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1章 不幸な死と2度目の不幸な人生
7話 腹違いの弟
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地下牢に閉じ込められてから4年が経過した。しばらく、太陽を浴びていない肌は、雪のように白くなり、栄養不足になった体からは筋肉が落ちて、皮と骨だけになってしまった。
地下から出られなくなってから、僕の趣味は、盗み聞きになった。壁に耳をピタリと付けて、メイドの人達や父さんの話を聞く。
「先輩、この屋敷には地下があるみたいですが、何があるんですか?」
「悪魔よ。悪魔の子を飼ってるわ。もし、許可なく下に降りたら、解雇じゃ済まないから絶対に行かないようにね。貴女は良い子なんだから」
僕を知っているのは、僕が地下に放り込まれる頃からいるメイドのみとなっており、それ以降のメイドには、僕の存在は教えられておらず、悪魔がいると言って情報漏洩を防いでいるらしい。
たまに町の人が来るんだけど、どうやら僕は母さんと一緒に魔物に襲われて死んだ事になっているらしい。父さんの演技力も高く、未だにバレていない。
あとは、眠って体力の無駄遣いを防ぐ。最近は飽きたのか、父さんは僕を蹴らなくなった。蹴られた折れた骨が、変な形にくっついてしまっているので、ありがたい。
4年も経つと、耐性がついたのか、それとも慣れたのかは分からない。けれども、もうずっとビクビク震える事は無くなった。
脱出も考えたけど、出口は1つしかない。新しい作る力も体力もない。辛い時、舌を噛んで死ぬ事を考えたけど、そんな勇気は無かった。
僕はここで死ぬまで待つしかないみたいだ。
「結局、世界が平和になっても、個人が全員幸せになるわけではないのか・・・」
これでは、また死んでやり直しだろうか?そもそも、またチャンスはもらえるのか?女神様は何故、僕に助言をくださらないのか?
「僕は女神様に見捨てられたのか・・・?」
「当たり前だろ!?お前みたいな人間のゴミ、神様は捨てて同然だ!!」
地上へと続く階段から声が聞こえてくる。盗み聞きでしか聞いた事のない声だ。
僕が地下に閉じ込められてから10ヶ月経ってから聞こえるようになった赤ん坊の泣き声。父さんと新しい母さんの間にできた腹違いの弟。
「へぇ~おまえがぼくのお兄ちゃんか!ガリッガリで気持ち悪いな!」
「・・・君の名前は?」
「えぇ~何で教えなきゃダメなの?・・・ま、いっか。ぼくの名前はアクア。お前の弟だよ」
やっぱりそうだったようだ。そして、まるで僕の存在を前から知っていたような口ぶり。父さんに許可を貰って地下にやってきたのだろう。
何が目的なのかは・・・何となく分かる。
「おりゃ」
「うぐっ・・・」
アクアのトゥーキックが腹に入る。父さんと違ってまだ用事だからか、あまり強くはない。
あまり苦しそうにしなかったのが、不味かったのか。顔をフグのように膨らませて不機嫌そうにすると、伸び放題の髪の毛を掴み、固い壁に叩きつけてきた。
「このっ!このっ!このっ!」
こちらもまた、威力は大した事はないけど、何度もぶつけられると、額の皮膚が裂けてしまう。それを見て、アクアは満足したみたいだ。
「へぇ~!血はぼくたちと同じで赤いんだね!悪魔のくせに!」
僕の事は悪魔の子として教育されたが故の行動だったらしい。父さんの教育だろうか?多分そうだな。だとしたら相当ツライ・・・。
「あれれ?何泣いてんの?まるでぼくが悪い事してるみたいじゃん。ぼくはただ、悪魔退治をしてるだけなのにさっ!!」
しっかりと助走を付けた蹴りが、顎にグリーンヒット。脳震盪で体が動かない。
「よし!ナイスキック!それじゃあ、次はパパに教えてもらったこれで今日は終わらせるとしようか!」
アクアは、目を瞑り、言葉を綴り始めた。やっぱり、教えてもらっていたみたいだ。
「生命を支える水よ、我が手に集え!『ウォーター』!!」
唱え終えると、サッカーボールくらいの大きさの水の玉がアクアの手の平の上をフワフワと浮かび始める。
水の魔法だ。アクアは僕と違って、父さんの同じ水の魔法属性だったらしい。わざわざ、水に因んだ名前に事から、相当期待していた事が分かる。
「それじゃあ、どこまで息が続くかな~?よぅい・・・スタァート!!」
アクアの作った水の玉が、僕の顔全体を覆う。呼吸ができなくて、苦しい。意識が遠のいていく。
「キャハハハハハ!!きもいきもい!あと、10秒頑張ってねー?」
水で、音が聞こえないが、アクアがとにかく楽しんでいるのだけは分かる。無邪気な笑顔だ。まるで、自分の行いは正しいと思っている者の笑い方だ。
酸素が足りなくて死ぬと思った瞬間、顔にまとわりついていた水が無くなり、空気が吸えるようになる。僕は足りない酸素を急いで補給した。
「あ~面白かった。それじゃ、おにいちゃん!また来るからよろしくね♪」
アクアは満足したようで、スキップをしながら階段を登って行った。またと言ってたけど、父さんの次はあんな無邪気で、僕を悪魔だと教育された子が毎日来るようになるのか。
父さんの憂さ晴らしとは違い、楽しむ為に。
