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6章 アルフォース・ディナスという異端

120話 ただいま、我が家

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 馬車に揺られる事数日。僕達は、バール領の要塞町ゴレイムへと帰還した。馬車から降りて、姿を晒した瞬間、皆が一斉に僕達の方を振り向いた。

「おい、帰ってきたぞ。勇者を倒すんじゃなくて、仲間にしたトンデモ野郎が・・・」

「凄いのかやばいのかまるで分からんねぇ」

「まあ、エンデ側から最高戦力を奪ってこっちのものにしたと思えばかなり凄いんじゃないかな?」

「魔王様は良くお許しになられたものだ」

 既にケルビムの噂は広まっているらしい。突然攻撃してこないだけマシか。

「おい、アル!!お前どういうつもりだ!敵を俺らの領地に客人として連れ込むなんてよぉ!!」

「彼女は敵以前に僕らに対して何も敵対意識は持ってませんよ」

「だとしても、魔王軍に勇者を連れ込むのはどうなんだよ!」

 それはごもっともだ。どう言い訳しよう・・・。

「アルフォース。この人アルフォースの事困らせる人?」

「へっ?いや、そういうわけじゃ・・・」

「困らせる人なら言って。骨一つも残さないから」

「ヒッ!?さ、早速魔族殺しかよ」

「アルフォースとシームの為ならアタシはなんでもするよ?」

 まっすぐな瞳で絡んできた先輩兵士を見つめる。にらみつけるのではなく、じっと見つめる。参ったのか、彼は両手を上げてその場を立ち去ってくれた。

「・・・やっぱり歓迎されてないね」

「まあ、勇者は魔族からしたら恐怖の対象だからね。でも、アプルよりかは遥かにマシだと思うよ?」

「どうして?」

「周りを見てごらん」

 ゴレイムを利用しているのは、魔族と魔物だけではない。エンデの各地で迫害され、住処を追われた他種族も多く暮らしている。中には、ダークエルフの姿もある。

「確かに暮らしやすそう」

「皆苦労なされているので、お優しいですよ。ヒュームの私にも優しかったですし」

「それは、シームが優しいからだと思う」

 それに関しては同意見。彼女の優しさにほだされて、最近は皆物腰が柔らかくなっている。

 ゴレイムを歩き、バール城という名の研究所へと足を運ぶ。研究者たちの耳にも既にケルビムの情報は入っているようで、囲まれそうになったが、バール様に会うと言ったら、何とか通してもらえた。

 そして到達したバール様の研究室の前。扉を開けようとしたけど、前の嫌な経験を思い出して。ゆっくり扉を開けると、案の定、本が、扉にもたれかかっていた。

「ああ、ごめんよアル。すぐにどかすからねぇ」

「何でたった1週間の不在でこんなになるんですか!バール様!!」

「君という存在がそれほどまでに大きいという事だよ」

 なんかこの会話デジャヴのような気がする。
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