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八章 希望の光達

蛸は三度人を嘲笑う

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「『フレイム』!『アイス』!『スパーク』!『ガイア』!」

 炎、氷、雷、岩の4つの属性の魔術が一斉に亮一に向かってくる。

「させない───『アイスウォール』!」

 4つの魔術は葵の機転のきいた氷の壁ですべて塞がれてしまう。だが、4つの魔術を受けて到底耐えられるはずもなく、氷の壁は自壊した。

「くっ!!やりますねぇ。ならば───『召喚』!!」

 パチンとデビルが指を鳴らすと床に大きな陣が形成され、そこから下級悪魔が這い出てきた。主従関係はわかっているようで、下級悪魔はデビルの指示に従って亮一を襲った。

「『フレイム』」

 煉獄刀に向けて炎の魔術をかけると、煉獄刀は炎を帯びて業火の刃を形成した。亮一は業火の刀をふるって一気に下級悪魔の首を落とす。

「チッ!やはり簡単には殺せませんか・・・」

「少し俺らを舐めすぎじゃないのか?そのせいか反応も少し遅れているぞ」

「黙りなさい!!私は、最強の魔術師なのです!」

「魔術師?お前悪魔じゃないのか・・・いや、待てよ。お前のこの気配、何処かで感じたことあるな・・・前に何処かで会ったことあるっけ?」

 俺はコイツを知っている気がする。数年前に会った気がするのだ。仮面を外したら分かるだろうか?とにかく俺の直感がコイツを知っているのだ。

「亮一、下がってて───『クリスタルサンダー』!!」

 槍のような形状をし、雷を宿した氷の塊がデビルに向けてかっ飛んでいく。雷に補助されていらからなのだろうか?氷の槍の速度は通常とは比べものにならないくらい速かった。

「『シャドウシールド』!!」

 氷雷の槍が当たる数センチ。デビルは闇の盾を展開して防いでしまう。葵は思わず舌打ちをした。

「2つの魔術の融合だと・・・」

 デビルは驚いていた。魔術を混ぜることが可能なのか!?と。葵は胸を張って宣言する。

「可能よ!何たって私天才だから」

「全然思いつかなかった・・・」

「あらぁ~?最強魔術師じゃなかったわけ?がっかり。道理でさっきから威力の弱い魔術しか打ってこないと思った」

「なん・・・だと・・・!!」

 デビルは拳をプルプルさせて怒りを露にしていた。きっと仮面の下の素顔は般若のような形相になっているのだろう。

 先程から戦っていて気になっていたのだが、あいつデビル情緒が不安定すぎやしないか?

 本当に最強の魔術師なのか?魔術を融合できることも知らなかったようだし・・・。

「葵、俺に強化魔術をかけてくれ。あと、アイツに向かって煽り言葉を」

「煽りはこれからも続けるつもり。防御と筋力で良い?」

「あとスピードも頼む。怒ったらアイツ何するか分からないしな」

 亮一は葵に魔術で腕と足の筋肉を増加させてもらい、皮膚を更に硬くしてもらった。炎が燃え収まった煉獄刀に再び炎を注ぐと亮一はデビルに刃を向けて言葉を放った。

「さあて、最強の魔術師さんはどのくらい強いのかねぇ?そこら辺の魔術師よりかは強いことを願うよ」

「舐めるなぁ!!」

 かかった。デビルは亮一の挑発に乗って亮一にのみ攻撃を集中させる。炎や岩や水や雷等、様々な属性の魔術が亮一を襲うが、亮一は一時強化された肉体で容易く避ける。恐らく強化が無くとも彼ならば避けられただろう。

