211 / 219
八章 希望の光達
蛸は三度人を嘲笑う
しおりを挟む
「『フレイム』!『アイス』!『スパーク』!『ガイア』!」
炎、氷、雷、岩の4つの属性の魔術が一斉に亮一に向かってくる。
「させない───『アイスウォール』!」
4つの魔術は葵の機転のきいた氷の壁ですべて塞がれてしまう。だが、4つの魔術を受けて到底耐えられるはずもなく、氷の壁は自壊した。
「くっ!!やりますねぇ。ならば───『召喚』!!」
パチンとデビルが指を鳴らすと床に大きな陣が形成され、そこから下級悪魔が這い出てきた。主従関係はわかっているようで、下級悪魔はデビルの指示に従って亮一を襲った。
「『フレイム』」
煉獄刀に向けて炎の魔術をかけると、煉獄刀は炎を帯びて業火の刃を形成した。亮一は業火の刀をふるって一気に下級悪魔の首を落とす。
「チッ!やはり簡単には殺せませんか・・・」
「少し俺らを舐めすぎじゃないのか?そのせいか反応も少し遅れているぞ」
「黙りなさい!!私は、最強の魔術師なのです!」
「魔術師?お前悪魔じゃないのか・・・いや、待てよ。お前のこの気配、何処かで感じたことあるな・・・前に何処かで会ったことあるっけ?」
俺はコイツを知っている気がする。数年前に会った気がするのだ。仮面を外したら分かるだろうか?とにかく俺の直感がコイツを知っているのだ。
「亮一、下がってて───『クリスタルサンダー』!!」
槍のような形状をし、雷を宿した氷の塊がデビルに向けてかっ飛んでいく。雷に補助されていらからなのだろうか?氷の槍の速度は通常とは比べものにならないくらい速かった。
「『シャドウシールド』!!」
氷雷の槍が当たる数センチ。デビルは闇の盾を展開して防いでしまう。葵は思わず舌打ちをした。
「2つの魔術の融合だと・・・」
デビルは驚いていた。魔術を混ぜることが可能なのか!?と。葵は胸を張って宣言する。
「可能よ!何たって私天才だから」
「全然思いつかなかった・・・」
「あらぁ~?最強魔術師じゃなかったわけ?がっかり。道理でさっきから威力の弱い魔術しか打ってこないと思った」
「なん・・・だと・・・!!」
デビルは拳をプルプルさせて怒りを露にしていた。きっと仮面の下の素顔は般若のような形相になっているのだろう。
先程から戦っていて気になっていたのだが、あいつ情緒が不安定すぎやしないか?
本当に最強の魔術師なのか?魔術を融合できることも知らなかったようだし・・・。
「葵、俺に強化魔術をかけてくれ。あと、アイツに向かって煽り言葉を」
「煽りはこれからも続けるつもり。防御と筋力で良い?」
「あとスピードも頼む。怒ったらアイツ何するか分からないしな」
亮一は葵に魔術で腕と足の筋肉を増加させてもらい、皮膚を更に硬くしてもらった。炎が燃え収まった煉獄刀に再び炎を注ぐと亮一はデビルに刃を向けて言葉を放った。
「さあて、最強の魔術師さんはどのくらい強いのかねぇ?そこら辺の魔術師よりかは強いことを願うよ」
「舐めるなぁ!!」
かかった。デビルは亮一の挑発に乗って亮一にのみ攻撃を集中させる。炎や岩や水や雷等、様々な属性の魔術が亮一を襲うが、亮一は一時強化された肉体で容易く避ける。恐らく強化が無くとも彼ならば避けられただろう。
「ちょこまかと・・・!!」
「もっと打たないと俺はとらえられないぜ。最強さん♥️」
「糞がぁぁぁ!!」
更にデビルの魔術の攻撃が激しくなる。亮一はその魔術の攻撃の中で最も大きく精度も高い炎の魔術を見つけると、わざと刀で受けて、更に煉獄刀の炎を強める。
そろそろ狙いに出ないとな・・・亮一はデビルに狙いを定める。完成度はまだ低いが、試してみる価値はあるだろう。俺の技第一号。
「秘技────」
亮一は魔術攻撃を避けて床に着地すると、床を力強く踏みしめ、姿を消した。
「ど、何処だ!?一体どんな魔術を使った!?」
亮一や葵は1つも魔術を唱える素振りは見せていなかった。デビルは焦る頭で考える。
「遅いな」
「なっ───!!」
考えこんでいる隙にその隙を見破られてしまった。デビルは急いで守りの体勢を整えるが、1秒程遅かった。
「『俊足、首狩り』」
スパン!と肉を骨と同時に斬る音が部屋中に響く。デビルは最初は何が起こっているのかわからなかった。
天地がひっくり返っている。コケたのか?いや、違う。自分の足がある。跳ねられたのか?首を跳ねられたのか?
