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1章 不幸な死と2度目の不幸な人生
4話 魔法が使えない?
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あれから、2年が経過した。僕は、ついに待ちに待った3歳になった。
何故、待っていたかって?もちろん、魔法が使えるようになるからだ。
父さんと本が言うには、魔法が使えるようになるのは3歳。例外はもちろんいるけれども、うちの家系にはその例外がいなかった為、その可能性はないみたいだ。
誕生日の日、いつもより早く起きた僕は、ベッドから飛び降りて、父さんの部屋へと急いだ。
「父さん!起きて!起きて!」
「うぅん・・・うるせぇな・・・もう少し寝かせてくれよ・・・」
父さんの寝起きはとても悪い。なんなら、寝ている時に起こしたら更に不機嫌になる。そんな事が分かっていても、僕はどうしても父さんに魔法を教えてもらいたかった。
2年と6ヶ月前から興味を持ち、使うことに憧れていた魔法。いち早くコツを覚えて使ってみたいが故の行動だ。
「ん?メイドじゃない?アル?どうしたんだ?」
「今日、僕の誕生日だよ!今日で3歳になった!!」
「おお・・・!そうかそうか、それはめでたいな。今日はとびきりのご馳走を用意しよう。でも、ちょっと寝かせてくれないかな?俺、少し眠いんだ・・・」
「ダメだよ!僕に魔法教えてくれるって約束したじゃないかー!!」
因みに約束はしっかりと取り付けてある。一昨日、でろんでろんに酔っ払っている時に。
「それは昼からでも・・・」
「やだぁぁぁぁぁぁ!!」
転生後初めての駄々である。流石の父さんも降参したのか、ベッドから落ちるように降りた。
「わ、分かった!分かったから少し待ってて・・・着替えるから・・・」
ようやく観念したのか、父さんは立ち上がり、着替え始めてくれた。僕は既に着替えているので、庭に出て、木の棒で小鳥の魔物を追っ払いながら待つ事30分。
着替えも洗顔も歯磨きも終えた、父さんが杖を持ってやってきた。ご老人が歩行の補助の為に使う杖と似ているけど、恐らく魔法の杖なのだろう。
「これは、我が家に代々伝わる初心者用の魔法の杖。何も媒体無しよりも簡単に使えるように、作られている!さあ、息子よ!誉れある最初の魔法を放つが良い!!」
コツと感覚の掴み方だけならば、既に教えてもらっている。体に流れる血液を感覚的に感じ取り、体内に流れる魔力を感じ取る。
「どうだ?感じ取れたか?」
「ううん・・・まだ」
血の流れを読み取ることはできた。できたけど、全く魔力らしき不思議な力を感じ取れない。始めてだからだろうか?
それから、小1時間程、教わった通りに魔力を感じ取ろうとしたが、全く感じない。
「う~ん・・・ちょっとアイツのコツでやってみるか・・・アル、今度は水を掬い上げるような感覚を想像してみなさい」
父さんの言うアイツというのはおそらく母さんだろう。言われた通りに、水を救うような感覚を想像してみたけれども、やはり今まで感じたことがないような、不思議な力は感じられない。
これは、最早センスがないとかいう問題ではなく、そもそも使えないんじゃないかな?僕は元々、前世の記憶を持って転生してきたわけだし。
でも、肉体はこの世界に来てから手に入れたものだから、使える可能性も否めない。どうしよう、色んな可能性を考えるだけ何故だか分からなくなってくる。
「う~んそれでもダメか・・・すまない、俺は魔法の専門家というわけではないから、原因が詳しく分からない。だから、今から知り合いの魔法使いの所に行って調べてもらおう。良いな?」
「わ、分かった」
「そう、落ち込むな。きっと大丈夫さ。きっとな」
最初は乗り気じゃなかった父さんも、息子が自分と違うことに気づいて少し驚いている様子。こんな心配をかけて本当にごめんなさい。
朝食を軽く取り、馬車に乗り、最寄りの町に着く。町は活気付いており、あちこちで商売が行われている。
果物や野菜、酒や服など様々だ。
「やあ、ルヴァンさん!町に顔を出すなんて珍しいね!どうしたんだい?」
酒売りの商人が、父さんの存在に気づいて話しかけてくる。笑みを浮かべている事から、相当親しい間柄のようだ。
「ああ、ちょっと急用でね。魔法使いクアンタを探しているんだが、ヤツは今日も家に引きこもっているのか?」
「最近見てないね。多分、引きこもって魔法の勉強でもしてるんじゃないか?」
「分かった。ありがとう」
商人に話を聞くと、迷いなく住宅街へと進み、1つの家の前まで歩いて行く。他の家と比べると遥かに汚くて、築歴が長そうな家だ。
父さんは、扉をノックすると、町中に響きそうな声で家主を呼んだ。
「ルヴァンだ!開けろ!!」
父さんが自分の名前を叫んだ瞬間、ドタドタと騒がしく走る音と、家の中から壺や木が割れる音が聞こえてくる。最後に、壁にぶつかる音が聞こえてきてから数秒後、髪はボサボサ、髭は生えまくりの小汚い男性が家から出てきた。
「ルヴァンさん・・・来る時は事前に言って下さいよ・・・ヒヒッ」
「それはすまないなクアンタ。だが、今日は緊急の用事で来た。早速で悪いんだが、息子の様子がおかしくてな。ちょっと見てほしい」
「ほほう、息子さんの様子がおかしい。貴方の横にいる子供が息子さんでよろしいですか?」
「話の文脈からしてそうだろう。早く中に入れろ」
「は、はいぃ!ただいま!!」