「ちょこまかと・・・!!」

「もっと打たないと俺はとらえられないぜ。最強さん♥️」

「糞がぁぁぁ!!」

  更にデビルの魔術の攻撃が激しくなる。亮一はその魔術の攻撃の中で最も大きく精度も高い炎の魔術を見つけると、わざと刀で受けて、更に煉獄刀の炎を強める。

 そろそろ狙いに出ないとな・・・亮一はデビルに狙いを定める。完成度はまだ低いが、試してみる価値はあるだろう。俺の技第一号。

「秘技────」

 亮一は魔術攻撃を避けて床に着地すると、床を力強く踏みしめ、姿を消した。

「ど、何処だ!?一体どんな魔術を使った!?」

 亮一や葵は1つも魔術を唱える素振りは見せていなかった。デビルは焦る頭で考える。

「遅いな」

「なっ───!!」

 考えこんでいる隙にその隙を見破られてしまった。デビルは急いで守りの体勢を整えるが、1秒程遅かった。

「『俊足、首狩り』」
 
 スパン!と肉を骨と同時に斬る音が部屋中に響く。デビルは最初は何が起こっているのかわからなかった。

 天地がひっくり返っている。コケたのか?いや、違う。自分の足がある。跳ねられたのか?首を跳ねられたのか?

「んなっ────!!」

 自分がどうなっているのかは理解できたが、アイツ亮一が何故消えて、自分の目の前に出てきた原理がさっぱり分からなかった。

 魔術?恩恵?色んな仮説を立てたが、この男にはそのようなものはかかっていなかった。だとすると、考えられるのは一番信じられないこの仮説。

 この男は見えなくなるほどまでに加速して自分の首を跳ねた。

 信じ難いことではあったが、受け入れざるおえなかった。

 デビルの首はボトリと血を撒き散らしながら床に転がると、亮一の足にぶつかった。

「・・・・・・」

 亮一は何も言わずに悪魔を模した仮面に刃をつきつけると、小さく振って仮面を真っ二つに割った。すると、仮面から出てきた素顔はまだ10にも満たないいたいけな少年だった。

「やっぱりか・・・」

 胴体の方を見ると、先程まで自分と同じくらいの大きさがあったデビルの胴体を見ると、デビルの素顔に似合った大きさまで縮んでいた。デビルは魔術で姿を誤魔化していたのだ。

「おいデビル。まだ生きてるんだろ?死ぬまで暇なら俺にこれまでの経緯を話せ」

「・・・分かっ・・・たよ。僕、は魔術師の家系に生まれたんだ。でも、僕には魔術師の才能どころかステータスカードの適正も全くなかった」

「じゃあ、何でお前は魔術が使えた?才能が無かったのだろう・・・?」

「そうさ・・・僕には1ミリも才能が無かった・・・。だから、悪魔に頼んだのさ・・・」

 その一言で頭に溜まっていた靄が消え去った。知っていると思っていたとは他人の空似だった。

 あれはそう、シトラが歩の所に来た時の事。名前は時が流れていくにつれて忘れてしまったが、ニコラス王の息子でシトラに気持ち悪い程の執念していた男。アイツと似ているのだ。
 
 アイツと同じように悪魔と契約したからか?それだけではない気がする。もっと根本から似ているような・・・・・・まさか!