「んなっ────!!」
自分がどうなっているのかは理解できたが、アイツが何故消えて、自分の目の前に出てきた原理がさっぱり分からなかった。
魔術?恩恵?色んな仮説を立てたが、この男にはそのようなものはかかっていなかった。だとすると、考えられるのは一番信じられないこの仮説。
この男は見えなくなるほどまでに加速して自分の首を跳ねた。
信じ難いことではあったが、受け入れざるおえなかった。
デビルの首はボトリと血を撒き散らしながら床に転がると、亮一の足にぶつかった。
「・・・・・・」
亮一は何も言わずに悪魔を模した仮面に刃をつきつけると、小さく振って仮面を真っ二つに割った。すると、仮面から出てきた素顔はまだ10にも満たないいたいけな少年だった。
「やっぱりか・・・」
胴体の方を見ると、先程まで自分と同じくらいの大きさがあったデビルの胴体を見ると、デビルの素顔に似合った大きさまで縮んでいた。デビルは魔術で姿を誤魔化していたのだ。
「おいデビル。まだ生きてるんだろ?死ぬまで暇なら俺にこれまでの経緯を話せ」
「・・・分かっ・・・たよ。僕、は魔術師の家系に生まれたんだ。でも、僕には魔術師の才能どころかステータスカードの適正も全くなかった」
「じゃあ、何でお前は魔術が使えた?才能が無かったのだろう・・・?」
「そうさ・・・僕には1ミリも才能が無かった・・・。だから、悪魔に頼んだのさ・・・」
その一言で頭に溜まっていた靄が消え去った。知っていると思っていたとは他人の空似だった。
あれはそう、シトラが歩の所に来た時の事。名前は時が流れていくにつれて忘れてしまったが、ニコラス王の息子でシトラに気持ち悪い程の執念していた男。アイツと似ているのだ。
アイツと同じように悪魔と契約したからか?それだけではない気がする。もっと根本から似ているような・・・・・・まさか!
『ピンポンピンポン大せいかーい!!流石は小野山歩のご友人。類は友を呼ぶとはこういうことを言う。貴方も中々に頭が回るようですねぇ』
どこからともなく声が聞こえてくる。すると、床に先程下級悪魔を召喚するときとはまた一風違った中心にタコのような紋章が描かれた陣が形成されていく。
亮一は慌てて跳躍して陣から離れると、陣の中からゆっくりと浮かび上がるようにタコのような見た目をした怪物が現れたのだ。
デビルはその姿を見るなり目から恐怖を滲み出していた。
「オクトス・・・・!!」
亮一はその名を聞いたことがあった。ニコラス王の息子が契約し、歩がエルフの国にシトラの両親に挨拶しにいった時に出くわしたという悪魔。
話から聞いていたが、こんなにもおぞましい姿だとは・・・。タコは別に嫌いではないのに鳥肌が立ってしまった。
「タコみたいな見た目・・・お前が歩の言ってた悪魔で間違いないな?」
「ええ、そうです。この私がオクトスでございます」
「この子と契約していた悪魔はお前なんだよな?」
「はい。この子がどーしても魔力が欲しいと言うものですから」
「・・・持っていくのか?身体を?」
睨み付けるようにして問うとオクトスはケタケタと笑ってみせた。またその笑いかたで鳥肌が立ってしまう。
「首を跳ねられて動けなくなった子供なんていりませんよ笑。だから今回は特別に貴方のこの子の身体を差し上げます。あとは焼くなり煮るなり好きにすれば良いです」
