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5章 望まれていない勇者

91話 偽りの志願

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「ところで、お前達は旅をしているのか?魔族は蔓延る現在で、流浪の旅は大変だろう」

「はい。何処に行っても魔王軍の手下に襲われる毎日です。そのせいで、何人もの仲間を無くしました」

「それで、お前達は生き残ったと・・・どうだ?我がエンデ軍に入ってみないか?」

「え・・・?良いのですか?」

「最大戦力として期待していたシフォンヌ領が全滅してから、こちら側の戦力は著しく低下している。ストレンジキャットの手も借りたい所なのだよ」

「・・・・・・どうする?」

「私は構いませんよ。しばらく安定した生活が送れるではありませんか。それに、従軍しようがしまいが、魔族に襲われるのですから」

「それもそうだね・・・分かりました。そうさせて頂きます」

「助かるよ。では、早速で悪いのだが、訓練場へ行ってくれ。そこで、お前達の実力を測らせてもらう」

 どうせ、長期間の滞在はせずに破壊工作のみを行って逃げるんだ。エンデ軍に偽りの従軍をしたって何も問題はないだろう。それに、ダークエルフの少女の事が気がかりだ。訓練場にいる様子だから、ついでに見ておこう。

「では、失礼します」

「うむ・・・では、私も失礼させてもらう。早速、あのゴブリンを楽しまなければ」

 ごめんね、ゴップ。絶対に迎えに来るから・・・。

 城を出て、門番兵に訓練場の道を教えてもらう。場所は、アプルの少し町外れだった。

 そこでは、凡そ数百人の訓練兵達が、模造武器で、型を習っていた。教えている型こそ違うが、昔を思い出して懐かしく感じてしまう。

 かなりの数がいるという事もあってか、ダークエルフの少女は見つからない。代わりに教官らしき、全身鎧に身を包んだ男を見つける事が出来た。

「すみません。ウリム王に言われてここに来ました」

「ほう?志願兵か?・・・んん?貴様・・・」

 僕の顔に何か思い当たる事でもあるのだろうか。ジロジロと見てくるウリム王。誰かに似ているのか?それとも、何か僕の顔にくっついているのだろうか。

「・・・いや、気のせいか。それで?志願兵なのか?それとも、野次馬なのか?」

「志願です。ウリム王に実力の測定をしろと言われて、この場所を教えてもらいました」

「分かった。そろそろ基礎が終わって、練習試合に入る。その時に適当な訓練兵をあてがってやるから、俺に見せてみろ」

「分かりました」

「そこの修道女はなんだ?見るからに志願兵ではなさそうだが?」

「癒しの魔法属性を持つ者として、エンデ軍のお力になれないかと・・・」

「癒しか。珍しい魔法属性だな。それに関しては後に考える。それまで待ってろ」

 教官の指示通り、しばらく、型の訓練中の訓練兵を見ながら、待つ事にした。ダークエルフの少女を探しながら。
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