9 / 16
09
しおりを挟む
「最悪だな」
「人の妻に付きまとっている貴方ほどではありませんよ。 ばぁ~か」
「下種」
ボソリと呟かれたフェルザーの言葉。
返されたマルクルの言葉にイラっと再びフェルザーが返す。
そしてフェルザーはレーネの後を追い……王妃はヒールを脱ぎ捨てフェルザーの後を追いかけはじめ、その後ろを国王陛下は必死に追いかけた。
「貴方の家族はとても賑やかね」
「えぇ、だから私は……孤独なんですよ」
そう語るアリアーヌ姫とマルクル、そして木の陰からソレを見つめるノーラがいた。
レーネは転ぶ寸前にフェルザーに保護。 腰に回された腕で宙づり状態にされ、ストンと地面に置き立たせられた。
「泣いていいぞ、アッチをむいている」
涙を浮かべ、嗚咽交じりに呼吸をしているものの声は抑えていた。
「泣かない……」
「ショックだったんだろう?」
ショックではあった……だけど、
「我慢せずに、感情をぶつければいい」
「出来ないよ……」
嗚咽で上手く話せない。
「なぜ? ずっと親子として過ごしていたんだろう? そこに信頼関係はないのか?」
「だ、だって!! 私は……他人だもの。 私はあのお姫様と違って何一つ持っていない。 あの人達に嫌われたら……私は住む場所もないし、服も、靴もないの!! 何処にも行き場所はないし、どう生きて行けばいいのかもわからないのよ!! 文句なんて言える訳ないじゃない!! それに、嫌われたら……嫌われたら……寂しいぃよ……」
レーネはフェルザーの分厚い胸元を叩いた。
「なら、うちに来ればいい、俺は嬉しい。 部屋なら幾らでもあるし、オヤジも喜ぶ。 うちは領地も広いし色んな事をして、何をしたいかユックリと決めればいい」
瞳から涙をボロボロと溢れさせながら、レーネはフェルザーを見つめた。
「良い考えだと思わないか? ノーラもうちから派遣している侍女だし、これからも一緒に居る事ができる」
「それは……魅力的……だわ」
ボソリと告げるが、やっぱりボロボロと大粒の涙が零れ落ちていた。
「待って、待ってよ。 誤解よ!! 勝手に話を決めないで!! 勘違いさせたならゴメン。 謝りますから」
そうヒーヒーと息をきらしながら言ったのは王妃だった。
レーネはフェルザーを盾に王妃と立ち向かおうとするけれど、フェルザーはレーネを王妃と立ち向かわせた。 オロオロとしながらも王妃はレーネを抱きしめようと両手を伸ばすが、レーネは声を大に怒鳴った。
「どうした……どうして、一緒に食事を、お茶をしてくれなくなったんですか!! 私より、お姫様の方が良い子だからですか!!」
「その……会えなかったのよ。 貴方は賢い子だから、バレてしまうもの」
「何を言っているのかわからないわ」
「最初に言わせて頂戴。 私は貴方を息子の嫁ではなく、娘だと思っているの。 だから、レーネ、貴方も自分をあの女と比べないで」
「ぇ?」
レーネはきょとんと王妃を見れば、ぜーぜーと息と髪を乱しながら王様もやってくる。
「ワシだってそうだ!! 娘だと思っている。 だが、レーネもそう思っているか分からんだろう!! マルクルが好きで父母としてついでに慕ってくれているのかもしれないだろう。 だから、ダメだ。 言うんじゃない!! ワシは反対だ!!」
「ウルサイわね。 これ以上言うと髭をはがすわよ!! レーネ!! あの不誠実な男と離婚なさい!!」
「ダメだ!!」
「ウルサイって言っているでしょう!!」
手を伸ばした王妃は容赦なく国王のとても偉そうな髭に手を伸ばし……べりッとはがした。 既に髭は引っこ抜かれた後だったらしい。 急に威厳が損ねられる国王はしょぼしょぼと大人しくなった。
意表を突かれる怒鳴り合いに、レーネは困惑し怯えフェルザーを見上げた。 さりげなく慰めるように肩を抱こうとするフェルザーを王妃がとがめる。
「ドサクサに紛れて何触っているのよ」
