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2章 2度目の人生の目標
23話 覚醒というよりも暴走
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周辺に、カルー将軍の欠片が転がる。
偶然か、必然か。カルー将軍の頭が僕の体にぶつかって、止まった。
「カルー、将軍・・・な、何故です?なんで僕なんかを庇ったんですか?」
助けてくれた感謝よりも、疑問が浮かび上がる。
「わ、分からない・・・自分でも分からないんだ。私は、君を助ける気はなかった。だが、体が勝手に動いていたんだ」
アンデッドのお陰なのか、カルー将軍はまだ喋る事ができる。
「私は、部下に裏切られた。1人ではなく、全員にだ。そしてアンデッドになった私は誰も信じなくなった。誰もな」
カルー将軍は、僕達を遠ざけていた。まるで、臭い物に蓋するように、訓練以外は僕達と交流を持たないようにしていた。
今思うと、あれは、裏切られるかもしれないという恐怖からくる行動だったのだろう。
「いや、少しわかったかもしれない。貴様のせいかもしれないな、アル」
「僕が、ですか?」
「貴様は、優しく純粋だった。そんな貴様に、私は何か可能性を見出したのかもしれないな・・・誰かを信じても良いかもしれないと・・・」
「それじゃ、答えになってませんよ・・・」
「信じてみたい者を助けるのに理由がいるか?」
カルー将軍の声が小さくなっていく。
「だが、私はもう貴様以外誰も信じることができない。部下の皆んなも、バール様も。そんな軍人、いつかお荷物になる。だから、私の犠牲は気にするな。だから、泣くな」
僕の目からは、いつの間にか涙が溢れていた。それを見て、アクアは愉快そうに笑う。
「ギャハハハハハハハハ!!バケモノとアンデッドが感動作ってる!!これってすっごい滑稽じゃない?皆んな?」
後に続くように、バカにしたように笑い出す敵兵達。敵は、魔族が憎くて仕方がないだろう。
しかし、今笑うところあったか?
「癒しの女神よ、この者の傷に口付けを『ヒール』」
腹部の痛みが引いてくる。出血が止まる。緑の光が僕を包んでいる。カルー将軍の癒しの魔法だ。
「へぇ、癒しの魔法属性か。スケルトンにはもったいなくない?」
「アル・・・暴れろ」
次の瞬間、カルー将軍の頭蓋骨から光が消えた。最後の命令は、遺言となった。
カルー将軍は、2度目の死を迎えた。僕のせいで。
「あ、あぁ・・・」
僕を庇ったせいで。
「ああぁぁ・・・」
僕の、弟・・・敵のせいで。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
心がドス黒い負の感情に支配される。気持ち悪い、最悪の気分だ。
けれども、どうしてだろう。魔力が溢れてくる。バール様との実験の時とは比べ物にならない量の魔力が溢れてくる。
「な、なんて魔力・・・!!」
「アクア様!退散しましょう!これ以上ここに滞在するのは危険です!!」
「はぁ~?何言ってんの?逃げるわけないじゃん。アイツはただ、魔力を放出してるだけ。魔法なんか使えないよ」
弟の中の僕は、6年前で止まっている。僕は、魔法は使ったことはない。けれども、魔法の使う方法は知っている。
「闇より出し黒き手よ!!冷たいその手で、包み込めぇ!!『シャドウ・ハンド』ォ!!」
僕の影を媒体に、無数の黒い手が出現。どこまでも伸びていく影の手は、掴んだ物を決して離さない。
「嘘でしょ!?なんで魔法が使えるの!?ねぇ、なんでなんで!?」
「自分で考えろぉ!!」
黒い手は縄のように巻き付くと、ゴリアテを締め付けていく。鉄でできた巨人も、無数の手の締め付けには耐えることができずに、壊された。
「うわぁ!!」
ゴリアテから放り出されるアクア。黒い手は、僕の影に戻ることなく、次はアクアを縛りつける。
ゴリアテの末路を目の前で見ていたアクアは様式美の如く命乞いをしてきた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!許してください!本当に!もう、絶対にこんな事はしません!本当に!!」
「・・・許してやりたいのは山々だけど、ごめん。シャドウ・ハンドは一度掴んだ者を決して離さない。君を、あと5秒で握りつぶす。5、4、3」
「許しておにいちゃん!ぼくらって唯一生き残った血の繋がった兄弟でしょ?」
「2、1・・・」
「だから、殺さないd────」「ゼロ」
シャドウ・ハンドが握りつぶしたアクアだった物が、辺り一体に飛び散る。あっけない死に方だった。まるで────
