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第16話 [大山風流双杖術]

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早めの朝食を食べた俺とハロルドさんは工房に到着した。

「ささ、どうぞシュウト様。」

ハロルドさんに促され、中に入ると工房の待合室の様な所で開発担当のガルンさんと服飾担当のクリスさんが待っており、お互い挨拶を済ますと直ぐ此方に向かってきた。

「待ってたぞ!もっと早く来るもんだと思って日の出前には終わらせといたんだがな!」

そう言われ俺が恐縮していると笑いながら「まぁその間クリスの作ったやつの報告を受けてたんだがな」と言いながら笑っていた。

「ガルン!お前と言う奴は!冗談にも程があるぞ!シュウト様に謝れ!」

冗談を言ったガルンさんにハロルドさんは怒りを露わにして謝罪をするように求めた。

「す、すまんかった。」

俺も気まずいのは嫌だったので「良いですよ。それよりも試作品を見せてもらえると嬉しいです。」そう言うとガルンさんは助かったぁって顔で試作品を見せてくれた。

「で、之なんだが火に直接近づけてもシュウトが見せてくれた様な着け方でも生活魔法でも着ける様にしといた。それとある程度荒い使い方をしても壊れない設計にしてある。」

「んで、もう1つこいつに油を注入する為の専用の商品も作っておいた。因みに之は素人でも安全に扱えるが、こいつ自体に注入する場合は専門知識のあるやつじゃねぇと危ねぇ。」

「んで、之に関しては謝罪の意味も込めてシュウトのアイデアと一緒でいい。」

ガルンさんは急に俺が考えてない商品についてもアイデア料をくれると言い出した。

「いやいや別物なんだから別々でいいじゃないですか。それに商会のアイデアを勝手に上げたら不味いんじゃ。」

「シュウト様、そこについては大丈夫ですよ。私共の商会は職人が自分のアイデアで作り、商品化されればアイデア料はその職人の物と決めていますので。」

「いやいやそれでも・・・」

「俺が良いってんだ!気にすんな!それに俺はこれでも自分の工房を建てれる位は稼いでるしな。まぁ酒代に消えてくがな!ガッハッハッ!」

俺はその豪胆な笑い声を聞いて、之は言っても駄目なやつだと認識し、素直に受けることにした。

「では、次は自分ですね。試作品は此方になります。」

クリスさんが出てきた商品は正にポンチョその物だった。

「此方は裁断、成型時に工夫をしていますので、糸の使用はありません。従って傘を作るよりも安く仕上げることが出来、余った部分は別料金にしてこの雨具をいれる袋として使えますので、これ迄よりも棄てる部分は少なくて済むと思われます。」

「うむ。良い出来た。これはそのまま商品にしていい。専用の袋に関してはお前のアイデアとしておこう。セバス、分かったな。」

「大旦那様、ありがとうございます。」

流石、専門職の人は違うし、それを直ぐに認め、アイデア料を渡す約束をするのも凄いなぁ

「両名とも今日は1日休んでガルンの方は明日セバスと共に現状どの位の金属が必要で民の現状と比較し購入出来る価格であるのかを調べ、終わり次第、安全性は確保した上で低コストに模索する班と現状では軍の遠征や冒険者の携帯には少々嵩張ることも考え、縮小化を目指す班に別れ、試作するように。」

「おう。」

「クリスの方は量産化とガルンの方が終わった時に1着に掛かるコストの試算をセバスと共に行い、終了後は大きさ・色・デザインの試作をするように。」

「承知致しました。」

「うむ。ではシュウト様、行きましょうか。」

俺は之が手腕ってやつかぁと思いながらハロルドさんについて行った。

暫く走っていると三階立てのデパートの様な建物の前で停まった。

「此処が商業ギルドです。1Fが商業施設も兼ねているのでこの様な大きさになっております。」

商業ギルドに入るとそのまま2Fに行くと奥の部屋に通され、そこにはハロルドさんと同世代であろう人が書類に囲まれていた。

「なんだハロルドか何の用だ?」

「何の用ではない!お客様を連れてきたのだ。忙しいのはわかるがしゃんとせい!」

「おぉお客様でしたかお見苦しい所をすいません。私、ギルドマスターを務めておりますジフ・タナーと申します。」

「シュウトです。よろしくお願いします。」

「で、どの様な御用件で此方にいらしたのでしょうか?」

「シュウト様のギルドカード登録と新商品の申請じゃ」

「ハロルドが薦めるとは余程なのだろう。分かった。」

手元の鈴を鳴らすと秘書らしき方が用紙と何かの板を持ってきた。

「此方の用紙に御名前をその後此方の魔道具に手を乗せてください。」

俺は言われるがままに行うと板が光り、板の間から一枚のカードが出てきた。

おぉ流石魔道具光ったぞ!どういう仕組みなんだろう?

「それがギルドカードとなります。御紹介の方ですので登録費用は無料となりますが、無くされると再発行に大銀貨一枚が必要になりますのでお気を付け下さい。尚、初年度は掛かりませんが来年度からは最低大銀貨一枚は必要になります。もし払えない場合は登録抹消となりますのでお気を付け下さい。後の内容はお聞きしますか?」

大銀貨だから・・・10万!高!

