推しの悪役令嬢に恋をして

クロン

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序章

動き始めた運命 1

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『???視点』

「しばらく離れていたが、ずいぶんと魔風病は収束し始めたみてーだな。ボー。」

「そーだね。兄ちゃん。」

この街にやっと戻れてやっと仕事が出来る。まあ、その前にまずは酒だ。

「本当にわかってんのかよ。おっちゃん!!エール2杯!」

店のオヤジに酒を頼む。それにしても、もう少しごたつくと思ったが意外とはやかったなあ。

「あいよ。」

「おー、ありかどよ。ところでおっちゃん随分と繁盛してんな。もう平気なのか?」
 
解禁祝いかなにかだな。随分と客がいる。さあてまずは情報収集だ。ちょうど今お客さんを待たせてるからな…早いとこ見つけねーと首が飛んじまう。逃れても仕事はもう出来なくなっちまう。

「ああ?あんちゃんたちは余所者か。もう大丈夫だろ。やっと国王が動いてくれたからな。感染拡大も減ってるらしいしな。感染しても治せるようになったのが大きい。確か、ザミール家のキャリー様と弟のクライス様が方法を見つけて広めて下さったのが大きかったそうだぞ。」

「へー。そりゃあースゲーな。」

スゲー、スゲー。ヘドが出る。

「ああ。平民の俺たちはザミール家の方々には本当に世話になりっぱなしだよ。本当に。ましてや今回平民、それも貧民街の小僧を従者に使うって言うんだからな懐が大きい方々だ。」

「確かに。貴族なのにスゲー。おっちゃんは随分と詳しいな。」   

なんだそれ?そんな面白そーな話聞いたことねーぞ。それだけ優秀ってことだな…。

「ああ?ああ。実はな、うちのと娘がクライス様が作った病院に手助けに行ってんだ。今日来た手紙に書いてあったからよ。随分と優秀な子らしくてな。それにカッコいいそうだ。黒髪に黄色の瞳だったかな?」

おっ?それは面白いな。

「黄色い目なんて珍しいな。」

「ん?そうだな。確かに。」

俺らは食事と酒を楽しんだ。

「ありがとな。おっちゃん。またこの国きたらよらしてもらうな。」

「おう!まいど!!ん!?お客さん!!おつり!!!」

「釣はいいや。いい話も聞けたしな。ごちそうさん。」

俺らはお構いなしにでていった。さあ、仕事すっかな。なんとか納期には間に合いそうだ。


『ヴェル視点』

キャロット様の従者見習いとして働いて早いもので半年を過ぎていた。仕事にも慣れて、周りとの信頼も絆も確実に深めていった。キャロット様の言葉遣いも完璧とはいかないが崩れた喋り方が出来る様になっている。

今日は治療待ちの患者にこれ以上悪化しないための緩和剤を注射して周っている。
そして今、ダンというゲーム上で出てくるお助けキャラの人を治療するところだ。ゲームでは魔物退治や主人公の窮地を脱する時に騎士団長として出てくるキャラクターだ。男気溢れるキャラクターでイケメンではないがガタイはよく顔と態度がでかい人っていうイメージだ。後はお人好しかな。
たまたま見かけてここにいる事に驚かされた。俺が知っている風貌よりは明らかに若かったがすぐにわかった。

「相変わらず注射が苦手なんですか?ダンさん。」

注射の用意をしながら茶化すように言った。

「…しかたないだろ。それに口調を固くするなと最初に言ったろ。気持ちわるいんだよ。」

バツが悪そうに拗ねている強面の顔で…。

「善処します。全く…20歳にもなって注射が怖いなんて。もう今年には騎士団入りっていうのに大丈夫なんですか?」

「おうよ!!任せとけ。兵士の選抜でズバ抜けて1位をとった男だぞ!!心配ない。それにしてもまさか手助けに来たはずが、かかっちまうとは考えてなかったな!!余計な仕事をさせてわるいな!!」

