モラハラ王子の真実を知った時

こことっと

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「最悪だな」

「人の妻に付きまとっている貴方ほどではありませんよ。 ばぁ~か」

「下種」

 ボソリと呟かれたフェルザーの言葉。
 返されたマルクルの言葉にイラっと再びフェルザーが返す。



 そしてフェルザーはレーネの後を追い……王妃はヒールを脱ぎ捨てフェルザーの後を追いかけはじめ、その後ろを国王陛下は必死に追いかけた。

「貴方の家族はとても賑やかね」
「えぇ、だから私は……孤独なんですよ」

 そう語るアリアーヌ姫とマルクル、そして木の陰からソレを見つめるノーラがいた。



 レーネは転ぶ寸前にフェルザーに保護。 腰に回された腕で宙づり状態にされ、ストンと地面に置き立たせられた。

「泣いていいぞ、アッチをむいている」

 涙を浮かべ、嗚咽交じりに呼吸をしているものの声は抑えていた。

「泣かない……」

「ショックだったんだろう?」

 ショックではあった……だけど、

「我慢せずに、感情をぶつければいい」

「出来ないよ……」

 嗚咽で上手く話せない。

「なぜ? ずっと親子として過ごしていたんだろう? そこに信頼関係はないのか?」

「だ、だって!! 私は……他人だもの。 私はあのお姫様と違って何一つ持っていない。 あの人達に嫌われたら……私は住む場所もないし、服も、靴もないの!! 何処にも行き場所はないし、どう生きて行けばいいのかもわからないのよ!! 文句なんて言える訳ないじゃない!! それに、嫌われたら……嫌われたら……寂しいぃよ……」

 レーネはフェルザーの分厚い胸元を叩いた。

「なら、うちに来ればいい、俺は嬉しい。 部屋なら幾らでもあるし、オヤジも喜ぶ。 うちは領地も広いし色んな事をして、何をしたいかユックリと決めればいい」

 瞳から涙をボロボロと溢れさせながら、レーネはフェルザーを見つめた。

「良い考えだと思わないか? ノーラもうちから派遣している侍女だし、これからも一緒に居る事ができる」

「それは……魅力的……だわ」

 ボソリと告げるが、やっぱりボロボロと大粒の涙が零れ落ちていた。

「待って、待ってよ。 誤解よ!! 勝手に話を決めないで!! 勘違いさせたならゴメン。 謝りますから」

 そうヒーヒーと息をきらしながら言ったのは王妃だった。

 レーネはフェルザーを盾に王妃と立ち向かおうとするけれど、フェルザーはレーネを王妃と立ち向かわせた。 オロオロとしながらも王妃はレーネを抱きしめようと両手を伸ばすが、レーネは声を大に怒鳴った。

「どうした……どうして、一緒に食事を、お茶をしてくれなくなったんですか!! 私より、お姫様の方が良い子だからですか!!」

「その……会えなかったのよ。 貴方は賢い子だから、バレてしまうもの」

「何を言っているのかわからないわ」

「最初に言わせて頂戴。 私は貴方を息子の嫁ではなく、娘だと思っているの。 だから、レーネ、貴方も自分をあの女と比べないで」

「ぇ?」

 レーネはきょとんと王妃を見れば、ぜーぜーと息と髪を乱しながら王様もやってくる。

「ワシだってそうだ!! 娘だと思っている。 だが、レーネもそう思っているか分からんだろう!! マルクルが好きで父母としてついでに慕ってくれているのかもしれないだろう。 だから、ダメだ。 言うんじゃない!! ワシは反対だ!!」

「ウルサイわね。 これ以上言うと髭をはがすわよ!! レーネ!! あの不誠実な男と離婚なさい!!」

「ダメだ!!」

「ウルサイって言っているでしょう!!」

 手を伸ばした王妃は容赦なく国王のとても偉そうな髭に手を伸ばし……べりッとはがした。 既に髭は引っこ抜かれた後だったらしい。 急に威厳が損ねられる国王はしょぼしょぼと大人しくなった。

 意表を突かれる怒鳴り合いに、レーネは困惑し怯えフェルザーを見上げた。 さりげなく慰めるように肩を抱こうとするフェルザーを王妃がとがめる。

「ドサクサに紛れて何触っているのよ」

「お二人が喧嘩をするから、レーネ様が怯えている。 ソレを庇い慰めるのも俺の仕事の範疇ですよ。 まぁ……ようするに、レーネ様、お二人は隣国の姫が気に入って顔を出さなかったのではなく、ここ1月ほどずっと喧嘩をしていてイライラと不機嫌で、そんな姿を見せたくなかっただけだ」

「喧嘩……ですか?」

「そう、だが……そんな事に悩んでいるなら聞いてくれればよかったものを、それに俺はショックですよ。 別にこの2人と食事やお茶をしなくても、俺やマイラ、ノーラ、他の侍女達もいたんだから」

「ぇっと……そうね。 だけど……」

 色々と驚いてレーネの感情は混乱し引っ込んだ。

「居場所がなくなるから不満は言えないと言う奴か? まぁ、そこは、気に入らなければうちに気軽に家出してくればいい。 使用人全員引き連れて来た所で問題はないぞ。 金も広い屋敷もある」