「・・・そうか。ならばそうさせてもらう」
亮一はゆっくりとデビルの首を持ち上げた。デビルはなけなしの気力で声を振り絞る。
「な、んでだ・・・僕は、アンタ達を殺そうとしたのに・・・」
「戦った後はそんなの関係ない。お前の成仏を祈ってから墓に埋める」
ホロリホロリと少年の瞳から涙から溢れてくる。これは負けた故の悔しさの涙か敵に情けをかけられている故の屈辱の涙かは亮一は分からなかった。
「畜生・・・畜生・・・!!もっと才能があれば・・・!!」
少年の涙は願いが叶わない故の涙であった。亮一は同情と共に頭をゆっくりと撫でる。まるで我が子を愛でるように。
「大丈夫さ・・・次はきっと、才能を持って生まれてくる。お前は才能が無かったわけじゃない。才能を見つけられなかったのさ」
「そうか・・・そうだったのか・・・」
「もう結構ギリギリなんだろ?喋るの。もう休みな」
「嗚呼。ありがと・・・・・・」
少年は亮一の腕の中でゆっくりと眠るように死に絶えた。
「この子の首、繋げられるか?」
「できるよ。ちょっと貸して・・・」
葵は亮一から少年の首を受けとると、胴体とくっつけて治療魔術を放った。生き返らすことはできないが身体を繋げることはできる。
「・・・ルルドはやっぱり救いようもないクズみたいだな・・・」
「・・・そうね」
少年の死と共にルルドへの怒りが沸き上がる。殺してしまったのは自分だ。だが、この怒りはなんだろうか?
あの少年には魔力の才能が自分よりも無かった。そんな子が上級悪魔であるオクトスを呼び出せるはずがない。
亮一はまだいるオクトスに向かって質問をした。
「お前を呼び出したのは誰だ・・・?」
「察しがついているとは思いますが・・・あの男、ルルドですよ」
「・・・やっぱりか」
拳に自然と力が入る。アイツは純粋な子供の夢まで利用するのか、と。
「では、私は失礼しますね。まだまだ仕事がいっぱいありますし・・・」
「戦わないのか・・・?」
「はい🌟なんたって私、貴方達のファンですから♥️」
「そ、そうか・・・」
オクトスは人間が手を振るようにこちらに向かってを触手のうちの一本をブンブンと振りながら自分が出てきた陣へと潜っていく。
「どうかルルドを倒してくださいねー?私、アイツの事が大っ嫌いなんで!!」
オクトスは念を押すようにして伝えると、完全に亮一達の前から消えていった。
★
「なあ!下級悪魔の量が多すぎない!?1人じゃ捌き切れないんだけど!」
「日本男子でしょ?そのくらい我慢しなさい!!」
魔族の城下町は戦場と化していた。兵士や騎士、優人達は聖なる力が使える修道女達を守りながら戦っていた。ありがたいことに修道女達は治療魔術やらポーションやらをくれる。おかげで3時間程戦いっぱなしだ。
『Debyaaaaaaaaaa!?』
突然何もしていないのにも関わらず、下級悪魔は苦しみ、地面に悶え始めたのだ。すると次の瞬間、下級悪魔は次々と消えていったのだ。
「亮一達か!?」
「さっすが私の妹!!」
残ったのは少ない人数の魔族と数百体の魔物とキメラ。
「下級悪魔が消えた!!進めぇー!!」
兵士達の士気が一気に上がる。亮一と緑のその勢いに乗って魔物に向かっていく。魔族の街奪還まであと少しだ・・・!!
