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3章 潜入せよ、不信と獣の領地

30話 嘘の証明。イカサマともいう

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 僕は言われるがまま、領主の町パウンドの中心である噴水広場へと連れてこられた。

 今日は、休みの日らしく、様々な年代層が広場に訪れている。成程、確かに身分の証明には持ってこいかもしれない。

「皆の者!聞け!この者は6年前滅ぼされたディナス家の長男を自称する者、アルフォースだ!!」

「アルフォース?」「聞いた事無いな・・・」「昔、魔物に食い殺されたっていう可哀想な子だったかしら?」

 イヴ領主の呼びかけに反応する民衆。これで、逃げ場は無くなった。残されたのは、ここで民衆を惨殺して逃げるか、証明するかの二択しかない。

 しかし、僕の魔法属性は闇。一応、バール様に習ったので水の魔法は使えるけど、威力が全くない。だから────

「では、参ります。生命を支える水よ、我が手に集え『ウォーター』!!」

 水の魔法を使った。潔く、一種の賭けに近い行動を取った。僕の手の上に集まった水の量を見て、アダム・シフォンヌさんは。

「いやぁ、疑ってしまって申し訳ない!砂漠に放り込まれても1週間は保ちそうなその量!水の魔法属性しか出せない!君の容姿と言い、その水の魔法と言い、君は確実にディナス家だ!!」

 僕が集めた水の量は目分量だけども、14Lは確実にあった。何故、そんなに集められたかって?僕が付けているペンダントにある。

 僕が付けているのは、青い宝石の付いたペンダント。水の魔法の威力を上げる効果を持っている。元は僕が母さんにプレゼントされたのだが、回りまわってアクアにプレゼントされていたらしい。

 それを遺体から回収して、再利用しているわけだ。

「アルフォース・ディナス。疑ってすまなかった」

「いえいえ、お気になさらず。なんたって、6年前にディナス家は滅びてますから」

「お礼と言ってはなんだが、宿を一週間分用意しよう。朝晩の食事つきだ」

「ありがとうございます、イヴ領主」

 更に、寝床と食事にもありつけた。ラッキーとしか言いようがない。

 だが、情報によると、イヴ領主はかなり警戒心の強い人物と聞く。油断した所で出る本音を狙っている可能性があるので、気は常に引き締めておこう。

 その後は、シフォンヌの屋敷に戻る事はなく、その場で解散する事となった。宿の場所はメモを貰ったので大丈夫。早速、宿に行って荷物を置きに行くか。

「おい、待て小僧」

「うわぁ!?」

 急な浮遊感と首が絞めつけられる感覚に襲われる。何者かに服を掴まれて浮かされているらしい。首を動かし、後ろを見ると、大きなライオン?のビーストマンがいた。

「領主殿は許してくれたが、もしこの町で騒動を起こそうとしたらただではおかんからな!!」

 ライオン?のビーストマンは言い捨てるように言うと、僕を捨てるように地面に投げ、鎧を鳴らしながらその場を去る。

「ごめんなさいね、うちの町の騎士団長が失礼な事をして。いつもあんな感じだから許してちょうだい」

 後で、町の人から話を聞いた所、ライオン?のビーストマンの名前はコルセット・ヨクリーナ。この町の治安を守るロール騎士団の騎士団長らしい。

 最初から、厄介な人物に目を付けられてしまったな・・・。
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