「フェルザーいい加減に自分を推すのは止めてくれないかしら? 私も……その、娘と話をしたいのよ。 そう、大事な話があるの」

「大事な話ですか?」

「そう貴方、レーネがいながら別の女を連れ込んだ不誠実なマルクルと離縁なさい。 手続きは私が全部しますから」

「ダメだ、ダメだ、ダメだ!! そんな事をしたら、すぐにお嫁に行ってしまうに決まっている。 そりゃぁ女は連れて来たが、ソレで仕事はするようになったわけだし、悪いばかりではない。 悪い所ばかりを見ずに、もう少し長い目でだなぁ」

「お黙りなさい!! 貴方がそんな不誠実を許容するとは……嘆かわしい。 私は……王子でありながら私だけに一途だった貴方に恋をしましたのよ?」

「……それは……ワシだって、オマエ以外の妻を娶ろうとは思わん。 だが!! 娘は息子とは違って可愛いんじゃ!!」

「まぁ、こうやって喧嘩をしていて、レーネとの食事やお茶を避けて悲しませるんじゃ、居ないも一緒ですけどね」

 遠慮なく喧嘩に割って入るフェルザーに2人は叫んだ。

「「あんたオマエって子は!!」」

「その……どうして、マルクル兄様と離縁しろと……」

 怯えるようにレーネはそっと割って入る。

「それは、貴方が幸せになれないからよ。 妻を二人も持とうと言う男に誠実なんて期待できないわ。 あの女は上手くマルクルに仕事をさせてくれているけど、それで、レーネ、貴方まであの女に支配されては人生台無しでしょう?」

「よ、良く……わかりません」

「マルクルは幼い頃は頭が良くてね。 それが原因で周囲を見下し傲慢な子に育ってしまったの。 だから、強くて、尻を叩いてくれるような女性で無いと制御が難しいのよね……。 レーネは優しいからそう言う風には出来ないでしょう?」

 王妃は必死に言葉を選びつつも、言いたい事は1つならしい。

「だから、あの女にくれてやりなさい」

「で、でも!! 私は!! マルクル兄様をお慕いしているんです!!」

「貴方が、マルクルを何故兄様と呼ぶようになったか覚えているかしら?」

「ぇっ……初めて知り合った時から、でしょうか?」

 と言うと生まれた瞬間になってしまうけれど……きっとお話しが出来るようになった頃では? と、だから今も兄様と呼ぶ事が抜けないのだと思うのです。

「やっぱり……混乱していた時期だから覚えていないのね……」

 王妃様が言うには、知らない大人が大勢いる王宮に引き取られてすぐは周囲に馴染む事ができず、何時だって王妃様に縋りついていた(ここでソレがどんなに可愛かったか語られるが省略)。

 それが気に入らないとマルクルはレーネを虐め始めた。 池に落とす事も今回初めてではなく、マルクルを対等に注意出来る存在としてその立場を与えていたフェルザーにレーネの護衛を頼んだと言う話だった。

 王妃はマルクルを叱り。
 フェルザーはイジメを止め、時にイジメ返す。
 マルクルはフェルザーが気に入らないと、国王に色々とチクリを入れ。
 国王はフェルザーに加減を求め、王妃にもあまり叱るなと宥めた。
 そうするとマルクルは再び傲慢な態度を取り、最初に戻る。

 そんな騒々しい日々が続いていたそうだ。
 全く記憶にないのですが……。

 それでも、レーネへの嫌がらせが止まらなかったある日、突然にイジメが止まった。 それは、私がマルクル兄様を、兄様と呼び慕って見せた事がきっかけで、マルクル兄様は兄としての態度を取り始めたと言う話だった。

「レーネは自分に暗示をかけてしまったのかもしれませんわね。 自己防衛のために……もし、本当に、マルクルが好きだ、好きで好きでたまらないマルクルの子を生むんだ!! と言う思いがレーネ、貴方にあったなら、兄様とは呼ばなくなっていると私は思うの。 貴方が兄様と呼ぶのは予防線であって、王宮にいる条件として自分に課しているのだと私は考えているの。 母様はそう考えると少しだけ寂しく思うのですけどね」

 王妃は寂しそうに笑って見せた。

「あぁ……兄と呼ばれ慕われる事で、その思いに応えてくれればとワシ達は思ったんだ……」

「でも……」

 私は頭の中がグチャグチャしていた。
それにマルクル兄様への思いが分からなくなってきていた。 でも……それでも……考えるのを止めようとした事へと立ち向かう事が出来るかもしれない。 と、思えてしまうのだ。

「もし、マルクル兄様と離縁しても、お母様、お父様と呼んでいいですか?」

「えぇ、当たり前でしょう」
「あぁ、当然だ。 コレで自分に優位に動いたとは思うなよ。 嫁にはやらんからな」

 国王はフェルザーへと向かい威嚇的に発言をする。

「ソレを決めるのは陛下ではありませんよ」

 そして、ご機嫌になるフェルザーだった。

「と、に、か、く!! 1度離婚はなさい。 それで、もう1度あの子の妻になりたいと思うなら、私は止めません……多分……きっと止めないと、思うわ……」

「オマエは……自分の息子をもう少し信用できないのか!! 今は次期国王としての仕事も積極的に励んでいるじゃないか。 見直してやれ。 あの子は母親が大好きな子だったんだから」

「そうだったかしら?」

「オマエと言う奴は!!」

「お父様、お母様、喧嘩は止めて下さい!!」

「そ、そうね」
「そうだな」

「あの……仲直りした所悪いんですが……。 マルクルの奴が自分で仕事をしないで他所に仕事を振っている事が発覚したんですよねぇ……」



 その言葉に頭を抱える王妃と国王だった。
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