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本編
8月16日
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『8月13日に起きた新清水組と警察の戦争に近い大規模な衝突事件から3日が経ちました。勇敢なる警察官45人が死亡し、血を吐く思いで手に入れた警察側の勝利は苦い歴史として後生に語り継がれていくでしょう。では、ここからは緊急会議と題して5人の裏社会に詳しい専門家をお呼びして討論を開始します。どうぞ』
新清水組との戦いから3日後。ボロボロながらも新清水組に勝った私達警察側は無事元の生活を戻し────てはいなかった。
ここ3日間、ずっとあの戦争の後始末と記者会見ばかりである。月島警部補によると『最低でもあと1ヶ月は覚悟しておいた方が良い』だそうだ。
「はぁ~・・・早く終わんないかなぁ・・・」
「あんな大事件の後だ。3日で全てが終わるわけがないだろう?茜君。さあ、次は尋問だ。行こう」
「え?私が尋問?高山さんがいるじゃないですか!」
「アイツだけじゃ手が足らんのだ。とにかく行くぞ」
「はーい」
もう尋問しても聞ける話なんて組内の裏事情しかないというのに。
「・・・あれ以降、ストロング・ソルジャーは警部補も見てないんですか?」
「ああ。元々アイツとの協力関係は事件解決のみでその後の処理は全部警察側の仕事だからな」
「まあ、ストロング・ソルジャーに全部やらせたら私達いらない人になっちゃいますもんね」
抗争終了から3日経つが、ストロング・ソルジャーは警視庁に姿を見せる事は一度もなかった。
元相棒である月島警部補曰く、『珍しい事じゃないさ』とのことだ。
そういう性格だという事は理解したけれども、せめて私達に別れの挨拶ぐらいは言ってほしかったものだ。
「それで、今日は誰を尋問するんです?」
「・・・こいつだ」
尋問室を開けて今回の相手を私に見せる。
「え・・・・」
姿を見た途端、私は絶句した。何たってこれから私達が尋問するのは。
「清水正武だ。気張っていこう」
「は、はい・・・」
「・・・・・・何だぁ・・・俺の尋問相手はそこの若造で十分だってことか?」
全てを失い、絶望にうちひしがれてハイライトを失った男。元新清水組組長・清水正武だった。
「お前だって27の若造だろう。飯と寝床くれてやってんだから文句言うな」
「チッ・・・分かったよ」
事件解決後から初めてみる清水正武の顔は終戦直後に比べて些かではあるが、明るいものとなっていた。
口調と少々反抗するような口振りとなっている。
「それで・・・何が聞きたいんだ?ヤクか?それとも吉田に使ってた薬の話か?」
「ヤクの話はもう既に聞いているので結構だ。それよりも今聞きたいのは後者の方だ」
「吉田についてか?」
「ああ。あの男、何者なんだ?薬とは一体何なんだ?」
幹部吉田。人間を超えた膂力と筋力を誇る化けもの。様々な人物への尋問(主に所からの情報)により清水家が独自で開発していた薬で人を超えた力を手にした事が判明したのだ。
「吉田のヤツ、暴れたりとかしてないか?壁壊したりとか」
「昨日一人警官が身体を壊されかけた。傷害罪で少し刑期が伸びるだろうな」
「あのバカ・・・おとなしくしてろや・・・」
「近日中に吉田の元へ行って説得してくれ。私達では対応しきれん」
「もうあいつに罪を重ねさせたくはない。できれば今日中に行こう」
非情かつ冷徹な男だと聞いていたが、ある程度は部下に情はあるようで、新清水組の組員ほとんどが逮捕されたと聞いた時、彼はとても悲しそうな顔をしていた。
「それで?吉田に使った薬の事について聞きたいんだよな?」
「ああ。洗いざらい話してもらおうか」
「良いぜ。これは俺の憶測でしかないが、あの薬は─────ストロング・ソルジャーという男を作り出した元凶だ」
「「えっ──────」」
清水正武の爆弾発言に私と月島警部補は凍りついた。
新清水組との戦いから3日後。ボロボロながらも新清水組に勝った私達警察側は無事元の生活を戻し────てはいなかった。
ここ3日間、ずっとあの戦争の後始末と記者会見ばかりである。月島警部補によると『最低でもあと1ヶ月は覚悟しておいた方が良い』だそうだ。
「はぁ~・・・早く終わんないかなぁ・・・」
「あんな大事件の後だ。3日で全てが終わるわけがないだろう?茜君。さあ、次は尋問だ。行こう」
「え?私が尋問?高山さんがいるじゃないですか!」
「アイツだけじゃ手が足らんのだ。とにかく行くぞ」
「はーい」
もう尋問しても聞ける話なんて組内の裏事情しかないというのに。
「・・・あれ以降、ストロング・ソルジャーは警部補も見てないんですか?」
「ああ。元々アイツとの協力関係は事件解決のみでその後の処理は全部警察側の仕事だからな」
「まあ、ストロング・ソルジャーに全部やらせたら私達いらない人になっちゃいますもんね」
抗争終了から3日経つが、ストロング・ソルジャーは警視庁に姿を見せる事は一度もなかった。
元相棒である月島警部補曰く、『珍しい事じゃないさ』とのことだ。
そういう性格だという事は理解したけれども、せめて私達に別れの挨拶ぐらいは言ってほしかったものだ。
「それで、今日は誰を尋問するんです?」
「・・・こいつだ」
尋問室を開けて今回の相手を私に見せる。
「え・・・・」
姿を見た途端、私は絶句した。何たってこれから私達が尋問するのは。
「清水正武だ。気張っていこう」
「は、はい・・・」
「・・・・・・何だぁ・・・俺の尋問相手はそこの若造で十分だってことか?」
全てを失い、絶望にうちひしがれてハイライトを失った男。元新清水組組長・清水正武だった。
「お前だって27の若造だろう。飯と寝床くれてやってんだから文句言うな」
「チッ・・・分かったよ」
事件解決後から初めてみる清水正武の顔は終戦直後に比べて些かではあるが、明るいものとなっていた。
口調と少々反抗するような口振りとなっている。
「それで・・・何が聞きたいんだ?ヤクか?それとも吉田に使ってた薬の話か?」
「ヤクの話はもう既に聞いているので結構だ。それよりも今聞きたいのは後者の方だ」
「吉田についてか?」
「ああ。あの男、何者なんだ?薬とは一体何なんだ?」
幹部吉田。人間を超えた膂力と筋力を誇る化けもの。様々な人物への尋問(主に所からの情報)により清水家が独自で開発していた薬で人を超えた力を手にした事が判明したのだ。
「吉田のヤツ、暴れたりとかしてないか?壁壊したりとか」
「昨日一人警官が身体を壊されかけた。傷害罪で少し刑期が伸びるだろうな」
「あのバカ・・・おとなしくしてろや・・・」
「近日中に吉田の元へ行って説得してくれ。私達では対応しきれん」
「もうあいつに罪を重ねさせたくはない。できれば今日中に行こう」
非情かつ冷徹な男だと聞いていたが、ある程度は部下に情はあるようで、新清水組の組員ほとんどが逮捕されたと聞いた時、彼はとても悲しそうな顔をしていた。
「それで?吉田に使った薬の事について聞きたいんだよな?」
「ああ。洗いざらい話してもらおうか」
「良いぜ。これは俺の憶測でしかないが、あの薬は─────ストロング・ソルジャーという男を作り出した元凶だ」
「「えっ──────」」
清水正武の爆弾発言に私と月島警部補は凍りついた。
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