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1章 不幸な死と2度目の不幸な人生
10話 さようなら、故郷
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「おい、坊主起きろ」
僕を呼ぶ声が聞こえてくる。後頭部が冷たくて硬いけれども、丸みを帯びている。地下牢の床ではないみたいだ。
目を開けると、目の前に人間の頭蓋骨があった。
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」
「まあ、そういう反応するとは思っていたよ。気分はどうだ?坊主」
頭蓋骨の正体はスケルトンのカルーさんだった。失礼な事に驚いてしまったが、あまり気にしてはいないようだ。
「とにかく、何も言わずにこれ食べろ。腐ってはいないから安心しな」
カルーさんが渡してきたのは、何の変哲もない普通のパン。実に7年ぶりに見るまともな食糧だ。
「・・・・・・」
「どうした?地下牢生活で食べ方を忘れたのか?」
「カルーさんは食べないんですか?」
「体見ろバカッ!どうみても食べ物を欲してないだろうが!!」
肉も皮膚も無い体。動かしているのは魂。確かに要らないかもしれない。
「餓死されたらこっちが怒られるんだ。食欲なくても食え。食わないなら、無理矢理にでも、口の中へと突っ込む」
「・・・いただきます」
拒否する理由が見当たらない。歯で一口サイズにして、咀嚼する。うん、普通のパンだ。砂糖やジャムで味付けされていない素材本来の味。シンプルで美味しい。美味しすぎて────
「・・・・ロクな物食わされてなかったみたいだな。涙出てるぞ」
涙が出てしまった。腐っていない普通のパン。青カビに侵食されていないパンはこんなにも美味しかったのか。7年もまともに食べていなかったせいで忘れていた。これが、食事の楽しさ、食欲を満たす事への喜び。
「あ゛り゛がどう゛ござい゛ま゛す゛・・・!!ぼん゛どう゛に゛・・・」
「良いから食え」
たった1個のパンだけど、お腹が久しぶりに満たされたような気がする。欲を言うなら、もっと食べたかったけど、もう無いらしいので、諦めた。
「そういえば、ここは・・・馬車の中ですか?」
「そうだ。今、私達はディナス領から撤収している最中だ。恐らく、貴様が最後に見る故郷の景色だろう。顔を出してみてみるが良い」
言われるがまま、馬車から顔を出し、外を見る。久しぶりに見た外の景色に僕は思わず絶句してしまった。
荒れ果てた畑、崩壊した町、無残にも殺された兵士達。一目見ただけで少し前まで戦争があった事が分かる。あまりに酷い景色に無意識のうちに口を手で覆ってしまった。
「これが、私達新魔王軍のやり方だ。今まで、散々コケにして虐げてきた他種族への怒りだ。今から貴様はこのような所業を行う我々の手伝いをする事になる」
「はい・・・」
「それでも、ついてくるか?」
既に決めた道、今更変えるのは男として、人間として駄目な気がする。それに────
「彼等のコミュニティの中に僕の居場所はないです。なら、少しでも受け入れてくれる貴方達についていきます」
「そうか、それなら良いんだ」
少し安心したうような声色で、カルーさんはに抜きかけていた剣を鞘に戻した。
僕を呼ぶ声が聞こえてくる。後頭部が冷たくて硬いけれども、丸みを帯びている。地下牢の床ではないみたいだ。
目を開けると、目の前に人間の頭蓋骨があった。
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」
「まあ、そういう反応するとは思っていたよ。気分はどうだ?坊主」
頭蓋骨の正体はスケルトンのカルーさんだった。失礼な事に驚いてしまったが、あまり気にしてはいないようだ。
「とにかく、何も言わずにこれ食べろ。腐ってはいないから安心しな」
カルーさんが渡してきたのは、何の変哲もない普通のパン。実に7年ぶりに見るまともな食糧だ。
「・・・・・・」
「どうした?地下牢生活で食べ方を忘れたのか?」
「カルーさんは食べないんですか?」
「体見ろバカッ!どうみても食べ物を欲してないだろうが!!」
肉も皮膚も無い体。動かしているのは魂。確かに要らないかもしれない。
「餓死されたらこっちが怒られるんだ。食欲なくても食え。食わないなら、無理矢理にでも、口の中へと突っ込む」
「・・・いただきます」
拒否する理由が見当たらない。歯で一口サイズにして、咀嚼する。うん、普通のパンだ。砂糖やジャムで味付けされていない素材本来の味。シンプルで美味しい。美味しすぎて────
「・・・・ロクな物食わされてなかったみたいだな。涙出てるぞ」
涙が出てしまった。腐っていない普通のパン。青カビに侵食されていないパンはこんなにも美味しかったのか。7年もまともに食べていなかったせいで忘れていた。これが、食事の楽しさ、食欲を満たす事への喜び。
「あ゛り゛がどう゛ござい゛ま゛す゛・・・!!ぼん゛どう゛に゛・・・」
「良いから食え」
たった1個のパンだけど、お腹が久しぶりに満たされたような気がする。欲を言うなら、もっと食べたかったけど、もう無いらしいので、諦めた。
「そういえば、ここは・・・馬車の中ですか?」
「そうだ。今、私達はディナス領から撤収している最中だ。恐らく、貴様が最後に見る故郷の景色だろう。顔を出してみてみるが良い」
言われるがまま、馬車から顔を出し、外を見る。久しぶりに見た外の景色に僕は思わず絶句してしまった。
荒れ果てた畑、崩壊した町、無残にも殺された兵士達。一目見ただけで少し前まで戦争があった事が分かる。あまりに酷い景色に無意識のうちに口を手で覆ってしまった。
「これが、私達新魔王軍のやり方だ。今まで、散々コケにして虐げてきた他種族への怒りだ。今から貴様はこのような所業を行う我々の手伝いをする事になる」
「はい・・・」
「それでも、ついてくるか?」
既に決めた道、今更変えるのは男として、人間として駄目な気がする。それに────
「彼等のコミュニティの中に僕の居場所はないです。なら、少しでも受け入れてくれる貴方達についていきます」
「そうか、それなら良いんだ」
少し安心したうような声色で、カルーさんはに抜きかけていた剣を鞘に戻した。
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