炎、氷、雷、岩の4つの属性の魔術が一斉に亮一に向かってくる。
「させない───『アイスウォール』!」
4つの魔術は葵の機転のきいた氷の壁ですべて塞がれてしまう。だが、4つの魔術を受けて到底耐えられるはずもなく、氷の壁は自壊した。
「くっ!!やりますねぇ。ならば───『召喚』!!」
パチンとデビルが指を鳴らすと床に大きな陣が形成され、そこから下級悪魔が這い出てきた。主従関係はわかっているようで、下級悪魔はデビルの指示に従って亮一を襲った。
「『フレイム』」
煉獄刀に向けて炎の魔術をかけると、煉獄刀は炎を帯びて業火の刃を形成した。亮一は業火の刀をふるって一気に下級悪魔の首を落とす。
「チッ!やはり簡単には殺せませんか・・・」
「少し俺らを舐めすぎじゃないのか?そのせいか反応も少し遅れているぞ」
「黙りなさい!!私は、最強の魔術師なのです!」
「魔術師?お前悪魔じゃないのか・・・いや、待てよ。お前のこの気配、何処かで感じたことあるな・・・前に何処かで会ったことあるっけ?」
俺はコイツを知っている気がする。数年前に会った気がするのだ。仮面を外したら分かるだろうか?とにかく俺の直感がコイツを知っているのだ。
「亮一、下がってて───『クリスタルサンダー』!!」
槍のような形状をし、雷を宿した氷の塊がデビルに向けてかっ飛んでいく。雷に補助されていらからなのだろうか?氷の槍の速度は通常とは比べものにならないくらい速かった。
「『シャドウシールド』!!」
氷雷の槍が当たる数センチ。デビルは闇の盾を展開して防いでしまう。葵は思わず舌打ちをした。
「2つの魔術の融合だと・・・」
デビルは驚いていた。魔術を混ぜることが可能なのか!?と。葵は胸を張って宣言する。
「可能よ!何たって私天才だから」
「全然思いつかなかった・・・」
「あらぁ~?最強魔術師じゃなかったわけ?がっかり。道理でさっきから威力の弱い魔術しか打ってこないと思った」
「なん・・・だと・・・!!」
デビルは拳をプルプルさせて怒りを露にしていた。きっと仮面の下の素顔は般若のような形相になっているのだろう。
先程から戦っていて気になっていたのだが、あいつ情緒が不安定すぎやしないか?
本当に最強の魔術師なのか?魔術を融合できることも知らなかったようだし・・・。
「葵、俺に強化魔術をかけてくれ。あと、アイツに向かって煽り言葉を」
「煽りはこれからも続けるつもり。防御と筋力で良い?」
「あとスピードも頼む。怒ったらアイツ何するか分からないしな」
亮一は葵に魔術で腕と足の筋肉を増加させてもらい、皮膚を更に硬くしてもらった。炎が燃え収まった煉獄刀に再び炎を注ぐと亮一はデビルに刃を向けて言葉を放った。
「さあて、最強の魔術師さんはどのくらい強いのかねぇ?そこら辺の魔術師よりかは強いことを願うよ」
「舐めるなぁ!!」
かかった。デビルは亮一の挑発に乗って亮一にのみ攻撃を集中させる。炎や岩や水や雷等、様々な属性の魔術が亮一を襲うが、亮一は一時強化された肉体で容易く避ける。恐らく強化が無くとも彼ならば避けられただろう。
「ちょこまかと・・・!!」
「もっと打たないと俺はとらえられないぜ。最強さん♥️」
「糞がぁぁぁ!!」
更にデビルの魔術の攻撃が激しくなる。亮一はその魔術の攻撃の中で最も大きく精度も高い炎の魔術を見つけると、わざと刀で受けて、更に煉獄刀の炎を強める。
そろそろ狙いに出ないとな・・・亮一はデビルに狙いを定める。完成度はまだ低いが、試してみる価値はあるだろう。俺の技第一号。
「秘技────」
亮一は魔術攻撃を避けて床に着地すると、床を力強く踏みしめ、姿を消した。
「ど、何処だ!?一体どんな魔術を使った!?」
亮一や葵は1つも魔術を唱える素振りは見せていなかった。デビルは焦る頭で考える。
「遅いな」
「なっ───!!」
考えこんでいる隙にその隙を見破られてしまった。デビルは急いで守りの体勢を整えるが、1秒程遅かった。
「『俊足、首狩り』」
スパン!と肉を骨と同時に斬る音が部屋中に響く。デビルは最初は何が起こっているのかわからなかった。
天地がひっくり返っている。コケたのか?いや、違う。自分の足がある。跳ねられたのか?首を跳ねられたのか?
