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ミリヤム・リービヒ公爵令嬢の身体検査への説得は想像以上に難航しました。
戸惑う医師と侍女達を待たせながらお茶を飲み穏やかに説得……したかったのですが……私を抱っこし何時も以上に幼い反応を示し愚図つくバルトルト様をなだめていれば、ミリヤム様が合間合間で喧嘩を売って来て話になりません。
そうしている間に、ミリヤム様はケーキ3つ食べ終えていた。
そこにはストロープ伯爵令嬢が言っていたような傷心と言う様子はうかがえません。 体調不良と言うには食欲はあるようですし……あえて言うなら、ストレスからの過食と言う可能性を考える事は出来ますが……ストロープ伯爵令嬢の言葉を思い出せば、大きな違和感が拭えません。
「情けないわね……。 本当にこんな人が夫になるなんて考えられないわ……」
グズグズと私を抱きしめ愚図るバルトルト様を見て、嘲笑ったかと思えば、拗ねてみたり忙しく感情を揺らめかせながらミリヤム様が呟いた。
「僕だってサーシャが居ればいいもの。 貴方との縁なんて厄介ごとにしかならないんだから要らない」
「私こそ、厄介ごとが服を着ているような貴方との関係なんて要らないわよ!!」
そんな言葉が繰り返される。
私は悩みに悩んだ結果……。
「私のお願いを聞いて頂けないなら……仕方がありません。 本当は、とても嫌なのですが……バルトルト様に説得していただくまで、部屋を封じる事にします。 ストロープ伯爵令嬢のおっしゃることが事実なら、きっとソレでミリヤム様は元気になってくださるはずですから」
「「ちょ、何ソレ、待ってよ!!」」
声がはもっていて……本当仲良しで妬けるわ……なんて思ってしまう。
私はバルトルト様の膝の上から降りようとすれば、ベルトのようにバルトルト様の両腕が私の腰に回されていた。
「ダメよ……夫として、ちゃんと説得して頂戴。 頼りにしてますわ」
「頼られるのは嬉しいけど、嫌なものは嫌だ!! 僕が襲われたらどうしてくれるの?! 嫌でしょう!!」
「誰が貴方のような馬鹿を襲うって言うのよ!! どうせ襲うなら賢くて紳士的で静かで大人な方を篭絡するわよ!!」
「バルトルト様の貞操は保証されましたわ。 頑張ってくださいね」
両サイドからギャーギャーと、嫌だと騒がれ、私は耳を両手で塞いでいたけれど、何時までも続く騒ぎに両手を打ち鳴らした。
パンッと高い音が鳴り響く。
ピタリと止まる言い合い。
「ねぇ、何時までもこのように不毛な時間をお過ごしになるのは嫌でしょう? 早く終わらせるべきだとは思いませんか?」
「……そうね……」
ようやくミリヤム様が妥協してくれた。
ミリヤム様の身体には打撲跡らしきものは喉に詰まらせた食べ物を吐き出させる時についたもののみ。 憔悴の痕跡は、過食と言うなら……無いとは言えません。 三年前に会った時よりも明らかにふくよかになられている。
身体を確認する侍女達と共に彼女を見ていれば、物凄いしかめっ面をされましたが、私だってそう言う態度になるだろう事を考えれば、そこには僅かな罪悪感を私は覚え……そして彼女もまた罪悪感を覚えているように見えた。
何とも言えない表情は泣きだしそうにすら見えて、私は焦りを覚えたのですけれど、彼女の告白を聞けば理由がわかりました。
「王都に戻る前には痩せるようにするわよ……公爵令嬢として、ずっと節制を義務付けられていたのよ。 初めてなのよ!! いいでしょう……これくらい。 ただ、それだけなの。 私は病気ではないわ」
「では、我が家にいらっしゃるのはどうかしら? 体型を配慮しながら美味しい食事を提供しますわ。 特にデザートが逸品ですのよ?」
「ぇっ? えぇえええええ」
嬉しそうな顔の後に、しかめっ面をして、余りにも正直なその表情の変化に私は笑うのを堪えるのに必死になってしまった。
色々と聞きたい事は多い。 ストロープ伯爵令嬢の言葉との違いは多く、どちらが嘘をついていると言われれば、私はストロープ伯爵令嬢の方だと思う。 ストロープ伯爵令嬢の言動が嫌だった……のもありますが、ミリヤム様が嘘を言っているようには思えなかったから。
