私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと

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 売上の50%を税として徴収する。

 これらの報告はバルトルト様に同行した経理顧問の手紙によって行われた。

 バルトルト様と陛下の間で交わされた神聖契約については、経理顧問から兄様に対して手紙が出されていた。 それは税率のアップは予測していた事であるが、流石に50%までは想定外だったらしい。

 役員会議において発表されれば、汗を拭きだしあわあわする父様とは別に会議の参加者たちは苦笑いを浮かべていた。 元々増税は想定内だった。 これを機会に、納税を止めてしまおうと言う計画となっている。 王都の経理手続きは動きが遅いからしばらく準備期間を持つことが出来る。

「では予定通り、各部署に業務停止を。 生活に必要な物はブツブツ交換あるいは労働奉仕で成立させるように、開始期間までは時間があるのでそれまで準備をお願いします」

 そう告げたのは、ほぼ代替わりしている兄様だった。

「お嬢様、新しい手紙が届いております」

「ありがとう」

 手紙と言うか……届いたのは木箱。 中には、王宮の歴史が書かれた書籍、他国で出版された珍しい書籍等が数冊。 砂糖菓子、王宮に隠された場で採掘できる言宝石の原石。 王宮庭園に植えられている花と花の種。 戻って来いと言われたのを良い事に色々と歩き回っているようだ。

「これは?」

 木箱とは別に大きくてズッシリとした箱があった。

「重い? きゃぁああああ!!」

 大きな蛇が横たわっていた。
 蛇と共にメモが添えられ【美味い】と書かれていて引いた……。

「……えぇえええええ……」

 ガックリ脱力したけれど、私は、バルトルト様と同じ騎士団にいた者に食べ方を知っているか聞いてみるために探してみれば、医局の人に声をかけられ、花も花の種も蛇も原石も持っていかれた。

「王宮医療研究所では、様々な薬が生産されているんですよ。 ちょっとヤバイ感じの奴がねぇ……。 王宮からは例え石ころ一つですら持ちだす事は出来ませんからねぇ~、これはとても興味深い。 少し譲ってはもらえませんか?」

 と言われたので……蛇は全部持って行ってもらい、他は一部だけ譲った。

「全く、何をしているのかしら?」

 一番の難物を引き取ってもらって、私は安堵と共に部屋へと戻り大本命である手紙を開く。

 何時もと変わりない手紙の間に書かれた文章。

 そして、

【婚姻披露出たくないよぉおおおおおお、家に帰りたいよ】

 後は何時もの愛の言葉が続いた。



 私は……複雑な思いを胸に抱いた。

 彼が勝手に婚姻披露から逃げてくれたなら、私は心から彼が愛するのは自分ひとりだと安心できるのに。 こんな風に連絡されては、自分が一人婚姻披露に残されたならと考えずにはいられない……。

 ズルい……そう思わずにはいられなかった。

 私は、バルトルト様の真意を理解できず、不安を胸に抱いた。 だから……それを解消できないかとフランツ様の手紙を手に取った。

「相変わらず長い……」

 私は一旦手紙をテーブルに置き、お茶を準備し、送られてきた砂糖菓子を皿に取り分けた。





 殿下とミリヤム様との確執は、二人の幼少期にまで遡ります。 今でこそバルトルト様への誹謗中傷は聞くに堪えないものではありますが、幼少期、ほんの一時ではありますが神童と呼ばれていた時期があるのです。 その当時、彼女は、殿下の婚約者となるべく、ご学友と言う立場で交流を持たれておりました。

 胸の中のモヤモヤを晴らそうとしたのに、結局私はモヤモヤを増すだけの状況で、砂糖菓子を口に含みコーヒーを飲んだ。





【王宮】

「まさか……貴方の妻になるなんて思いもしませんでしたわ」

 媚びを求めるよう父親に求められ、その理由を納得したミリヤムだったけれど、いざバルトルトを前にすると笑顔一つ浮かべる事が出来なかった。

「ぁ、羽根の綺麗な鳥だ!!」

 視線はミリヤムを見る事は無く、青い空を見つめた。

 ミリヤムは舌打ちをし、その舌打ちも気にしない様子に溜息を一つつき……わざとらしく声をワントーン上げた。

「しばらく会わないうちにとても素敵になっていて驚いているのよ。 商人の娘とは良い関係を築いているようね」

「……サーシャ」

「ぇ?」

「サーシャだよ!! 商人の娘じゃない!! ソレは名前じゃない」

「はいはい。 サーシャさんは貴方に良い影響を与えたようね」

「うん、素敵な人だ」

 手を伸ばした先にある花に手を伸ばし手折ったバルトルトは、花の匂いを嗅ぐ。

「ちょっと、王宮内の花は勝手にしてはいけないルールがあるのよ!!」

「どうして? 綺麗なのに」

 じっと見つめながら、綺麗、可愛い、いい匂いがする。 うっとりとした様子で花を愛で、花びらをバルトルトはそっとなで、口づける。

「サーシャ」

 ミリヤムは息を飲んだ。

 その指先、甘く花びらに触れる唇。
 その動作が逐一目に付いた。

 妙に喉が渇くような気がした。

 鼓動が早くなり……それが胸の高鳴りなのだろうかと……思ったなら、イラっとした。 

「そんなに、そのサーシャが好きなの?」

「好き、大好き!! 一番好き。 だから……貴方は無理」

 ジッとミリヤムを見つめる視線は、無邪気さは失われ冷ややかなものだった。

「どうして? なぜ、一人しか愛する事が出来ないの?」

 ミリヤムが手を伸ばせば、バルトルトは半歩後ろに下がり……苛立つミリヤムは追いかけるように抱き着いた。

「止めろ……」

 振り外そうとすればミリヤムは、ニヤリと笑って見せた。

「私のこの華奢な身体なら、貴方が振り払えば大けがをしちゃうかもしれないわね。 大ケガをしたら慰謝料をサーシャに請求しちゃおうかしら? 請求よりも、看病に来いって言う方がいい? 彼女が王都に来れば、貴方も毎日彼女に会えて幸せでしょう? ちょっと私を吹っ飛ばせばいいのよ。 さぁ、やりなさい」

 バルトルトは戸惑いの中で、柔らかな身体の感触を腕に感じ戸惑うのだった。
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