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5章 望まれていない勇者
111話 勇者でも愛して
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「アルディンはアタシが何者でも愛してくれるんだよね?だから、勇者のアタシも愛してね?」
迫害対象なのに、追放されない。栄養不足の体なのに、丈夫かつ強固な体。勇者である理由は十分にあった。
アビルダ・ルインに注目しすぎていたせいでまるで気づかなかった。
となると、僕は彼女を殺さなければならない事になる。それが魔王様の命令だ。けど、僕は彼女を愛すると言ってしまった。それなのに殺すのか?
・・・いや、考える必要なんて無いな。
「ああ、愛するよ。勇者だろうが関係ない。君は愛されるべき存在だ」
「私も誓います!!関係上敵ですが、そんなのは関係ありません!!」
「そっか・・・なら、蹴散らすね」
ケルビムは、神の炎を野球のバットのように振りかぶり、兵士達を威嚇する。
「しゃがんでて。ぶっ殺すから」
「まずい!逃げr─────」
「逃がさないよ」
ケルビムは体も同時に回転し、辺りに神の炎から発生した炎を撒き散らす。飛んで行った炎は、兵士に接触した途端、大きく燃え上がり、鎧が溶けるほどの火力を発生。僕らを囲んでいた兵士達を一瞬で蹴散らしてしまった。
「これが神の炎の力・・・」
「しかもそんなに力を発揮していなかったように見えます。魔王様や古参の魔族の方々が恐れる理由がなんとなく分かった気がします」
旧魔王軍が強力なのに負けた理由がはっきりと分かった。鬼に金棒どころではない。例えるのすら難しい。
「う、嘘だろ・・・」
「あの半端者が勇者?」
「やばい!どうしよう!オレ昔、思い切り顔面蹴っちまった!」
「逃げろ逃げろ!!殺されるぞ!!」
ケルビムが勇者だと判明した瞬間、手に持っていた酒瓶やジョッキを投げ捨て、逃げる酔っぱらい達。千鳥足ながらも必死に逃げる姿は滑稽だった。
「アルディン、逃げたのも殺す?」
「いや、そんな暇はない。しらみつぶしよりも、先にここから脱出しないと・・・ケルビム、魔物がコレクションされてる地下室はどこにあるか分かる?」
「ごめん、アタシ城の中に入ったの1回しかないから良く分からない・・・」
「いや、気にしないで。僕の能力で探せるから。それまで、僕の事を守ってくれないかな?」
「任せて」
「ありがとう。闇の中も、我が視界の中『ダークアイ』」
暗闇を媒体にして、遠くの物を見るようにする魔法。地下室には必ず暗闇が存在する。恐らくしばらく闇を辿れば必ず地下室を見つける事が可能だ。
「・・・・・・見つけた!!待ってて、ゴップ!今合図を送るから!!」
ダークアイを発動させながら、アルはシャドウハンドを発動。複数本出る所を、一本に絞って、城の中へと潜らせた。
迫害対象なのに、追放されない。栄養不足の体なのに、丈夫かつ強固な体。勇者である理由は十分にあった。
アビルダ・ルインに注目しすぎていたせいでまるで気づかなかった。
となると、僕は彼女を殺さなければならない事になる。それが魔王様の命令だ。けど、僕は彼女を愛すると言ってしまった。それなのに殺すのか?
・・・いや、考える必要なんて無いな。
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「私も誓います!!関係上敵ですが、そんなのは関係ありません!!」
「そっか・・・なら、蹴散らすね」
ケルビムは、神の炎を野球のバットのように振りかぶり、兵士達を威嚇する。
「しゃがんでて。ぶっ殺すから」
「まずい!逃げr─────」
「逃がさないよ」
ケルビムは体も同時に回転し、辺りに神の炎から発生した炎を撒き散らす。飛んで行った炎は、兵士に接触した途端、大きく燃え上がり、鎧が溶けるほどの火力を発生。僕らを囲んでいた兵士達を一瞬で蹴散らしてしまった。
「これが神の炎の力・・・」
「しかもそんなに力を発揮していなかったように見えます。魔王様や古参の魔族の方々が恐れる理由がなんとなく分かった気がします」
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「う、嘘だろ・・・」
「あの半端者が勇者?」
「やばい!どうしよう!オレ昔、思い切り顔面蹴っちまった!」
「逃げろ逃げろ!!殺されるぞ!!」
ケルビムが勇者だと判明した瞬間、手に持っていた酒瓶やジョッキを投げ捨て、逃げる酔っぱらい達。千鳥足ながらも必死に逃げる姿は滑稽だった。
「アルディン、逃げたのも殺す?」
「いや、そんな暇はない。しらみつぶしよりも、先にここから脱出しないと・・・ケルビム、魔物がコレクションされてる地下室はどこにあるか分かる?」
「ごめん、アタシ城の中に入ったの1回しかないから良く分からない・・・」
「いや、気にしないで。僕の能力で探せるから。それまで、僕の事を守ってくれないかな?」
「任せて」
「ありがとう。闇の中も、我が視界の中『ダークアイ』」
暗闇を媒体にして、遠くの物を見るようにする魔法。地下室には必ず暗闇が存在する。恐らくしばらく闇を辿れば必ず地下室を見つける事が可能だ。
「・・・・・・見つけた!!待ってて、ゴップ!今合図を送るから!!」
ダークアイを発動させながら、アルはシャドウハンドを発動。複数本出る所を、一本に絞って、城の中へと潜らせた。
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