「トマトみたいだ・・・」
怒りは、収まらなかった。
偶然か、必然か。カルー将軍の頭が僕の体にぶつかって、止まった。
「カルー、将軍・・・な、何故です?なんで僕なんかを庇ったんですか?」
助けてくれた感謝よりも、疑問が浮かび上がる。
「わ、分からない・・・自分でも分からないんだ。私は、君を助ける気はなかった。だが、体が勝手に動いていたんだ」
アンデッドのお陰なのか、カルー将軍はまだ喋る事ができる。
「私は、部下に裏切られた。1人ではなく、全員にだ。そしてアンデッドになった私は誰も信じなくなった。誰もな」
カルー将軍は、僕達を遠ざけていた。まるで、臭い物に蓋するように、訓練以外は僕達と交流を持たないようにしていた。
今思うと、あれは、裏切られるかもしれないという恐怖からくる行動だったのだろう。
「いや、少しわかったかもしれない。貴様のせいかもしれないな、アル」
「僕が、ですか?」
「貴様は、優しく純粋だった。そんな貴様に、私は何か可能性を見出したのかもしれないな・・・誰かを信じても良いかもしれないと・・・」
「それじゃ、答えになってませんよ・・・」
「信じてみたい者を助けるのに理由がいるか?」
カルー将軍の声が小さくなっていく。
「だが、私はもう貴様以外誰も信じることができない。部下の皆んなも、バール様も。そんな軍人、いつかお荷物になる。だから、私の犠牲は気にするな。だから、泣くな」
僕の目からは、いつの間にか涙が溢れていた。それを見て、アクアは愉快そうに笑う。
「ギャハハハハハハハハ!!バケモノとアンデッドが感動作ってる!!これってすっごい滑稽じゃない?皆んな?」
後に続くように、バカにしたように笑い出す敵兵達。敵は、魔族が憎くて仕方がないだろう。
しかし、今笑うところあったか?
「癒しの女神よ、この者の傷に口付けを『ヒール』」
腹部の痛みが引いてくる。出血が止まる。緑の光が僕を包んでいる。カルー将軍の癒しの魔法だ。
「へぇ、癒しの魔法属性か。スケルトンにはもったいなくない?」
「アル・・・暴れろ」
次の瞬間、カルー将軍の頭蓋骨から光が消えた。最後の命令は、遺言となった。
カルー将軍は、2度目の死を迎えた。僕のせいで。
「あ、あぁ・・・」
僕を庇ったせいで。
「ああぁぁ・・・」
僕の、弟・・・敵のせいで。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
心がドス黒い負の感情に支配される。気持ち悪い、最悪の気分だ。
けれども、どうしてだろう。魔力が溢れてくる。バール様との実験の時とは比べ物にならない量の魔力が溢れてくる。
「な、なんて魔力・・・!!」
「アクア様!退散しましょう!これ以上ここに滞在するのは危険です!!」
「はぁ~?何言ってんの?逃げるわけないじゃん。アイツはただ、魔力を放出してるだけ。魔法なんか使えないよ」
弟の中の僕は、6年前で止まっている。僕は、魔法は使ったことはない。けれども、魔法の使う方法は知っている。
「闇より出し黒き手よ!!冷たいその手で、包み込めぇ!!『シャドウ・ハンド』ォ!!」
僕の影を媒体に、無数の黒い手が出現。どこまでも伸びていく影の手は、掴んだ物を決して離さない。
「嘘でしょ!?なんで魔法が使えるの!?ねぇ、なんでなんで!?」
「自分で考えろぉ!!」
黒い手は縄のように巻き付くと、ゴリアテを締め付けていく。鉄でできた巨人も、無数の手の締め付けには耐えることができずに、壊された。
「うわぁ!!」
ゴリアテから放り出されるアクア。黒い手は、僕の影に戻ることなく、次はアクアを縛りつける。
ゴリアテの末路を目の前で見ていたアクアは様式美の如く命乞いをしてきた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!許してください!本当に!もう、絶対にこんな事はしません!本当に!!」
「・・・許してやりたいのは山々だけど、ごめん。シャドウ・ハンドは一度掴んだ者を決して離さない。君を、あと5秒で握りつぶす。5、4、3」
「許しておにいちゃん!ぼくらって唯一生き残った血の繋がった兄弟でしょ?」
「2、1・・・」
「だから、殺さないd────」「ゼロ」
シャドウ・ハンドが握りつぶしたアクアだった物が、辺り一体に飛び散る。あっけない死に方だった。まるで────
「トマトみたいだ・・・」
怒りは、収まらなかった。
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