

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王都に戻ると何故かバトさんが出迎えてくれた。

「皆様、おかえりなさいませ。」

「え?あっ!ただいまです。っていうか、練習も無しに戻ってすいません。というか、何で戻ってくるのが、分かったんですか?」

「分かったというより、丁度離れの清掃を行おうと立ち寄りましたらシュウト様がお見えになられましただけでございます。」

「あ、そうなですか・・・。」

本当かなぁと疑っているとバトさんに声を掛けられた。

「シュウト様、失礼ですが其方のシンジ様に乗っていらっしゃる方は何方の方なのでしょうか?」

「あぁ、すいません。娘です。恵美、挨拶しなさい。」

俺がそう言うと恵美は真司から降りて、俺の横に立つとバトさんに挨拶をした。

「めぐみです。宜しくお願いします。」

「これはこれはご丁寧・・・シュウト様、娘と仰いましたが、もしやこの方も・・・?」

「そうですね。娘は青龍ですね。ただ出来れば真司と同じ扱いで構いませんので。」

俺がそう言うとバトさんは跪いそうになるのを堪えて、恵美に声を掛けていた。

「先程は失礼しました。私、この城で執事をしています、バトレルコンシェと申します。バトとお呼びください。シュウト様方の王都、御滞在中、御要望がありましたら、私と此方のメイド、サーシャにお声掛け下さい。」

いつの間にか、バトさんの隣に立っていたサーシャさんが、お辞儀をしていた。

この2人は何時もいつ現れるだろう?

俺がそう思っているとバトさんが声を掛けてきた。

「シュウト様、本日は御滞在されますでしょうか?」

「そうですねぇ。ルークはどうする?」

「俺か?俺はお前に任せるよ。」

「なら、今日はこのまま離れに泊まる事にします。大丈夫ですか?」

「はい。問題ありません。このままお泊まりになるのでしたら、お頼みしたい事が御座いまして。」

「リーグさんですか?」

「はい。陛下から御時間に余裕があればとの仰せでしたので。」

「ルークはどうする?」

「俺か?シュウトも俺のコレクション見たいだろ?」

「あぁ、確かに。」

「なら俺は教会に行ってくるよ。」

「あぁなるほど、なら、終わったら此処で集合で良いか?」

「あぁ、俺はそれで問題ねぇぜ。」

ルークと約束をすると俺はバトさんに話し掛けた。

「バトさん、今からって大丈夫ですか?」

「はい。何時でも例え、夜中であっても良い。との仰せでしたので。」

「分かりました。じゃあ行きますか。ルークまた後でな。」

「おう。」

そう言うとルークと別れた俺達はリーグさんの所へ向かった。

「陛下、シュウト様がお目見えになりましたがよろしいでしょうか?」

「うむ。入ってもらえ。」

中に入るとリーグさんとセドさんがおり、リーグさんはまたも書類に囲まれていた。

「お久しぶりです。本当に今良かったんですか?」

「あぁ全く問題ないぞ、のぅセド。」

「そうですね。誰かさんが遊んでいたのが原因ですからね。」

「いや、アレは遊んでいたというか何というか・・・そうじゃ!それよりもセドよ、シュウト殿に話があったのではないか?」

あっ、逃げた。

俺がそう思っているとセドさんが俺の方を向いて頭を下げてきた。

「ど、どうしたんですか?」

「リマニを救って頂き、誠にありがとうございました。」

「あぁ、たまたまですよ。」

「いえ、またまたで有ってもです。彼処を失えば、公爵領の収益の3分の1が減り、様々な公共事業に支障が出るところでございました。」

「だからあれ程の数の軍艦があったのですね。」

「その通りです。」

「そうじゃのぅ、彼処は海の向こうの大陸からの外交の要であるから国からも礼を言おう。助かったシュウト殿。」

2人に礼を言われ、恥ずかしくなった俺は恵美を紹介する事にした。

「あっそうだ、紹介します。この子は自分の娘で、今世では青龍になった恵美って言います。真司、同様、畏まられるのは嫌いなので、そこも含めよろしくお願いします。」

「めぐみです。よろしくお願いします。」

俺がそう言うと2人共、唖然とした顔をしていたが、直ぐに持ち直して恵美の方を見た。

「なるほど 、此方の方か報告にも有った青龍様か・・・。余は国王のリーグ・ファン・シュナイダーと申す。シュウト殿やシンジ様、ならびにメグミ様、此度はありがとうございます。・・・そして、これからもよろしくじゃ。」

