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最終章 勝利の為なら手段は選ばず

180話 数ヶ月後

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 その後、エンデは正式に敗戦宣言を行い、僕達魔王軍は勝利を収めた。

 アプルから消えていたヒュームの人達は、地下に隠れていた事が町と城の解体作業の際に明らかとなった。

 僕らは彼らに国外へ逃げるか、残るかの2択を迫った。最初こそ見下していた僕達の元に下る事を拒否して国外へ希望する者が多数だったが、それがお金的な問題で厳しいと知ると、8割が残る事を決めた。

 エンデ城とその城下町アプルは、ヒューム以外を迫害するエンデという国の象徴のような存在。魔王様は戦争を始める前から決めていたようで、町と城を取り壊し、新たな町を作る事を決めた。

殺した天使達は、他の生物同様に遺体として残った為、しっかりと埋葬してあげることにした。怨念としてよみがってもらうとかえって迷惑だし。

 今回の戦争で魔王軍から出た戦死者は手厚く埋葬した。数にして500人。骨が折れたが、共に戦った仲間だと思ったらそこまで苦ではなかった。

 それから色々と政治的な動きがあったけど、僕は門外漢なので分からない。ただ、全てわからないわけではなく、これからの国の方針だけは理解している。

 人種関係なく正当に実力が評価される国にするらしい。国名は初代国王となった魔王ルシフェル様からとって『ルシフェル』。本人はとても恥ずかしそうにしていたのをよく覚えている。

 そして、天使達とのルール関係なしの戦争から数ヶ月が経った。僕は今、城下町アプルの跡地に作られている町を見にきていた。

 まだあちこちで建設作業が行われているが、町として形を成してきている。建物の中には魔族独自の文化が作り出した建物も建てられている。

 ここで、町建設の指揮を取るのは魔族ではなく、とあるヒュームの修道女。華奢な見た目からは想像できない大きな声で皆に声を掛けている修道女の元へ向かう。

「はいはい!そこ!!もっとしっかり持って下さい!後ろの人が苦しそうですよ!釘を打っている時はよそ見はしない!爪を自分で砕きたいんですか?」

「精が出てるね、シームさん」

「あ、アルさん!今日でしたっけ?視察は?」

 そう、指揮をしているのはシームさんである。

「順調みたいだね。このペースなら、あと5ヶ月で完成しそうだ」

「はい。皆、いっぱい働いてくれるんです。あ、勿論休みは作ってますよ!過労が1番の敵ですからね」

「ハハハ、それを聞いて安心したよ。そういえば、ケルビムは?」

 この町には守護者がいなかった。なので、戦闘力の高いケルビムが守護者となった。ここ数ヶ月会っていないが、元気しているだろうか?寂しがっていないだろうか?

「あの、アルさんの背中にさっきからしがみついてますよ?」

「あ、ホントだ。ケルビム、いるならそう言ってよ」

「いつ気づくかなって」

 彼女の背中で光るのは、勇者の剣である神の炎・・・ではなく、カルー将軍の剣。シームさんがケルビムにプレゼントしたらしい。

「アル、今日は泊まっていく?」

「いや、スネイクさんとアスタロト様の所に行かなきゃいけないんだ。それと、ミシェル領にも。それと、山に現れた山賊の処理もしないと」

 そう、まだ問題は山積みなのだ。なるべく魔王様の仕事を減らすのが、今の僕の仕事だ。

「そっか・・・分かった。次まで我慢する」

「良い子になったね、ケルビム」

 僕が彼女の頭をなるべく優しく撫でると、彼女は今まで作らなかった笑みを浮かべて喜んだ。

 それから数時間、視察を行い、安全や進捗を確認した後に次の現場へと向かった。

「そういえば、町の名前の候補聞くの忘れてたな・・・」

 それは、次来た時に聞く事にしよう。
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