推しの悪役令嬢に恋をして

クロン

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一章

キャロットの回想 1

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何故こんな事になったのか?私が何をしたというの…。

私はただ牢屋の隅っこに座り蹲っていた。来週には執行するとわざわざ皇太子が言いに来た。ニヤニヤと笑って…こんなのが未来の王になるとはこの国はどうなってしまうのか。

人を恋することは理解できる。ミーシャは魅力的な子だとは思うし。ただ私に対する扱いがなぜ邪魔物扱いなのか。私は望まれるなら婚約破棄をしても構わないと告げたのに…。私とて皇太子に恋したわけではない。

始まりは彼女に挨拶した時から始まった。

「はじめまして。ミーシャさん。キャロット・ザミールです。これからよろしくお願いしますね。」

周りがざわつくのを感じつつ挨拶をして和かに笑った。ヴェルと同じ平民。それも母親が亡くなり孤児だったと聞いた。アマンダには注意する様には言われたが気になるのだから仕方ない。言葉使いも少し砕いて話したから大丈夫、そう思っていた。

「はっ!はじめまして。えーと、ミーシャ・テイシー?です。よろしくお願いします。」

元気よく頭を下げた。

「うふふ。そう緊張しなくても大丈夫よ。そう。ミーシャさんは家名をお持ちなのね。養子ということかしら?」

「はっ!はい。そうです。」

ガチガチだ。確かにこうも周りに見られたら気が気ではないだろう。

「これから同じクラスですから仲良くしてくれると嬉しいわ。是非、孤児院の話や王都以外の村がどんな生活をしているのか聞いてみたいの。」

「わっ私で良ければいつでも大丈夫です。」

あらあら緊張し過ぎで涙目にさせてしまった。

「慣れない生活が続くと思うから困ったときには相談してね。私なら大抵の事はなんとか出来るから。」

「いえ。そこまで迷惑をかける訳には…。」

「いいの。私が言うのだから承諾して頂戴。こう見えても昔、貧民街のほうで半年ちょっと生活してたのよ。」

「へ?貴族のキャロット様がですか?それは凄いですね!!!」

「向こうで暮らしていた仲の良い友人もいたんだから。気になるのよ。だからお願い。」

「私なんかが良いのか正直困ります。」

「ええ。そうでしょうね。ただ今の様に正直に答えてくれれば良いわ。気を使われるのは正直好きじゃないの。」

「ハァー。そういうものなんですか。」

「だから2人の時は敬語禁止よ。」

最後は小さな声で耳元で囁いた。彼女は戸惑いながらもきっと不安だったのか涙を溜めてお礼を言いながら頭を下げていた。私は頭をさすってあげた。これからの休み時間に楽しみができた。お茶会や皇太子と一緒にいないといけない時もあるがそれ以外はちゃんとした友達をつくって楽しみたい。学園に入って最初の望みはそれだった。

隙をみつけ約束のない昼休み。私はミーシャを連れて談話を楽しむ様になっていった。

ある日、ミーシャと楽しく話していたら突然険しい顔をしたアマンダが私たちの所までやってきた。

「お嬢様。…この場はミーシャ様に退出をお願いいたします。緊急の用件ですので。」

声を震わせて喋るアマンダに困惑したが頷いて答えた。

「ミーシャ。ごめんね。何かあったみたい。明日は難しから…また空いた時間に声かけるね。」

「うん。気にしないで。私は大丈夫だから。今日も楽しかったし。それじゃあ失礼するね。」

「うん。じゃあね。」

ミーシャは私とアマンダひ頭を一度下げてその場をさって行った。

「どうしたの?アマンダ。」

「……はい。今学院内でキャロット様がミーシャ様を虐めていると噂が流れております。」

「え!!?何故?…そんな噂が。」

意味のわからない言葉に表情も隠せず驚嘆した。

「はい。まず、最初の挨拶の折、最後の会話が周りに声が聞こえなかったことを良いことに、泣かれたミーシャ様を見て悪口を言って泣かせたと…。最後背中を押さえた所も、平民らしくしろと釘を刺したとなっております。最初は憶測だった会話がまるで誰かが聞いていた様な噂に変わってしまい周りからそう見られているそうです。最近、ミーシャ様の私物も無くなっているとか…。」

本当に何を言っているのか理解が出来なかった。

「そんなバカな話がうのみにされていると?」

「はい。私も注意していましたから、ミーシャ様に危害を加えそうな場面を何度か止めました。なので、実害が物で終わったこと。証拠がない理由から噂止まりの状態です。」

「意味がわからないわ。それよりもミーシャに危害を加える者たちがいるなんで初耳よ。」

「申し訳ございません。お嬢様に心配をかけると思い報告致しませんでした。学園にも伝えましたが…恐らくお咎めはなかった様です。」

アマンダにはまったく反省している様子が見て取れない。

「…!!?」

それも意味がわからない。学園側が揉み消した?揉み消せる立場にいる者から命令されたのかもしれない。

「お嬢様。このまま人目のつかない所でミーシャ様に会われるのはお勧め出来ません。」

「それは会うなということかしら?」

「いいえ。必要以上には控えて欲しいのですが、会うなら皆が見てる場が良いかと。」

「確かにそうね。わかったわ。」

お昼の時間が終わり私は教室、アマンダは寮へと戻って行った。

帰りの時間。殿下に呼ばれ、空き教室へと案内された。学園内ではあまり関わってこなかったから不思議だった。まさかの2人きりだ。

「どうかなさいましたか?殿下。私に用なんて。」

「ああ。お前がミーシャに嫌がらせをしていると聞いてな。見たというものもいたが、お前の家の反派閥の者たちだけというのも信用にかけてな。どれも噂止まりの話で確証がとれなかった。だから直接話を聞きにきた。」

相変わらず無表情な顔にため息しそうになったけど、もちろん粗相があってはいけないから我慢した。

「そうでしたか。御足労をかけてしまい申し訳ございません。私とミーシャは友人です。私も偶然ですが今日、その噂やミーシャが嫌がらせを受けていると聞きました。殿下…私は友人に対してその様な事をする輩を許せません。私も協力させていただけないでしょうか?」

私は頭を下げながら告げた。だからアラン皇太子の顔が見えず、頭を上げる許可がない事に違和感を感じながら答えを待った。

「そうか。しかし、当事者を調査を協力させるのは出来ない。ミーシャは…お前の事をかばっていたんでな。間違い無いだろうがあまり関わらないほうが良いだろう。友人なら他にもいるだろ?後は我々に任せてくれ。」

「しかし…。」「私に意見する気か?」

「申し訳ございませんでした。どうか…進言をお許しください。」

「許すわけないだろ。了解せずとも命令だ。」

「……っ。かしこまりました。」

私は頭を下げたまま殿下が出ていくのを待つしかなかった。
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