「あの……わざわざバルトルト様がいらっしゃる都市にいらした。 それの意味は私も理解しているつもりですわ。 頼りたかったのですよね?」
「へっ? それは、どういう事?」
訳が分からないと言う様子を見せていたけれど私は言葉を続けた。
「ストロープ伯爵令嬢が、ミリヤム様が助けを求めバルトルト様を探していらっしゃるとおっしゃっていましたの」
「あり得ないわ!!」
バルトルト様の事を語れば彼女は素直に誘導される。 少しずつ少しずつ話を聞きだせば、ミリヤム様は安易に危ういほどに語ってくれた。
ミリヤム様は、この都市にバルトルト様が居るとは知らずストロープ伯爵令嬢に連れてこられたらしい。
王都から出た理由は溜息交じりに告げられた。
「国王夫婦を始め王族の方々が出席せず、私も馬鹿も代理で済ませようと言う婚姻披露を開く意味がない。 意味がないのに大金ばかりが必要となる。 それに馬鹿に逃げられたとあってはプライドが、家の尊厳が傷つく、なら馬鹿との婚姻が嫌で私自身が逃げた方が体裁はいいとパパが考えた訳ですの」
「それで、なぜ、ストロープ伯爵令嬢とご一緒でしたの?」
「……」
拗ねたようにそっぽを向く、その様子がバルトルト様と似ていて何故か……可愛く思えてしまった。
「教えて頂けませんか?」
自然と穏やかな声で尋ねる事が出来た。
「お金が……無いのよ……」
「やっぱり、お家に来ませんか? 侍女もつけますしストロープ伯爵令嬢とお二人でいるより過ごしやすいと思いますよ?」
ミリヤム様は、ピクッと微かに硬直し、唇を震わせているように見えた。 だから、私は一旦身を引く事にした。
「そろそろ元の部屋に戻られた方が良いかもしれませんわね。 ストロープ伯爵令嬢がお探しになっているかもしれませんもの」
「ぁっ」
不安そうに私を見上げるミリヤム様。 やっぱりその表情がバルトルト様と似ているように見えて……私は、少しだけ心苦しさを覚え……そっとミリヤム様の側に膝をつき、両の手を取った。
「もし、何かあったなら、従業員にお申し付けください。 私に連絡を取るように伝えておきますわ」
「……ありがとう……」
彼女は静かにぼそりと呟いた。
戸惑う医師と侍女達を待たせながらお茶を飲み穏やかに説得……したかったのですが……私を抱っこし何時も以上に幼い反応を示し愚図つくバルトルト様をなだめていれば、ミリヤム様が合間合間で喧嘩を売って来て話になりません。
そうしている間に、ミリヤム様はケーキ3つ食べ終えていた。
そこにはストロープ伯爵令嬢が言っていたような傷心と言う様子はうかがえません。 体調不良と言うには食欲はあるようですし……あえて言うなら、ストレスからの過食と言う可能性を考える事は出来ますが……ストロープ伯爵令嬢の言葉を思い出せば、大きな違和感が拭えません。
「情けないわね……。 本当にこんな人が夫になるなんて考えられないわ……」
グズグズと私を抱きしめ愚図るバルトルト様を見て、嘲笑ったかと思えば、拗ねてみたり忙しく感情を揺らめかせながらミリヤム様が呟いた。
「僕だってサーシャが居ればいいもの。 貴方との縁なんて厄介ごとにしかならないんだから要らない」
「私こそ、厄介ごとが服を着ているような貴方との関係なんて要らないわよ!!」
そんな言葉が繰り返される。
私は悩みに悩んだ結果……。
「私のお願いを聞いて頂けないなら……仕方がありません。 本当は、とても嫌なのですが……バルトルト様に説得していただくまで、部屋を封じる事にします。 ストロープ伯爵令嬢のおっしゃることが事実なら、きっとソレでミリヤム様は元気になってくださるはずですから」
「「ちょ、何ソレ、待ってよ!!」」
声がはもっていて……本当仲良しで妬けるわ……なんて思ってしまう。
私はバルトルト様の膝の上から降りようとすれば、ベルトのようにバルトルト様の両腕が私の腰に回されていた。
「ダメよ……夫として、ちゃんと説得して頂戴。 頼りにしてますわ」
「頼られるのは嬉しいけど、嫌なものは嫌だ!! 僕が襲われたらどうしてくれるの?! 嫌でしょう!!」
「誰が貴方のような馬鹿を襲うって言うのよ!! どうせ襲うなら賢くて紳士的で静かで大人な方を篭絡するわよ!!」
「バルトルト様の貞操は保証されましたわ。 頑張ってくださいね」
