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6章 アルフォース・ディナスという異端

126話 抵抗はあっけなく潰される

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「いたぞ!」「殺せ殺せ!」「裏切り者め!!」

 ヒュームでありながら、魔族についた僕は、他のヒュームからしたら、裏切り者。実際に被害を出しているので、そう言われても仕方ないだろう。

 しかし最初に裏切ったのは僕じゃないけどね。まあ、今更どちらが最初だったかなんて競い合う気はないけど。

「邪魔!!」

 首を刎ね、心臓を穿ち、喉を貫く。一思いにやることで、楽にあの世へと導くことができる。

「守れ!ここはルイン領最後の砦だ!!」

「地獄の炎よ、我が身に宿れ!!『ヘルファイア』!!」

「電気よ、我が命と引き換えに輝け!!『ライフスパーク』!!」

 命を引き換えに、とてつもない威力を放つ魔法か2つ。人間と共に迫ってくる。まともに喰らったら、僕の体は粉々に吹き飛び、死ぬのは確定だろう。

 こんなことになるのだったら、ケルビムを連れてきてちゃちゃっと一層した方が良かったかもしれない。

「闇は光すらも飲み込む『ダーク・シールド』」

 僕の周りを囲むように数枚の闇の盾が、僕を自爆魔法から守る。一枚でダメなら、何十枚も使えば良い。かなり脳筋だが、結果的に助かったから正解だったのだろう。

「ありがとうございます。バール様」

「何、大した事ない。命を捨てた程度で魔王軍のブレインに勝てると思わない方が良いよぉ?」

 その後も、命は惜しくないと言わんばかりに襲いかかってくるサルース家の従者達。最初こそ、武装した兵士が襲ってきていたが、兵士がいなくなったのか、コックからメイドまで襲いかかってくる始末。

 誰もが、何の迷いも無く、襲いかかってくる。操られている様子は無い。ただ、魔族に従うくらいなら、戦って死んだ方がマシだという理由で僕らと戦っているらしい。

 武装していない人を斬る時、かなり罪悪感があるのだが、勇敢に戦いを仕掛けてくるので、あまり罪悪感がないのが新鮮だ。

 そして、辿り着いた奥の部屋。扉を開けた瞬間、50代間近 の夫婦が斧を振りかざして襲いかかってきた。

 いい線はいっているが、素人に毛が生えた程度。先程まで戦っていた兵士の方が断然強い。殺すのは簡単だが────。

「思い出した!!確かサルース家って!!」

「我が家がどうした裏切り者!!」

「自分の存在が恥だと分かっているのなら、私達に首を刎ねられなさい!!」

 貴族夫婦の顔を見た時、ようやっと思い出せた。サルース家は、彼らは────。

「母さんの家系だ!!」

「「えっ?」」

 思い出すのに時間がかかったのもサルース家の名前を聞いたのが、15年程前からだった。しかし、今はっきりと思い出した。

「サルース家は僕の親戚だ・・・」

 僕は知らずのうちに親戚の家を襲っていたらしい。
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