最初は堅苦しい挨拶から始まったが、流石リーグさん、子供達の雰囲気を読んで最後はかなり崩していた。

その雰囲気に子供達は笑顔で返事をした。

「「はい。頑張(がんば)ります。」」

「ん?空耳か?シンジ様の方からも聞こえた気がするのじゃが。」

「はい。話せる様になったんで。」

「なんと!それは素晴らしい!・・・だが、シュウト殿の事を知ってる者以外には残念ながら話しては駄目ですぞ。」

「え?なんでぇ?」

「それは人型でない魔物は、話す事が出来ないのじゃ。」

「そっかぁ。」

リーグさんに教えられた真司が少し落ち込んでいたので、声を掛けた。

「真司、リーグさんは人型じゃないって言ったんだ。父さんの言ってる意味は分かるか?」

「あ!そうか!メグねぇみたいになればいいんだ♪メグねえ、おしえて♪」

真司にそう言われた恵美は誇らしげに胸を張って答えた。

「仕方ないわねぇ~教え上げるわ。」

それを見て皆んなでホッコリしているとリーグさんから声が掛かった。

「良い親子じゃのぅ。ところでシュウト殿、此度来てもらったのは、感謝を伝える事だけではないのだ・・・。」

リーグさんはそう言うと子供達を見た。

「お前達、練習するならアイテムボックス改の中でしなさい。此処だと危ないからな。」

「「はーい。」」

子供達はそう言うとアイテムボックス改に入っていった。

「すまない、シュウト殿。流石に聖獣様の前では、特に青龍様の前では話辛くてな。」

「で、どうしたんですか?」

「これから話す事は此処に居る余達、それとオケアノス殿しか知らぬ事なのじゃが、シュウト殿にも黙っていてもらいたいのじゃが、良いかのぅ。」

「問題ありません。何なら契約致しますか?」

「いや、シュウト殿ならば良いよ。」

リーグさんがそう言うとバトさんが結界を張り始めた。

「うむ。では、話そう。先ず最初にシュウト殿には分かっておいてもらいたい、コレから話すのはメグミ様の前の青龍様の話じゃ。」

リーグさんにそう言われ、俺が頷くとリーグさんはセドさんを見た。するとセドさんが話始めた。

「コレは世界を滅ぼそうと15年前に殲星会が、私共、シン・ブリステン領の海域で邪神の封印を解いて、この世界に出現させてしまった事から始まります。」

「その邪神アクルトゥスは海域の人々の住む島ごと呑み込んみ、その島の魔力と人々の苦しみを糧に自身の分身を生み出し、航海をしていたもの達を食らい、魔物すら食らって海を自分のモノにしようとしていたのです。」

「封印を解いた者の誰かに聞いたのですか?」

「いいえ、封印を解いた者共は邪神アクルトゥスの最初の贄になったそうです。」

「では、誰から?」

「これからお話する前の青龍様です。」

「なるほど、話を遮ってしまってすいません。」

「いえ、お気になさらずに、シュウト様の疑問ももっともですから。続きをお話します。」

そう言われ、俺は頷いた。

「そしてその事に青龍様は悲しみ、怒りはするものの、相手は邪神とはいえ神、青龍様であってもそのままでは太刀打ち出来ないということで、ブリステン、いえ私共の所にお出でになられました。」

「そこで青龍様は15年前の海の状況をお話され、ブリステンに迫っていたスタンピードを殲滅する代わりに1人の者に協力して欲しいと話されたのです。」

「使徒ですか?」

「いえ、使徒様ではございません。当時の私共の家令を務めていた、ウルス・オゼロという者です。ウルスはユニークスキル・偽神化の持ち主で、そのスキルは単体というよりも本人は使えないスキルなのです。」

「どういったスキルなのですか?」

「本人と聖獣様の生命代償に1日だけ、その聖獣様を神獣にするというものです。」

「なるほど、だから奴を罰せられなかったのですね。」

「はい。その通りです。」

「そして、ウルスが承諾した事で、青龍様はスタンピードを殲滅し、ウルスを連れて海へ旅立たれ、神獣と成った青龍様は半日で分身を滅ぼされましたが、その強さをもってしても時間が足りなかった事もあって、本体である邪神アクルトゥスは完全には倒す事は出来ず、青龍様は最後の力を振り絞って、再封印して頂けたそうです。」

「なるほど、しかしどうやって前の青龍様の最後を知ったんですか?」

「ウルスです。転生する前に私共の前に現れてそう話してくれました。」

「なるほど、ですが、何故自分にこの話を?」

「それは聖獣様は偽神化のスキルを持つ者が近くに入れば、何となく分かるそうなのです。それとまたもシン・ブリステン領の海域で殲星会が現れた可能性が有るという事もありましてお話しました。」

「なるほど、恵美の事と封印を心配してという事ですか。」

「はい。一度ならず二度までも青龍様の御命を失う事にはなってもらいたくありませんので。」

「ありがとうございます。一度ラビリス様に封印の事は聞いてみます。それで、今、偽神化のスキルを持った人はいらっしゃるのですか?」

「いえ、確認はされていません。」

それを聞いて、俺はホッとしつつ、感謝を述べるとリーグさんが話し掛けてきた。

「それでシュウト殿はこの後、どうするのじゃ?」

「ルークを強くする為にルークのコレクションを見に行こうかと思ってます。」

「コレクションというと装備品かのぅ。」

「そうです。色んな武器を使えた方が戦略に幅が出来ますし、人に教える時にも役立つと思うんで。」

「なるほどのぅ。宝物庫にも装備品はあるがどうされる?」

「いえ、まだ始めたばかりなんで・・・もし、ルークが踏破に行き詰まった時にはお願いするかもしれません。」

「その時は遠慮無く言うがよい。ところで先にお願いするものなんじゃが、ルークの戦利品で国が必要とする物が有った時に融通してくれんかのぅ。」

「リーグ!」

「セドよ、そう怒るな。主もそう思っておるであろう?」

「なっ・・・。」

「というわけじゃ、シュウト殿どうであろう?」

「全部というわけにはいかないと思いますけど、土地も借りてる事ですし、その辺はルークに伝えときます。ただルークも長に成る身ですし、何かと入用があると思うんで、ちゃんとした査定をお願いしますね。」

「それは勿論じゃ。」

俺がそう言うと怒っていたはずのセドさんも嬉しそうにしていた。その後、ルークが戻ってきた事をバトさんから聞くと再度、お礼を言って離れに戻っていった。

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