まったく悪気があるように思えないんだが…。豪快に笑うこの人はここの生まれではない。平民ではあるがまだ裕福な所の出身だ。ボランティアでここにきたんだが感染してしまった。まあ、死体処理とかもしていたから仕方ないのかもしれない。

「何言ってるんですか。みんなダンさんが来てくれて士気があがりましたし、大変な力仕事ばっかしてたらしいじゃないですか。周りが困ってたと聞いてますよ。なので余計になんて思ってません。」

「そうか。お前いい奴だな。」

「普通です。…あっ!!アマンダさん!」

「え!?どこだ?」

つかさず注射をうつ。

「すいません。見間違いでした。」

ダンはアマンダに一目惚れしたらしく、ただ今、猛アタック中だ。

「ちぇ!なんだよ。……ん?」

「はい終わりましたよ。」

「流石だ。期待の新人は違うな!!全く痛くなかったぞ!!」

「それはどうも。平民の期待の星のダンさんに言われて光栄です。」

顔に似合わず照れてるダンさんは稀に見る剣の腕で、平民史上初の騎士団入りが正式に決まったのだ。

「それ言うのやめろ。そんな大した人間じゃねーよ。周りが勝手に騒いでるだけだ。俺には関係ない。騎士になるのは小さい頃からの夢だったからな。せっかく叶ったんだ。これからが重要だ。お前さんもここから従者に成り上がるんだろう?」

「ダンさんみたいにまだ正式ではないですからね。これからです。何があってもキャロット様の従者にならなくちゃいけない。期待の新人なんて言われてますがまだまだです。」

「そうか、そうか。向上心が強いのはいい事だ!!にしても、ずいぶんとキャロット様に惚れ込んでんな。」

…っ!!深い意味は無いはずなのに急に言われたもんだから顔が熱くなった。

「…そっそうですね。あの方は勉強熱心で人の為に動ける人です。自分みたいな平民にすらお手を差し伸べてくださるのですから。」

「ああ。その通りだな。侯爵様がそもそも寛容な方だ。娘であるキャロット様も素晴らしい方だ。ただザミール家が疎まれてる原因でもあるんだが…。」

「やはりそうなんですね。」

ゲームでは詳しくされてなかったがザミール家は周りから疎まれていた。そんな家の令嬢が皇太子の婚約者になり、ただ正論を並べて周りを注意する姿は威圧的に感じ反発が大きかったのではと推測できる。

「ああ。俺は王直が無くとも自身の財産で救援活動をするザミール家に賛同して参加したんだ。もちろん俺だけじゃ意味がないから、何人か貴族の坊ちゃん連中を連れてな。」

まさかそこまで考えて来たことに驚かされた。

「そうだったんですね。ダンさんはザミール家、ダグラス侯爵様と繋がりがあるんですか?」

「俺みたいなのが面識あるなんて恐れ多いんだが以前な。兵士だった頃に世話になった。俺はあの方の領民でもないのによ。そん時この人の騎士になりたいと思ったんだ。」

「ではいつかはザミール家の騎士になるつもりなんですね。」

「ん?ああ。なれるならなりたいな。直ぐではないが。今は聖騎士団にも行きたいからな。現役で出来なくなったら申請するつもりだ。」

「ではいつか共に働く時が来るかもしれませんね。」

「ああ、そうだな。そうなるかもしれんな。名は…ヴェルスだったよな?」

「はい。ヴェルスです。」

「よし!なら覚えておこう。将来必ず共にこの国のためとザミール家の方々に恩返しをする為に働こう。」

ダンさんと俺は強く握手を交わし、俺は決意をかためた。

「意外と鍛えているんだな。俺の8歳ぐらいとあまり変わらない。まだ、甘さはあるがいい鍛え方だ。」

握手しただけでわかったのか?漫画のセリフにありそうなことを言われて驚いた。前世の記憶を頼りにストレッチと筋トレ、走り込みを続けていたがあってるのか不安でいた。

「ほんとうですか!?良かったー。知識がないので自分で試行錯誤しながら鍛えているので不安でした。」

「俺もそうだったなー。うん、悪くない。もう少し足腰を鍛えた方が良いだろうな。しかし、まだ成長期だから持続させて鍛えるのが得策だろう。お前さんの体型なら上半身は鍛えすぎると重くなるから気をつけろよ。騎士を目指すわけではないんだろうから、鍛え方は騎士よりもザミール家にいった時に護衛用の執事に相談するといい。」

