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初恋(バルトルト視点の番外)
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祖父は実力主義の人だった。
地位や権力に関係なく、その実績を取り立て、褒め、褒美を与える。
そんな人。
父は権力主義の人だ。
祖父が、部下を褒め、褒美を与えるのが許せなかった。
国民なら王のために尽くすのが当然なのに、なぜ、機嫌を取らなければいけないのだ……と。
そんな奴。
だから僕は、母の腹に宿った時から疎まれていた。
母は男爵家の生まれ。
祖父曰く、文武両道に優れた美しい人だったと言う。
それでも、父にとっては戦場で少しマシな女だから、女騎士として戦場に赴いた母を現地での愛人として使った。 あの人なら愛したよりも使ったと言う言葉の方が正しいだろうと思う。
母の妊娠は、父にとって不本意だったと言う訳だ。
彼にとっては男爵家の娘等、かろうじて人間の範疇に入る程度なのだろうから。 それを理解していた母は僕を隠し育てるつもりだったらしい。
だが、嫉妬深い父の妻に見つかった。
妊娠間際の母は、暴行を受けて死んだ。
僕は死体から生まれた。
僕を助けてくれたのは祖父だった。
そして、父の第二王子として王族に受け入れさせた。
祖父は僕を良く可愛がってくれた。
「バルは母親の実家で育ててもらった方が幸福だったかもしれない。 ツライ思いをさせてしまうかもしれない。 済まない。 それでも私はお前を愛しているんだ」
祖父は辛そうに何度も謝罪し、僕を優しい瞳で見つめた。
「きっとツライ思いをするだろう。 だけれど、私が生きている限りは守ると約束しよう。 私が生きている限りは、生き残るための力をつけさせよう」
祖父は、男爵家で育つよりも、父の子として発表し、祖父に教育を受けた方が良いだろうと判断したそうだ。
何度も何度も謝りながら。
『すまなかった』
その祖父が亡くなった。
事故だと言う話だった。
父は自分よりも強い権力を持つ祖父を疎んでいた……だから、その死は……怪しいと僕は疑っている。
祖父の葬儀の席。
父が王位を宣言した日。
彼は僕の肩を抱き、大勢の人の前で僕を紹介した。
「この子は祖父が私の第二王子と定めた……サルの子だ。 真っ当な子ではない。 サルはサルらしく扱うがいい」
見下し嘲笑うように……王は、僕を突き落とした。
王は、身分の低い者を見下し、そして虐げる。
それはストレス発散で八つ当たりで娯楽。
僕が道化師となれば……父が優秀だととりたて守った多くの者達が救われる。
だから僕は道化となる事を決めた。
孤独。
決めたけど、独りぼっちは寂しい。
決めたけど、虐げられるのはツライ。
『力と知恵を諦めてはいけないよ。 ソレはバルを助けてくれる武器になるから』
祖父はそう言っていたから……僕は、人の目をかいくぐって図書館へと通っていた。 現王の統治となってからは司書すらいなくなり、通う者もいなくなった図書館。
誰も会う事もない空間に、ある日突然天使が現れた。
小さなその子は、高い場所の本を取るための梯子の上にいて……。
「危ないよ。 僕が本を取って上げるから」
誰もが避ける僕に、
誰もが自衛のために馬鹿にする僕に、
微笑みを向けてくれたのだ。
「ありがとう!! 梯子に昇っても手が届かなくて困っていた所ですの」
その日から僕達は、毎日のように図書館で一緒に勉強をした。
小さなその子は、司書が居れば追い出されただろうと思うほど小さな子で、勉強の合間に良く休憩が挟まれる。
お茶と菓子を前に、彼女はおままごとを始める。
家族ごっこ。
甘くて優しくて……僕の家族……。
「サーシャ、愛しているよ。僕の奥さん」
「私も愛しているわ。旦那様」
そう僕達は、恋の本にある夫婦を演じて笑いあった。
唯一の幸福。
それは長く続かなかった。
ある日を最後に、彼女は旅に出たから。
最後の日、僕は騎士団の訓練の時にケガをして、何時もよりも図書館に行くのは遅くなって……彼女に会えなかった。
残されたメッセージと別れの言葉。
僕は……彼女との再会を望んで、王宮で道化師を続け、戦場で戦い続けた。 例え道化師であっても、あの子に相応しい実績は積み上げたかったから。
そして、僕は……彼女を見つけた。
美しく成長した彼女に。
サーシャ、愛しているよ。
これまでも……。
これからも……。
終わり