「んなっ────!!」
自分がどうなっているのかは理解できたが、アイツが何故消えて、自分の目の前に出てきた原理がさっぱり分からなかった。
魔術?恩恵?色んな仮説を立てたが、この男にはそのようなものはかかっていなかった。だとすると、考えられるのは一番信じられないこの仮説。
この男は見えなくなるほどまでに加速して自分の首を跳ねた。
信じ難いことではあったが、受け入れざるおえなかった。
デビルの首はボトリと血を撒き散らしながら床に転がると、亮一の足にぶつかった。
「・・・・・・」
亮一は何も言わずに悪魔を模した仮面に刃をつきつけると、小さく振って仮面を真っ二つに割った。すると、仮面から出てきた素顔はまだ10にも満たないいたいけな少年だった。
「やっぱりか・・・」
胴体の方を見ると、先程まで自分と同じくらいの大きさがあったデビルの胴体を見ると、デビルの素顔に似合った大きさまで縮んでいた。デビルは魔術で姿を誤魔化していたのだ。
「おいデビル。まだ生きてるんだろ?死ぬまで暇なら俺にこれまでの経緯を話せ」
「・・・分かっ・・・たよ。僕、は魔術師の家系に生まれたんだ。でも、僕には魔術師の才能どころかステータスカードの適正も全くなかった」
「じゃあ、何でお前は魔術が使えた?才能が無かったのだろう・・・?」
「そうさ・・・僕には1ミリも才能が無かった・・・。だから、悪魔に頼んだのさ・・・」
その一言で頭に溜まっていた靄が消え去った。知っていると思っていたとは他人の空似だった。
あれはそう、シトラが歩の所に来た時の事。名前は時が流れていくにつれて忘れてしまったが、ニコラス王の息子でシトラに気持ち悪い程の執念していた男。アイツと似ているのだ。
アイツと同じように悪魔と契約したからか?それだけではない気がする。もっと根本から似ているような・・・・・・まさか!
『ピンポンピンポン大せいかーい!!流石は小野山歩のご友人。類は友を呼ぶとはこういうことを言う。貴方も中々に頭が回るようですねぇ』
どこからともなく声が聞こえてくる。すると、床に先程下級悪魔を召喚するときとはまた一風違った中心にタコのような紋章が描かれた陣が形成されていく。
亮一は慌てて跳躍して陣から離れると、陣の中からゆっくりと浮かび上がるようにタコのような見た目をした怪物が現れたのだ。
デビルはその姿を見るなり目から恐怖を滲み出していた。
「オクトス・・・・!!」
亮一はその名を聞いたことがあった。ニコラス王の息子が契約し、歩がエルフの国にシトラの両親に挨拶しにいった時に出くわしたという悪魔。
話から聞いていたが、こんなにもおぞましい姿だとは・・・。タコは別に嫌いではないのに鳥肌が立ってしまった。
「タコみたいな見た目・・・お前が歩の言ってた悪魔で間違いないな?」
「ええ、そうです。この私がオクトスでございます」
「この子と契約していた悪魔はお前なんだよな?」
「はい。この子がどーしても魔力が欲しいと言うものですから」
「・・・持っていくのか?身体を?」
睨み付けるようにして問うとオクトスはケタケタと笑ってみせた。またその笑いかたで鳥肌が立ってしまう。
「首を跳ねられて動けなくなった子供なんていりませんよ笑。だから今回は特別に貴方のこの子の身体を差し上げます。あとは焼くなり煮るなり好きにすれば良いです」
「・・・そうか。ならばそうさせてもらう」
亮一はゆっくりとデビルの首を持ち上げた。デビルはなけなしの気力で声を振り絞る。
「な、んでだ・・・僕は、アンタ達を殺そうとしたのに・・・」
「戦った後はそんなの関係ない。お前の成仏を祈ってから墓に埋める」
ホロリホロリと少年の瞳から涙から溢れてくる。これは負けた故の悔しさの涙か敵に情けをかけられている故の屈辱の涙かは亮一は分からなかった。
「畜生・・・畜生・・・!!もっと才能があれば・・・!!」
少年の涙は願いが叶わない故の涙であった。亮一は同情と共に頭をゆっくりと撫でる。まるで我が子を愛でるように。
「大丈夫さ・・・次はきっと、才能を持って生まれてくる。お前は才能が無かったわけじゃない。才能を見つけられなかったのさ」
「そうか・・・そうだったのか・・・」
「もう結構ギリギリなんだろ?喋るの。もう休みな」
「嗚呼。ありがと・・・・・・」
少年は亮一の腕の中でゆっくりと眠るように死に絶えた。
「この子の首、繋げられるか?」
「できるよ。ちょっと貸して・・・」
葵は亮一から少年の首を受けとると、胴体とくっつけて治療魔術を放った。生き返らすことはできないが身体を繋げることはできる。
「・・・ルルドはやっぱり救いようもないクズみたいだな・・・」
「・・・そうね」
少年の死と共にルルドへの怒りが沸き上がる。殺してしまったのは自分だ。だが、この怒りはなんだろうか?