「お二人が喧嘩をするから、レーネ様が怯えている。 ソレを庇い慰めるのも俺の仕事の範疇ですよ。 まぁ……ようするに、レーネ様、お二人は隣国の姫が気に入って顔を出さなかったのではなく、ここ1月ほどずっと喧嘩をしていてイライラと不機嫌で、そんな姿を見せたくなかっただけだ」
「喧嘩……ですか?」
「そう、だが……そんな事に悩んでいるなら聞いてくれればよかったものを、それに俺はショックですよ。 別にこの2人と食事やお茶をしなくても、俺やマイラ、ノーラ、他の侍女達もいたんだから」
「ぇっと……そうね。 だけど……」
色々と驚いてレーネの感情は混乱し引っ込んだ。
「居場所がなくなるから不満は言えないと言う奴か? まぁ、そこは、気に入らなければうちに気軽に家出してくればいい。 使用人全員引き連れて来た所で問題はないぞ。 金も広い屋敷もある」
「フェルザーいい加減に自分を推すのは止めてくれないかしら? 私も……その、娘と話をしたいのよ。 そう、大事な話があるの」
「大事な話ですか?」
「そう貴方、レーネがいながら別の女を連れ込んだ不誠実なマルクルと離縁なさい。 手続きは私が全部しますから」
「ダメだ、ダメだ、ダメだ!! そんな事をしたら、すぐにお嫁に行ってしまうに決まっている。 そりゃぁ女は連れて来たが、ソレで仕事はするようになったわけだし、悪いばかりではない。 悪い所ばかりを見ずに、もう少し長い目でだなぁ」
「お黙りなさい!! 貴方がそんな不誠実を許容するとは……嘆かわしい。 私は……王子でありながら私だけに一途だった貴方に恋をしましたのよ?」
「……それは……ワシだって、オマエ以外の妻を娶ろうとは思わん。 だが!! 娘は息子とは違って可愛いんじゃ!!」
「まぁ、こうやって喧嘩をしていて、レーネとの食事やお茶を避けて悲しませるんじゃ、居ないも一緒ですけどね」
遠慮なく喧嘩に割って入るフェルザーに2人は叫んだ。
「「あんたって子は!!」」
「その……どうして、マルクル兄様と離縁しろと……」
怯えるようにレーネはそっと割って入る。
「それは、貴方が幸せになれないからよ。 妻を二人も持とうと言う男に誠実なんて期待できないわ。 あの女は上手くマルクルに仕事をさせてくれているけど、それで、レーネ、貴方まであの女に支配されては人生台無しでしょう?」
「よ、良く……わかりません」
「マルクルは幼い頃は頭が良くてね。 それが原因で周囲を見下し傲慢な子に育ってしまったの。 だから、強くて、尻を叩いてくれるような女性で無いと制御が難しいのよね……。 レーネは優しいからそう言う風には出来ないでしょう?」
王妃は必死に言葉を選びつつも、言いたい事は1つならしい。
「だから、あの女にくれてやりなさい」
「で、でも!! 私は!! マルクル兄様をお慕いしているんです!!」
「貴方が、マルクルを何故兄様と呼ぶようになったか覚えているかしら?」
「ぇっ……初めて知り合った時から、でしょうか?」
と言うと生まれた瞬間になってしまうけれど……きっとお話しが出来るようになった頃では? と、だから今も兄様と呼ぶ事が抜けないのだと思うのです。
「やっぱり……混乱していた時期だから覚えていないのね……」
王妃様が言うには、知らない大人が大勢いる王宮に引き取られてすぐは周囲に馴染む事ができず、何時だって王妃様に縋りついていた(ここでソレがどんなに可愛かったか語られるが省略)。
それが気に入らないとマルクルはレーネを虐め始めた。 池に落とす事も今回初めてではなく、マルクルを対等に注意出来る存在としてその立場を与えていたフェルザーにレーネの護衛を頼んだと言う話だった。
王妃はマルクルを叱り。
フェルザーはイジメを止め、時にイジメ返す。
マルクルはフェルザーが気に入らないと、国王に色々とチクリを入れ。
国王はフェルザーに加減を求め、王妃にもあまり叱るなと宥めた。
そうするとマルクルは再び傲慢な態度を取り、最初に戻る。
そんな騒々しい日々が続いていたそうだ。
全く記憶にないのですが……。
