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5章 望まれていない勇者

93話 ルイン家vsディナス家

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「ヴァネス教官!コイツ、やっちゃって良いですかぁ?」

「そのつもりでやれ。武器はどうする?」

「「剣!」」

 奇しくも同じ武器種。素材も同じなので、実力差が大きく出る。さて、僕も今まで戦いで経験を積んできているので、それなりに実力はあると自負しているのだが、果たして勇者の子孫に通じるのだろうか。

「では、試合・・・始め!!」

 互いに木剣を構え、間合いを取り始める。

「フッ・・・!!ハァッ!!」

 最初に攻撃をしかけてきたのは、ルイン家の青年。少し気だるそうな、覇気のない声と共に型にすっぽりハマった剣撃。

 良く言うなら、しっかりと訓練している。悪く言うなら、応用がまるで効いていない。ただ、プログラム通りに動きロボットのようだ。

 始めたての訓練兵にはよくある事だ。では、身体能力はどうだろうか?

「よっと」

「うわぁっ!?」

 体を避けて、足を引っ掛けると、面白いくらいにずっこけて地面にダイブした。躓いても、そこから前転なりして立ち直るくらいはしてほしかった。

「勇者の家系はこんなものなの?」

「うるさい!!お前も戦ってるなら、仕掛けてこい!!」

「そう?じゃあ、行くよ!!」

 腹を狙った一撃。流石に防がれたが、一気に体勢が崩れる。それをしっかりと隙と見たアルは、剣を弾き飛ばし、木剣の切先を喉元に突きつけた。

「これで勝負ありで良いのかな?」

「くっ!!まだだ!!この俺様が何処の馬の骨か分からんやつにやられるわけがないっ!!」

 後ろに吹き飛んだ木剣を取る為に振り返る。つまりはアルに背中を見せたわけだ。

 まだ、試合が続いている。擬似的とはいえ、敵が目の前にいるというのに背中を向けるなんて、なんて馬鹿なのだろうか。

 アルは呆れながら、背中を木剣で背中をぶっ叩き、KOした。気絶こそしなかったが、アビルダはしばらくは立ち上がれなかった。

「流石にこれで、勝負ありですよね?これ以上やったら、彼死んじゃいますよ?」

「・・・そうだな。勝負あり!勝者・・・そういえば名前を聞いていなかったな。志願兵なら言え」

 そういえば、名乗っていなかった。本名を名乗るか?それとも、偽名を名乗るか?

「アルディンです。ファミリーネームはありません」

 偽名を名乗る事にしよう。もしかしたら、イヴ・シフォンヌが報告しているかもしれない。偽名を呼ばれて反応が遅れないように、本名に似せておく。

「・・・ヴァネスだ。ここで、教官をしている。お前の実力は把握したが、配属が決まるまでここで1週間程訓練してもらう。良いな?」

 早速配属先決まり。やったね。

「ありがとうございます!!」

「癒しの魔法属性の女の配属先は要相談だ。良いな?

「はい、よろしくお願いします」

 潜入成功。良い隠れ蓑を手に入れた。

「クソ・・・絶対に許さないからな・・・」

 代わりに厄介な奴アビルダに目をつけられる羽目になったけど・・・。
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