あの少年には魔力の才能が自分よりも無かった。そんな子が上級悪魔であるオクトスを呼び出せるはずがない。
亮一はまだいるオクトスに向かって質問をした。
「お前を呼び出したのは誰だ・・・?」
「察しがついているとは思いますが・・・あの男、ルルドですよ」
「・・・やっぱりか」
拳に自然と力が入る。アイツは純粋な子供の夢まで利用するのか、と。
「では、私は失礼しますね。まだまだ仕事がいっぱいありますし・・・」
「戦わないのか・・・?」
「はい🌟なんたって私、貴方達のファンですから♥️」
「そ、そうか・・・」
オクトスは人間が手を振るようにこちらに向かってを触手のうちの一本をブンブンと振りながら自分が出てきた陣へと潜っていく。
「どうかルルドを倒してくださいねー?私、アイツの事が大っ嫌いなんで!!」
オクトスは念を押すようにして伝えると、完全に亮一達の前から消えていった。
★
「なあ!下級悪魔の量が多すぎない!?1人じゃ捌き切れないんだけど!」
「日本男子でしょ?そのくらい我慢しなさい!!」
魔族の城下町は戦場と化していた。兵士や騎士、優人達は聖なる力が使える修道女達を守りながら戦っていた。ありがたいことに修道女達は治療魔術やらポーションやらをくれる。おかげで3時間程戦いっぱなしだ。
『Debyaaaaaaaaaa!?』
突然何もしていないのにも関わらず、下級悪魔は苦しみ、地面に悶え始めたのだ。すると次の瞬間、下級悪魔は次々と消えていったのだ。
「亮一達か!?」
「さっすが私の妹!!」
残ったのは少ない人数の魔族と数百体の魔物とキメラ。
「下級悪魔が消えた!!進めぇー!!」
兵士達の士気が一気に上がる。亮一と緑のその勢いに乗って魔物に向かっていく。魔族の街奪還まであと少しだ・・・!!
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
子連れの元悪役令嬢ですが、自分を捨てた王太子への復讐のために魔獣討伐師を目指します!
アンジェロ岩井
ファンタジー
魔法学園のパーティーに来賓で訪れた王太子妃にして公爵令嬢のアイリーン・カンタベルトは突然、自身の夫であり国の王太子であるルシア・ソーインツベルに離婚を突き付けられた上に『稀代の悪女』のレッテルを貼られ、処刑されそうになってしまう。
あまりにも理不尽な仕打ちに、彼女は最愛の娘と共に彼らの元を離れ、国の中に巣食う魔物を狩る魔獣討伐師、またの名を魔物狩人として生きながらえる事を決意した。
これは、そんなアイリーンが娘のシャルロッテと共に魔物狩人としての仕事をこなしながら、各地を回り『聖女』の地位と自らの信用を取り返すまでの物語。
ーー
更新頻度は多めの予定です。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる