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潜む影part2

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「大家さーん!今月の家賃払いに来ましたー」
 まだ時刻は午後の2時。
 大家さんはこの時間帯にはお昼寝タイムに入ってしまっているので、大声で叫ぶように呼ぶ。
「ふぁーい今行くから待ってね~」
 色っぽい欠伸と返事が飛んでくる。
 男の人が聞いたら襲いかかりたくなる声だ。
「はいはーい。メイルちゃんごめんね今お昼寝してた」
「あ、はい大丈夫です。これ、今月のお家賃です」
 Hカップもあるたわわに実った胸としまった腹部とパンツの上からでも分かる丸みを帯びた臀部、更に美しく整った顔を持った大家さんは女の私でも見とれてしまうほど美しい体を持っている超絶美女だ。
 更に見た目だけでなく、性格もとても美人で自宅警備員時代の私を何度も心配してお金のない私の部屋に夕飯のおかず等を届けてくれた。
 私にとっては命の恩人である大家さんである。
「ありがとうね~メイルちゃん。あ、そうそう今から市場で野菜のバーゲンセールがあるんだけど一緒に行かない?」
「あ!そう言えば忘れてた!是非いかせてください!」
 バーゲンセール。
 それは貧乏人には魅力の言葉。
 今日は野菜が普通の価格より安くなるので、なんとしてでも買っておきたい!!
 そう思い立った時には体が自然に部屋へと戻っており、お財布とバックを手に取って大家さんの元へと戻ってきていた。
「ハァハァハァ・・・行きましょうマーケットに!」

「フゥー何とか買えましたー!この位あれば5日間は安心です!」
「あら、以外とメイルちゃんって少食なのね?私ならその量1日で食べちゃうわよ」
「それ、大家さん食べ過ぎですよ・・・あれ?ジンさん?それにリアリさん?」
 視線に入った光景は酒場に入って行くジンさんとリアリさんの姿だった。
 二人で飲みに行くのだろうか。
 いや、違うな飲みに行くのになんで剣を腰に差す必要はない。
 もっと別の用があって酒場に入ったのではないのだろうか。
 そう言えば今日は用事があるって言ってたっけ───。
「あら、ジンちゃんじゃない。隣にいる子は誰かしら?」
「私の先輩のリアリさんです・・・ってジンさんの事知ってるんですか!?」
 しかもジンちゃんって・・・この人は誰にでもちゃん付けしてるのだろうか。
「ええ、知ってるわよ。私あの子が王国に来た時お世話してたの」
「お、お世話ってどんな事してたんですか?」
「ご飯作って上げたり、部屋を貸して上げたり、後下のお世話も───」
「だあぁ!もう良いです!お世話をしてたのは分かりましたから!」
「ウフフ初なのねでも、今のは冗談よジンちゃんは自分で──」
 「言わなくって良いですってばー!!」

「へっくしゅっ!!」
「どうしたんだジン?風邪か?」
「いや、分からないけど多分誰かに噂されたんだと思う」
「ばっかでー!誰がジンの事なんか噂するのよ」
 本当にアグネスさんは失礼だなと思いつつ僕はバックパックから小さな袋を取り出した。
「これが例の物かね?ジン君」
 ぬるっと僕の肩から黒い髪の青年が顔を出す。
 一瞬誰だか分からなかったが、すぐに誰だか分かりちょっとホッとする。
 僕と同じ和の国出身のリンタロウさんだ。
 良くわからないが彼は人を驚かすのが大好きで今の登場の仕方もビックリさせる為のレパートリーの1つである。
「いきなり止めてくださいよリンタロウさん。ジンだけじゃなくて私達も驚くじゃありませんか」
「団長、アグネスの言う通りですよ。貴方ももう良い歳なんですから」
 リンタロウさんはこの王国の騎士団長である。
 だから今騎士じゃないのにいるのは僕とリアリだけだ。
「さてと、始めましょうか作戦会議」
「作戦会議の会場に酒場はどうかとおもうんですがね・・・」
「昼間からうるさいやつらのお陰で話は聞こえねえから城の会議室よりかはマシだと思うぜ」
 それは一理ある。
 王国の城は静か過ぎて国家機密の話が丸聞こえという事が多々ある。
 だからリンタロウさんはあえて昼間でも冒険者がわいわい騒いでいる酒場を選んだのだ。
「にしても、本当にうるさいわね。これだったらノイジーバードの方がまだマシよ」
「ホントね。別に冒険者がって訳じゃないけど、もう少し静かにしても良いんじゃないかしら?」
 一方女性サイドから厳しい評価が聞こえてくる。
 仕方ないだろうこの王国一番でかい酒場なんだから。
 もしかして、バーのような高級酒場にも行けると思ったのだろうか。
「この袋に入ってるんだよね例の物が」
「はい、確かにいれてきました」
 リンタロウさんは袋のヒモをほどいて逆さにして中に入っているものを手のひらに落とす。
 すると、落ちてきたのはガイアリザードの中から出てきた紫色に怪しく輝く綺麗な石だった。
「・・・確かにこれは魔晶石だな。なんでガイアリザードの腹の中から出てきたんだ?」
「分かんないです。もしかしたら落ちていた魔晶石を飲み込んじゃったとかじゃないんですかね?」
「その可能性もあり得ますが、それよりももっと可能性の高いのを見つけましたよ。聞きます?」
 ニヤリといやらしく笑うアグネスさんに皆寄り添う。
「どんな話だ?言ってみろ」
「実は言うと昨日の暴走したガイアリザードは1mも満たない小さなガイアリザードだったそうなんです」
「どういう事です?」
 アグネスさんの言っている意味がまったく分からない。
 僕は実際に実物と戦ったが、全長は3m以上あった。
 それなのに1mにも満たないと言われたら誰でも頭上にハテナを浮かべるだろう。
「私はあの後すぐにガイアリザードを捨てた、または逃げちゃったって人を探したのそしたら一人の男の子のお宅で朝ガイアリザードが起きたらいなくなってたって事があったわ。その男の子の家からいなくなったガイアリザードが1mにも満たない赤ちゃんガイアリザードだったってわけ」
「君の言いたい事が分かったが、今回の事件と関係ないのではないのか?それとも君は1mのオチビさんが3mにまで急成長したと言うのかね?」
 少しからかい口調で質問するリンタロウさんにアグネスさんは顔色ひとつ変えずにこう言った。
「ええ、そうですが?何か問題がありますか団長」
「本気で言ってるんですかアグネスさん。いくらなんでも小さな赤ちゃんから一気に大人になるなんて例は一度も」
「私も信じられないわ。でも、暴走したガイアリザードと男の子の家から逃げたガイアリザードの特徴が良く似てるの。男の子のガイアリザードには腹部にイナズマみたいな傷があるんだけど、暴走したガイアリザードにも同じ傷があったのよ」
 そう言うとアグネスさんはポケットから2枚の写真を取り出す。
 1枚は小さな赤ちゃんガイアリザードのお腹と、もう1枚は僕が倒したガイアリザードのお腹を写した写真だった。
 確かに彼女の言った通りお腹にイナズマのような傷が確認できる。
 共通の傷、そして、暴走したガイアリザードの口から吐き出された魔晶石。
 まさか、今回の事件の原因は───。
「まさか・・・魔晶石の・・・?」
「魔晶石が原因でああなったのかもしれないわね」
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