両サイドからギャーギャーと、嫌だと騒がれ、私は耳を両手で塞いでいたけれど、何時までも続く騒ぎに両手を打ち鳴らした。
パンッと高い音が鳴り響く。
ピタリと止まる言い合い。
「ねぇ、何時までもこのように不毛な時間をお過ごしになるのは嫌でしょう? 早く終わらせるべきだとは思いませんか?」
「……そうね……」
ようやくミリヤム様が妥協してくれた。
ミリヤム様の身体には打撲跡らしきものは喉に詰まらせた食べ物を吐き出させる時についたもののみ。 憔悴の痕跡は、過食と言うなら……無いとは言えません。 三年前に会った時よりも明らかにふくよかになられている。
身体を確認する侍女達と共に彼女を見ていれば、物凄いしかめっ面をされましたが、私だってそう言う態度になるだろう事を考えれば、そこには僅かな罪悪感を私は覚え……そして彼女もまた罪悪感を覚えているように見えた。
何とも言えない表情は泣きだしそうにすら見えて、私は焦りを覚えたのですけれど、彼女の告白を聞けば理由がわかりました。
「王都に戻る前には痩せるようにするわよ……公爵令嬢として、ずっと節制を義務付けられていたのよ。 初めてなのよ!! いいでしょう……これくらい。 ただ、それだけなの。 私は病気ではないわ」
「では、我が家にいらっしゃるのはどうかしら? 体型を配慮しながら美味しい食事を提供しますわ。 特にデザートが逸品ですのよ?」
「ぇっ? えぇえええええ」
嬉しそうな顔の後に、しかめっ面をして、余りにも正直なその表情の変化に私は笑うのを堪えるのに必死になってしまった。
色々と聞きたい事は多い。 ストロープ伯爵令嬢の言葉との違いは多く、どちらが嘘をついていると言われれば、私はストロープ伯爵令嬢の方だと思う。 ストロープ伯爵令嬢の言動が嫌だった……のもありますが、ミリヤム様が嘘を言っているようには思えなかったから。
「あの……わざわざバルトルト様がいらっしゃる都市にいらした。 それの意味は私も理解しているつもりですわ。 頼りたかったのですよね?」
「へっ? それは、どういう事?」
訳が分からないと言う様子を見せていたけれど私は言葉を続けた。
「ストロープ伯爵令嬢が、ミリヤム様が助けを求めバルトルト様を探していらっしゃるとおっしゃっていましたの」
「あり得ないわ!!」
バルトルト様の事を語れば彼女は素直に誘導される。 少しずつ少しずつ話を聞きだせば、ミリヤム様は安易に危ういほどに語ってくれた。
ミリヤム様は、この都市にバルトルト様が居るとは知らずストロープ伯爵令嬢に連れてこられたらしい。
王都から出た理由は溜息交じりに告げられた。
「国王夫婦を始め王族の方々が出席せず、私も馬鹿も代理で済ませようと言う婚姻披露を開く意味がない。 意味がないのに大金ばかりが必要となる。 それに馬鹿に逃げられたとあってはプライドが、家の尊厳が傷つく、なら馬鹿との婚姻が嫌で私自身が逃げた方が体裁はいいとパパが考えた訳ですの」
「それで、なぜ、ストロープ伯爵令嬢とご一緒でしたの?」
「……」
拗ねたようにそっぽを向く、その様子がバルトルト様と似ていて何故か……可愛く思えてしまった。
「教えて頂けませんか?」
自然と穏やかな声で尋ねる事が出来た。
「お金が……無いのよ……」
「やっぱり、お家に来ませんか? 侍女もつけますしストロープ伯爵令嬢とお二人でいるより過ごしやすいと思いますよ?」
ミリヤム様は、ピクッと微かに硬直し、唇を震わせているように見えた。 だから、私は一旦身を引く事にした。
「そろそろ元の部屋に戻られた方が良いかもしれませんわね。 ストロープ伯爵令嬢がお探しになっているかもしれませんもの」
「ぁっ」
不安そうに私を見上げるミリヤム様。 やっぱりその表情がバルトルト様と似ているように見えて……私は、少しだけ心苦しさを覚え……そっとミリヤム様の側に膝をつき、両の手を取った。
「もし、何かあったなら、従業員にお申し付けください。 私に連絡を取るように伝えておきますわ」
「……ありがとう……」
彼女は静かにぼそりと呟いた。
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