魔法使いのクアンタさんと父さんの間に何があったのだろう。クアンタさんはどこか父さんに怯えながら、僕らを家の中へと案内した。
何故、待っていたかって?もちろん、魔法が使えるようになるからだ。
父さんと本が言うには、魔法が使えるようになるのは3歳。例外はもちろんいるけれども、うちの家系にはその例外がいなかった為、その可能性はないみたいだ。
誕生日の日、いつもより早く起きた僕は、ベッドから飛び降りて、父さんの部屋へと急いだ。
「父さん!起きて!起きて!」
「うぅん・・・うるせぇな・・・もう少し寝かせてくれよ・・・」
父さんの寝起きはとても悪い。なんなら、寝ている時に起こしたら更に不機嫌になる。そんな事が分かっていても、僕はどうしても父さんに魔法を教えてもらいたかった。
2年と6ヶ月前から興味を持ち、使うことに憧れていた魔法。いち早くコツを覚えて使ってみたいが故の行動だ。
「ん?メイドじゃない?アル?どうしたんだ?」
「今日、僕の誕生日だよ!今日で3歳になった!!」
「おお・・・!そうかそうか、それはめでたいな。今日はとびきりのご馳走を用意しよう。でも、ちょっと寝かせてくれないかな?俺、少し眠いんだ・・・」
「ダメだよ!僕に魔法教えてくれるって約束したじゃないかー!!」
因みに約束はしっかりと取り付けてある。一昨日、でろんでろんに酔っ払っている時に。
「それは昼からでも・・・」
「やだぁぁぁぁぁぁ!!」
転生後初めての駄々である。流石の父さんも降参したのか、ベッドから落ちるように降りた。
「わ、分かった!分かったから少し待ってて・・・着替えるから・・・」
ようやく観念したのか、父さんは立ち上がり、着替え始めてくれた。僕は既に着替えているので、庭に出て、木の棒で小鳥の魔物を追っ払いながら待つ事30分。
着替えも洗顔も歯磨きも終えた、父さんが杖を持ってやってきた。ご老人が歩行の補助の為に使う杖と似ているけど、恐らく魔法の杖なのだろう。
「これは、我が家に代々伝わる初心者用の魔法の杖。何も媒体無しよりも簡単に使えるように、作られている!さあ、息子よ!誉れある最初の魔法を放つが良い!!」
コツと感覚の掴み方だけならば、既に教えてもらっている。体に流れる血液を感覚的に感じ取り、体内に流れる魔力を感じ取る。
「どうだ?感じ取れたか?」
「ううん・・・まだ」
血の流れを読み取ることはできた。できたけど、全く魔力らしき不思議な力を感じ取れない。始めてだからだろうか?
それから、小1時間程、教わった通りに魔力を感じ取ろうとしたが、全く感じない。
「う~ん・・・ちょっとアイツのコツでやってみるか・・・アル、今度は水を掬い上げるような感覚を想像してみなさい」
父さんの言うアイツというのはおそらく母さんだろう。言われた通りに、水を救うような感覚を想像してみたけれども、やはり今まで感じたことがないような、不思議な力は感じられない。
これは、最早センスがないとかいう問題ではなく、そもそも使えないんじゃないかな?僕は元々、前世の記憶を持って転生してきたわけだし。
でも、肉体はこの世界に来てから手に入れたものだから、使える可能性も否めない。どうしよう、色んな可能性を考えるだけ何故だか分からなくなってくる。
「う~んそれでもダメか・・・すまない、俺は魔法の専門家というわけではないから、原因が詳しく分からない。だから、今から知り合いの魔法使いの所に行って調べてもらおう。良いな?」
「わ、分かった」
「そう、落ち込むな。きっと大丈夫さ。きっとな」
最初は乗り気じゃなかった父さんも、息子が自分と違うことに気づいて少し驚いている様子。こんな心配をかけて本当にごめんなさい。
朝食を軽く取り、馬車に乗り、最寄りの町に着く。町は活気付いており、あちこちで商売が行われている。
果物や野菜、酒や服など様々だ。
「やあ、ルヴァンさん!町に顔を出すなんて珍しいね!どうしたんだい?」
酒売りの商人が、父さんの存在に気づいて話しかけてくる。笑みを浮かべている事から、相当親しい間柄のようだ。
「ああ、ちょっと急用でね。魔法使いクアンタを探しているんだが、ヤツは今日も家に引きこもっているのか?」
「最近見てないね。多分、引きこもって魔法の勉強でもしてるんじゃないか?」
「分かった。ありがとう」
商人に話を聞くと、迷いなく住宅街へと進み、1つの家の前まで歩いて行く。他の家と比べると遥かに汚くて、築歴が長そうな家だ。
父さんは、扉をノックすると、町中に響きそうな声で家主を呼んだ。
「ルヴァンだ!開けろ!!」
父さんが自分の名前を叫んだ瞬間、ドタドタと騒がしく走る音と、家の中から壺や木が割れる音が聞こえてくる。最後に、壁にぶつかる音が聞こえてきてから数秒後、髪はボサボサ、髭は生えまくりの小汚い男性が家から出てきた。
「ルヴァンさん・・・来る時は事前に言って下さいよ・・・ヒヒッ」
「それはすまないなクアンタ。だが、今日は緊急の用事で来た。早速で悪いんだが、息子の様子がおかしくてな。ちょっと見てほしい」
「ほほう、息子さんの様子がおかしい。貴方の横にいる子供が息子さんでよろしいですか?」
「話の文脈からしてそうだろう。早く中に入れろ」
「は、はいぃ!ただいま!!」
魔法使いのクアンタさんと父さんの間に何があったのだろう。クアンタさんはどこか父さんに怯えながら、僕らを家の中へと案内した。
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