もう、この人生を諦めているけど、苦しいのはやっぱり嫌だ。だから、溺れ死にそうな演技の練習、しておこう。
弟のアクアの登場により、アルの心は更に折れてしまったのであった。
地下から出られなくなってから、僕の趣味は、盗み聞きになった。壁に耳をピタリと付けて、メイドの人達や父さんの話を聞く。
「先輩、この屋敷には地下があるみたいですが、何があるんですか?」
「悪魔よ。悪魔の子を飼ってるわ。もし、許可なく下に降りたら、解雇じゃ済まないから絶対に行かないようにね。貴女は良い子なんだから」
僕を知っているのは、僕が地下に放り込まれる頃からいるメイドのみとなっており、それ以降のメイドには、僕の存在は教えられておらず、悪魔がいると言って情報漏洩を防いでいるらしい。
たまに町の人が来るんだけど、どうやら僕は母さんと一緒に魔物に襲われて死んだ事になっているらしい。父さんの演技力も高く、未だにバレていない。
あとは、眠って体力の無駄遣いを防ぐ。最近は飽きたのか、父さんは僕を蹴らなくなった。蹴られた折れた骨が、変な形にくっついてしまっているので、ありがたい。
4年も経つと、耐性がついたのか、それとも慣れたのかは分からない。けれども、もうずっとビクビク震える事は無くなった。
脱出も考えたけど、出口は1つしかない。新しい作る力も体力もない。辛い時、舌を噛んで死ぬ事を考えたけど、そんな勇気は無かった。
僕はここで死ぬまで待つしかないみたいだ。
「結局、世界が平和になっても、個人が全員幸せになるわけではないのか・・・」
これでは、また死んでやり直しだろうか?そもそも、またチャンスはもらえるのか?女神様は何故、僕に助言をくださらないのか?
「僕は女神様に見捨てられたのか・・・?」
「当たり前だろ!?お前みたいな人間のゴミ、神様は捨てて同然だ!!」
地上へと続く階段から声が聞こえてくる。盗み聞きでしか聞いた事のない声だ。
僕が地下に閉じ込められてから10ヶ月経ってから聞こえるようになった赤ん坊の泣き声。父さんと新しい母さんの間にできた腹違いの弟。
「へぇ~おまえがぼくのお兄ちゃんか!ガリッガリで気持ち悪いな!」
「・・・君の名前は?」
「えぇ~何で教えなきゃダメなの?・・・ま、いっか。ぼくの名前はアクア。お前の弟だよ」
やっぱりそうだったようだ。そして、まるで僕の存在を前から知っていたような口ぶり。父さんに許可を貰って地下にやってきたのだろう。
何が目的なのかは・・・何となく分かる。
「おりゃ」
「うぐっ・・・」
アクアのトゥーキックが腹に入る。父さんと違ってまだ用事だからか、あまり強くはない。
あまり苦しそうにしなかったのが、不味かったのか。顔をフグのように膨らませて不機嫌そうにすると、伸び放題の髪の毛を掴み、固い壁に叩きつけてきた。
「このっ!このっ!このっ!」
こちらもまた、威力は大した事はないけど、何度もぶつけられると、額の皮膚が裂けてしまう。それを見て、アクアは満足したみたいだ。
「へぇ~!血はぼくたちと同じで赤いんだね!悪魔のくせに!」
僕の事は悪魔の子として教育されたが故の行動だったらしい。父さんの教育だろうか?多分そうだな。だとしたら相当ツライ・・・。
「あれれ?何泣いてんの?まるでぼくが悪い事してるみたいじゃん。ぼくはただ、悪魔退治をしてるだけなのにさっ!!」
しっかりと助走を付けた蹴りが、顎にグリーンヒット。脳震盪で体が動かない。
「よし!ナイスキック!それじゃあ、次はパパに教えてもらったこれで今日は終わらせるとしようか!」
アクアは、目を瞑り、言葉を綴り始めた。やっぱり、教えてもらっていたみたいだ。
「生命を支える水よ、我が手に集え!『ウォーター』!!」
唱え終えると、サッカーボールくらいの大きさの水の玉がアクアの手の平の上をフワフワと浮かび始める。
水の魔法だ。アクアは僕と違って、父さんの同じ水の魔法属性だったらしい。わざわざ、水に因んだ名前に事から、相当期待していた事が分かる。
「それじゃあ、どこまで息が続くかな~?よぅい・・・スタァート!!」
アクアの作った水の玉が、僕の顔全体を覆う。呼吸ができなくて、苦しい。意識が遠のいていく。
「キャハハハハハ!!きもいきもい!あと、10秒頑張ってねー?」
水で、音が聞こえないが、アクアがとにかく楽しんでいるのだけは分かる。無邪気な笑顔だ。まるで、自分の行いは正しいと思っている者の笑い方だ。
酸素が足りなくて死ぬと思った瞬間、顔にまとわりついていた水が無くなり、空気が吸えるようになる。僕は足りない酸素を急いで補給した。
「あ~面白かった。それじゃ、おにいちゃん!また来るからよろしくね♪」
アクアは満足したようで、スキップをしながら階段を登って行った。またと言ってたけど、父さんの次はあんな無邪気で、僕を悪魔だと教育された子が毎日来るようになるのか。
父さんの憂さ晴らしとは違い、楽しむ為に。
もう、この人生を諦めているけど、苦しいのはやっぱり嫌だ。だから、溺れ死にそうな演技の練習、しておこう。
弟のアクアの登場により、アルの心は更に折れてしまったのであった。
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