それでも、レーネへの嫌がらせが止まらなかったある日、突然にイジメが止まった。 それは、私がマルクル兄様を、兄様と呼び慕って見せた事がきっかけで、マルクル兄様は兄としての態度を取り始めたと言う話だった。
「レーネは自分に暗示をかけてしまったのかもしれませんわね。 自己防衛のために……もし、本当に、マルクルが好きだ、好きで好きでたまらないマルクルの子を生むんだ!! と言う思いがレーネ、貴方にあったなら、兄様とは呼ばなくなっていると私は思うの。 貴方が兄様と呼ぶのは予防線であって、王宮にいる条件として自分に課しているのだと私は考えているの。 母様はそう考えると少しだけ寂しく思うのですけどね」
王妃は寂しそうに笑って見せた。
「あぁ……兄と呼ばれ慕われる事で、その思いに応えてくれればとワシ達は思ったんだ……」
「でも……」
私は頭の中がグチャグチャしていた。
それにマルクル兄様への思いが分からなくなってきていた。 でも……それでも……考えるのを止めようとした事へと立ち向かう事が出来るかもしれない。 と、思えてしまうのだ。
「もし、マルクル兄様と離縁しても、お母様、お父様と呼んでいいですか?」
「えぇ、当たり前でしょう」
「あぁ、当然だ。 コレで自分に優位に動いたとは思うなよ。 嫁にはやらんからな」
国王はフェルザーへと向かい威嚇的に発言をする。
「ソレを決めるのは陛下ではありませんよ」
そして、ご機嫌になるフェルザーだった。
「と、に、か、く!! 1度離婚はなさい。 それで、もう1度あの子の妻になりたいと思うなら、私は止めません……多分……きっと止めないと、思うわ……」
「オマエは……自分の息子をもう少し信用できないのか!! 今は次期国王としての仕事も積極的に励んでいるじゃないか。 見直してやれ。 あの子は母親が大好きな子だったんだから」
「そうだったかしら?」
「オマエと言う奴は!!」
「お父様、お母様、喧嘩は止めて下さい!!」
「そ、そうね」
「そうだな」
「あの……仲直りした所悪いんですが……。 マルクルの奴が自分で仕事をしないで他所に仕事を振っている事が発覚したんですよねぇ……」
その言葉に頭を抱える王妃と国王だった。
「人の妻に付きまとっている貴方ほどではありませんよ。 ばぁ~か」
「下種」
ボソリと呟かれたフェルザーの言葉。
返されたマルクルの言葉にイラっと再びフェルザーが返す。
そしてフェルザーはレーネの後を追い……王妃はヒールを脱ぎ捨てフェルザーの後を追いかけはじめ、その後ろを国王陛下は必死に追いかけた。
「貴方の家族はとても賑やかね」
「えぇ、だから私は……孤独なんですよ」
そう語るアリアーヌ姫とマルクル、そして木の陰からソレを見つめるノーラがいた。
レーネは転ぶ寸前にフェルザーに保護。 腰に回された腕で宙づり状態にされ、ストンと地面に置き立たせられた。
「泣いていいぞ、アッチをむいている」
涙を浮かべ、嗚咽交じりに呼吸をしているものの声は抑えていた。
「泣かない……」
「ショックだったんだろう?」
ショックではあった……だけど、
「我慢せずに、感情をぶつければいい」
「出来ないよ……」
嗚咽で上手く話せない。
「なぜ? ずっと親子として過ごしていたんだろう? そこに信頼関係はないのか?」
「だ、だって!! 私は……他人だもの。 私はあのお姫様と違って何一つ持っていない。 あの人達に嫌われたら……私は住む場所もないし、服も、靴もないの!! 何処にも行き場所はないし、どう生きて行けばいいのかもわからないのよ!! 文句なんて言える訳ないじゃない!! それに、嫌われたら……嫌われたら……寂しいぃよ……」
レーネはフェルザーの分厚い胸元を叩いた。
「なら、うちに来ればいい、俺は嬉しい。 部屋なら幾らでもあるし、オヤジも喜ぶ。 うちは領地も広いし色んな事をして、何をしたいかユックリと決めればいい」
瞳から涙をボロボロと溢れさせながら、レーネはフェルザーを見つめた。
