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3章 潜入せよ、不信と獣の領地

40話 私が唯一信じられる最愛の夫

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 また同じ朝がやってきました。いつもと変わりなく東から。たまには、西から昇ってきても良いでしょうに。

「おはようございます、イヴ領主。今日のご予定ですが─────」

「ええ、既に目を通してある。心配いらない」

 執事に言われるまでもなく、しっかりと予定には目を通してある。もし、執事が見落としなんかしてたら大変だから。

「報告!町外れの畑にブラックホッパーの群れが現れたとの事です!迅速に我々で退治────」

「貴方達では力不足です。ここで、待機していなさい」

 前までは、実力だけなら認めていた騎士団に頼んでいたけど、つい最近解散させた為、いない。かといって、兵士達では対処しきれないので、私が自ら斧を持って出る。

 私は、何も信じる事ができない。人も物も、食べ物も、何もかも信用できない。

 専属のコックが作った料理にも毒が入っていないか疑う私の性格を気に食わない者は多いらしく、これまで何人も辞めて行った。

 人材は腐るほどいるので、構わないが、雇う手間が生まれる為、やめて欲しい。

 この性格をなんとか矯正しようとしたけど、無理だった。どんなに頑張っても、人を信じる事ができない。

 私を殺そうとしているんじゃないか?私の悪口を言ってるんじゃ無いか?と疑ってしまう。

 だけど、そんな私にも理解のある旦那がいる。私のどうしようもない性格を否定せず、向き合ってくれる旦那が。

 旦那の名前はアダム。出会ったのは、お見合いだった。彼は、私が何も信じられない事を知った上でお見合いを受けてくれた。そして、受け入れてくれた。

 私はそれが嬉しくて、彼を婿として迎え、隣に座らせた。

 彼のおかげで、退職者はグンと減少した。領民の不満もみるみると減っていった。誰もが私の成長のおかげというけれど、違う。アダムのおかげだ。

 彼がいたから、領地内の不満は減った。

 彼に不満と愚痴を漏らすようにしてから、私は頑張れるようになった。

 そして、そのストレス発散は夜に行われる。彼の薄い胸板の中でぶつぶつと漏らしていく。

「ロール騎士団を解散した結果、皆が困ってる。私、おかしな事したかな?」

「いいや、してないさ。君の行う行動は、いつでも最適解さ」

「えへへ・・・なら、良いんだけども」

 沢山問題のある領地だけど、彼がいればきっと大丈夫。私はこの問題を乗り越えられる。

 彼という幸せがあればきっと─────。

「大変です!イヴ領主!!一部の兵士が暴走し、一般市民を傷つけ始めました!!」

 この日の幸せは、飛び入るように入ってきた兵士が持ってきた情報によって壊された。
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