筋肉バカなキャラだとしか思っていなかったのに…的確なアドバイスに感無量だ。

「はい。ありがとうございます。」

感動に涙腺が潤んだが堪えた。

「それもお嬢様のためか?」

ん?急な質問に困った。

「…もちろんです。」

何故、当たり前な事を?

「それなら忠告だ。お前さんの気持ちは隠し通せよ。」

…やはりバレたか。

「もちろんです。キャロット様の幸せには邪魔なので。」

俺は即答してダンさんを見る。

「わかってるならいい。なら俺の治療が終わったら稽古をつけてやろう。まだ人に教える程ではないが、初心者にくらいなら基本は教えられるからな。」

「え?…いいんですか?」

「ああ。せっかく知り合ったんだ。それに少なからずザミール家の繋がりは欲しいからな。」

「なんかそれ結構責任重大じゃありませんか?俺が従者になれなかったら意味なくなっちゃいますよ。」

「お前さんなら大丈夫だろ。」

「はい。もちろんです。では、その時にはよろしくお願いします。」

俺はダンさんをキャラとして知っていたから近づいた。
やはりここはゲームの世界で無く現実なんだと思い知らされる。キャラクターなどではなく1人の人間だ。

…………

俺は午前中の早い時間で仕事が終わり、勉強中のキャロット様の所に向かった。今日は魔法の実践練習を一緒にやる約束をらしているからだ。…2人きりで。実は誰にも言っていない。

「お待たせいたしました。キャロット様。」

ノックをしてから返事を待つ。初めて入るわけでもないのにすごく緊張する。

「大丈夫よ。」

返事が聞こえて震える手を抑えながら中へと入った。

「さあ、今日は私が先生ですからね。わからないことは聞いてちょうだい。」

入ると準備万端で待ってくれていたキャロットがドヤ顔で迎えられた。
その顔の可愛さにしばらくフリーズしていると、

「どうしたの?さあ、早くやりますよ。」

椅子に座るよう促される。俺は慌てて応じて席についた。いかん、いかん。気を引き締めないと。

「ヴェルが働き始めてもう半年ですか。早いものね。」

「はい。本当にあっという間だった気がします。幸せな時間を過ごさせていただいています。」

「そう言ってもらえて雇った甲斐があるわ。これからもよろしくね。あと1ヶ月もしないうちに戻る事になるからあと少しよ。実績は申し分ないわ。後はこの後下手な事さえしなければ大丈夫。」

「ありがとうございます。…そうですか。もう離れるんですね。…緊張してきました。」

「ふふふっ。焦らずともまだ時間はあるわ。覚悟を決めときなさい。」

面白そうに笑うキャロット様の顔を見つめながら覚悟を固められた。緊張なんて言ってる場合ではない。彼女を助けられるのは俺だけだ。気持ちを切り替えなければ。

「はい!!」

俺の返事に満足気に微笑んでくれた。

「さあっ!残りの時間を使って初級魔導書を読んで、お昼食べた後に実践よ。」

「はい。よろしくお願いします。キャロット先生。」

「……っ!!…先生はつけないでいいわ。なんか恥ずかしいから。」

先生と呼ばれて赤くするキャロット様がまた一段と可愛くて見惚れそうになる。

「それは残念です。わかりました。キャロット様。」

「じゃあまず、ヴェルは魔力についてどれほど知っているの?」

「先日調べてもらった適性が闇属性だということだけですね。後は全くわかりません。」

「そう。普通は小さいうちに遊びながら教えるんだけど。…まあいいわ。ヴェルなら理論を説明すればわかるでしょ。まずは魔法とは身体の魔臓部で生成される魔力を血管と同様に全身を通ってる魔管より魔力を放出することで使用します。
最初は魔管を感じる事が必要です。その次に放出させるの。ヴェルは闇だから姿を消すイメージだと思うわ。ちょっと待ってね。」