「良い考えだと思わないか? ノーラもうちから派遣している侍女だし、これからも一緒に居る事ができる」
「それは……魅力的……だわ」
ボソリと告げるが、やっぱりボロボロと大粒の涙が零れ落ちていた。
「待って、待ってよ。 誤解よ!! 勝手に話を決めないで!! 勘違いさせたならゴメン。 謝りますから」
そうヒーヒーと息をきらしながら言ったのは王妃だった。
レーネはフェルザーを盾に王妃と立ち向かおうとするけれど、フェルザーはレーネを王妃と立ち向かわせた。 オロオロとしながらも王妃はレーネを抱きしめようと両手を伸ばすが、レーネは声を大に怒鳴った。
「どうした……どうして、一緒に食事を、お茶をしてくれなくなったんですか!! 私より、お姫様の方が良い子だからですか!!」
「その……会えなかったのよ。 貴方は賢い子だから、バレてしまうもの」
「何を言っているのかわからないわ」
「最初に言わせて頂戴。 私は貴方を息子の嫁ではなく、娘だと思っているの。 だから、レーネ、貴方も自分をあの女と比べないで」
「ぇ?」
レーネはきょとんと王妃を見れば、ぜーぜーと息と髪を乱しながら王様もやってくる。
「ワシだってそうだ!! 娘だと思っている。 だが、レーネもそう思っているか分からんだろう!! マルクルが好きで父母としてついでに慕ってくれているのかもしれないだろう。 だから、ダメだ。 言うんじゃない!! ワシは反対だ!!」
「ウルサイわね。 これ以上言うと髭をはがすわよ!! レーネ!! あの不誠実な男と離婚なさい!!」
「ダメだ!!」
「ウルサイって言っているでしょう!!」
手を伸ばした王妃は容赦なく国王のとても偉そうな髭に手を伸ばし……べりッとはがした。 既に髭は引っこ抜かれた後だったらしい。 急に威厳が損ねられる国王はしょぼしょぼと大人しくなった。
意表を突かれる怒鳴り合いに、レーネは困惑し怯えフェルザーを見上げた。 さりげなく慰めるように肩を抱こうとするフェルザーを王妃がとがめる。
「ドサクサに紛れて何触っているのよ」
「お二人が喧嘩をするから、レーネ様が怯えている。 ソレを庇い慰めるのも俺の仕事の範疇ですよ。 まぁ……ようするに、レーネ様、お二人は隣国の姫が気に入って顔を出さなかったのではなく、ここ1月ほどずっと喧嘩をしていてイライラと不機嫌で、そんな姿を見せたくなかっただけだ」
「喧嘩……ですか?」
「そう、だが……そんな事に悩んでいるなら聞いてくれればよかったものを、それに俺はショックですよ。 別にこの2人と食事やお茶をしなくても、俺やマイラ、ノーラ、他の侍女達もいたんだから」
「ぇっと……そうね。 だけど……」
色々と驚いてレーネの感情は混乱し引っ込んだ。
「居場所がなくなるから不満は言えないと言う奴か? まぁ、そこは、気に入らなければうちに気軽に家出してくればいい。 使用人全員引き連れて来た所で問題はないぞ。 金も広い屋敷もある」
「フェルザーいい加減に自分を推すのは止めてくれないかしら? 私も……その、娘と話をしたいのよ。 そう、大事な話があるの」
「大事な話ですか?」
「そう貴方、レーネがいながら別の女を連れ込んだ不誠実なマルクルと離縁なさい。 手続きは私が全部しますから」
「ダメだ、ダメだ、ダメだ!! そんな事をしたら、すぐにお嫁に行ってしまうに決まっている。 そりゃぁ女は連れて来たが、ソレで仕事はするようになったわけだし、悪いばかりではない。 悪い所ばかりを見ずに、もう少し長い目でだなぁ」
「お黙りなさい!! 貴方がそんな不誠実を許容するとは……嘆かわしい。 私は……王子でありながら私だけに一途だった貴方に恋をしましたのよ?」
「……それは……ワシだって、オマエ以外の妻を娶ろうとは思わん。 だが!! 娘は息子とは違って可愛いんじゃ!!」
「まぁ、こうやって喧嘩をしていて、レーネとの食事やお茶を避けて悲しませるんじゃ、居ないも一緒ですけどね」
