上 下
101 / 184
5章 望まれていない勇者

99話 ウリム王のコレクション

しおりを挟む
 一方その頃、ウリム王に売り渡されたゴップはというと─────。

「ええっ!!魔王軍今、そんなに勢いあるの!?すごいじゃん!!」

「でしょでしょ?残すところあとルイン領とエンデ王領のみ!!追い詰めたのも同然だよ!!」

 同じく買われてしまった魔物達と仲良く会話をしていた。ゴップは、人間の言葉を操るだけでなく、魔物とのコミュニケーションも可能。

 自分が、魔王軍で戦っている事を話すと、檻の中の魔物達と一気に仲を深めていった。

「いやぁ~~ゴップの話を聞いていると昔を思い出すぜぇ~~。オレも昔はエルフやドワーフを食い散らかしてたよ」

「ワシも人間を殺すのが唯一の楽しみじゃった。ワシらを見下す奴らが歪んだ顔で死んでいく姿がたまらなかった・・・」

 檻に閉じこめられた魔物達は不満を持っていた。人間に捉えられるという屈辱を味わっただけでなく、殺されずにずっと檻の中に閉じこめられ、太陽の光すら浴びる事ができないのだから当たり前なのだろうが。

 しかし、絶望はしていなかった。

「何処かのタイミングを見計らって逃げようとはしているんだよ」

「給仕係を襲ってみたりな」

「実際、5人は殺したと思うよ。兵士達は王のペットであるワシらを殺せないから、こちら側が死ぬ心配もない。そこに関しては不満はないな」

 ささやかではあるけれども、しっかりと行動は起こしているらしい。しかも、兵士を何人か殺しているときた。これは予想以上にできるのではないだろうか?

「ねぇねぇ、先輩達。まだ、暴れる気力と元気は残ってる?」

「ああ、勿論だとも」

「檻の中ではあるけども、トレーニングをかかした事は無いよ」

「それじゃあ、おいらと一緒に暴れないか?」

「「詳しく教えてくれないか?」」

 戦いに飢えた魔物達は獲物に食いつく肉食動物のように、ゴップの提案に食いついた。

「この腐りきったエンデのヒューム達に制裁を加えてやろうよ・・・」

 いつもはしない邪悪じみた笑みを浮かべながら、コレクションの魔物達に提案する。内容を聞くにつれて、魔物達の表情は明るいものとなり、牙が剥き出しになっていくのが分かる。やる気は十分のようだ。

「最高じゃないか!!」「ワシらもまだまだやれるっていうのを、みせてやろうじゃないか!!」

 やる気は十分。アル、作戦は上手く行きそうだよ。

「それじゃあ、しばらく待とうか。決行の日を」

「「「「「おう!」」」」」

 勇者討伐大作戦。ゴップサイド。交渉成立。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

目が覚めました 〜奪われた婚約者はきっぱりと捨てました〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:844pt お気に入り:5,350

転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:58

異世界じゃスローライフはままならない~聖獣の主人は島育ち~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:8,505pt お気に入り:9,081

【完結】推しに命を奪われる運命だと!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,251pt お気に入り:811

残念公女の借金返済計画〜初恋の代償がお高くついた話〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:58

異世界召喚された俺はチートでした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:351

夏が終わる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...