『ピンポンピンポン大せいかーい!!流石は小野山歩のご友人。類は友を呼ぶとはこういうことを言う。貴方も中々に頭が回るようですねぇ』

 どこからともなく声が聞こえてくる。すると、床に先程下級悪魔を召喚するときとはまた一風違った中心にタコのような紋章が描かれた陣が形成されていく。

 亮一は慌てて跳躍して陣から離れると、陣の中からゆっくりと浮かび上がるようにタコのような見た目をした怪物が現れたのだ。

 デビルはその姿を見るなり目から恐怖を滲み出していた。

「オクトス・・・・!!」

 亮一はその名を聞いたことがあった。ニコラス王の息子が契約し、歩がエルフの国にシトラの両親に挨拶しにいった時に出くわしたという悪魔。

 話から聞いていたが、こんなにもおぞましい姿だとは・・・。タコは別に嫌いではないのに鳥肌が立ってしまった。

「タコみたいな見た目・・・お前が歩の言ってた悪魔で間違いないな?」

「ええ、そうです。この私がオクトスでございます」

「この子と契約していた悪魔はお前なんだよな?」

「はい。この子がどーしても魔力が欲しいと言うものですから」

「・・・持っていくのか?身体を?」

 睨み付けるようにして問うとオクトスはケタケタと笑ってみせた。またその笑いかたで鳥肌が立ってしまう。

「首を跳ねられて動けなくなった子供なんていりませんよ笑。だから今回はに貴方のこの子の身体を差し上げます。あとは焼くなり煮るなり好きにすれば良いです」

「・・・そうか。ならばそうさせてもらう」

 亮一はゆっくりとデビルの首を持ち上げた。デビルはなけなしの気力で声を振り絞る。

「な、んでだ・・・僕は、アンタ達を殺そうとしたのに・・・」

「戦った後はそんなの関係ない。お前の成仏を祈ってから墓に埋める」

 ホロリホロリと少年の瞳から涙から溢れてくる。これは負けた故の悔しさの涙か敵に情けをかけられている故の屈辱の涙かは亮一は分からなかった。

「畜生・・・畜生・・・!!もっと才能があれば・・・!!」

 少年の涙は願いが叶わない故の涙であった。亮一は同情と共に頭をゆっくりと撫でる。まるで我が子を愛でるように。

「大丈夫さ・・・次はきっと、才能を持って生まれてくる。お前は才能が無かったわけじゃない。才能を見つけられなかったのさ」

「そうか・・・そうだったのか・・・」

「もう結構ギリギリなんだろ?喋るの。もう休みな」

「嗚呼。ありがと・・・・・・」

 少年は亮一の腕の中でゆっくりと眠るように死に絶えた。

「この子の首、繋げられるか?」

「できるよ。ちょっと貸して・・・」

 葵は亮一から少年の首を受けとると、胴体とくっつけて治療魔術を放った。生き返らすことはできないが身体を繋げることはできる。

「・・・ルルドはやっぱり救いようもないクズみたいだな・・・」

「・・・そうね」

 少年の死と共にルルドへの怒りが沸き上がる。殺してしまったのは自分だ。だが、この怒りはなんだろうか?

 あの少年には魔力の才能が自分よりも無かった。そんな子が上級悪魔であるオクトスを呼び出せるはずがない。

 亮一はまだいるオクトスに向かって質問をした。

「お前を呼び出したのは誰だ・・・?」

「察しがついているとは思いますが・・・あの男、ルルドですよ」

「・・・やっぱりか」

 拳に自然と力が入る。アイツは純粋な子供の夢まで利用するのか、と。

「では、私は失礼しますね。まだまだ仕事がいっぱいありますし・・・」

「戦わないのか・・・?」

「はい🌟なんたって私、貴方達のファンですから♥️」

「そ、そうか・・・」

 オクトスは人間が手を振るようにこちらに向かってを触手のうちの一本をブンブンと振りながら自分が出てきた陣へと潜っていく。

「どうかルルドを倒してくださいねー?私、アイツの事が大っ嫌いなんで!!」

 オクトスは念を押すようにして伝えると、完全に亮一達の前から消えていった。



「なあ!下級悪魔の量が多すぎない!?1人じゃ捌き切れないんだけど!」

「日本男子でしょ?そのくらい我慢しなさい!!」

 魔族の城下町は戦場と化していた。兵士や騎士、優人達は聖なる力が使える修道女達を守りながら戦っていた。ありがたいことに修道女達は治療魔術やらポーションやらをくれる。おかげで3時間程戦いっぱなしだ。

『Debyaaaaaaaaaa!?』

 突然何もしていないのにも関わらず、下級悪魔は苦しみ、地面に悶え始めたのだ。すると次の瞬間、下級悪魔は次々と消えていったのだ。

「亮一達か!?」

「さっすが私の妹!!」

 残ったのは少ない人数の魔族と数百体の魔物とキメラ。

「下級悪魔が消えた!!進めぇー!!」

 兵士達の士気が一気に上がる。亮一と緑のその勢いに乗って魔物に向かっていく。魔族の街奪還まであと少しだ・・・!!
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