キャロット様は魔導書を開きながら確認を始めた。

「うん。間違いではなかったけど、その前に発光の魔法が先みたい。ただ光属性以外の属性持ちは使えない人がいるみたいね。ただ試す事を推進されてるから先にそれね。」

「何故ですかね?」

「んーちょっと待って。確かに気になるわね。」

さらに魔導書を確認し始める。

「ここ見て。どうやら魔力量に関係するみたい。」

キャロット様が俺の隣の席に移って魔導書を開いて指をさしながら説明を始めた。

……っ。近い…近すぎる。緊張と幸福感に満たされながら、なんとか頭をフル回転させる。

「魔力量と発光の魔法?…そもそも発光の魔法の属性って何なんですかね?」

「確か…無属性だったと思うんだけど。んー、この本だけじゃあ資料としては不十分ね。私も気になるから調べておくわね。」

「随分と勉強熱心ですね。僕も見習わなくちゃいけませんね。」

「え?ちっ違うわよ。私、魔法学を学んでる時が一番楽しいの。まあアマンダの影響が強いんだけど。」

「アマンダさん…ですか?」

「ええ。彼女魔法が大好きで、でも彼女自身魔力量が少ないから勉強を人一倍してたわ。実験だー!!なんて言って私を巻き込んでたわね。」

「えっ!?……。」

それはいいのか?メイドが主人に対してやっちゃっていいのか?

「いいの。彼女は私が認めた唯一の専属メイドなんだし。私も楽しかったから。実際によく実験と称してアマンダと2人で魔法遊びしてくれてたから。」

俺のドン引きした顔を見て慌てて弁明するキャロット様。アマンダさんとの親密さが伺える。

ゲーム上の彼女は身分というものを大事にしている節があったのに…。ダンさんといい、ゲームとは違うのかもしれない。実際に俺というキャラはいなかったと思う。ゲーム通りにはならない?まあ、今のキャロット様なら俺が気をつけていれば冤罪など受けないようにできるだろう。まずは何ができるかを確認する必要がある。ん?そうか!俺も学校に行かないと助けられないんじゃないか……!!! 

「それなら良いですが、あまり他じゃあ話せませんね。」

「ええ。知ってるのは我が家にいる人間だけよ。…ヴェ…ヴェルも…その…我が家に来るのだから知っておいてね。アマンダは私にとってはお姉さん的存在なの。」

「大丈夫ですよ。なんとなく気付いていましたから。それで、あの一つ聞きたい事があるのですが。」

「良いわよ。そんなに畏まらないで。どうせ他に誰も……いない…のだから。」

急に顔を背けられた。

「どうかしましたか?」

「だっ大丈夫よ。…何でもないから。」

ハズがしがるキャロット様の様子を見て嬉しくて…嬉しくて、意識してくれているんだと…俺のことを。

「なら良かった。それでですね。あの従者でも、もし魔法の勉強をする為に学園に入る事は出来るのですか?」

「え!?…………そうね。出来ると思うわ。従者でも護衛をする人たちはみな学園を卒業しているから。ただヴェルが出来るかどうかはまだわからないわ。あなたはまだ仮なの。雇うのはお父様に許可は下りると思うけど、配属先までは口出せないのよ。一応……ヴェルが…良ければ…私の……執事というふうに…お願いするつもりよ。…通れば行けるわ。」

