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2章 2度目の人生の目標

17話 なんだかんだで優しい骸骨の上司

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「やあっ!とあっ!!」

 今日も今日とて、カカシを殴る。朝の訓練中だ。自分ではかなり正確に攻撃できていると思っていたのだが、上司からしたらまだまだだったらしい。

「アル!腰が引けてるぞ!そんなへっぴり腰で敵と戦うつもりか?」

「すみません!!」

「謝るなら、腰をまっすぐにしろ!!」

「はい!!」

 カルー将軍である。彼は、将軍という兵力のトップに立たされている立場上、要塞城下町ゴレイムの中でも2番目の権力者にも関わらず、僕らと同じ時間に起きて同じ訓練を行っている。

「それとも、何だ?まさか同じヒュームと戦うのが怖いのか?怖くて、カカシを殴るのも躊躇しているのか?」

「ッッ・・・!!」

 図星を突かれてしまった。そうだ、僕のゴップの質問からずっと迷っている。僕は同族を裏切っても平気なのか?断末魔を聞いても正気を保っていられるのか?

 カカシは、他種族をイメージして作られている。ヒュームを模したカカシの前に立つと、どうしても考えてしまう。

「・・・アル、一旦訓練は中止だ。少し話をしよう」

「は、はい・・・」

 木剣を構えるのをやめ、カルー将軍の方を向く。

「お前、そういえば戦いに一度も参加した事が無かったな?」

「はい。恥化しながら」

「そこは恥ずかしがらなくて良い。いつか、嫌というほど戦う羽目になるからな。昨日までは、構えや打ち込みに問題は無かった。極めて模範的な攻撃だ。だが、今日になって非常に悪くなった!昨日何があった?」

「実は───」

 昨日の出来事をカルー将軍に説明した。

「そうか、ゴップが・・・理解した。アイツも成長していたんだな・・・良いか?良く聞いて良く思い出せアル。お前は、何故ここにいる?」

「バール様に拾われたからです」

「お前は、バール様に拾われる前、家族にどのような仕打ちを受けていた?」

「地下牢に7年間閉じ込められ、太陽を浴びる事も、食事をまともに摂る事も許されず、暴力を振るわれ続けました!」

 今でも鮮明に覚えている。忘れられる日はいつ来るのだろうか?

「そうだ!!つまり、お前は同族に裏切られた!ただ、魔法属性が違うという理由だけで人としての自由を奪われた!!貴族のちっぽけなプライドの為に7年も閉じ込められた!!その事に関してどう思う?」

「憎くて仕方がありません!!」

「そうだろう!私もだ!私も、元ヒュームだが、憎くて仕方がない!だから、殺せた!だから、お前の故郷を滅ぼせた!!」

 カルー将軍はいつにもなく熱かった。まるで、燃え盛る炎のようだった。

「だが、それだけじゃない。今の仲間は、同胞は、同族は、ここにいる皆だからだ」

「・・・・・・」

「良いか?良く聞け。誰かが幸せになれば、誰かが不幸になる。全員幸せなんて夢物語だ。そんな理想抱いてるヤツはすぐに死ぬ。なら、誰を幸せにするべきだ?」

「・・・僕に居場所を与えてくれた人、僕を助けてくれた人達です!!」

「そうだろう!!その事を頭に入れろ。いや、焼き付けろ!!」

「はい!!」

「構えろ!!」

「はい!!」

 木剣をカカシに向かって構える。

「打てぇ!!」

「やあっ!!!」

 全身全霊の一撃が、カカシに入る。ヒュームを模したカカシは、割れた音と共に地面に倒れた。

「やればできるじゃないか。ありがとうございますっ!!」

 その後、訓練を終え、朝食を共にしようと思ったのだが、そもそもカルー将軍は食事を摂らないし、避けられてしまった。
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