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本編
新山さん
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午後7時。月島の車内。運転手は月島、後部座席には放心状態の茜である。
右側の窓に寄りかかりながら茜はぶつぶつと人の耳にぎりぎり入るレベルの声で呟いていた。
「ストロング・ソルジャーが人殺し・・・私の・・・ヒーローが・・・」
どうやら彼女の中でのストロング・ソルジャーのイメージが強すぎて人殺しをしたという事実に精神的なダメージが強いようだ。
そんな彼女をみかけた運転手である月島が彼女の精神ケアを試みる。
「・・・確かにストロング・ソルジャーは何度か人を殺している。複数に囲まれて襲われた時、巻き込み自殺願望のある狂人、原型を留めていない殺人改造人間・・・どれも殺さなければならなかった相手ばかりだ」
「・・・・・・そうなんですか・・・」
「私はアイツの顔をみたことはないが、必然的に事になった時、アイツはいつも嘆いていた。苦しんでいた・・・」
「・・・・・・」
「それに、人を殺したからと言ってヒーローでは無くなるのかい?」
「ち、違うんです!私はただ・・・あんなに凄い人には・・・潔白でいてほしかった・・・」
「それは無理難題だよ。言い方は悪いが、アイツは暴力で他人を救う者だからな」
「そう、ですよね・・・すみません、私ちょっと・・・いやかなりストロング・ソルジャーに対して理想を押し付けてました・・・」
落ち込んでいた茜に元気が戻る。彼が人を殺したとはいえ見返りを求めず罪の無い人々を助けてくれた事には変わりはない。
13年前に私を助けてくれた事には変わりはない・・・。
「すみません・・・そしてありがとうございます、月島警部補。私、これからもストロング・ソルジャーを尊敬し続けます!」
何て馬鹿な勘違いをしていたんだろう。ストロング・ソルジャーは神様なんかじゃないんだ。私達と同じ人間なんだ。
同じ・・・同じ・・・?そういえば─────
「ストロング・ソルジャーが清水正武の家系が研究していた薬で生まれたって本当なんですかね・・・?」
「清水正武の口振、吉田という人間の形をしたバケモノを鑑みるに恐らくは本当だろうな。実際に清水組のアジトからは大量の子供の身体の一部が見つかったしな」
「身体の一部!?バラバラにしたという事ですか!?子供を!?」
「ああ・・・私も思わず嘔吐してしまったよ」
「酷い・・・」
趣味で無能と判断した部下を殺す清水正武とは別のベクトルでイカれている。清水組組長に人の心は無かったのだろうか。
「ストロング・ソルジャーがもし、清水正武この予想通りで実験で生まれた存在なのだとしたら・・・彼が清水組に執着する理由になる。彼はきっと、殺された自分と同じ境遇にあった子供達の無念を晴らしたかったのだろうな・・・」
「そこの所、本人に聞けたら良いんですがねー。いかんせん教えてくれないし」
「そういう条件の元協力関係にあるしな────お、着いたぞ茜君」
話しているうちにいつの間にか車は茜のマンションに着いていた。
すっかり元気を取り戻した茜は元気よく月島の車から飛び出し、頭を下げお礼を言う。
「ありがとうございました!月島警部補!」
「おう───ん?新山か?」
「えっ────」
車内にいる月島警部補が指差す先。そこには手を振ってこちらへと向かってくるスーツ姿の新山さんがいた。
「お久しぶりです!2人共!!」
満面の笑みを浮かべる新山さん。けれどもその笑顔は何処か曇っているように見えた。
右側の窓に寄りかかりながら茜はぶつぶつと人の耳にぎりぎり入るレベルの声で呟いていた。
「ストロング・ソルジャーが人殺し・・・私の・・・ヒーローが・・・」
どうやら彼女の中でのストロング・ソルジャーのイメージが強すぎて人殺しをしたという事実に精神的なダメージが強いようだ。
そんな彼女をみかけた運転手である月島が彼女の精神ケアを試みる。
「・・・確かにストロング・ソルジャーは何度か人を殺している。複数に囲まれて襲われた時、巻き込み自殺願望のある狂人、原型を留めていない殺人改造人間・・・どれも殺さなければならなかった相手ばかりだ」
「・・・・・・そうなんですか・・・」
「私はアイツの顔をみたことはないが、必然的に事になった時、アイツはいつも嘆いていた。苦しんでいた・・・」
「・・・・・・」
「それに、人を殺したからと言ってヒーローでは無くなるのかい?」
「ち、違うんです!私はただ・・・あんなに凄い人には・・・潔白でいてほしかった・・・」
「それは無理難題だよ。言い方は悪いが、アイツは暴力で他人を救う者だからな」
「そう、ですよね・・・すみません、私ちょっと・・・いやかなりストロング・ソルジャーに対して理想を押し付けてました・・・」
落ち込んでいた茜に元気が戻る。彼が人を殺したとはいえ見返りを求めず罪の無い人々を助けてくれた事には変わりはない。
13年前に私を助けてくれた事には変わりはない・・・。
「すみません・・・そしてありがとうございます、月島警部補。私、これからもストロング・ソルジャーを尊敬し続けます!」
何て馬鹿な勘違いをしていたんだろう。ストロング・ソルジャーは神様なんかじゃないんだ。私達と同じ人間なんだ。
同じ・・・同じ・・・?そういえば─────
「ストロング・ソルジャーが清水正武の家系が研究していた薬で生まれたって本当なんですかね・・・?」
「清水正武の口振、吉田という人間の形をしたバケモノを鑑みるに恐らくは本当だろうな。実際に清水組のアジトからは大量の子供の身体の一部が見つかったしな」
「身体の一部!?バラバラにしたという事ですか!?子供を!?」
「ああ・・・私も思わず嘔吐してしまったよ」
「酷い・・・」
趣味で無能と判断した部下を殺す清水正武とは別のベクトルでイカれている。清水組組長に人の心は無かったのだろうか。
「ストロング・ソルジャーがもし、清水正武この予想通りで実験で生まれた存在なのだとしたら・・・彼が清水組に執着する理由になる。彼はきっと、殺された自分と同じ境遇にあった子供達の無念を晴らしたかったのだろうな・・・」
「そこの所、本人に聞けたら良いんですがねー。いかんせん教えてくれないし」
「そういう条件の元協力関係にあるしな────お、着いたぞ茜君」
話しているうちにいつの間にか車は茜のマンションに着いていた。
すっかり元気を取り戻した茜は元気よく月島の車から飛び出し、頭を下げお礼を言う。
「ありがとうございました!月島警部補!」
「おう───ん?新山か?」
「えっ────」
車内にいる月島警部補が指差す先。そこには手を振ってこちらへと向かってくるスーツ姿の新山さんがいた。
「お久しぶりです!2人共!!」
満面の笑みを浮かべる新山さん。けれどもその笑顔は何処か曇っているように見えた。
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