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5章 望まれていない勇者

114話 父との因縁

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「お前とこうやって、剣を交えるのも初めてだな」

「剣を交える前に、あんたは死んだからね」

「減らない口だな・・・切ってしまおうか?」

「なら、いっそのこと一思いに。僕は思い切り抵抗するんで」

 全身鎧を纏っているにも関わらず、あっという間に僕との間合いを詰めるルヴァン。カルー将軍が戦う前にバール様が不意打ちで殺してしまったと言っていたので、実力は不明瞭だったが、領主という事もあってそこそこ実力はあるみたいだ。

「ふんっ!!」

 鎧と両手剣の重みを活かした脳天への一撃。一度、剣で受け止めてから、横に流す。どのくらい強いのかを見極めたかった。

 まるで、トロールに殴られたような。大木が落ちてきたみたいな衝撃だ。全て受け切っていたら、骨が折れていただろう。

 昔からこんな戦闘スタイルだったのかは不明だが、一撃必殺だというのは間違いない。

 シームさんがいるなら、そこそこ無茶ができるけど、生憎今はいない。慎重に戦わなくては・・・。

「どうした!手が震えているぞ!!」

「ッッ!!」

 自分ではまるで気が付かなかったが、剣を握る手が震えている。

 僕は恐怖しているのか?幼い頃、自分を虐待してきた人と戦うのが怖いのか?

「死ねぇっ!!」

「ぐおぁっ!!」

 手の震えを視認していたのが悪かったのだろう。それを隙と見たルヴァンは僕に向かって剣を振り下ろす。

 僕はそれを避け切る事ができず、体で受け止めてしまった。

 皮膚が裂け、筋肉が裂けている。傷口は浅いが、肋骨が何本を折れてしまった。斬撃よりも打撃要素が強い。

 恐怖していたせいでアドレナリンが出ていなかったせいか、とても痛い。気張っていなければ、気絶してしまいそうだ。

「体は頑丈だな。今の一撃で死なないなんてな。だが、痛くて仕方ないだろう?自害したいだろう?させないぞ。お前だけは絶対に俺の手で殺してやる」

 骸骨なので、表情はまるで分からないけど、声色からして本気だ。本気で僕を殺しにきている。親として情を一切もっていない。

 そもそも、こいつは本当にルヴァン・ディナスなのか?記憶を引き継いだだけの、別存在ではないのか?

 僕が最後にみたルヴァンは、感情の赴くままに動き、暴力を振るうクズだ。こんなに冷静なやつではない。

 ・・・そうだ。コイツは、

「お前はただのスケルトン、ルヴァンの記憶を持った別人・・・」

「何を言っている?声を聞け!姿は変わったが、俺はルヴァン・ディナスだ!!」

「良いや、違う!お前は何者でもない!!僕がそう決めた!!」

 短時間で、トラウマは乗り切れない。ならば、トラウマの対象ではないと、誤認、自己暗示すれば良い。

 アルは、自分の奥底に隠れていたルヴァンに対するトラウマを、「目の前にいるのはルヴァンではない」と説得させることによって、手の震えと躊躇するのを無理矢理やめたのだ。

 かなり強引な方法でトラウマを解決したアルは立ち上がり、傷ついた体をシャドウハンドでグルグルに縛り付けて応急処置を行う。

「さあ、やろうか。偽物スケルトン!!」

「自己暗示か!そんな小細工で俺に勝てると思うな!!」
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