だんだん小さくなる声とキャロット様が俺を側に望んでくれていることに嬉しさがあふれだす。

「はい!!是非!!お嬢様の側に仕えさせて下さい!!お嬢様と一緒に学園に通いたいんです!!」

「ふぇ?……。」

キャロット様が下を向いて戸惑いさせてしまった。

「あっあの…もっもちろん。勉強する為ですよ。いや、でもお嬢様との学園生活も楽しみではあるんですが…。」

自分で言ってて恥ずかしくなってきた。キャロット様の反応が嬉しくてつい…。さっき自重するみたいなこと言ったばかりなのに。

「…では、その話も含めてお父様に相談いたしますわ。どちらにせよ、私が決めれるわけではありませんので。…私もヴェルが…いれば…心強いですし。」

急に口調が変わる。タジタジしていたのが一変してはきはき話していた。

最後は違ったけど…。

「はい。よろしくお願いします。」

「では、この話は後日にしますわよ。もう少し時間がありますから循環の練習をした後にお昼にしましょう。アマンダも戻ってくるはずですから。」

「はい。お願いします。」

「でっ…では私の…手に両手を重ねなさい。」

キャロット様は顔を赤くしながら両手を俺の前に差し出した。

「え?……あの………恐れ多いと…申しますか……そんな私なんかが……えっと。」

震える声を抑えながら話したが動揺するなというのが難しい。自分でも精神年齢が25の俺が情けないと思う。でも…憧れの人が相手なら仕方ない…と思う。

「……ふふ。緊張してるの?今からする循環方法を教えるのはこれが一番なの。私が良いと言ってるのだから早く重ねなさい。」

さっきまでドキ跨ぎしていたキャロット様が俺の動揺している姿を見て冷静になったのか嬉しそうに茶化してきた。  

「はっはい。では…失礼します。」

「はい。どうぞ。」

俺は意を決して両手をキャロット様の手に重ねた。柔らかく暖かいその手が重なり心臓がバクバクなっている。俺は何とか落ち着こうとする。手汗かいたらどうしよう…。

「でっではいきますわよ。」

その一言でキャロット様を見た。目の前のキャロット様がわかりやすい反応をするもんだから自然と口角が上がってしまう。

しばらくすると、キャロット様から手を通して何かが流れこんでいき身体中に行き通るのを感じた。俺はその流れを抵抗する事なく身を預ける。気づくと目を瞑っていた。

…心地いい。

俺はその流れを掴むと体を一周した流れをキャロット様に返し始めた。

キャロット様と繋がっているという感覚に嬉しさがこみあげてくる。どれだけそのままだったのか…わからないがそっと手が離れていった。俺はゆっくりと目を開けてキャロット様を見つめた。

「これが魔力が体を流れる感覚です。流石のヴェルね。すぐに操ってしまって驚いたわ。」

優しいその声を聞きながら、どうしても見つめてくる目を離す事ができなかった。

「ありがとう…ございました。今も身体に流れを感じています。」

「そう。…忘れないようにね。」

「はい。絶対忘れません。」

ノック音と共に俺たちは慌てて目を離して距離を取った。

「失礼しまーす。キャロット様昼……食……ん???なんでヴェルがここに?……なんかお邪魔でした?」

「じゃっ…邪魔なわけないでしょ!!ヴェ…ヴェルは魔法を教える為に呼んだの。」



「さいですかー。ならいいーんですけど、もうちょっと時間潰してこよーかなー。」

ワザとらしく言うアマンダ。

「もう!!昼食行くわよ2人とも!」

行く際、後ろから見たキャロット様の耳が未だ赤く染まっていたのが見えてしまい…感情が溢れ出してくる。
感情を抑えながら自重するよう自分に言い聞かせる。自分の思いと反して言動と行動が抑えられないでいる。俺は後悔の念を抱きながらキャロット様の後をついて行った。


キャロット様と関わってから本当に幸福な毎日に感謝しかない。辛いこともあったが、俺はキャロット様のおかげでたくさんの友人や仕事仲間に巡り合えた。この繋がりを強くして、キャロット様を守ること。俺の気持ちは邪魔だ。どうせ皇太子の婚約は決まったようなものなのだから。ただその婚約が癌なのだ。だから俺が側でキャロット様の運命を守ってみせる。俺はこの時そんな風に思ってたんだ。側にいられると、側で守れると疑いもしなかったんだ。

この先、みんなと…キャロット様との関係が失われるなんて思いもしなかった。
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