雨の日のお伽噺

雨月 千疾

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黒い手

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今日は雲があったけど薄かった
下の人間たちは
いつものように自分勝手に動いていた
僕に気づく人なんていない
時々動物と目が合った気がするだけ
気がするだからきっと気の所為
気づいて欲しいという僕の願望
ここから降りたら気づいて貰えるかな
なんてふと思うと
塔の中から黒い手が出てくる
僕を捕まえて
『降ろすまい   降ろすまい』
単調に呟いてくる
それを聞いてると
不思議と
もし降りて気づいて貰えなかったら
もし降りて人間が居なくなったら
なんて勝手なことを考えてる
そうすると降りたいなんて
思ってなかったかのような気持ちになる
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