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六章2つの世界

迅速なる行動

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 キレたプリクルのその後の行動は早かった。至急戦いに参加した魔術師と国に仕える魔術師を全員集合させたのだ。

「先代魔王の魔石は確かに強力ではあります。ですが、その強大さゆえに魔石から魔力が漏れているのです」

「成る程、その漏れた魔力を追えば見つけられるというわけですな」

「ええ、その通りです。ですが、最悪なことに赤い服の男はテレポートらしき魔術を使って逃げてしまいました」

「なら、サーチを使ってみつけりゃ良いじゃないかの?」

「そうです、サーチです。皆さんの力を合わせて特大範囲のサーチを発動してください!!」

「はぁ!?」

「無茶だべ・・・」

「いやいや、いけんとちゃうんか?」

 様々な意見が飛び交うが、プリクルはずかずかと魔術師達の群がる場所まで近づいて実行し始めた。

「さあ、行きますよ!皆さん!!」

「ちょ、ちょ、早すぎる!早すぎる!もっと落ち着いて───」

「人が何人も死んでいるのですよ?落ち着いて何て出来ません」

「で、でも・・・俺らもさっき魔力をかなり───」

 ごちゃごちゃと文句を言い始める魔術師達。その中で1人だけ、プリクルの言葉に従ってサーチの準備を始める人物がいた。

「お、おいアンタ・・・葵って言ったか?アンタ魔力は大丈夫なのかよ・・・?」

「全然、平気」

 その人物は葵だった。無表情な彼女は黙々とサーチを発動させている。

「こんなちっちゃい嬢ちゃんがやってるんだ。大の大人の俺達がやらなくてどうする」

「そうだな。やるべきだよな・・・」

 葵のひたむきな姿勢に感化された魔術師達が次々とサーチを発動する。

 サーチは規格外まで拡大した。が────。

「ダメだ!この国にはいねぇや!」

「なら次はこの大陸から見つけます!皆さん!もう暫くの辛抱を!!」

「大陸ぅ?無理だぜ!そのなの!!」

「魔力がもたない!!」

「魔術師じゃなくても良いからサーチ使えて魔力もある程度高いヤツは手伝え!!」

 流石に大陸全体をサーチするのは魔術師達は苦を叫びだした。魔力と生命は繋がってはいないが、急激に減ったらどんな魔術師でも痛みを感じ始める。

 歩やラグドを始めとした魔力が平均よりも高い人達が魔術師と共にサーチを発動する。

「す、凄い・・・!!こんな規模のサーチ見たことがない・・・!」

 歩の頭に浮かび上がってきたのはこの国全体の情報だった。頭の中に入ってきてはいらない情報は流れるを繰り返している。

 例えるなら、僕は情報源という水が流れる川で泳いでいる。そう例えても良いくらいの情報が頭の中に入ってきていた。

「ほれ!魔力を集中しろ!!」

「は、はい!!」

 普段はまったくと言って良いほど魔力を消費しないサーチだが、魔力を集中させればどのくらいまで規模は大きくなるのだろうか?

 魔力を集中させ、サーチの範囲を広めようと試みる。すると、なんということだろうか!サーチの範囲が僕が魔族の国を訪れた際に最初に着いた森を越えたその先の草原までの情報が頭に流れ込んできた。

「私も────むん!」

 ラグドも歩に続いてサーチの範囲を上げようと試みる。すると、驚いたことに規模は草原を越えてロマニア王国の領土まで広がった。改めてラグドの魔力が桁違いだという事を再確認する歩である。

「駄目だぁ!ロマニア王国までみられるようになったが、全然見つからねぇ!!」

 デストロイヤーとの戦いの負担が重なってこれ以上のサーチの範囲拡大は難しいようだ。

皆の顔にも疲れが見えてくる。正直歩とラグドも疲れてきていた。

 いくら魔力が高いとはいえ、ラグドの身体は老いている。激しい魔力消費には耐え難い。

「誰か強い魔術師はいないのか・・・・」

 歩はパーティーでの記憶を辿ってサーチに参加していない魔術師を思い出す。

 あの人は・・・さっきのデストロイヤー戦で死んでしまった!

 あの女性は・・・魔力の使いすぎで今は部屋で眠っていると聞いた。無理矢理起こしてもサーチの範囲を上げることは難しい。

 誰か、誰かいないのか・・・!!

 プリクルの瞳からは今にも涙が滲み出てきそうである。なんとかして探さなければ・・・・あ!

 いるじゃないか!魔力が高く、レベルも高い一流と言っても過言ではない魔術師がいるではないか!!

 当の本人も焦って自分も参加できるというのを気づいていないようだ。

 歩は大きく息を吸って、その方の耳に届くように叫ぶ!

「プリクル女王っ!!」

 ビクリ!とプリクルの肩が震える。プリクルは何でしょうか?と言わんばかりの顔でこちらを見つめてくる。

 やはり、気づいていないようだ。自分がサーチの範囲を大幅に拡大することができる一流の魔術師だということに!!

「あなたも参加してください!きっとあなたの力が混ざれば───!!」

「成る程!そうだった!!」

 我を取り戻して自分の立場にようやく気づいたらしい。プリクルはすぐに魔術師達が固まる場所に近づきサーチを発動、残る全魔力をサーチに注ぎ込む。

「はあぁぁぁ・・・!!」

 プリクルが加わった瞬間、頭の情報処理能力を疑うような出来ごとが起きた。なんとプリクルが混ざったことによってサーチの範囲が50キロも増えたのだ。

 ロマニア王国を越えてエルフの国、エルフの国を越えて山脈の麓に建つドワーフの国まで見えてきた。

 それだけでは終わらない。ドワーフの国をも越えて、ついには自分等がいる大陸を覆い被せられるまで範囲が拡大したのだ。

「おおっ!やったぞ!!」

 ここまで来れば後は先代魔王の魔石から漏れる魔力を見つけ出すのみ!

 国、山、川、鉱山、海、生物、植物。大陸の様々な情報が頭の中に入り込んでくる。

 恐ろしい情報量に驚くが、必要ない情報は片っ端から情報処理が間に合わなくなることはない。

 暫くすると、ある鉱山の情報が流れてきた。ドワーフの国からそう遠くない魔石が主に取れる鉱山だ。名前は・・・スタノ鉱山。

 おや?鉱山の奥に人工的に作られた鉄扉が設置されている。この鉱山を掘っている鉱夫が作ったのだろうか?

 いや、違うだろう。恐らくは鉱夫が作ったものではない。鉄扉にはなんらかの魔術が施されている。

 鉄扉の奥を調べると、強烈な魔力の残りカスが感じられた。成る程、鉄扉にかけられていた魔術は中に充満する魔力の残りカスが外にでないようにするバリアの一種だったのか!

 その前に疑問になるのは何故魔石の鉱山にこんな強烈な魔力が充満しているのだろうか?

 魔石は魔術師が魔力を与えることでバッテリーとしての役割りを果たす石だ。鉱山の中に眠っている時の魔石はただの石である。

 だからこの鉱山に魔力が充満するには相当の魔術師がいるか、もしくは相当の魔術的なアイテムがあるとしか考えられない。

(もしかして・・・!!)

 歩は更に奥を調べる。すると、なんということだらうか!そこには真ん丸の巨大な魔石が丁寧に飾られているではないか!

 しかもその魔石からは鳥肌が立つほどの魔力を放っている。

 間違いない・・・先代魔王の魔石だ!!

「見つけました!ドワーフの国に近くのスタノ鉱山です!!」
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