遠慮なく喧嘩に割って入るフェルザーに2人は叫んだ。
「「あんたって子は!!」」
「その……どうして、マルクル兄様と離縁しろと……」
怯えるようにレーネはそっと割って入る。
「それは、貴方が幸せになれないからよ。 妻を二人も持とうと言う男に誠実なんて期待できないわ。 あの女は上手くマルクルに仕事をさせてくれているけど、それで、レーネ、貴方まであの女に支配されては人生台無しでしょう?」
「よ、良く……わかりません」
「マルクルは幼い頃は頭が良くてね。 それが原因で周囲を見下し傲慢な子に育ってしまったの。 だから、強くて、尻を叩いてくれるような女性で無いと制御が難しいのよね……。 レーネは優しいからそう言う風には出来ないでしょう?」
王妃は必死に言葉を選びつつも、言いたい事は1つならしい。
「だから、あの女にくれてやりなさい」
「で、でも!! 私は!! マルクル兄様をお慕いしているんです!!」
「貴方が、マルクルを何故兄様と呼ぶようになったか覚えているかしら?」
「ぇっ……初めて知り合った時から、でしょうか?」
と言うと生まれた瞬間になってしまうけれど……きっとお話しが出来るようになった頃では? と、だから今も兄様と呼ぶ事が抜けないのだと思うのです。
「やっぱり……混乱していた時期だから覚えていないのね……」
王妃様が言うには、知らない大人が大勢いる王宮に引き取られてすぐは周囲に馴染む事ができず、何時だって王妃様に縋りついていた(ここでソレがどんなに可愛かったか語られるが省略)。
それが気に入らないとマルクルはレーネを虐め始めた。 池に落とす事も今回初めてではなく、マルクルを対等に注意出来る存在としてその立場を与えていたフェルザーにレーネの護衛を頼んだと言う話だった。
王妃はマルクルを叱り。
フェルザーはイジメを止め、時にイジメ返す。
マルクルはフェルザーが気に入らないと、国王に色々とチクリを入れ。
国王はフェルザーに加減を求め、王妃にもあまり叱るなと宥めた。
そうするとマルクルは再び傲慢な態度を取り、最初に戻る。
そんな騒々しい日々が続いていたそうだ。
全く記憶にないのですが……。
それでも、レーネへの嫌がらせが止まらなかったある日、突然にイジメが止まった。 それは、私がマルクル兄様を、兄様と呼び慕って見せた事がきっかけで、マルクル兄様は兄としての態度を取り始めたと言う話だった。
「レーネは自分に暗示をかけてしまったのかもしれませんわね。 自己防衛のために……もし、本当に、マルクルが好きだ、好きで好きでたまらないマルクルの子を生むんだ!! と言う思いがレーネ、貴方にあったなら、兄様とは呼ばなくなっていると私は思うの。 貴方が兄様と呼ぶのは予防線であって、王宮にいる条件として自分に課しているのだと私は考えているの。 母様はそう考えると少しだけ寂しく思うのですけどね」
王妃は寂しそうに笑って見せた。
「あぁ……兄と呼ばれ慕われる事で、その思いに応えてくれればとワシ達は思ったんだ……」
「でも……」
私は頭の中がグチャグチャしていた。
それにマルクル兄様への思いが分からなくなってきていた。 でも……それでも……考えるのを止めようとした事へと立ち向かう事が出来るかもしれない。 と、思えてしまうのだ。
「もし、マルクル兄様と離縁しても、お母様、お父様と呼んでいいですか?」
「えぇ、当たり前でしょう」
「あぁ、当然だ。 コレで自分に優位に動いたとは思うなよ。 嫁にはやらんからな」
国王はフェルザーへと向かい威嚇的に発言をする。
「ソレを決めるのは陛下ではありませんよ」
そして、ご機嫌になるフェルザーだった。
「と、に、か、く!! 1度離婚はなさい。 それで、もう1度あの子の妻になりたいと思うなら、私は止めません……多分……きっと止めないと、思うわ……」
「オマエは……自分の息子をもう少し信用できないのか!! 今は次期国王としての仕事も積極的に励んでいるじゃないか。 見直してやれ。 あの子は母親が大好きな子だったんだから」