「それはいい、後で儂の方からお伝えする。」

「承知致しました。では登録の方は以上です。申請の方は如何されますか?」

「それは儂の方でやっておく。」

「承知致しました。」

「では後は此方でやっておきますので、シュウト様は工房の方へお行き下さい。」

「よろしくお願いします。」

俺はそう言うとギルドを後にし、工房に到着した。

「ではシュウト様、私共が終わりましたらお迎えに上がります。」

セバスさんはそう言うとギルドの方へ戻って行った。

「すいませ~ん。キルデスさんはいらっしゃいますか?」

「はいはい、一寸待って下さいね。キルデス職人長~!キルデス職人長~!」

「なんじゃ五月蝿い!聞こえとるわ!」

「お客様ですよ~。」

出迎えてくれた女性がそう言うと奥からキルデスさんが出てきた。

「おぉシュウト殿ではないか早速来たのか、儂も気になっとったんじゃ。じゃあ武道場へ行くかの」

あっやっぱりそうなんだ。と思っていると後ろから声を掛けられた。

「よう、昨日ぶりだな。」

振り向くとカイン達ともう2人見覚えのある人物がいた。ソフィアさんとラウル様だ。

何故カイン達と2人が一緒にいるの?って思っているとカインが答えた。

「言っただろ、もう1人仲間がいるって。それがラウルだ。」

は?ラウル様は公爵様のご子息だろ?

「お兄様は冒険者ですわよ。」

え!?いいの?問題にならないの?

「僕は冒険者でいる方が好きなんだよ」

ん?ってか俺喋ってないけどなんで皆答えるの?

「そりゃそんだけわかりやすい顔してたら誰でも分かるだろ、それよりも行くぞ。武器作るんだろお前の。」

そんな分かりやすいかなぁ

「で、何でカイン達がいるんだ?」

「何でってお前と模擬戦するからだろ?」

「あぁ相手はカインだったんだ。」

「そうらしい、じゃあ行くか。」

俺達はそう言うと武道場へ案内してくれる人の後について行った。

「では、シュウト殿、全て木製じゃが各種武器が揃っておるので選んで戦って貰って良いかの?」

「分かりました」と言いながら武器を探すもやはり自分が探す物は無かったので棍棒を2本持ってキルデスさんの所へ行った。

「ん?どうしたのじゃ?」

「長過ぎるんで切っても良いですか?」

「良いがどの位じゃ?」

俺は120cm位の所を指し「この位ですかね」と言うとキルデスさんは「長めの杖見たいじゃのう」と言われて俺は反応した。

「え!そうです!何処にも無くて。」

「そらそうじゃろう戦闘で使うなら魔法師が使う杖くらいなもんじゃし、それで戦うとなれば強度がたりんじゃろうから。良しとりあえず切ってやったぞこれで良いか?」

「ありがとうございます。まぁ持ち手は一寸アレですけど何とかなるでしょう。」

「そうか、その辺は作る前に聞くことにするわ。では、始めるのじゃ。」

そう言われたのでカインの下へ向かうとカインが不思議そうな顔で聞いてきた。

「なんだ?杖みたいだなぁそんなんで戦うのか?」

「之が俺のスタイルだ!気にせずこい!」

「おっ!雰囲気が変わりやがったな。ならいくぞ!」

カインはそう言うと大木剣で切りつけてきた。それを俺は杖を手足の様に使い、杖を軸に回転し、連撃を繰り出した。カインは最初の方は何とかついてきたが、徐々に押され始め、最終的には杖の反動を使った蹴りでノックアウトした。

暫くして目を覚ましたカインは大木剣を手に取り、「もう一度だ!そんな杖如き!分かっていれば問題ない!」と言ってきた。

「杖如き?じゃあ見せてやるよ大山風流双杖術の真髄を!」

「こいや!」

今度は俺から動き、荒れ狂う台風の様な動きでカインは何もする事が出来ず、地面に倒れた。

皆はビックリして暫く呆けていたが、逸早くミミがカインの状態に気づき、急いで駆けつけヒールをかけていた。

暫くしてカインが気づくと俺の方を見て言葉を発した。

「凄ぇなぁスキルとかパワーとか関係無く技の威力が半端ねぇなぁ」

「あんたが態と挑発するから死んだかと思ったじゃない!」

「すまねぇ・・・しかしシュウト、双杖術だっけか?お前の名前が入ってるって事は代々続く武術とかいうやつか?」

「あぁそんなこと言うつもりはなかったけどつい馬鹿にされたと思って口走ってしまった。」

それを聞いたソフィアさんが走ってきてキラキラした目で尋ねてきた。

「それはアレですの?遠い異国のムサシという国でスキルではない戦闘術に磨きをかけるという古来からの伝統のみで、戦うと言われるものですの?」

そう言われ、ムサシとかは分からなかったが自分の術自体は古流で間違いないので「そうです。」と答えた。

それを聞いたソフィアさんは大喜びをし、「次は私の番ですの。」と言い、レイピアを取って戻ってきた。

「伝統の技というのを一度体験して見たかったのよ。さぁやりましょう。」

ソフィアさんはウキウキしながら構えていた。

俺はマジでやるのかよぅと思ったがソフィアさんの構える姿を見て考えを改めて、真剣に向き合った。

「じゃあ僕が合図を出すね。」

とラウル様が言ったので「よろしくお願いします。」と返答した。

「それでは両者準備はいいですか?・・・始め!」

その合図にソフィアさんが恐ろしいくらいの鋭い突きの連続技に最初は苦戦したが、そのスピードにも慣れてきたので、レイピアに杖を沿わせ、杖で強烈な回転をかけ、レイピアを吹き飛ばし、最後にソフィアさんに杖を向けると「参りましたわ」と言って、その場で座りこんだ。
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