最後までお読み頂きありがとうございました(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
地位や権力に関係なく、その実績を取り立て、褒め、褒美を与える。
そんな人。
父は権力主義の人だ。
祖父が、部下を褒め、褒美を与えるのが許せなかった。
国民なら王のために尽くすのが当然なのに、なぜ、機嫌を取らなければいけないのだ……と。
そんな奴。
だから僕は、母の腹に宿った時から疎まれていた。
母は男爵家の生まれ。
祖父曰く、文武両道に優れた美しい人だったと言う。
それでも、父にとっては戦場で少しマシな女だから、女騎士として戦場に赴いた母を現地での愛人として使った。 あの人なら愛したよりも使ったと言う言葉の方が正しいだろうと思う。
母の妊娠は、父にとって不本意だったと言う訳だ。
彼にとっては男爵家の娘等、かろうじて人間の範疇に入る程度なのだろうから。 それを理解していた母は僕を隠し育てるつもりだったらしい。
だが、嫉妬深い父の妻に見つかった。
妊娠間際の母は、暴行を受けて死んだ。
僕は死体から生まれた。
僕を助けてくれたのは祖父だった。
そして、父の第二王子として王族に受け入れさせた。
祖父は僕を良く可愛がってくれた。
「バルは母親の実家で育ててもらった方が幸福だったかもしれない。 ツライ思いをさせてしまうかもしれない。 済まない。 それでも私はお前を愛しているんだ」
祖父は辛そうに何度も謝罪し、僕を優しい瞳で見つめた。
「きっとツライ思いをするだろう。 だけれど、私が生きている限りは守ると約束しよう。 私が生きている限りは、生き残るための力をつけさせよう」
祖父は、男爵家で育つよりも、父の子として発表し、祖父に教育を受けた方が良いだろうと判断したそうだ。
何度も何度も謝りながら。
『すまなかった』
その祖父が亡くなった。
事故だと言う話だった。
父は自分よりも強い権力を持つ祖父を疎んでいた……だから、その死は……怪しいと僕は疑っている。
祖父の葬儀の席。
父が王位を宣言した日。
彼は僕の肩を抱き、大勢の人の前で僕を紹介した。
「この子は祖父が私の第二王子と定めた……サルの子だ。 真っ当な子ではない。 サルはサルらしく扱うがいい」
見下し嘲笑うように……王は、僕を突き落とした。
王は、身分の低い者を見下し、そして虐げる。
それはストレス発散で八つ当たりで娯楽。
僕が道化師となれば……父が優秀だととりたて守った多くの者達が救われる。
だから僕は道化となる事を決めた。
孤独。
決めたけど、独りぼっちは寂しい。
決めたけど、虐げられるのはツライ。
『力と知恵を諦めてはいけないよ。 ソレはバルを助けてくれる武器になるから』
祖父はそう言っていたから……僕は、人の目をかいくぐって図書館へと通っていた。 現王の統治となってからは司書すらいなくなり、通う者もいなくなった図書館。
誰も会う事もない空間に、ある日突然天使が現れた。
小さなその子は、高い場所の本を取るための梯子の上にいて……。
「危ないよ。 僕が本を取って上げるから」
誰もが避ける僕に、
誰もが自衛のために馬鹿にする僕に、
微笑みを向けてくれたのだ。
「ありがとう!! 梯子に昇っても手が届かなくて困っていた所ですの」
その日から僕達は、毎日のように図書館で一緒に勉強をした。
小さなその子は、司書が居れば追い出されただろうと思うほど小さな子で、勉強の合間に良く休憩が挟まれる。
お茶と菓子を前に、彼女はおままごとを始める。
家族ごっこ。
甘くて優しくて……僕の家族……。
「サーシャ、愛しているよ。僕の奥さん」
「私も愛しているわ。旦那様」
そう僕達は、恋の本にある夫婦を演じて笑いあった。
唯一の幸福。
それは長く続かなかった。
ある日を最後に、彼女は旅に出たから。
最後の日、僕は騎士団の訓練の時にケガをして、何時もよりも図書館に行くのは遅くなって……彼女に会えなかった。
残されたメッセージと別れの言葉。
僕は……彼女との再会を望んで、王宮で道化師を続け、戦場で戦い続けた。 例え道化師であっても、あの子に相応しい実績は積み上げたかったから。
そして、僕は……彼女を見つけた。
美しく成長した彼女に。
サーシャ、愛しているよ。
これまでも……。
これからも……。
終わり
最後までお読み頂きありがとうございました(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
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