「そうだったかしら?」
「オマエと言う奴は!!」
「お父様、お母様、喧嘩は止めて下さい!!」
「そ、そうね」
「そうだな」
「あの……仲直りした所悪いんですが……。 マルクルの奴が自分で仕事をしないで他所に仕事を振っている事が発覚したんですよねぇ……」
その言葉に頭を抱える王妃と国王だった。
11
お気に入りに追加
584
あなたにおすすめの小説
【完結】妹が私から何でも奪おうとするので、敢えて傲慢な悪徳王子と婚約してみた〜お姉様の選んだ人が欲しい?分かりました、後悔しても遅いですよ
冬月光輝
恋愛
ファウスト侯爵家の長女であるイリアには、姉のものを何でも欲しがり、奪っていく妹のローザがいた。
それでも両親は妹のローザの方を可愛がり、イリアには「姉なのだから我慢しなさい」と反論を許さない。
妹の欲しがりは増長して、遂にはイリアの婚約者を奪おうとした上で破談に追いやってしまう。
「だって、お姉様の選んだ人なら間違いないでしょう? 譲ってくれても良いじゃないですか」
大事な縁談が壊れたにも関わらず、悪びれない妹に頭を抱えていた頃、傲慢でモラハラ気質が原因で何人もの婚約者を精神的に追い詰めて破談に導いたという、この国の第二王子ダミアンがイリアに見惚れて求婚をする。
「ローザが私のモノを何でも欲しがるのならいっそのこと――」
イリアは、あることを思いついてダミアンと婚約することを決意した。
「毒を以て毒を制す」――この物語はそんなお話。
私の婚約者はお姉さまが好きなようです~私は国王陛下に愛でられました~
安奈
恋愛
「マリア、私との婚約はなかったことにしてくれ。私はお前の姉のユリカと婚約したのでな」
「マリア、そういうことだから。ごめんなさいね」
伯爵令嬢マリア・テオドアは婚約者のカンザス、姉のユリカの両方に裏切られた。突然の婚約破棄も含めて彼女は泣き崩れる。今後、屋敷でどんな顔をすればいいのかわからない……。
そこへ現れたのはなんと、王国の最高権力者であるヨハン・クラウド国王陛下であった。彼の救済を受け、マリアは元気づけられていく。そして、側室という話も出て来て……どうやらマリアの人生は幸せな方向へと進みそうだ。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
【完結】用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない
千紫万紅
恋愛
王位継承争いによって誕生した後ろ楯のない無力な少年王の後ろ楯となる為だけに。
公爵令嬢ユーフェミアは僅か10歳にして大国の王妃となった。
そして10年の時が過ぎ、無力な少年王は賢王と呼ばれるまでに成長した。
その為後ろ楯としての価値しかない用済みの王妃は廃妃だと性悪宰相はいう。
「城から追放された挙げ句、幽閉されて監視されて一生を惨めに終えるくらいならば、こんな国……逃げだしてやる!」
と、ユーフェミアは誰にも告げず城から逃げ出した。
だが、城から逃げ出したユーフェミアは真実を知らない。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
白い結婚の契約ですね? 喜んで務めさせていただきます
アソビのココロ
恋愛
「ジニー、僕は君を愛そうとは思わない」
アッシュビー伯爵家の嫡男ユージンに嫁いだホルスト男爵家ジニーは、白い結婚を宣告された。ユージンには愛する平民の娘がいたから。要するにジニーは、二年間の契約でユージンの妻役を務めることを依頼されたのだ。
「慰謝料の名目で、最低これだけ払おう」
「大変結構な条件です。精一杯努力させていただきます」
そして二年が経過する。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる