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5章 望まれていない勇者

115話 さようなら、父さん

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 また、ルヴァンの一撃が、アルを仕留めんと降りてくる。先程までは避けるまでにワンテンポ遅れていたが、今度は遅れることなく、余裕をもって避けて見せる。

「なっ!!」

「どうした?ハエの方が速いぞ」

「くっそぉ!舐めるな!!」

 挑発で火がついたルヴァンの猛攻が始まる。先程よりも速く重い一撃ばかりだが、アルはまるで怪我を気にしない身のこなしで避けていく。

 まるで、小馬鹿にするような身のこなし方はルヴァンの怒りを誘う。攻撃は激しさを増していき、一撃一撃が雑になっていく。

「そういえば、お前には関係ないが、アクア・ディナスを殺したのは僕だ」

「何だとぉぉぉぉぉ!!」

「何故怒る?お前には関係のない話だろう?」

「関係あるに決まっている!アクアは俺の息子だ!!最愛の家族だ!それをお前はぁぁぁぁぁ!!家族の情はないのか?」

 見事なブーメラン発言。息子を地下牢に7年閉じ込めた男が言える言葉ではない。しかし、アルは指摘しない。何故なら、彼を父親だと認識しないでいるから。

「この剣捌き・・・誰だか分かってきたぞ。お前、昨日の夜僕を追いかけてきたスケルトンだな?」

「それがどうした!?」

「やっぱりそうだったんだな。なら────ふんっ!!」

「うぉっ!!」

 体勢を低くして、ルヴァンに向かって全力の突進をかます。すると、ルヴァンの頭がぐらりと揺れた。

「首を刎ねられて死んだから、頭が他の部位と比べてしっかりとくっついていないのは昨日把握してるよ。兜は外さない方が良かったね!!」

 ルヴァンは、バールに首を刎ねられた死亡し、白骨化。その後にスケルトンになったわけなのだが、切断された首を繋ぐことは不可能だった。

 なので、今のルヴァンの弱点は首となっている。首が頭から外れれば、体の操作は困難となる。

 更に、アンデッドの魂の大体は、頭に宿っている。首が取れやすいというのは、あまりにも酷い弱点なのだ。

「今だ!シャドウハンド!首を奪え!!」

 ぐらついたのを確認して、頭を奪う。魂でくっつけているだけなので、特に苦労する事なく奪うことに成功した。

「ぐぉおおお!!離せ!離すんだ!!」

「それを言って離してくれる奴なんていないでしょ。お前は魔王軍にとって、厄介な存在だ。だから、ここで捻り潰す。

 シャドウハンドからルヴァンの頭を受け取り、両手でこめかみの部分の圧をかけ始める。

「ぐぉあああああああああああああ!!お前なんか!お前なんか産まなければ良かったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「お前は産んでないだろう!!産んだのは母さん!お前が理不尽にも家から追い出した母さんだ!!」

 白骨化している頭は、軽く脆い。嫌いな魔物にまでなって我が子と魔族に復讐を企てた男は、頭蓋骨が息子の手によって破壊されると同時に2度目の死を迎えた。

「さようなら、父さん」

 ルヴァンの頭を砕く時、アルの自己暗示は溶けており、アルは自分自身の手でトラウマを破壊することに成功したのだ。
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